アジア4ヶ国へVTuberグループを並行立ち上げ
国内VTuber市場の伸長と海外展開機会
2018年〜2019年にかけて、にじさんじ所属ライバーのチャンネル登録者数・配信時間は急速に拡大し、国内VTuber市場での先発優位を確立しつつあった。一方、YouTube配信は地理的制約がないため、海外市場(特に文化的に親和性が高いアジア圏)へVTuber事業モデルを移植する機会が存在していた。
中国・東南アジア・韓国・インド等のアジア圏では、配信文化・アニメ文化・アイドル文化が日本と異なる形で根付いており、各国市場の文化的特性に合わせたローカルキャストを擁する形での海外展開が想定された。創業からわずか2年弱の時点で複数国への並行展開を判断することは、リソース配分・運営難度の両面でスタートアップとして異例の挑戦であった。
中国・インドネシア・インド・韓国への並行進出
2019年4月、中国向けVTuberグループ「VirtuaReal Project」の始動を発表、海外展開の第一歩を踏み出した。同年7月にインドネシア向け「NIJISANJI ID」、11月にインド向け「NIJISANJI IN」、12月に韓国向け「NIJISANJI KR」と、創業からわずか2年半でアジア4ヶ国のローカルVTuberグループを並行立ち上げた。
各国市場のローカルライバー・現地語配信・現地グッズ展開を組み合わせる「多地域分散型VTuber事務所」のモデルを業界内で先行して打ち立てた段階である。各国グループの運営には現地パートナー・現地スタッフを活用しつつ、ブランド・運営ノウハウは本体(いちから株式会社)が一元管理する設計を取った。
海外展開の選択と集中フェーズへ
並行展開後、各国市場の収益性・継続性は均一ではなく、2021年4月にインド向け「NIJISANJI IN」を活動休止、2022年4月には「NIJISANJI ID」と「NIJISANJI KR」を本体「にじさんじ」へ統合した。海外戦略は「並行立ち上げ→選択と集中→ブランド統合」の3段階を経て、英語圏「NIJISANJI EN」(2021年5月始動)と中国「VirtuaReal Project」に資源を集中する形へ整理された。
2019年の並行立ち上げ自体は短期的な収益貢献より、海外市場の運営ノウハウ蓄積・ブランド認知拡大・後の英語圏展開(NIJISANJI EN)の前提となる組織能力構築に意義があった経営判断と整理できる。
- 中国向け「VirtuaReal Project」を発表
- インドネシア向け「NIJISANJI ID」を発表
- インド向け「NIJISANJI IN」を発表
- 韓国向け「NIJISANJI KR」を発表
- インド向け「NIJISANJI IN」の活動を休止
- 「NIJISANJI ID」「NIJISANJI KR」を本体「にじさんじ」へ統合
2019年4月〜12月の8ヶ月で4ヶ国の海外グループを並行立ち上げた判断は、スタートアップとして異例の挑戦である。各国の運営難度・収益性に差があることは事前に予測可能だったはずだが、それでも並行展開を選んだのは、後発の業界プレイヤー(カバー/ホロライブ等)が海外展開を本格化する前にブランドの先行配置を完了させる戦略だったと整理できる。実際、後の選択と集中(インド休止、ID/KR統合)を経ても、英語圏「NIJISANJI EN」と中国「VirtuaReal」は継続し、ANYCOLORの売上の海外比率は中期成長戦略の中核論点であり続けている。