三越伊勢丹ホールディングス の歴史

創業

2008年

創業者

※三越+伊勢丹

創業地

東京都

直近売上高(2026/3)

5,456億円

長期業績と転換点(1997/11〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ2008年の統合初年度は、利益が減る計画から始まったのか
A 2008年4月に発足した三越伊勢丹ホールディングスが初年度の営業利益計画を340億円、前年度の両社見通し合計の82%にとどめたのは、統合の柱である情報システムの一本化が完了するのが2010年度で、それまでを基盤固めに充てる工程だったからである。統合発表時の目標は5年後に営業利益750億円だった。準備期間中も三越の2007年度営業利益は期初計画154億円から2度の下方修正を経て85億円へ落ち、両社の収益力の格差は開いたままだった
Q なぜ2008年に三越と伊勢丹は経営統合したのか
A 2008年4月に三越と伊勢丹が共同持株会社へ統合したのは、1990年代以降の市場縮小で単独の全国網維持が両社とも限界に近づき、互いの弱みを相手の資産で補う必要があったからである。銀座・日本橋に基幹店を持つ三越と新宿本店に依存する伊勢丹は、格式と編集力を1社に束ねた。伊勢丹の武藤信一社長は「規模の力を持つ必要がある」と語り、合算売上1兆4,000億円で業界首位に立った
Q なぜ2021年以降、来店前提の百貨店モデルを識別顧客戦略へ転換したのか
A 細谷敏幸社長が2021年以降に来店前提の百貨店モデルを識別顧客戦略へ転換したのは、コロナ禍で店舗休業とインバウンド消失が重なり、FY20に営業赤字209億円を計上して来店依存の限界が露呈したからである。カード・アプリ・外商の顧客IDを横串で束ね、館業から個客業へ移した。識別顧客とインバウンドの回復が重なり、2024年3月期の営業利益は過去最高の543億円となった

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2007年〜 共同株式移転による発足と、5年後750億円という設計

  1. 2007年三越と伊勢丹が経営統合に合意
  2. 2008年三越伊勢丹ホールディングスを設立し東証上場

三越伊勢丹ホールディングスの業績推移:単体

売上高(億円)

出所:有価証券報告書等

業界再編のなかで選ばれた共同持株会社

2000年代の日本の百貨店業界は、大手同士の統合が続く段階に入った。2003年にそごうと西武百貨店が合併してミレニアムリテイリングを結成し、のちにセブン&アイ・ホールディングスの傘下へ入った。2007年9月には大丸と松坂屋がJ.フロントリテイリングとして統合し、売上高で業界首位に立った。総合スーパー・専門店チェーン・ECの台頭で百貨店の市場シェアは縮小を続け、再編の対象は地方中堅だけでなく三越や伊勢丹のような大手にも及んだ。三越と伊勢丹の統合は、この波の中に置かれた案件にあたる。 [1][2]

  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [1]2003年にそごうと西武百貨店が合併してミレニアムリテイリングを結成し、のちにセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入った。2007年9月に大丸と松坂屋がJ.フロントリテイリングとして統合した
    • [2]J.フロントリテイリングでは統合初年度から松坂屋の利益率に改善が見られ、統合効果が顕在化していた

三越と伊勢丹の経営統合は2007年8月に発表され、両社の臨時株主総会の承認を経て、2008年4月1日に共同株式移転で持株会社の三越伊勢丹ホールディングスが設立された。三越と伊勢丹はともにその完全子会社となり、同日に東京証券取引所へ上場した。三越の格式と全国の店舗網、伊勢丹の編集力と新宿本店の集客力という、経営風土の異なる両社の資産を一つの持株会社に束ねる形である。初代社長には三越出身の石塚邦雄氏が就き、会長には伊勢丹出身の武藤信一氏が就いた。越後屋(1673年)に始まる三越と、伊勢屋丹治呉服店(1886年)に始まる伊勢丹の統合前の歩みは、それぞれの単独史として別に扱う。 [3][4]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
    • [3]2007年8月に株式移転による共同持株会社の設立で合意し、11月の臨時株主総会で承認、2008年4月1日に両社が株式移転の方法により当社を設立して東京証券取引所に上場した
  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [4]2008年4月の発足時、三越伊勢丹ホールディングスの社長は石塚邦雄、会長は武藤信一だった
  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [1]2003年にそごうと西武百貨店が合併してミレニアムリテイリングを結成し、のちにセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入った。2007年9月に大丸と松坂屋がJ.フロントリテイリングとして統合した
    • [2]J.フロントリテイリングでは統合初年度から松坂屋の利益率に改善が見られ、統合効果が顕在化していた
    • [4]2008年4月の発足時、三越伊勢丹ホールディングスの社長は石塚邦雄、会長は武藤信一だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
    • [3]2007年8月に株式移転による共同持株会社の設立で合意し、11月の臨時株主総会で承認、2008年4月1日に両社が株式移転の方法により当社を設立して東京証券取引所に上場した

5年後に営業利益750億円という目標と、システム一本化の工程

統合発表時に掲げた新会社の営業利益目標は、5年後に750億円だった。内訳は伊勢丹450億円、三越300億円である。統合の柱である情報システムなどの一本化が完了するのは2010年度で、それまでは課題の洗い出しと基盤固めに充てるとした。新会社の初年度の営業利益計画は340億円で、統合費用の増加により実質減益を見込み、2007年度の両社見通し合計の82%にとどまる水準に置かれている。統合したその年から数字が良くなる設計ではなく、2年をかけて土台を作る計画だった。統合したその年から数字が良くなる設計ではなく、2年をかけて土台を作る計画だった。三越が伊勢丹の情報システムと調達力を借りて売れ筋の品切れを解消するという筋書きは、システムが繋がるまで動き出さない。 [5]

  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [5]統合発表時に掲げた新会社の営業利益目標は5年後に750億円(伊勢丹450億円・三越300億円)。情報システムなどの一本化の完了は2010年度で、新会社の初年度営業利益計画は340億円、2007年度の両社見通し合計の82%にとどまった

統合の準備期間中も、両社の収益力の差は開いた。三越の2007年度の営業利益は期初計画の154億円から2度の下方修正を経て、前年比32%減の85億円で着地する見通しとなった。衣料品の不振に苦しみながらも業績を伸ばしてきた伊勢丹との格差はいっそう広がっている。前年9月に発足したJ.フロントリテイリングが初年度から統合効果を出していたことと比べると、三越伊勢丹ホールディングスの計画は慎重に見える。武藤信一会長は「挽回できる。大丈夫」と述べ、消費低迷は当面続くとしながら目標の達成を強調した。 [6][7]

  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [6]三越の2007年度の営業利益は期初計画の154億円から2度の下方修正を経て前年比32%減の85億円で着地する見通しとなり、両社の収益力の格差はいっそう拡大した
    • [7]「挽回できる。大丈夫」(武藤信一会長。統合発表時に掲げた5年後750億円の営業利益目標を修正していない理由について)
  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
    • [5]統合発表時に掲げた新会社の営業利益目標は5年後に750億円(伊勢丹450億円・三越300億円)。情報システムなどの一本化の完了は2010年度で、新会社の初年度営業利益計画は340億円、2007年度の両社見通し合計の82%にとどまった
    • [6]三越の2007年度の営業利益は期初計画の154億円から2度の下方修正を経て前年比32%減の85億円で着地する見通しとなり、両社の収益力の格差はいっそう拡大した
    • [7]「挽回できる。大丈夫」(武藤信一会長。統合発表時に掲げた5年後750億円の営業利益目標を修正していない理由について)

2009年〜 統合初年度の純損失と、持株会社の下で進んだグループ再編

  1. 2009年初の純損失計上
  2. 2009年岩田屋を完全子会社化
  3. 2009年丸井今井の事業を札幌・函館丸井今井経由で承継
  4. 2010年百貨店事業の地域会社化を実施
  5. 2010年岩田屋と福岡三越が合併し岩田屋三越に
  6. 2011年三越と伊勢丹が合併し「三越伊勢丹」を発足

三越伊勢丹ホールディングスの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書等

統合初年度の純損失635億円の衝撃

経営統合のタイミングは最悪の時期と重なった。2008年9月のリーマンショックが世界同時不況を引き起こし、国内の個人消費は冷え込んだ。統合初年度のFY08(2009年3月期)は売上高1兆4,266億円だったが、翌FY09には1兆2,916億円まで落ち込み、純損失635億円の赤字を計上した。百貨店セグメントの売上高はFY08の1兆3,229億円からFY09の1兆2,012億円へ、1年で1,200億円超が消えた。統合シナジーの発現を待つ間もなく業界の構造不況に直撃された格好である。主力の衣料品と宝飾品の落ち込みが目立ち、法人ギフトを含む外商売上も冷え込んだ。統合に伴う店舗網の整理や人員再配置が本格化する前に赤字対応を迫られ、出発の手順が後ろ倒しになる負の連鎖が始まった。 [8][9][10][11]

  • 有価証券報告書
    • [8]FY08(2009年3月期)の売上高は1兆4,266億円だった
    • [9]FY09(2010年3月期)の売上高は1兆2,916億円だった
    • [10]FY09(2010年3月期)に純損失635億円を計上した
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [11]百貨店セグメント売上高はFY08の1兆3,229億円からFY09の1兆2,012億円へ減少した

リーマンショック後の2010年代前半、業績は緩やかに回復した。FY11からFY15にかけて売上高は1兆2,000億円台で推移し、営業利益はFY13に346億円、FY14に330億円、FY15に331億円と300億円台を維持した。ただし回復の主因は訪日インバウンド需要の増加と都心基幹店の集客力の掛け合わせで、地方店舗の赤字は解消されていなかった。統合による上積みが数字で証明される水準には届かず、ホールディングスとしての存在意義を問う声が残り続けた。中国人観光客による高額化粧品・ブランド品の爆買いが売場の一時的な賑わいをもたらしたが、国内富裕層の購買力は横ばいで推移した。円高場面の終焉と日銀の金融緩和で消費マインドは改善したが、本業の百貨店モデルそのものの構造問題は先送りされた。 [12][13]

  • 有価証券報告書
    • [12]FY13(2014年3月期)の営業利益は346億円だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [13]営業利益はFY14に330億円・FY15に331億円だった
  • 有価証券報告書
    • [8]FY08(2009年3月期)の売上高は1兆4,266億円だった
    • [9]FY09(2010年3月期)の売上高は1兆2,916億円だった
    • [10]FY09(2010年3月期)に純損失635億円を計上した
    • [12]FY13(2014年3月期)の営業利益は346億円だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [11]百貨店セグメント売上高はFY08の1兆3,229億円からFY09の1兆2,012億円へ減少した
    • [13]営業利益はFY14に330億円・FY15に331億円だった

岩田屋・丸井今井の取り込みと、2011年の事業会社合併

発足の翌年から、持株会社の下でグループの組み替えが始まった。2009年6月、三越伊勢丹ホールディングスは岩田屋を完全子会社とする株式交換を決定し、両社で株式交換契約を締結した。岩田屋は伊勢丹が2005年2月に株式の公開買付で連結子会社としていた九州の百貨店である。同年10月には福岡証券取引所へ上場を申請した。買収した相手を持株会社の直下へ移し、その地域の証券取引所にも上場することで、統合の枠組みは九州まで及んだ。岩田屋は、伊勢丹が単独で買った相手を持株会社が引き取る形での再編にあたる。統合前に各社が個別に築いた資本関係を、持株会社の下へ並べ替える作業が同時に進んでいた。 [14]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
    • [14]2009年6月、当社を完全親会社・株式会社岩田屋を完全子会社とする株式交換を実施することを決定し、両社で株式交換契約書を締結した。同年10月に証券会員制法人福岡証券取引所へ上場申請した

北海道では相手方の経営破綻が先に来た。1872年創業で道内に4店を構えた丸井今井は、札幌駅前の商業施設との競合と2008年秋以降の売上急減で資金繰りが悪化し、2008年12月末時点で約5億円の債務超過に陥って民事再生法の適用を申請した。2009年1月29日に再生手続開始の決定を受けると同時に、業務提携関係にあった伊勢丹へスポンサー支援を要請している。伊勢丹は2005年に約5億円を出資して保有株13%と役員派遣、営業ノウハウの提供で再建に着手していたが、地元金融機関の幹部は「伊勢丹主導の改革は失敗だった」と述べている。 [15][16]

  • 週刊東洋経済 2009年2月14日号「百貨店丸井今井が経営破綻 焦点は伊勢丹の支援」
    • [15]1872年創業の丸井今井は道内に4店を構え、2008年12月末時点で約5億円の債務超過に陥り民事再生法の適用を申請。2009年1月29日に再生手続開始の決定を受け、業務提携関係にあった伊勢丹にスポンサー支援を要請した
    • [16]「伊勢丹主導の改革は失敗だった」(週刊東洋経済 2009年2月14日号に載る地元金融機関幹部の発言。2005年に伊勢丹が約5億円を出資して保有株13%と役員派遣を行った再建について)

結末は事業の切り出しによる承継だった。2009年5月29日に設立した札幌丸井今井と函館丸井今井が、民事再生手続中の丸井今井から札幌事業と函館事業をそれぞれ譲り受ける契約を締結した。翌2010年4月には三越の札幌・仙台・名古屋・広島・高松・松山・福岡・新潟の各地域の百貨店事業を吸収分割で地域事業会社へ承継させ、同年10月に岩田屋と福岡三越が合併して岩田屋三越となった。そして2011年4月1日、三越と伊勢丹が合併して株式会社三越伊勢丹が発足し、札幌丸井今井と札幌三越も合併して札幌丸井三越となった。持株会社の設立から3年で、二つの事業会社は一つになった。 [17][18][19]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
    • [17]2009年5月29日に設立した札幌丸井今井・函館丸井今井が、民事再生手続中の丸井今井から札幌事業・函館事業をそれぞれ譲り受けることで合意し事業譲渡契約を締結した
    • [18]2010年4月に三越の札幌・仙台・名古屋・広島・高松・松山・福岡・新潟の各地域の百貨店事業を吸収分割で地域事業会社に承継させ、同年10月に岩田屋と福岡三越が合併して岩田屋三越となった
    • [19]2011年4月に株式会社三越と株式会社伊勢丹が合併して株式会社三越伊勢丹となり、札幌丸井今井と札幌三越も合併して札幌丸井三越となった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
    • [14]2009年6月、当社を完全親会社・株式会社岩田屋を完全子会社とする株式交換を実施することを決定し、両社で株式交換契約書を締結した。同年10月に証券会員制法人福岡証券取引所へ上場申請した
    • [17]2009年5月29日に設立した札幌丸井今井・函館丸井今井が、民事再生手続中の丸井今井から札幌事業・函館事業をそれぞれ譲り受けることで合意し事業譲渡契約を締結した
    • [18]2010年4月に三越の札幌・仙台・名古屋・広島・高松・松山・福岡・新潟の各地域の百貨店事業を吸収分割で地域事業会社に承継させ、同年10月に岩田屋と福岡三越が合併して岩田屋三越となった
    • [19]2011年4月に株式会社三越と株式会社伊勢丹が合併して株式会社三越伊勢丹となり、札幌丸井今井と札幌三越も合併して札幌丸井三越となった
  • 週刊東洋経済 2009年2月14日号「百貨店丸井今井が経営破綻 焦点は伊勢丹の支援」
    • [15]1872年創業の丸井今井は道内に4店を構え、2008年12月末時点で約5億円の債務超過に陥り民事再生法の適用を申請。2009年1月29日に再生手続開始の決定を受け、業務提携関係にあった伊勢丹にスポンサー支援を要請した
    • [16]「伊勢丹主導の改革は失敗だった」(週刊東洋経済 2009年2月14日号に載る地元金融機関幹部の発言。2005年に伊勢丹が約5億円を出資して保有株13%と役員派遣を行った再建について)

2012年〜 大西洋の自主編集主義の徹底と、突然の社長交代までの5年

  1. 2012年大西洋が代表取締役社長に就任
  2. 2012年三越新宿アルコット店の営業を終了

三越伊勢丹ホールディングスの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書等

大西洋の「百貨店は人の産業」と自主編集主義の徹底

2012年6月、伊勢丹社長だった大西洋氏がホールディングス社長に就任した。大西は伊勢丹新宿本店で培った自主編集売場こそ競争優位の核だとし、海外ラグジュアリーブランドへの過度な依存を排する方針を示した。新宿本店ではルイ・ヴィトンなど海外高級ブランドの売場拡張要請を退け、自社バイヤーが編集する売場で高感度の顧客層を囲い込む戦略を取り続けた。大西は後年、伊勢丹新宿本店本館への海外高級ブランド導入要請を一貫して拒否してきたと当時の判断を説明している。百貨店が場所貸しに傾くなかで、仕入れと編集の主導権を百貨店側に取り戻す方針は業界内で異色の路線として注目を集めた。伊勢丹新宿本店の「リ・スタイル」や「イセタンガール」といった自主編集売場は、来店客数と客単価を底上げする装置として働いた。 [20][21][22]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [20]2012年6月に大西洋がホールディングス社長に就任した
    • [21]大西洋は就任前に伊勢丹社長だった
  • PRESIDENT Online(2025年8月8日)
    • [22]新宿本店ではルイ・ヴィトンなど海外高級ブランドの売場拡張要請を退けた

大西は販売現場を「百貨店でいちばん大切で、大変な仕事は店頭での販売」(藤巻百貨店 公開日不明)と位置づけ、人件費削減ではなく販売員の賃上げによる売上拡大を志向した。「売上が下がると人件費削減に手をつけるが、むしろ人件費を上げても売上と利益を上げるべき。百貨店は『人の産業』だ」(PARTNER 公開日不明)と人件費を積極化する路線を掲げた。ただし地方店舗の赤字は解消されず、構造改革の遅れを社内外から指摘される場面が増えた。自主編集の理念と不採算店舗の整理という相反する課題を同時に抱え、大西体制の後半は収益面の停滞が目立った。販売員の処遇改善は人件費比率を押し上げ、営業利益率の改善速度を鈍らせた。地方店のテコ入れ策は売場改装や催事強化にとどまり、閉店を含む抜本的な選択に踏み込めなかった点が経営判断の重さとして残った。

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [20]2012年6月に大西洋がホールディングス社長に就任した
    • [21]大西洋は就任前に伊勢丹社長だった
  • PRESIDENT Online(2025年8月8日)
    • [22]新宿本店ではルイ・ヴィトンなど海外高級ブランドの売場拡張要請を退けた

突然の社長交代と自主編集主義からの路線転換

2016年頃から業績に陰りが出始めた。FY16の営業利益は前年比92億円減の239億円に落ち込み、FY17は営業利益244億円・純損失9億円と赤字に転じた。訪日インバウンド需要の踊り場と地方店舗の赤字拡大が重なり、自主編集主義だけでは収益体質の改善が間に合わないとの見方が経営陣の間で強まった。売上高はFY15の1兆2,872億円からFY17の1兆2,564億円へ緩やかに下がり、コスト構造の見直しなしには利益水準を維持できない状況が浮き彫りになった。地方百貨店は固定費の重みが利益を圧迫し、閉店を含む整理の選択肢が経営議題の前面に浮上した。新宿本店と日本橋本店の基幹2店が稼ぎ出す利益で地方店の赤字を埋める構図が限界に近づき、ポートフォリオの組み替えが避けられない段階に入った。 [23][24][25][26]

  • 有価証券報告書
    • [23]FY16(2017年3月期)の営業利益は239億円だった
    • [24]FY17(2018年3月期)に純損失9億円を計上した
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [25]FY17(2018年3月期)の営業利益は244億円だった
    • [26]売上高はFY15に1兆2,872億円・FY17に1兆2,564億円だった

2017年3月、大西洋氏は任期途中で社長を退任した。この交代は自主編集主義と構造改革優先の路線対立としてメディアで報じられた。大西は退任後も、百貨店改革は組織と人材の側で勝負が決まる領域でありスーパー並みの営業利益率を目標に据えれば百貨店業態そのものが消滅すると、組織論の観点から警鐘を鳴らし続けた。ホールディングスの経営は構造改革を優先する路線へ転換し、後任の杉江俊彦氏が不採算事業の整理に着手する。大西在任中に深耕された自主編集の資産は伊勢丹新宿本店を中心に残されたが、グループ全体の収益構造を切り替えるには一段の痛みを伴う意思決定が必要という共通認識が経営陣の間で固まった。 [27][28]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [27]2017年3月に大西洋が任期途中で社長を退任した
    • [28]大西洋の後任社長は杉江俊彦だった
  • 有価証券報告書
    • [23]FY16(2017年3月期)の営業利益は239億円だった
    • [24]FY17(2018年3月期)に純損失9億円を計上した
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [25]FY17(2018年3月期)の営業利益は244億円だった
    • [26]売上高はFY15に1兆2,872億円・FY17に1兆2,564億円だった
    • [27]2017年3月に大西洋が任期途中で社長を退任した
    • [28]大西洋の後任社長は杉江俊彦だった

2017年〜 構造改革優先からコロナ禍の営業赤字の底まで

  1. 2017年大西洋社長が突然退任
  2. 2017年杉江俊彦が代表取締役社長に就任
  3. 2017年三越千葉店・三越多摩センター店の営業を終了
  4. 2020年純損失に転落
  5. 2021年初の営業赤字計上
  6. 2021年細谷敏幸が代表執行役社長CEOに就任
  7. 2021年2022-2024年度中期経営計画を発表

三越伊勢丹ホールディングスの業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)

出所:有価証券報告書等

小売もできるIT企業を掲げた杉江俊彦路線

2017年4月、杉江俊彦氏が代表取締役社長に就任した。就任会見で杉江俊彦氏は事業の選択と集中を進めつつ前任の基本方針は維持すると表明し、新宿本店・銀座店・日本橋本店の基幹3店舗へ経営資源を集中すると明示した。地方・海外店舗の選択と集中を最優先課題に据え、中期経営計画では百貨店事業を単なる小売業から小売機能を併せ持つIT企業へ進化させる方向性を打ち出し、人と時代をつなぐプラットフォーマーをスローガンに掲げた。伊勢丹松戸店や三越千葉店など地方店の閉鎖を進め、固定費の圧縮と基幹店への投資原資の捻出を並行して進める体制に移った。閉店先の取引先対応と従業員の再配置が並行する難しい舵取りが続いた。 [29][30][31]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [29]2017年4月に杉江俊彦が代表取締役社長に就任した
  • 有価証券報告書
    • [30]伊勢丹松戸店を閉鎖した
    • [31]三越千葉店を閉鎖した

決算では構造改革のコストが先行した。FY18は売上高1兆1,968億円・営業利益292億円と持ち直したが、FY19は売上高1兆1,191億円・営業利益156億円に悪化し、純損失111億円の赤字に転落した。コロナ禍前夜の消費減速に加え、店舗閉鎖に伴う特別損失が業績を押し下げた。基幹店集中の方向は定まっていたが、収益改善の速度が市場環境の悪化に追いつかなかった。杉江体制の3年間は「将来への種まき」と「足元の赤字」が同居する過渡期となった。IT企業への志向を掲げつつも実態の投資額はデジタル化の先行企業に及ばず、戦略の看板と実行面との乖離を社内外から問う声も出た。地方店閉鎖の進展と引き換えに基幹店リニューアルの原資は確保されたが、その成果が損益に映るには時間が必要だった。 [32][33][34][35]

  • 有価証券報告書
    • [32]FY19(2020年3月期)の売上高は1兆1,191億円だった
    • [33]FY19(2020年3月期)に純損失111億円を計上した
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [34]FY18(2019年3月期)の売上高は1兆1,968億円・営業利益は292億円だった
    • [35]FY19(2020年3月期)の営業利益は156億円だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [29]2017年4月に杉江俊彦が代表取締役社長に就任した
    • [34]FY18(2019年3月期)の売上高は1兆1,968億円・営業利益は292億円だった
    • [35]FY19(2020年3月期)の営業利益は156億円だった
  • 有価証券報告書
    • [30]伊勢丹松戸店を閉鎖した
    • [31]三越千葉店を閉鎖した
    • [32]FY19(2020年3月期)の売上高は1兆1,191億円だった
    • [33]FY19(2020年3月期)に純損失111億円を計上した

コロナ禍における営業赤字209億円の最悪数字

2020年春のコロナ禍は百貨店事業を直撃した。緊急事態宣言のもとで都心の百貨店は営業休止を強いられ、回復を支えてきた訪日インバウンド消費はほぼ消失した。FY20(2021年3月期)は売上高8,160億円とFY19から3,032億円の減少を記録し、営業赤字209億円・純損失411億円を計上した。百貨店セグメント単体では売上7,495億円に対して営業損失303億円と、経営統合以来の最悪の数字が並んだ。店舗休業の長期化で在庫回転も停滞し、キャッシュフローの毀損が経営の自由度を狭めた。衣料品と食品ギフトの売上減が顕著で、春夏商戦の在庫を抱えたまま休業期間を過ごした売場の損失は構造的だった。雇用調整助成金の活用や、金融機関からのコミットメントラインの拡大などで急場をしのぐ対応が続いた。 [36][37][38][39][40]

  • 有価証券報告書
    • [36]FY20(2021年3月期)の売上高は8,160億円だった
    • [37]FY20(2021年3月期)に営業赤字209億円を計上した
    • [38]FY20(2021年3月期)に純損失411億円を計上した
    • [39]FY20の百貨店セグメント営業損失は303億円だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [40]FY20の百貨店セグメント売上は7,495億円だった

2020年11月、三越伊勢丹ホールディングスは2019年度から2021年度を対象とする中期経営計画を取り下げた。コロナ禍で計画の前提が崩れたためである。杉江自身もコロナ禍を経て全社員の発想が変わったと認め、120年続いた百貨店モデルそのものを見直す必要に経営陣は迫られた。杉江体制が掲げた基幹店集中と「IT企業」への志向は方向としては残ったが、危機対応の新たな経営者と戦略の枠組みが求められる状況に入った。2021年3月期の自己資本比率は前年度比で低下し、財務面の立て直しも次期社長の課題として引き継がれた。緊急事態宣言の繰り返しで店舗の営業時間は流動的となり、顧客との接点は店頭から外商・デジタルへ比重を移さざるを得なかった。来店前提のビジネスモデルが崩れるなかで、顧客接点の再設計が次期経営陣に託された。

  • 有価証券報告書
    • [36]FY20(2021年3月期)の売上高は8,160億円だった
    • [37]FY20(2021年3月期)に営業赤字209億円を計上した
    • [38]FY20(2021年3月期)に純損失411億円を計上した
    • [39]FY20の百貨店セグメント営業損失は303億円だった
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [40]FY20の百貨店セグメント売上は7,495億円だった

細谷敏幸への社長交代と再出発の前提条件

2021年4月、細谷敏幸氏が代表執行役社長CEOに就任した。細谷敏幸氏は顧客・従事者・取引先をどう守るかという問いから百貨店を特別な機会に訪れる場所として再定義した。日常の量販型小売ではなく非日常空間としての価値を磨く方向を示し、こだわる商品には相応の支出を惜しまない一方でそれ以外は徹底して合理性を求める消費の二極化が進んでいるという現状認識のもと、識別顧客の引き上げと外商事業のDX化を二軸に収益体質を組み替える方針を掲げた。クレジットカード・アプリ・外商の顧客IDを横串で束ねる設計を採り、顧客購買データに基づく個別提案で来店頻度と客単価を底上げする狙いを据えた。小売と金融を一体で運用する経営基盤の構築が新体制の主要論点として前面に出た。 [41]

  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [41]2021年4月に細谷敏幸が代表執行役社長CEOに就任した

2021年11月、コロナ禍からの再構築計画として2022年度から2024年度を対象とする中期経営計画を発表した。基本戦略は高感度上質消費の拡大・席巻と最高の顧客体験の提供とし、高感度上質戦略・個客とつながるCRM戦略・連邦戦略の3本柱を据えた。2024年度のKPIには営業利益350億円・ROE5.3%を掲げ、コロナ禍前の最高益を超える目標を設定した。長期10年では営業利益500億円水準を視野に入れ、百貨店事業の枠を超えたグループ全体の収益拡大を図る構想を示した。連邦戦略はホールディングスの各事業会社が相互に資源を融通する仕組みを想定し、不動産・金融・システム開発を百貨店の外側で収益化する道筋を描いた。高感度上質戦略は伊勢丹新宿本店の編集力を基軸とし、富裕層と準富裕層を主戦場とする明確な顧客選別を含んでいた。 [42]

  • 決算説明会
    • [42]2024年度のKPIに営業利益350億円・ROE5.3%を掲げた
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
    • [41]2021年4月に細谷敏幸が代表執行役社長CEOに就任した
  • 決算説明会
    • [42]2024年度のKPIに営業利益350億円・ROE5.3%を掲げた

三越伊勢丹ホールディングスの沿革2007〜2025年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
武藤信一三越と伊勢丹が経営統合に合意★★★
武藤信一三越伊勢丹ホールディングスを設立し東証上場★★★
石塚邦雄初の純損失計上★★
石塚邦雄岩田屋を完全子会社化★★
石塚邦雄丸井今井の事業を札幌・函館丸井今井経由で承継
石塚邦雄百貨店事業の地域会社化を実施★★
石塚邦雄岩田屋と福岡三越が合併し岩田屋三越に
大西洋三越と伊勢丹が合併し「三越伊勢丹」を発足★★
大西洋三越新宿アルコット店の営業を終了
大西洋大西洋が代表取締役社長に就任★★
杉江俊彦三越千葉店・三越多摩センター店の営業を終了
杉江俊彦大西洋社長が突然退任★★
杉江俊彦杉江俊彦が代表取締役社長に就任★★
杉江俊彦伊勢丹松戸店の営業を終了
杉江俊彦純損失に転落
杉江俊彦伊勢丹相模原店・伊勢丹府中店の営業を終了
細谷敏幸新潟三越の営業を終了
細谷敏幸純損失に転落★★
細谷敏幸監査役会設置会社から指名委員会等設置会社に移行
細谷敏幸中期経営計画(2019-2021年度)取り下げ
細谷敏幸初の営業赤字計上★★
細谷敏幸細谷敏幸が代表執行役社長CEOに就任★★
細谷敏幸2022-2024年度中期経営計画を発表★★
細谷敏幸東証プライム市場に移行
細谷敏幸営業利益が過去最高水準に回復★★
細谷敏幸証券会員制法人福岡証券取引所における上場を廃止★★★
細谷敏幸グループ横断の人材出向を本格化
細谷敏幸営業利益763億円と再び最高益更新★★
細谷敏幸エムアイカードベーシックを導入
出典・参考
  • 週刊東洋経済 2008年4月12日号「百貨店三越伊勢丹HDが誕生 統合効果は2年後から」
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)【沿革】
  • 有価証券報告書
  • 有価証券報告書(三越伊勢丹ホールディングス)
  • 週刊東洋経済 2009年2月14日号「百貨店丸井今井が経営破綻 焦点は伊勢丹の支援」
  • PRESIDENT Online(2025年8月8日)
  • 決算説明会

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