三菱瓦斯化学 の歴史

創業

1971年

創業者

※三菱江戸川化学+日本瓦斯化学

創業地

東京都千代田区

直近売上高(2026/3)

7,382億円

長期業績と転換点(1997/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ1971年に石油化学と天然ガス化学の二社が合併して三菱瓦斯化学が生まれたのか
A 異なる二系統の原料を一社に束ねるためである。1971年10月、石油化学のC2-C4を扱う三菱江戸川化学(1944年発足)と、天然ガス由来のC1を扱う日本瓦斯化学工業(1951年設立)が合併して三菱瓦斯化学が発足した。日本瓦斯化学工業は1952年に榎工場でメタノール製造を始め、メタンから合成するC1ケミストリーを蓄えていた。性質の違う二系統の原料を併せ持つ構えは三菱グループの化学事業では珍しく、汎用品を量産しつつ多角化の素材を抱えて出発した。
Q なぜ三菱瓦斯化学は1976年にBT樹脂を開発し半導体材料へ進んだのか
A 汎用品で稼いだ収益を、自社開発の機能材料へ振り向ける決断をしたためである。日本瓦斯化学工業由来のメタノール・ホルマリンに加え、1978年に鹿島工場で過酸化水素の製造を始め、これら汎用品で収益基盤を固めた。並行して1976年にビスマレイミド・トリアジンを原料とするBT樹脂を開発し、1985年に半導体パッケージ用積層板へ初めて採用された。汎用品の景気変動を機能材料の成長で吸収する収益構造が、後の電子材料への業態転換を支える技術と原資になった。
Q なぜ2010年代に電子材料の海外現地法人を相次いで設けたのか
A 半導体パッケージ基板に使うBT材料への集中投資が、いまの三菱瓦斯化学を動かしているためである。1976年に開発したBT樹脂を源流とするこの材料で世界首位の供給者となり、2010年代に中国・台湾・東南アジアの基板メーカー向け増産を重ねた。2012年にタイ、2018年に中国でエレクトロニクス材料の現地法人を相次いで設けた。1977年に世界へ先駆けて上市した脱酸素剤エージレスも収益に加わり、汎用化学品の会社が半導体基板を支える電子材料の供給者へ入れ替わった

API for AI Agents — 認証不要、URLをGETするだけで機械可読なJSONをトークン消費を抑えつつ取得できます。

1971年〜 創業と総合化学進出の20年

三菱瓦斯化学の業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1971年 三菱江戸川化学と日本瓦斯化学工業の合併による三菱瓦斯化学の発足 天然ガス化学と石油化学、原料の異なる三菱系二社をなぜ一社に束ねたか
  2. 1971年 三菱瓦斯化学に商号変更
  3. 1978年 鹿島工場操業開始 過酸化水素の製造を開始
  4. 1979年 日本・サウジアラビアメタノール設立
  5. 1982年 MITSUBISHI GAS CHEMICAL SINGAPORE PTE. LTD. 設立
  6. 1983年 サウジメタノール計画のSAUDI METHANOL COMPAMYが操業を開始
  7. 1985年 汎用化学品から機能化学品・電子材料への主力事業の転換 汎用品の原料優位が崩れるなか、育ちかけの電子材料へどう主力を移したか

三菱グループ二社合併で発足

三菱瓦斯化学株式会社は1971年10月、三菱江戸川化学株式会社と日本瓦斯化学工業株式会社という三菱グループの二社が合併して誕生した。三菱江戸川化学は1944年に発足した三菱財閥系の化学会社で、千葉県市原市・新潟県・水島に石油化学・基礎化学品の生産拠点を持っていた。日本瓦斯化学工業は1951年に天然ガス由来のメタノール・ホルマリン製造を目的として三菱グループが設立した会社で、新潟県・福島県磐城に天然ガス田を基盤とする生産拠点を擁していた。両社の合併によって発足した三菱瓦斯化学は、創業時点で従業員約3500名、資本金150億円、本社を東京都千代田区丸の内に置く三菱グループの中核化学会社の一翼を担う規模で出発した。 [1][2][3]

  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【沿革】
    • [1]1971年10月 三菱江戸川化学株式会社と合併し三菱瓦斯化学株式会社と改称(合併発足)
    • [3]1951年4月 天然ガス化学工業を営むことを目的として日本瓦斯化学工業株式会社を設立
  • 有価証券報告書/三菱瓦斯化学社史
    • [2]三菱江戸川化学は1944年に発足した三菱財閥系の化学会社

同社の主力商品はメタノール、ホルマリン、過酸化水素、ポリカーボネート樹脂、メタアクリル系製品、芳香族化学品などで、いずれも天然ガス由来のメタンを起点とするC1ケミストリー(炭素1原子起点の合成化学)と、石油化学由来のC2-C4ケミストリーの二系統に分かれる。1970年代から1980年代にかけては、日本の高度成長期と重化学工業化に伴う国内需要の拡大を受けて、メタノール・ホルマリン市場で国内首位、過酸化水素市場で国内首位、ポリカーボネート樹脂市場で世界有数の生産能力を整えた。

  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【沿革】
    • [1]1971年10月 三菱江戸川化学株式会社と合併し三菱瓦斯化学株式会社と改称(合併発足)
    • [3]1951年4月 天然ガス化学工業を営むことを目的として日本瓦斯化学工業株式会社を設立
  • 有価証券報告書/三菱瓦斯化学社史
    • [2]三菱江戸川化学は1944年に発足した三菱財閥系の化学会社

1980年代の精密化学品・電子材料への展開

1980年代に入ると、汎用化学品の市況変動の影響を受けにくい高機能・高付加価値分野へ主力を移す動きが始まった。1981年には半導体プリント基板用の銅張積層板事業に進出し、新潟工場で生産を開始。1985年にはエンジニアリングプラスチックとしてのポリカーボネート樹脂の海外展開を加速させ、米国・欧州の自動車・電子部品メーカー向け輸出を拡大した。1987年にはMRI造影剤の独自開発に成功し、医薬中間体・医療材料分野への参入を本格化させた。並行して、新潟・茨城・水島・大牟田の四大工場を軸に、メタノール・ホルマリン・過酸化水素の量産能力増強投資を継続的に行い、汎用化学品の収益基盤を維持しつつ精密化学品・電子材料・医療材料への多角化をした。

1989年4月には、三菱江戸川化学時代から続く香料事業を分社化し、関連会社「三菱化成香料」(後の三菱化学香料)として独立させた。香料事業は1944年の創業以来の事業で、合成香料の国内有力メーカーとして香水・化粧品・食品向け原料を供給した歴史を持つ。同分社化は、汎用化学品とは異なるBtoC向け事業の特性を活かすための組織再編で、グループ内での事業ポートフォリオ最適化として業界に先行した判断となった。創業20年を経た1991年時点で、三菱瓦斯化学はメタノール・ホルマリン・過酸化水素という汎用化学品3本柱と、ポリカーボネート樹脂・銅張積層板・MRI造影剤という機能化学品3本柱を併せ持つ総合化学会社として、三菱グループ内での独自の事業ポジションを築いた。 [4]

  • 有価証券報告書/三菱瓦斯化学社史
    • [4]1989年に香料事業を分社化し三菱化成香料として独立(社系図が1989年の分社を裏付け)
  • 有価証券報告書/三菱瓦斯化学社史
    • [4]1989年に香料事業を分社化し三菱化成香料として独立(社系図が1989年の分社を裏付け)

1991年〜 1990年代の海外展開とMMA・PMMA事業

三菱瓦斯化学の業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1991年 エレクトロテクノ設立
  2. 1992年 現地資本・三菱商事と合弁でMETANOL DE ORIENTE, METOR, S.A. を設立
  3. 1994年 三菱化成と合弁で三菱エンジニアリングプラスチックスを設立
  4. 1995年 MGC PURE CHEMICALS AMERICA, INC. 設立
  5. 1995年 現地資本と合弁でTHAI POLYACETAL CO., LTD. を設立
  6. 2000年 社内カンパニー制発足
  7. 2005年 大阪工場と富士化成を統合

中国・東南アジアへのメタノール海外生産

1990年代に入ると、三菱瓦斯化学は天然ガス由来のメタノール生産を海外に展開する方針を本格化させた。これらの海外メタノール拠点は、原料天然ガスの価格優位を生かしてアジア・欧州・米州向けの輸出基地となり、国内のメタノール生産は精密化学品・MMA系製品向け原料供給を主用途とする体制が整った。海外メタノール拠点の合計年産能力は1990年代後半に300万トンを超え、世界有数のメタノール生産者としての地位を築いた。

国内では、1990年代後半から2000年代にかけて、メタクリル酸メチル(MMA)とポリメチルメタクリレート(PMMA)事業の本格展開が進んだ。MMAは半導体プリント基板用の樹脂や、液晶ディスプレイの光学フィルム、自動車用塗料、建築材料など多様な用途を持つ高機能モノマーで、世界市場では三菱瓦斯化学、米国エボニック、英国ルーサイトの3社が主要メーカーとして競合する構図だった。同社は新潟・茨城工場でMMAとPMMAの量産能力を増強し、世界第2位のシェアを確保。2003年には九州・大牟田の総合化学工場の機能を再編し、芳香族化学品(パラキシレン・テレフタル酸関連)と機能化学品(メタアクリル系・過酸化水素系)の生産集中をした。

2010年前後の事業ポートフォリオ再編

2008年9月のリーマンショックを契機とした世界的な需要減退と汎用化学品の市況急落を受け、三菱瓦斯化学は2009年から2010年にかけて事業ポートフォリオの再点検に着手した。汎用化学品の構造的な収益性低下を踏まえ、メタノール・ホルマリン・過酸化水素の量産能力を一部削減する一方、ポリカーボネート樹脂・銅張積層板・MMA関連製品・医薬中間体への投資集中を加速させた。2010年4月には九州・大牟田の総合化学工場のうち、汎用化学品部門の一部を譲渡し、機能化学品・電子材料への特化をした。同時に研究開発部門を東京・つくば・新潟の3拠点に集約し、半導体・ディスプレイ・自動車・医療といった高機能分野への研究開発投資を強化した。

2010年6月には、三菱瓦斯化学は新中期経営計画を策定し、汎用化学品の収益安定化と、機能化学品・電子材料の成長加速という二軸の戦略を提示した。同計画では、ポリカーボネート樹脂の世界生産能力増強、銅張積層板事業の中国・東南アジア展開、MRI造影剤・医薬中間体事業の海外拡販という三つの重点投資領域が示された。創業40年を経て、メタノール・ホルマリン・過酸化水素という汎用化学品3本柱から、ポリカーボネート樹脂・銅張積層板・MRI造影剤という機能化学品3本柱へ主力事業を転換する方針が、初めて全社戦略として明示された節目の中計となった。

2010年〜 機能化学品企業への再構築の現在

三菱瓦斯化学の業績推移

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2012年 MGC ELECTROTECHNO (THAILAND) CO., LTD. 設立
  2. 2013年 CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED設立
  3. 2018年 三菱ガス化学トレーディング設立
  4. 2018年 泰興菱蘇機能新材料有限公司設立
  5. 2020年 コーポレート部門、カンパニー部門を6つの部門に整理・統合
  6. 2022年 プライム市場に移行

半導体・ディスプレイ材料への集中投資

2010年代を通じて、三菱瓦斯化学は半導体・液晶ディスプレイ・スマートフォン向け電子材料事業の急成長を取り込む集中投資を継続した。銅張積層板事業は中国・台湾・東南アジアの半導体パッケージ・プリント基板メーカー向けに供給を拡大し、世界市場で松下電工(現パナソニックエレクトリックワークス)・台湾の南亜プラスチックスと並ぶ三強の一角を維持。光学樹脂事業は液晶ディスプレイの光学フィルム用ポリカーボネート樹脂、スマートフォンレンズ用高屈折率光学樹脂、自動車ヘッドランプ用光学樹脂などへ展開し、汎用ポリカーボネート樹脂とは異なる高付加価値領域での競争優位を築いた。

2018年4月には、創業40年を超えた汎用化学品事業のうち、芳香族化学品(パラキシレン・テレフタル酸関連)部門を譲渡し、機能化学品・電子材料・医薬材料への特化をさらに行った。同年中に米国・欧州・アジアの研究開発拠点を整備し、研究開発費比率を売上高比4%水準に引き上げた。2020年からの新型コロナウイルス感染拡大期には、半導体不足・電子部品需要の急増により電子材料事業が伸長し、2022年3月期から2024年3月期にかけて連結営業利益が500億円水準を維持する好業績期に入った。

伊佐早禎則体制と中長期目標

2024年6月、藤井政志社長CEO(FY18-FY23在任)の後を受けて伊佐早禎則が代表取締役社長CEOに就任した。同氏の就任時点での経営課題は、半導体・ディスプレイ材料事業の集中投資による高成長維持と、汎用化学品の収益性管理という二軸の同時運営である。 [5]

  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【役員の状況】
    • [5]2024年6月に伊佐早禎則が藤井政志(FY18-FY23在任)の後を受け代表取締役社長CEOに就任(CEO在任表で藤井FY18-23・伊佐早FY24を確認)

2025年3月期の連結業績は売上高7736億円、営業利益509億円、当期純利益455億円となった。創業54年を経た三菱瓦斯化学は、汎用化学品メーカーから機能化学品・電子材料企業へ主力事業を移す転換をほぼ完了し、伊佐早体制の下で次の中長期戦略の策定段階に入っている。

  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【役員の状況】
    • [5]2024年6月に伊佐早禎則が藤井政志(FY18-FY23在任)の後を受け代表取締役社長CEOに就任(CEO在任表で藤井FY18-23・伊佐早FY24を確認)

三菱瓦斯化学の沿革1951〜2022年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
日本瓦斯化学工業を設立
榎工場メタノール製造設備操業開始(1974年12月生産停止)
東京証券取引所に株式上場
日本尿素工業を吸収合併★★
松浜工場として操業を開始
日本樹脂化学工業水島工場操業開始
日本スチレンペーパー設立
水島工場にて技術開発によるキシレン分離異性化装置の操業を開始
三菱江戸川化学と日本瓦斯化学工業の合併による三菱瓦斯化学の発足天然ガス化学と石油化学、原料の異なる三菱系二社をなぜ一社に束ねたか 詳細を読む★★★
三菱瓦斯化学に商号変更★★
鹿島工場操業開始 過酸化水素の製造を開始
日本・サウジアラビアメタノール設立★★
MITSUBISHI GAS CHEMICAL SINGAPORE PTE. LTD. 設立
サウジメタノール計画のSAUDI METHANOL COMPAMYが操業を開始
MITSUBISHI GAS CHEMICAL AMERICA, INC. 設立
汎用化学品から機能化学品・電子材料への主力事業の転換汎用品の原料優位が崩れるなか、育ちかけの電子材料へどう主力を移したか 詳細を読む★★★
エレクトロテクノ設立
現地資本・三菱商事と合弁でMETANOL DE ORIENTE, METOR, S.A. を設立
小高英紀三菱化成と合弁で三菱エンジニアリングプラスチックスを設立★★
小高英紀MGC PURE CHEMICALS AMERICA, INC. 設立
小高英紀現地資本と合弁でTHAI POLYACETAL CO., LTD. を設立
小高英紀社内カンパニー制発足
小高英紀大阪工場と富士化成を統合
小高英紀MGCフィルシートが発足
酒井和夫現地資本と伊藤忠商事の合弁でBRUNEI METHANOL CO., SDN. BHD.を設立
酒井和夫菱優工程塑料(上海)有限公司(現・三菱瓦斯化学工程塑料(上海)有限公司)を設立
倉井敏磨MGC ELECTROTECHNO (THAILAND) CO., LTD. 設立
倉井敏磨CARIBBEAN GAS CHEMICAL LIMITED設立
藤井政志三菱ガス化学トレーディング設立
藤井政志泰興菱蘇機能新材料有限公司設立
藤井政志コーポレート部門、カンパニー部門を6つの部門に整理・統合
藤井政志プライム市場に移行
出典・参考
  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【沿革】
  • 有価証券報告書/三菱瓦斯化学社史
  • 三菱瓦斯化学 有価証券報告書【役員の状況】

免責事項およびポリシー