汎用から機能への転換を、市況に疲れた会社が逃げ場を探した動きとだけ読むのは、順序を取り違えている。BT樹脂は環境が悪化する前の1976年に生まれ、銅張積層板の事業も1975年に始まっていた。1985年の逆オイルショックと円高が突きつけたのは、すでに手元にある高機能の種を主力へ育てるという決断の期限であった。汎用品の原料優位が崩れたからこそ、傍流だった電子材料へ資源を振り向ける整理がついた——危機が転換を生んだというより、危機がすでにあった選択肢を前へ押し出したのだろう。
もっとも、転換が完了したと言い切るには早い。電子材料が全社を牽引する一方で、ポリカーボネートのように中国勢との競争で収益が減少した汎用事業はなお残り、量から質への組み替えは道半ばにある。高付加価値で稼いだ利益が、整理の遅れた事業の重さをどこまで覆えるか——次期中計が売上高ではなく利益率を掲げた点に、規模を追った時代からの離脱がうかがえる。汎用化学品から始まった会社が機能化学品企業へと自らを定義し直す作業は、電子材料の好調のなかでもなお続いているといえる。