The社史 — 上場企業の歴史を振り返る

日本の上場企業を中心とした企業史をまとめた個人サイト。創業から現在に至る意思決定の軌跡を、財務データや業績推移とともに記録しています。

The社史

 開示速報第二六七七号 (1)

JTIロシア事業の暫定管理

2016202534,677億円
売上高の推移

【JT・11月5日報道】2026年11月5日、ロシアのプーチン大統領は、JTの海外子会社JTインターナショナル(JTI)のロシア国内事業をロシア企業の暫定的な管理下に置く大統領令に署名した。JTは遅くとも2023年3月には、同事業を経営から分離する選択肢の検討を明らかにしており、大統領令の7日前にあたる2026年10月29日の時点でも、所有権の移転を含めて検討中で、業績への影響は合理的に見積もれないとしていた。本稿は執筆時点で結論の出ていない判断を扱う。 判断は筒井岳彦社長の経営陣に委ねられる。選択肢は筆者の整理で3つある。所有を維持して管理の解除を待つ、所有権を移転する、支配を失ったとみて連結から外す、である。いずれを採っても、2025年12月期の連結売上収益3兆4,677億円の1割超を占める販売に影響が及ぶ。 ロシアの基盤は2度の買収で築かれた。1999年5月にRJRインターナショナルを取得した際、JTは世界市場の成長の牽引役としてロシアを含むCISを挙げていた。2007年4月には、2000年にロシアのLiggett-Ducatを傘下に収めていたGallaherの買収を完了した。ロシアのシェアは旧JTIの18・5%から、2006年の合算で33・9%へ上がり、2007年には35%で首位に立ち、2025年も36・9%を維持している。 現地のリスクも早くから表面化していた。2004年7月に現地法人が約24億ルーブル(当時約88億円)の課税通知を受け、裁判を経て2007年10月に無効の判決を得た。2013年2月には広告や陳列を制限する包括的たばこ規制法が成立した。2022年3月に新規投資とマーケティングを停止した後も、Megapolisグループ向け売上収益は2021年12月期の2,584億円から2025年12月期の4,975億円へ増加した。 影響は開示値から試算するしかない。JTはロシアの売上も利益も開示していない。手掛かりはロシア国内の物流会社TC Megapolis向け売上収益4,443億円と、ロシア等で物流・卸売を営むMegapolisグループ向け4,975億円である。前者にEMA地域の利益率28・4%を、後者にたばこ事業全体の利益率29・9%を当てると、ロシア関連の調整後営業利益は年1,262億〜1,488億円となり、全社の9,022億円の14〜16%に相当する。2026年1〜9月の販売数量でも、ロシアの599億本は全体の4,374億本の13・7%を占める。 株主への影響も試算できる。2026年1〜9月の税引前利益に対する親会社帰属の四半期利益の比率70・6%を当てると、税引後の利益は年890億〜1,050億円となる。1株当たりでは50〜59円で、2026年12月期予想の372・88円の13〜16%である。この利益がすべて消えた場合、予想配当272円の配当性向は73%から84〜87%へ上がる。

OKIL-HOLDINGのロシア事業継続

計画から外したロシア事業を持ち続けるか

【サトー・関連事例】2022年3月15日、サトーホールディングス(現サトー)は、欧州の販売子会社からのロシア向け取引を停止する一方、子会社を通じたロシア国内の事業は状況を注視して続けると開示した。決断は小瀧龍太郎社長のもとで下され、2023年4月に小沼宏行氏へ社長が交代した後も、継続の方針は変わっていない。2023年3月期の業績計画と以降の経営計画からロシア事業を除外したが、撤退は決めなかった。 計画から外した事業は利益を生み続けた。2023年3月期の連結営業利益8,841百万円に対し、ロシアを除く営業利益は5,297百万円で、差の約40%がロシア事業の分にあたる。2022年3月期の決算説明会で方針を問われて以降、決算後の質疑応答では同じ問いが繰り返し取り上げられている。 ロシア事業の出発点は買収である。2014年12月、ロシア参入の足掛かりとして、同国首位のラベル会社OKIL-HOLDINGの株式75%を取得した。取得価額は3,113百万円で、のれんは2,611百万円にのぼる。 買収後の損益は為替に振れた。2017年度第1四半期には、ユーロに対するルーブル高でOKILの営業利益が大きく低下した。ロシア子会社の売上の半分ほどがユーロ建てで、費用は主にルーブル建てとなっている。侵攻前の2022年3月期には、連結営業利益6,404百万円のうち、ロシアを除く分が5,352百万円で、差は1,052百万円であった。 継続には条件を付けた。ロシア子会社との輸出入と新規投資を止めたうえで事業を続ける前提を置き、2023年度からは本社で同事業を監督する執行役員を新たに任命した。主要な顧客は、消費者に食品や日用品を届ける企業である。 資金は現地で回した。2023年10月の質疑応答では、競争力を保つためにロシア子会社の手元資金で設備投資を進めていると説明した。2024年7月には、本社保証の借入金を返済してリスクを減らしているとも述べた。2024年10月には、選択肢ごとの財務影響を試算したうえで、当面は事業を続けるとの結論を示した。

サーマル事業の完全子会社化決議

感熱紙事業を本体の部門に置き続けるか

【リコー・11月6日開示】2026年11月6日、大山晃社長の下のリコー取締役会は、リコーインダストリアルソリューションズビジネスユニット(RIS BU)が営むサーマルメディア事業とスマートパッケージング事業を、同日設立の完全子会社リコーインダストリアルメディアソリューションズへ吸収分割で承継させると決議した。狙いは、事業の特性に合う経営・人事・事業運営の基盤を置き、自律的で迅速な意思決定で競争力を高めることにある。 決議には、化学処方設計や精密塗工などの技術基盤を生かし、機能性包材をはじめ新規事業の成長を加速する目的も添えた。分割契約の締結は2027年3月、効力発生は2027年7月1日の予定であり、決議の時点で分割は完了していない。 2022年3月期の事業ポートフォリオ管理で、サーマル事業は収益性・市場性・デジタルサービスとの親和性で分けた4区分のうち「戦略転換」に置かれた。事業等のリスクも、2023年3月期の「価格競争激化」から翌期には「成長鈍化、収益性の低下」へ改めている。 サーマル分野の営業利益は2019年3月期の4,230百万円から2021年3月期の2,691百万円へ減少し、単独の利益の開示はこの期で終わった。売上高は2021年3月期の568億円から2026年3月期の840億円まで増加したが、招集通知は同事業の需要低迷に触れている。同じセグメントでは2024年9月にオプティカル事業の譲渡が完了し、2025年4月に産業用コンピュータ事業をPFUの同事業と統合した。源流では1936年2月に感光紙部門を独立させ、理研感光紙を設立している。 方式はリコーを分割会社とする簡易吸収分割で、リコー側の株主総会は開かない。承継会社は普通株式6,000株(予定)を発行して全てリコーへ割当交付し、資本金は設立時の50百万円から分割後に350百万円となる。代表取締役には山本健太郎氏が就任した。 承継の範囲は、RIS BUの感熱紙、熱転写リボン、ラベルレスサーマル等の開発・製造・販売などに関する資産、債務、契約で、分割契約で別段の定めを置く余地を残した。分割する部門の売上高は2026年3月期で23,192百万円と開示したが、資産と負債の額は未確定である。当期の連結業績への影響は軽微としている。

池田泉州ホールディングスとの経営統合で基本合意

相手の持株会社の傘下に入るか

【滋賀銀行・11月6日開示】2026年10月29日、滋賀銀行は取締役会で、池田泉州ホールディングス(HD)を株式交換完全親会社、自行を株式交換完全子会社とする経営統合に向けて協議・検討を進めることを基本合意すると決議した。池田泉州HDの商号を変更して統合持株会社とし、滋賀銀行は池田泉州銀行とともにその傘下の銀行子会社となる。両行は統合後も存続して商号と本店所在地を変えず、合併も予定していない。滋賀銀行の普通株式は、効力発生日に先立ち東京証券取引所で上場廃止となる予定である。 株式交換比率はデュー・ディリジェンスと両社が起用する第三者算定機関の算定を踏まえ、最終契約の締結までに決める。統合持株会社の商号・代表者・役員構成も最終契約で定める。日程は2027年4月に最終契約、同年12月に両社の臨時株主総会、2028年4月1日に効力発生を予定し、関係当局の許認可や米国証券取引委員会へのForm F-4の提出が前提となる。本稿の時点で最終契約は結ばれていない。 滋賀銀行は1933年10月に百卅三銀行と八幡銀行の対等合併で設立された。主な営業地域は滋賀県・京都府で、大阪府・兵庫県を地盤とする池田泉州HDとは2017年にATMの相互無料化を始めていた。2019年5月には地域トップ地銀の広域連携である「TSUBASAアライアンス」に参加した。2026年4月17日には池田泉州HDと資本業務提携「池田泉州・滋賀アライアンス」を締結し、相互の株式取得割合は0・5%〜1%程度を想定した。店舗は大阪府で池田泉州銀行81・滋賀銀行5、滋賀県で滋賀銀行85・池田泉州銀行0と重複が少ない。 2026年3月期の連結ROEは滋賀銀行が4・46%、池田泉州HDが7・10%だった。滋賀銀行は2026年5月に2029年3月期の連結ROE目標を「6%以上」から「8%以上」へ引き上げた。ありあけキャピタルは2025年4月に滋賀銀行株5・31%の大量保有を報告し、2026年5月の変更報告書で保有割合を6・48%とし、保有目的に資本政策・組織再編などの提案を加えた。同じ変更報告書の時点で池田泉州HD株も10・80%保有していた。 同じ10月29日、滋賀銀行はアリアケ・マスター・ファンドと、池田泉州HDの普通株式30,523,100株を約366億円で取得する株式譲渡契約を締結した。取得は10月30日の予定で、保有は2,331,500株(議決権所有割合0・84%)から32,854,600株(同11・81%)になる。この取得は金融商品取引法の「公開買付けに準ずる行為として政令で定める買集め行為」に当たる。目的は統合の実現に向けた両社の関係強化と企業価値の向上で、当期の連結業績への影響は軽微とした。 2026年3月31日時点の連結総資産は滋賀銀行が7兆6,690億円、池田泉州HDが6兆5,959億円、連結純資産は5,090億円と2,539億円である。2026年9月30日時点の時価総額は7,068億円と3,213億円で、子会社となる滋賀銀行のほうが大きい。単純合算では総資産14・2兆円、預金等残高11・8兆円、貸出金残高9・5兆円の規模となる。

区分日付企業概要関連する意思決定
注目事案11/05報道ロシア事業の暫定管理の大統領令2026年 JTIロシア事業の暫定管理
11/05関連事例ロシア事業を計画から除外して継続2022年 OKIL-HOLDINGのロシア事業継続
最新の適時開示11/06適時開示臨時報告書(吸収分割の決定)S100ZC0P2026年 サーマル事業の完全子会社化決議
11/06適時開示主要株主の異動2026年 池田泉州ホールディングスとの経営統合で基本合意
11/06適時開示主要株主の異動2026年 滋賀銀行との経営統合の基本合意
11/06適時開示株式交換の決定(S100ZCVE)2025年 神東塗料の連結子会社化と株式交換
11/06適時開示株式交換の決定・アイネット2018年 NDS等3社を子会社化
11/06適時開示財政状態等に著しい影響を与える事象2016年 福島IGCCの事業会社へ出資
11/05適時開示臨時報告書2026年 SBIグループとの資本業務提携
11/05適時開示大興製紙株式会社の吸収合併(EDINET 書類番号 S100ZBPM)2021年 大興製紙の完全子会社化
11/04適時開示主要株主の異動2026年 ゆうちょ銀行との資本業務提携
11/04適時開示株式交換2025年 吉野川電線の買収と完全子会社化
11/04適時開示特定子会社の異動2024年 2026中計でROIC導入
11/04適時開示連結子会社 Socionext Technology Pacific Asia Ltd. の剰余金の配当決議2018年 「ソリューションSoC」転換
11/02適時開示財政状態等に著しい影響を与える事象2026年 グローバルセキュリティエキスパート株式の売却
11/02適時開示親会社及び主要株主の異動2026年 光通信系K891の非公開化TOBへの賛同
11/02適時開示特定子会社の異動2025年 MWH機軸の積極M&A
11/02適時開示特定子会社の異動・連結子会社による子会社取得2020年 中国のウエーハ会社の持分法適用会社化
ファンド案件詳細10/30カナメによる提案
10/23シルチェスターによる提案
10/06エフィッシモによる提案