The社史 — 上場企業の歴史を振り返る

日本の上場企業を中心とした企業史をまとめた個人サイト。創業から現在に至る意思決定の軌跡を、財務データや業績推移とともに記録しています。

The社史

令和8年(2026年)10月3日 土曜日開示速報第二五七一号 (1)

Metro Supply Chain Groupを買収

2017202126,197億円
売上高の推移

【NIPPON EXPRESSホールディングス・10月2日開示】2026年4月、NIPPON EXPRESSホールディングス(NXHD)は、カナダを本拠に北米などで物流事業を営むMetro Supply Chain Groupを買収すると発表した。2023年のcargo-partner社に続く大型の海外買収である。NXHDは買収用の特別目的会社に18億カナダドルを増資し、2026年10月2日提出の臨時報告書の時点で、Metro Supply Chain Groupの議決権の100%を間接所有している。取得価額や取得日は、まだ同社の開示資料からは確認できない。 2024年1月に堀切智氏が代表取締役社長へ就任した。前年に取得したcargo-partner社を抱える欧州(ロジスティクス)は、2025年12月期に収益性の低下と割引率の上昇を理由にのれんの減損損失59,211百万円を計上し、連結の親会社の所有者に帰属する当期利益は2,693百万円まで落ち込んでいた。 買収の対象はモントリオールに本社を置き、3PL(サードパーティ・ロジスティクス)事業を営むMetro Supply Chain Group。NXHDはトロントに特別目的会社1001681010 Ontario Inc.を設け、その傘下の18268738 Canada Inc.を介してMetro社を保有する形をとった。NXグループの米州(ロジスティクス)セグメントは、外部顧客への売上高が2025年12月期で1,214億円、セグメント利益が57億円にとどまり、5,138億円まで膨らんだ欧州と比べて手薄な地域であった。 社債及び借入金は2022年12月期末の2,649億円から2025年12月期末には3,773億円へ増えている。欧州で積んだのれんを大きく取り崩した直後に、北米でふたたび大型ののれんを抱える判断となった。2026年11月1日には中間の特別目的会社とMetro社を現地法で合併させる予定で、取得の条件は2026年12月期の有価証券報告書で開示される見込みである。 欧州で取り崩した直後の、北米への振り向け この判断の位置づけは、直前の期の数字を置いて見ると分かりやすい。2025年12月期、NXHDは欧州(ロジスティクス)に配分したのれんについて、収益性の低下と市場金利の上昇に伴う割引率の引き上げを理由に59,211百万円の減損損失を計上した。2024年1月に取得したcargo-partner社のために積んだのれん77,347百万円の大半が、2期を経ずに費用へ振り替わったことになる。その結果、連結の親会社の所有者に帰属する当期利益は2,693百万円と、前期の31,733百万円から大きく落ち込んだ。一方で米州(ロジスティクス)の外部顧客への売上高は1,214億円、セグメント利益は57億円と、欧州の5,138億円・48億円と比べて規模が小さく、地域構成のなかで手薄なまま残っていた。 取得そのものは実行の段階に進んでいる。NXHDは2026年9月30日(カナダ時間)、買収用に設けた特別目的会社1001681010 Ontario Inc.に18億カナダドルを増資し、その資本金はNXHDの資本金の10%以上に達した。同社の完全子会社である18268738 Canada Inc.を介して、Metro Supply Chain Groupの議決権の100%を間接所有しており、2026年11月1日には両社を現地法で合併させる予定である。ただし取得価額、のれんの金額、取得日といった条件表に必要な項目は、2026年10月2日の臨時報告書にも載っておらず、2026年12月期の有価証券報告書を待つことになる。欧州で一度のれんを取り崩した会社が、社債及び借入金を3,773億円まで積み上げた状態から北米へ資本を振り向ける判断をどう評価するかは、その開示が出てからの話である。 単独株式移転によりNIPPON EXPRESSホールディングスを設立、持株会社体制へ移行 オーストリアのcargo-partner社の全株式を取得する株式譲渡契約を締結 cargo-partner社59社を取得。同月、堀切智氏が代表取締役社長に就任 ドイツのSH HoldCo(Simon Hegele社)の全株式を取得し子会社化 欧州(ロジスティクス)ののれんに減損損失59,211百万円を計上 カナダのMetro Supply Chain Groupの買収を発表 買収用の特別目的会社1001681010 Ontario Inc.に18億カナダドルを増資し、特定子会社とする 中間の特別目的会社18268738 Canada Inc.とMetro社を現地法で合併する予定 Metro Supply Chain Groupの買収は2026年4月の発表で、直近の第4期(2025年12月期)有価証券報告書は2026年3月25日提出のため記載がない。同報告書の【39.後発事象】は「該当事項はありません」、【5 重要な契約等】もSimon Hegele社の取得とシンジケートローン契約のみである。2026年10月2日の臨時報告書(特定子会社の異動)は特別目的会社への18億カナダドルの増資と議決権の100%の間接所有を示すが、取得価額・取得日・のれんは載せていない。条件表は2026年12月期の有価証券報告書を待つ 日本通運の連結。日本基準のセグメント利益は営業利益ベース 日本通運としての最後の通期。2022年1月に持株会社体制へ移行している NIPPON EXPRESSホールディングスの連結。IFRSの事業利益に変わる 同じ期の欧州は買収により売上が491,505、利益が11,247 買収を発表した時点で最後に開示されていた通期 買収を発表し、Metro社を完全子会社とした期。第5期は未到来 日本通運 有価証券報告書 第115期・第116期(セグメント情報) NIPPON EXPRESSホールディングス 有価証券報告書 第1期〜第4期(4.セグメント情報) 日本通運の連結。日本基準のため科目区

欧州統括会社Eisai Europeの設立

欧州での自社販売体制の構築と地域統括

【エーザイ・10月2日開示】2004年10月、エーザイは英国に欧州統括・持株会社Eisai Europe Limitedを設立した。狙いは拡大したEUの新市場への進出を速めることにあり、欧州全体のマネジメント体制を強め、マーケティング戦略の立案で意思決定を速める。持株会社の機能を併せ持たせたことで、欧州内の資金を効率よく回せるようにした。同社は現在も議決権100%の子会社で、資本金は184,138千英ポンド、事業は欧州統括・持株会社と医薬品の販売である。 欧州への足がかりは1988年の英国子会社に始まり、1989年にドイツ、1996年にフランスへ販売子会社を置いた。1997年にアリセプト、1998年にパリエットを欧州で発売し、2001年3月期には英独仏の3販売会社の合計で初めて黒字を計上する。欧州の営業利益は前期の△998百万円から623百万円へ転じ、3か国に独自の営業基盤を築く初期の目標を果たした。2005年3月期の欧州の売上高は383億円で、うちアリセプトが272億円を占めていた。 統括会社の設立と前後して、2004年3月にエラン社から北米・欧州のゾネグランの製造・開発・販売権を取得し、2005年にはイタリア・スイス・スウェーデンに販売子会社を、オーストリアとアイルランドに拠点を置いた。ゾネグランは2005年6月に欧州で発売し、拡大EUへ進む中核製品に据えた。 2006年1月には、ロンドン北部ハットフィールドに研究・臨床開発・生産・販売・欧州統括を集める戦略拠点の用地について覚書を結ぶ。総投資額は土地代を含め約150億円を見込み、拠点は2009年6月に本格稼働した。 欧州の稼ぎはEMEA医薬品事業として開示され、2026年3月期の売上収益は815億円、セグメント利益は構造改革の影響で前期比15.4%減の304億円であった。品目ではレンビマ/Kisplyxが492億円、フィコンパが173億円に達し、レケンビも各国で発売が進む。 2026年10月2日、エーザイはEisai Europe Ltd.から剰余金の配当150百万ポンドを受け取ることを決めた。2027年3月期の個別決算で受取配当金約312億円を営業外収益に計上し、連結業績への影響はない。 この決断は、販売子会社を一つ増やした話ではなく、欧州を国の寄せ集めから一つの事業単位へ置き直した判断だったと思われる。英独仏の3社が黒字に届いたのが2001年3月期で、統括会社はその3年半後に置かれた。持株会社の機能を持たせたのは、各国の利益を英国に集め、次の国への進出や拠点の建設に回すためだろう。ハットフィールドの約150億円の拠点も、この器があって初めて欧州の資金で組めたとみられる。 もっとも、器が実を結ぶまでには時間がかかった。2010年3月期の欧州の売上高は507億円で、連結の6%ほどにとどまる。稼ぎ手が育ったのはレンビマやフィコンパが出そろった後で、2026年3月期のセグメント利益は304億円に達した。同じ年に受け取る配当312億円は、ほぼ1年分の利益に当たる。20年余り前に置いた持株会社が、欧州で溜めた資金を本社へ戻す経路として働き始めたことになる。 英独仏の欧州3販売会社の合計で初めて黒字を計上 エラン社から北米・欧州のゾネグランの製造・開発・販売権を取得 英国に欧州統括・持株会社Eisai Europe Ltd.を設立 ゾネグランを欧州で発売。イタリア・スイス・スウェーデンに販売子会社を設立(2005年) ハットフィールドの欧州戦略拠点の用地で覚書を締結。総投資額は約150億円 欧州ナレッジセンター(ハットフィールド)が本格稼働 EMEA医薬品事業の売上収益815億円・セグメント利益304億円 Eisai Europe Ltd.から剰余金の配当150百万ポンド(約312億円)の受領を決定 外部顧客に対する売上高。欧州の営業損失は998百万円 英独仏の3販売会社の合計で初の黒字。営業利益623百万円 エラン社から北米・欧州のゾネグランの権利を取得 2004年10月にEisai Europe Ltd.を設立。アリセプト272億円 エーザイ アニュアルレポート2011(連結財務ハイライト) エーザイ アニュアルレポート2001(所在地別セグメント情報) EMEA医薬品事業の売上収益とセグメント利益 翌期の有報の前期欄では利益30,137に組替 レンビマ/Kisplyx 309億円、ハラヴェン136億円 翌期の有報の前期欄では利益35,611に組替 構造改革の影響で減益。レンビマ/Kisplyx 492億円 EMEA医薬品事業の売上収益とセグメント利益率 エーザイ 有価証券報告書 第104期〜第114期【セグメント情報】(各期の当期欄・IFRS)

クラサスケミカルのスピンオフ

半導体・電子材料への集中と、石油化学事業の持続的な運営

【レゾナックHD・10月1日開示】2026年8月25日、レゾナック・ホールディングスの取締役会は、石油化学事業を営む完全子会社クラサスケミカルのパーシャル・スピンオフを10月1日付で実行すると決議した。同社株式の80%超を、レゾナック・ホールディングス株式1株につき1株の割合で株主へ現物配当し、残りの20%未満だけを持ち続ける。上場前の公募・売出しを行わないダイレクトリスティングで東証スタンダード市場へ上場させたうえで、10月1日の効力発生をもって連結子会社からも持分法適用からも外した。 石油化学は2023年12月期の売上高3,163億円・営業利益87億円(概算)で、連結売上高の約20%を占める「安定収益事業」だった。一方でグループは、2020年12月の長期ビジョン以来、半導体・電子材料へ経営資源を集めてきた。大分コンビナートのグリーン・トランスフォーメーションに要る投資を、半導体材料と同じ資本の配分のなかで賄い続けるのは難しかったとみられる。 売却でなくこの形を選んだ背景を、2024年2月の決算説明会の質疑では『従業員の幸せと社会的責任と株主様の利益のバランスをどうやって取るのかを葛藤した中で、当社が20%弱の株式を保有し、研究開発分野を含めたレゾナックのリソースを使えるスキームにすることが重要だと考えたことが背景にある』と答えている。 従業員の幸せと社会的責任と株主様の利益のバランスをどうやって取るのかを葛藤した中で、当社が20%弱の株式を保有し、研究開発分野を含めたレゾナックのリソースを使えるスキームにすることが重要だと考えたことが背景にある レゾナック・ホールディングス 2023年12月期 決算説明会 質疑応答(2024年2月14日) 2024年2月14日に検討開始を公表し、8月1日に分割準備会社クラサスケミカルを設立した。2025年1月1日、レゾナック・ホールディングスとレゾナックから石油化学事業を吸収分割で移し、承継する資産は1,830億円、負債は1,130億円と見込んだ。 2026年3月の定時株主総会は、取締役会決議で現物配当できるよう定款を改める議案を賛成率97.83%で可決した。6月12日に産業競争力強化法の事業再編計画の認定を受け、税制適格の株式分配として行う。配当財産の帳簿価額は2026年7月末の概算で37,789百万円(1株199.02円)で、利益剰余金から減額する。 クラサスケミカルセグメントの売上収益は2024年12月期3,297億円、2025年12月期3,003億円で、連結売上収益の2割強を占めていた。2026年度第3四半期から非継続事業として区分し、効力発生時に支配の喪失に伴う会計処理を行う。持ち続ける株式は公正価値で測り直し、帳簿価額との差額を非継続事業の損益に計上するが、連結業績への影響額は10月1日時点でも精査中である。 兼任役員は置かず、取引も原則として解消する。そのうえでカーボンニュートラル施策や共同研究開発では、一定のリソースを分け合う関係を残した。 連結売上の2割を占める事業を手放すなら、ふつうは売却して代金を半導体材料へ回す。レゾナック・ホールディングスはそうせず、石油化学を株主へ配り、代金を1円も受け取らなかった。この判断の芯は、資本の配分から石油化学を外すことにあり、現金化は目的に入っていなかったと思われる。大分コンビナートのグリーン・トランスフォーメーションに要る投資を、半導体材料と取り合わずに済む独立した上場会社へ移し、それでも20%弱の持分と研究開発の共有で縁を残す。日立化成の買収から続いた半導体・電子材料への寄せは、この一手で売上の構成としても完結した。 もっとも、残したものは軽くない。クラサスケミカルのコア営業利益は2025年12月期に47億円まで細り、EBITDAマージンは3.5%にとどまる。独り立ちした同社が、DOE5%の配当を続けながら脱炭素の投資を賄えるかは、20%弱を持ち続ける側にも跳ね返る。支配の喪失に伴う損益の額は効力発生の日にもまだ確定しておらず、公正価値の測り直しで利益が出るのか損失が出るのかも示されていない。切り離しの成否が数字で出るのは2026年12月期の決算からになる。 大分石油化学コンビナートが営業運転を開始 統合新会社の長期ビジョンを発表し、半導体・電子材料への経営資源の集中を掲げる 持株会社体制へ移行し、レゾナック・ホールディングスへ商号を変更 石油化学事業のパーシャル・スピンオフの検討開始を公表。2〜3年後の実行を念頭に置く 分割準備会社としてクラサスケミカルを設立 吸収分割でクラサスケミカルが石油化学事業を承継し、独立セグメントとして開示を始める 定時株主総会が現物配当のための定款変更を賛成率97.83%で可決 産業競争力強化法に基づく事業再編計画の認定を受ける(12日) 現物配当と子会社の異動に関する方針を決定し、計画を公表(6日) 取締役会がスピンオフの10月1日付での実行を決議(25日) 東証がクラサスケミカル株式のスタンダード市場への上場を承認(7日) 現物配当の効力が発生し、クラサスケミカルが連結から外れる(1日) 石油化学はケミカルセグメントの内訳。決算説明資料の値 4年に一度の大型定修を実施したが、ナフサ高による価格上昇で増収 日本基準最後の期。IFRSへ組み替えた連結売上収益は12,954 IFRS初年度。セグメント新設後の区分へ遡って組み替えた値 クラサスケミカルが事業を始めた期。ナフサ安で販売価格が下落 10月1日に現物配当の効力が発生。第3四半期から非継続事業 レゾナック・ホールディングス 2022年・2023年 決算説明資料(セグメント別:ケミカル内訳の石油化学) レゾナック・ホールディングス 有価証券報告書 第115期〜第117期(主要な経営指標等の推移・セグメント情報) セグメント新設前。石油化学はケミカルセグメントに含まれる セグメント新設前。石油化学はケミカルセグメントに含まれる セグメント新設前。検討開始時の概算

太平洋セメントへ販売譲渡

セメント事業の継続と撤退の時期

【トクヤマ・10月1日開示】2026年3月25日、トクヤマがセメント・固化材の国内販売事業と連結子会社2社の株式を新設の完全子会社へ吸収分割で移し、その全株式を太平洋セメントへ370億円で譲渡すると決めた経営判断である。承継が完了する2028年度を目途に、セメントおよび固化材の製造を停止する検討にも着手した。 セメントは1938年、ソーダ灰の製造工程で出るマッドと自家発電の石炭灰を再資源化する目的で始まった事業であった。国内需要は1990年度の約8,629万トンをピークに減り続け、それでも他製品の廃棄物を原料に変えられる利点から、収益がマイナスでも閉じない事業として続いてきた。 2023年4月にキルン1系列停止の検討を開始し、2024年4月に3系列のうち1系列を止めて2系列体制へ移った。2026年3月には国内販売事業と子会社2社を切り出して太平洋セメントへ譲渡することを決め、2026年10月1日に新会社株式の譲渡を実行した。以後は南陽工場で製造したセメントをOEM価格で供給する体制へ移り、2027年3月期第3四半期に連結で譲渡益約305億円と減損損失約120億円の計上を見込む。 セメント生産に伴う年間約280万トンのCO2が2028年度に消える見込みで、2030年度のGHG削減目標は前提を超える水準へ動く。一方でキルンは当面有姿除却のまま残り、跡地の活用は未定であった。化成品・電子先端材料・ライフサイエンスへ資源を配分する転換の到達点にあたる。 損益だけで見れば、セメントはとうに沈んでいた事業であった。それでも閉じない理由として2022年に挙げられたのが、他製品の廃棄物を原料に変えられるという徳山製造所の内部循環であり、収益のマイナスを上回る便益がそこにあるとされていた。撤退の判断は、その便益が消える一点を先回りして見つけたところから出ている。キルンが1本になれば廃棄物処理の役割は果たせず、そのときには買い手も残っていない——井上智弘氏が語った危機意識は、事業の寿命ではなく交渉相手の有無を時間軸に置いた見方であったとみられる。 ただ、この整理で片づかないものも残っている。キルンは当面有姿除却のまま置かれ、転用の具体案はこれからで、跡地の活用は未定であった。社外から受け入れてきた廃棄物は品目ごとに排出元と協議するとされ、行き先がすべて決まったわけではない。年間約280万トンのCO2が消えるという数字の明快さに比べ、設備と地域に残る部分の輪郭はまだ薄い。第2の祖業から撤退した徳山製造所に何を据えるのかは、本稿の時点では示されていない。 徳山工場に1号キルンを設置し、湿式法の普通ポルトランドセメント製造を開始 徳山製造所内にセメント専用の南陽工場が完成 国内セメント需要が約8,629万トンでピークを打ち、以後減少に転じる 決算電話カンファレンスで横田浩社長が「当面セメント事業を閉じるといったことは考えていない」と説明 セメントキルン1系列停止の検討開始を公表(キルン3系列・クリンカ製造能力年454万トン) キルン2系列の生産体制が最適と判断し、1系列を停止 セメント・固化材の国内販売事業と子会社2社を太平洋セメントへ370億円で譲渡すると決定、2028年度を目途に製造停止を検討 新会社株式の太平洋セメントへの譲渡を実行。2027年3月期第3四半期に連結で譲渡益約305億円・減損損失約120億円を見込む 翌期の区分変更に伴う組替後。旧区分では売上高90,236百万円 収益認識会計基準の適用でセメントの売上高が43,642百万円減った 4月にキルン1系列停止の検討開始を公表。3系列で年454万トン 4月にキルン1系列を停止。セグメントの減損損失は182百万円 3月に譲渡を決議。国内販売価格の改定と製造コスト改善で増収増益 10月1日に株式譲渡を実行。有価証券報告書は未到来 2028年度を目途とする製造停止の検討はこの期までを見込む トクヤマ 有価証券報告書 第157期〜第162期(セグメント情報) 減損397のうちセメントセグメントは182百万円。キルン1系列を停止した期 減損1,429にセメントはない。電力受給契約の引当金繰入3,630が損失の主因 第3四半期に譲渡益約305億円・減損損失約120億円の計上を見込む(臨時報告書) トクヤマ 有価証券報告書 第157期〜第162期(連結損益計算書、【連結損益計算書関係】減損損失、報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報)

新光商事をTOBで買収

簿価を下回る価格での同業商社の取り込み

【加賀電子・10月1日開示】2026年5月15日、加賀電子が取締役会で新光商事株式の公開買付けを決議した経営判断。目的は完全子会社化で、買付価格は1株1,580円とした。期間を3度延ばし、買付予定数の下限を引き下げたうえで8月3日に締め切り、応募20,938,007株を全部買い付けた。 8月10日に議決権72.45%を取得して連結子会社とした。これに伴い2027年3月期の第2・第3四半期に負ののれん発生益60億円を特別利益として計上する見込みで、金額は第1四半期末時点の暫定値である。 『中期経営計画2027』(2024年11月公表)はM&Aを成長ドライバーに据え、2028年度の売上高1兆円を志向する。2025年7月には協栄産業をTOBで連結子会社化し、取得原価11,706百万円に対して負ののれん発生益7,594百万円を計上していた。 新光商事の株式は2024年3月頃から純投資として市場で買い進め、515,000株(1.74%)を持っていた。2025年9月の面談で資本提携への関心を確かめ合い、10月には公開買付けによる完全子会社化が望ましいとの認識に至った。 価格は2026年4月7日の初回1,420円から1,490円、1,510円、1,530円、1,550円と刻み、5月11日の1,580円を提示できる最大限の価格とした。1,580円は新光商事の1株当たり連結純資産1,778円を約11.14%下回る。新光商事は賛同したが、十分なプレミアムが付いていないとして応募の判断を株主に委ねた。 狙いは同社のLSIデザインセンターと300人超のエンジニアを共有して設計・開発力を強め、加賀電子のEMS生産インフラで同社のアセンブリ事業の付加価値を高めることにある。 公表後、新光商事の株価は1,580円を上回って推移した。加賀電子は7月8日と7月29日に価格を変えないと表明し、29日には上限かつ最終の価格だとして引き上げを否定した。代わりに7月17日、下限を19,226,700株(所有割合64.93%)から15,988,500株(53.99%)へ下げた。 結果は72.45%で3分の2を超え、株式併合による完全子会社化と上場廃止へ進む。第2四半期以降の業績影響は売上高1,000億円前後、営業利益15億円前後と見積もっている。 この買収の芯は、成長への上乗せ価格ではなく、純資産を割り引いて買うことにあったと思われる。1株1,580円は新光商事の1株当たり純資産1,778円を下回り、その差が負ののれん発生益60億円として加賀電子の利益に立つ。富士通エレクトロニクスの2,164百万円、エクセルの7,963百万円、協栄産業の7,594百万円と、同業商社を簿価割れで取り込むたびに同じ利益が出てきた。市場が低く値付けする電子部品商社を、自社の規模と利益に置き換える型が、ここで出来上がっていたとみられる。 もっとも、その値付けは新光商事の株主にすんなりとは受け入れられていない。株価は公開買付価格を上回って推移し、期間は3度延び、加賀電子は価格ではなく下限を下げることで成立させた。取得した72.45%は完全子会社化に足りるが、残る株主は値札に納得したわけではない。しかも負ののれんは一度きりの利益で、取り込んだ事業の営業利益率は1.5%前後と見積もられている。安く買えたことより、薄い利幅を引き上げられるかが、この買収の成否を決めるのだろう。 富士通エレクトロニクスを子会社化、負ののれん発生益2,164百万円 エクセルの株式を取得、負ののれん発生益7,963百万円 新光商事株式を純投資として市場で取得し始める 『中期経営計画2027』を公表、M&Aを成長ドライバーに据える 協栄産業をTOBで連結子会社化、負ののれん発生益7,594百万円 新光商事と面談し、資本面を含む提携の検討に入る 取締役会で新光商事株式の公開買付けを決議(1株1,580円) 価格を据え置き、買付予定数の下限を53.99%相当へ引き下げ 公開買付けが成立し、議決権72.45%を取得して連結子会社化 負ののれん発生益60億円の計上見込みが固まる(暫定値) 加賀FEIがCandera GmbHの株式を取得した際に発生 協栄産業分7,594と蘇州加賀智能設備の連結によるもの 新光商事分60億円を第2・第3四半期に見込む(暫定)。第59期は未到来 加賀電子 有価証券報告書 第55期〜第58期(連結損益計算書、報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報、主要な経営指標等の推移) 加賀電子 臨時報告書(2026年10月1日) 協栄産業の連結と期末の大口スポット販売で総資産が膨らむ 新光商事(純資産53,541・総資産80,796)を8月から連結 加賀電子 有価証券報告書 第58期(2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】 加賀電子 新光商事株式会社の普通株式に対する公開買付けの開始に関するお知らせ(2026年5月15日、対象者の概要)

Oceano社向け債権と株式の譲渡

回収が見通せない海外取引先向けの債権と保証の整理

【横浜冷凍・9月30日開示】2026年9月24日、横浜冷凍が取締役会で、海外取引先Oceano Corporation S.A.とそのグループ会社2社に対する売掛債権等と、同社の優先株式の譲渡を決議した経営判断。債権譲渡契約書と株式譲渡契約書は同日付で結ばれ、同月末に実行された。譲渡価格は守秘義務により非開示で、債務保証責任(約45億円)は主債務の消滅に伴って同時に消えた。 2025年1月6日に提出した訂正報告書で、2023年9月期に遡り投資有価証券評価損26億400万円、債務保証損失引当金繰入額44億8,700万円、貸倒引当金繰入額64億2,100万円を特別損失に計上していた。特別損失は合計135億1,400万円に達し、連結の親会社株主に帰属する当期純損益は107億3,100万円の損失となった。役員の業績連動賞与は不支給となり、2025年1月にはリスク管理部が設けられた。 譲渡の理由として、交渉等で一部の債権を回収してきたものの債務者の資力や事業環境から回収の不確実性が残ること、今後の回収対応の負担と財務面を考慮したことが挙げられた。対象は売掛債権等と優先株式で、所有権が移転する真正譲渡の形をとる。譲渡先は個人1名で、横浜冷凍との取引関係や関連当事者に当たる事実はない。 譲渡に伴い、債務保証損失引当金戻入益約45億円と投資有価証券売却益約6億円が生じ、貸倒損失約25億円が発生する見込み。2025年9月期末の引当残高は貸倒引当金65億9,500万円、債務保証損失引当金44億6,600万円で、対応する長期貸付金31億2,600万円と長期未収入金66億900万円が帳簿に残っていた。この取引で2026年9月期の損益と偶発債務の双方が整理される。 2025年1月の訂正で積んだ引当は、回収の見込みを下げたという帳簿上の処理であって、負債そのものを消すものではなかった。約45億円の債務保証は、主債務者が倒れれば現金で払う偶発債務のまま残る。債権を追い続けるのではなく、債権と株式を手放す代わりに保証責任を主債務の消滅と一緒に外す道を選んだのは、損の大きさより先の読めなさを嫌ったからだと思われる。 もっとも、譲渡価格は守秘義務で開示されておらず、いくら回収できたのかはここから読み取れない。見込まれる損益も、保証引当の戻入益約45億円と株式売却益約6億円に対して貸倒損失が約25億円で、戻入益の大半は2023年9月期に先に費用へ立てた分が戻るものである。損を新たに切ったというより、先に立てた損を片づけ終えた取引とみるのが近いのではないか。 特別損失の計上に伴う数値変更見込みを公表 取締役会で2023年9月期に遡る決算訂正を決議 2025年9月期の有価証券報告書で引当残高を開示 取締役会でOceano Corporation S.A.向け債権と優先株式の譲渡を決議し、同月末に実行 訂正で特別損失を計上した期。引当は2023年9月期に遡って計上 9月に債権と株式を譲渡。第79期は未到来 横浜冷凍 有価証券報告書 第77期〜第78期(重要な会計上の見積り「特定の海外取引先宛債権等の評価」) CSV のみ。有報の逐語で照合できていない CSV のみ。有報の逐語で照合できていない 訂正後の値。海外取引先関連の特別損失は13,512 戻入益約45億円と貸倒損失約25億円が見込まれる。決算は未到来 横浜冷凍 有価証券報告書 第77期〜第78期(連結損益計算書)

三菱化工機との経営統合

水環境事業と産業事業の規模・収益力と、水処理を含むエンジニアリングの競争力

【月島ホールディングス・9月30日開示】2026年9月30日、月島ホールディングスは取締役会で三菱化工機との経営統合を決議し、同日に経営統合契約と株式交換契約を結んだ。三菱化工機を完全親会社、月島を完全子会社とする株式交換で、月島株1株に三菱化工機株0.88株を割り当てる。効力発生は2027年4月1日の予定で、月島は同年3月30日に上場廃止となる見込み。三菱化工機は三菱月島化工機ホールディングスに商号を変える。 月島は水環境事業と産業事業を持ち、2023年4月の持株会社体制への移行と同年10月のJFEエンジニアリングの国内水エンジニアリング事業の統合で、水環境の厚みを増してきた。残る課題は産業事業の規模と収益力とする。 三菱化工機は1935年に、三菱グループ各社と月島機械の出資で設立された化学機械メーカー。船舶用油清浄機などの単体機械で高い収益性を持つ一方、水処理を含むエンジニアリング事業は競争が厳しく、ウォーターPPPなど官民連携への対応が課題となっている。 株式交換は両社が2026年12月4日開催予定の臨時株主総会で承認を受けて行う。これに先立ち三菱化工機は、同日付の吸収分割で一部の機能を除く全事業を同日設立のMKKネクストへ移して持株会社になり、株式交換後にMKKネクストが三菱化工機の商号を引き継ぐ。 月島の株主に交付するのは三菱化工機株34,811,735株(予定)。月島側の算定機関である野村證券のレンジは、市場株価平均法0.79〜0.83、類似会社比較法0.66〜0.80、DCF法0.84〜1.28で、0.88は市場株価平均法の上限を上回る。 統合後の目標は、2036年3月期にグループ売上高3,500億円、営業利益300億円以上。うちシナジー効果を売上高500億円、営業利益80億円と見込む。 2026年3月期の連結売上高は月島1,490億円、三菱化工機842億円で、営業利益は月島98億円、三菱化工機92億円とほぼ並ぶ。売上で上回る月島が法形式では完全子会社側に立つ対等統合で、株式交換は両社の株主総会と公正取引委員会に関する手続の通過を効力発生の条件とする。 この統合の本質は、買収でも救済でもなく、2つの中堅機械メーカーが互いの欠けた部分を持ち寄る再編だったとみられる。月島は下水汚泥処理と官民連携に強く、産業事業の規模が課題で、三菱化工機は船舶用油清浄機で稼ぎながら水処理エンジニアリングの競争力に課題を抱える。2年で売上高が1.8倍になった三菱化工機に対し、月島は2023年のJFEエンジニアリングとの統合に続き、自社単独での規模拡大より、別の会社と統合する道を選び続けているように見える。 もっとも、月島が売上で上回りながら完全子会社の側に立つ形は、上場を維持する三菱化工機の、上場会社としての立場を借りる選択でもあるとみられ、月島の株主は上場廃止と引き換えに新会社の株式を受け取る。2036年3月期のシナジー目標は売上高500億円と大きいが、単体機器の製造拠点やアフターサービス網の最適化を伴う以上、対等の精神をどこまで運営に映せるかが、持株会社を置いた後の問いになるのだろう。 三菱化工機が化学機械専門メーカーとして設立 持株会社体制へ移行し、月島ホールディングスに商号変更 JFEエンジニアリングの国内水エンジニアリング事業を統合 水処理の運転管理を担う東日本エンジニアリングを子会社化 取締役会で三菱化工機との経営統合契約と株式交換契約を決議・締結 株式交換の効力発生、三菱月島化工機ホールディングスが発足(予定) 特別利益5,732を計上し、純利益が営業利益を上回った JFEエンジの水事業統合で増収。月島機械の減損1,646で純利益は減少 物流施設の売却益12,032を含む特別利益15,619で純利益は2.5倍 株式交換を決議した期。中計最終年度で売上1,520億円・営業利益110億円が目標。3月30日に上場廃止の予定 月島ホールディングス 有価証券報告書 第160〜164期(2022年3月期〜2026年3月期)【主要な経営指標等の推移】【業績等の概要】【セグメント情報】 月島ホールディングスの報告セグメント別の推移 2024年3月期に廃棄物処理事業を水環境から産業へ移す前の区分で、同列に並べられない 変更後の区分へ組み替えて再表示された値。売上高は外部顧客への売上高 JFEエンジの水事業を統合。産業は月島機械の減損1,646を計上 月島ホールディングス 有価証券報告書 第162期(2024年3月期)・第164期(2026年3月期)【セグメント情報】 月島ホールディングス 臨時報告書(2026年9月30日提出)「本株式交換の相手会社についての事項」

茂原工場の新光電気工業への譲渡

生産を終えた国内最大の液晶工場の換金と、債務超過の解消

【ジャパンディスプレイ・9月30日開示】2026年9月30日、ジャパンディスプレイは取締役会で茂原工場(千葉県茂原市)の土地・建物・付帯設備等を新光電気工業へ譲渡することを決議し、同日に最終契約を結んだ。譲渡価額は譲渡先の意向で非開示、帳簿価額は物件引渡時点で約266億円と見込む。引渡日は2027年3月31日の予定で、2027年3月期に連結で約514億円、個別で約549億円の固定資産売却益を特別利益に計上する見込みである。 茂原工場は2013年6月に第6世代LTPS液晶ラインの量産を始めた国内の主力拠点である。2025年2月に稼働率の低下を理由に生産終了を決議し、同年11月に液晶パネルの生産を止めて、国内生産を石川工場へ集約した。 2026年3月31日現在の連結は7,412百万円の債務超過で、2027年3月末までに解消できなければ上場廃止となる。茂原工場資産グループの固定資産27,933百万円は連結総資産の22.5%を占め、売却先を探す作業は財務の立て直しと直結していた。 譲渡の理由は経営資源の効率的活用と財務基盤の強化とされ、譲渡先は長野県のパッケージ部材メーカーである新光電気工業で、資本・人的・取引関係はない。生産終了後の工場では製品の開発・設計の活動が続いていたが、土地と建物ごと手放す。 これに先立ち、2025年5月には茂原の生産設備について設備売買契約を結び、2026年3月には鳥取工場の譲渡契約も締結している。有報は売却先を複数あたって協議中としていたが、その相手は明らかにしていない。 売却益の見込み約514億円は、2026年3月期末の自己資本マイナス74億円を上回る規模で、債務超過の解消に直結する。工場の維持費と引当金の負担も売却で止まる。 ただし益は譲渡価額から帳簿価額と費用の見積りを引いた概算で未確定であり、引渡しは2027年3月31日の予定で、上場維持基準の期限である同年3月末と同じ日になる。売上高は2026年3月期に1,323億円まで縮み、売却後は石川工場を軸に黒字化を目指すことになる。 この譲渡は、撤退の最後の手続きであると同時に、財務の帳尻を合わせる最後の一手でもあったと思われる。茂原の生産終了を決めた2025年2月の時点で、工場は稼働率の低下を理由に止められた。しかし止めた工場は、売れなければ引当金と維持費を生み続ける負債に変わる。決議から約1年7か月を経て売却先が決まり、約514億円の益が見込めるのは、債務超過と上場維持基準の期限が迫るなかで、手放せる資産が茂原しか残っていなかったからであろう。 もっとも、益は概算で、引渡しは2027年3月31日の予定という点は残る。上場維持の期限と同じ日に引渡しを置く構えは、遅れれば猶予がないことを意味する。しかも工場を売れば、失うのは固定費だけでなく、液晶を国内で量産する力でもある。石川工場とセンサー・先端半導体パッケージングの新事業で売上を戻せるかは、この売却益では買えない部分であり、問われるのはこれからだろう。 千葉県茂原市に日立ディスプレイプロダクツを設立 茂原工場で第6世代LTPS液晶ラインの量産を開始 稼働率の低下を受けて茂原工場での生産終了を決議し、石川工場へ集約する方針を示す 鳥取・茂原の生産終了で事業構造改善費用14,288百万円を計上し、茂原の生産設備の売買契約を結ぶ 鳥取工場の譲渡契約を締結。2026年3月31日現在で債務超過に陥る 茂原工場の新光電気工業への譲渡を決議し、最終契約を締結 物件の引渡しを予定(売却益約514億円を特別利益に計上する見込み) 減損損失21,563と事業構造改善費用16,693を計上。茂原の生産終了を決議 関係会社株式売却益18,533を計上。事業構造改善費用は9,423 引渡しは3月31日予定。売却益は連結で約514億円の見込み ジャパンディスプレイ 有価証券報告書 第20〜24期(連結損益計算書) 債務超過。茂原の固定資産は27,933で総資産の22.5% 2027年3月末までに債務超過を解消できないと上場廃止 ジャパンディスプレイ 有価証券報告書 第20〜24期(連結貸借対照表、主要な経営指標等の推移) 茂原工場の従業員は1,323名(2025年1月31日) 茂原の生産終了と希望退職者の募集が重なった ジャパンディスプレイ 有価証券報告書 第20〜24期(従業員の状況)

米Cross Vascular買収

国内中心の事業から自社製品のグローバル展開への転換

【日本ライフライン・9月30日開示】日本ライフラインは2026年9月29日の取締役会で、2026年8月に米国で設立した完全子会社JLL Med USA Inc.を通じ、心房中隔穿刺用高周波システムの開発会社Cross Vascular, Inc.を取得することを決議した。取得する議決権は8,900,000個で、割合は100.00%となる。 株式取得の対価は4,734千米ドル(1米ドル157円換算で約743百万円)で、アドバイザリー費用等の約234百万円を加えた概算額は約977百万円である。 1981年2月に心臓心拍補助器の輸入販売を目的に設立され、2001年4月に初の自社製品としてPTCAガイドワイヤーを発売した。2025年3月期の売上高は566億円、営業利益は123億円で、いずれも過去最高となった。国内市場のニーズに合わせた開発に特化してきた会社である。 2025年5月に中期経営計画の数値目標を上方修正し、新たな重点施策に「グローバル売上高の拡大とOEM製造の推進」を加えた。中期経営計画の期間内は中東・アジアの十数か国へ販路を広げ、米国は長期の輸出先に置いていた。 Cross Vascularは米国カリフォルニア州ソラナビーチの開発会社で、RFニードルとRFジェネレーターからなる心房中隔穿刺用高周波システムを開発している。米国食品医薬品局(FDA)の510(k)認証を取得済みで、米国特許商標庁が発行した4件の特許を含む知的財産を持つ。 売上高は2023年12月期から2025年12月期まで計上がなく、営業損失は585千米ドル、77千米ドル、2千米ドルと縮んだ。2025年12月期末の純資産は3,091千米ドルのマイナス、総資産は113千米ドルである。 Cross Vascular, Inc.が有するFDA認証取得済みの製品を自社のグローバルポートフォリオに組み込むことで、当社の米国事業を飛躍的に加速させることが本買収のねらいです 日本ライフライン 臨時報告書(2026年9月30日提出)子会社取得の目的 鈴木啓介社長は買収のねらいを{q1}と位置づけている。対価4,734千米ドルの内訳は、株主への支払額734千米ドルとアーンアウト最大4,000千米ドルである。 取得後はJLL Med USAからCross Vascularへ増資して債務の支払いと事業運営資金に充てる。増資後の資本金は7,274千米ドル(予定)となり、日本ライフラインの資本金の100分の10以上に当たるため特定子会社に該当する。JLL Med USAも資本金を400千米ドルから10,400千米ドル(予定)へ増やす。 買われたのは売上のない開発会社であり、価値はFDAの510(k)認証と4件の特許、そして製品そのものにある。輸入販売から出発し、自社製品でも国内向けの開発に徹してきた会社が、米国に開発と販売の足場を持つ側へ回る判断だと読める。2025年3月期の有報では米国は長期の輸出先で、当面はFDA対応の品質管理を整える段階だった。認証済みの製品を買うことは、その準備にかかる時間を先取りする手段だったと思われる。 もっとも、買った側の足場は細い。2025年12月期末で純資産はマイナスで、営業損失は縮んだものの売上は立っておらず、増資は債務の支払いと事業運営資金に充てられる。対価4,734千米ドルのうち4,000千米ドルがアーンアウトという設計は、米国の医療現場でどこまで使われるかをまだ見通せていないことの裏返しとも受け取れる。不整脈領域のコア事業であるEP/アブレーションの延長に、この製品を置けるかが分かれ目になるのではないか。 初の自社製品としてPTCAガイドワイヤーを発売 CardioFocus社とPFA製品の共同開発・グローバル供給で戦略的パートナーシップを締結 中期経営計画の数値目標を上方修正し、「グローバル売上高の拡大とOEM製造の推進」を重点施策に追加 米国に完全子会社JLL Med USA Inc.を設立 JLL Med USAの増資を決議し、特定子会社に異動(資本金10,400千米ドル予定) 取締役会でCross Vascular, Inc.の取得を決議 売上高・各段階利益が過去最高。PFA関連の研究開発費が増加 CSVのみ。有報の逐語で照合できていない 米国子会社を設立しCross Vascularの取得を決議。第45期は未到来 中期経営計画の最終年度。売上高700億円が目標 日本ライフライン 有価証券報告書 第41〜44期(連結損益計算書・研究開発活動)

ベトナムUSMの株式譲渡

東南アジアの医療機器製造拠点の獲得と、短期での撤退

【NISSHA・9月30日開示】2026年9月4日、NISSHAが取締役会でベトナムの医療機器メーカーUSM HEALTHCARE MEDICAL DEVICES FACTORY JOINT STOCK COMPANYの株式すべてを同社取締役のVO XUAN BOI LAM氏へ譲渡すると決議し、同日に株式譲渡契約を結んだ。5月に60%を取得してから約4か月での撤退である。 取得は2026年1月23日の取締役会で決めていた。2030年の連結売上高に占めるメディカルを50%に高める目標のもと、米国に偏る医療機器CDMOの拠点を東南アジアへ広げ、ステントでベトナム唯一の国産メーカーを取り込む狙いだった。取得対価は約58億円。 譲渡は2段階に分かれる。2026年9月中旬に50%、2027年9月中旬から2028年9月中旬に10%を実行する予定で、USMは特定子会社に該当しなくなる。譲渡の理由と対価の金額は臨時報告書に記載がない。 譲渡を踏まえたIFRSの減損テストで、USMののれんの回収可能価額が取得時の想定を下回り、2026年12月期中間期の連結決算にのれんの減損損失6,759百万円をその他の費用に計上した。個別決算の関係会社株式評価損6,133百万円は連結で消去され、連結業績には影響しない。 この撤退で目を引くのは、損失の大きさよりも決断の速さである。米国に偏ってきた医療機器CDMOの足場を、ステントの国産メーカーを通じて東南アジアへ広げる構想は、有価証券報告書の後発事象にまで理由が書き込まれていた。その構想を、取得から4か月で白紙に戻したことになる。取得対価の約58億円を上回るのれんの減損が出たのは、買ったときの収益の見立てが、手放す条件に引き直すと成り立たなくなったためとみられる。 もっとも、撤退の中身は一括の売却ではない。2026年9月に50%、2027年から2028年にかけて10%と、60%を二段に分けて譲る形であり、譲渡先は現地の取締役である。事業を現地の経営者へ戻す形に収めたことで、傷を浅いうちに切り離したと読めなくもない。ただし譲渡の理由と対価は開示されておらず、メディカル50%の目標に向けて、東南アジアの拠点づくりをどう続けるのかは、なお見えない。 第8次中期経営計画でメディカル優先のキャッシュアロケーションを明示 取締役会でUSM株式の60%取得を決議し、株式譲渡契約を締結 USM株式を取得し、議決権の60%を保有 取締役会でUSM株式の全部を同社取締役へ譲渡すると決議 USM株式の50%の譲渡を実行する予定(中旬) のれんの減損損失6,759百万円を2026年12月期中間期に計上 残る10%の譲渡の実行予定期間が始まる(2028年9月中旬まで) Isometric・滋賀県製薬などの買収が重なった期 USMののれん減損6,759を中間期に計上。通期は未到来 NISSHA 有価証券報告書 第103期〜第107期(連結財政状態計算書。IFRS) USM取得の決議は2026年1月で、この期の数字には含まない USMの連結は5月から。譲渡の実行は9月中旬。通期は未到来 NISSHA 有価証券報告書 第103期〜第107期(セグメント情報)