SBIベリトランスの歴史

クレジットカード決済代行のパイオニア。SSLの活用で先駆
Last Updated: | Author: @yusugiura
歴史所見

技術 or 顧客

SSL導入の先駆者だが、顧客開拓でGMO-PGに劣後

SBIベリトランスは、クレジットカードの決済代行業の先駆者であり、2000年代前半にはSSL(暗号化通信)といった技術領域で先陣を切っていた。ただし、顧客開拓の面では、2010年前後に「ゲーム会社」「DMM.com」といった浮き沈みの激しい顧客が大口だった点に課題があった。一方、決済代行会社の競合会社「GMOペイメントゲートウェイ」は、IBM出身者が中心となって「公共料金」「ZOZOTOWN(EC物販)」といった、着実にトランザクションを確保できる顧客を開拓することで急成長を遂げた。このため、SBIベリトランスは「優良顧客を開拓できるか?」という点において、劣後した面がある。ベリトランスは2011年に上場を廃止し、現在はデジタルガレージグループの傘下企業として存続している。

社史重要度:★☆☆☆☆
author: @yusugiura
1997年〜2004年
創業経緯
インターネットの収納代行のパイオニア
1997年
★★★
米CyberCashの日本法人としてサイバーキャッシュ株式会社を設立
設立
1997年
ソフトバンクがサイバーキャッシュの株式を譲受
ソフトバンク(SBI)系列企業へ
2000年
「BuySmart Web」と「BuySmart Mega」をリリース
高価格帯サービスを拡充
2002年
商号をベリトランス株式会社に変更
2003年
決済業務受託事業を開始
2004年
大阪証券取引所ヘラクレスに株式上場
上場
2004年〜2011年
爆速成長
SBI傘下へ。DMM.com向け販売が好調
2004年
「BuySmart コンビニ」をリリース
2005年
商号をSBIベリトランス株式会社に変更
2005年
ソーシャルゲーム・アダルト向けに顧客開拓
2007年
PCI-DSSに準拠
2006年
DMM.comとの取引を開示
全社売上高の10%超を占める
2009年
VeriTrans銀聯ネット決済サービスを開始
いち早く銀聯と提携して中国系カードの利用が可能に
提携
2011年〜2022年
収益低迷
2011年
★★★
SBIホールディングスがベリトランスを完全子会社化
上場廃止へ
2012年
EC決済協議会に加盟
2013年
デジタルガレージ社がベリトランスの株式を130億円で取得
2015年
沖田氏が代表取締役を退任
異動
2015年
VeriTrans4Gをメルペイに対応
2019年
決算をIFRSに移行
売り上げ収益ベースへ
2022年
DG傘下のイーコンテクストとベリトランスが経営統合

CEOの業績貢献

創業経緯 1997年〜2004年

インターネットの収納代行のパイオニア

1997
米CyberCashの日本法人としてサイバーキャッシュ株式会社を設立

#創業経緯

CyberCashが日本上陸。ソフトバンクなどが出資

1997年にCyberCash(米国本社・1994年設立)は、日本法人として「サイバーキャッシュ株式会社(ベリトランス)」を設立した。

当時はインターネットが普及途上にあり、ECサイトが徐々に立ち上がった時期にあった。CyberCashは米国内で50万会員を擁し、1日あたり1.5万件のトランザクションを扱い、電子マネー(CyberCoin)とクレジットカード決済を行う急成長企業であった。1996年にCyberCashは米国のナスダックに株式上場を果たしており、グローバル展開を見据えて日本におけるネット決済の普及に着目した。

なお、サイバーキャッシュの日本法人には、ソフトバンクを筆頭に、オムロン、オリックスなどの日本企業も出資した。

クレジットカード決済に参入。いち早くSSLに着目

1998年にサイバーキャッシュはクレジットカード決済サービス「セキュアクレジットカードサービス」の展開を開始した。日本国内でクレジットカードによるネット決済サービスとしては、カード・コール・サービス(現在のGMOペイメントゲートウェイ)と並び、最先発企業となった。

当時のインターネットは、HTTP通信が主流であり、POSTされたクレジットカードの情報が盗用される危険性があった。このため、ネット決済の大半は「代引き」が一般的であり、クレジットカード情報をネットで入力することに拒絶感を抱くユーザーが大半であった。

そこで、サイバーキャッシュは1999年に「SSL暗号化通信」を採用してクレジットカードの情報を安全に通信するサービスを展開した。2000年にはSSL暗号化通信に必要なSSL証明書の販売代理店になるなど、HTTPSのインフラを同時に売り込むことで、クレジットカードの決済業者として台頭した。

1997年
ソフトバンクがサイバーキャッシュの株式を譲受。ソフトバンク(SBI)系列企業へ

2000
「BuySmart Web」と「BuySmart Mega」をリリース。高価格帯サービスを拡充

#事業開発

2000年にサイバーキャッシュは、BuySmartのサービス提供を開始し、決済代行業に本格参入した。BuySmart Webは月額9.8万円で契約できるサービスで、SSL通信を採用してクレジットカード情報を暗号化し、24H/365日稼働できるサービスであった。

想定顧客はトランザクションが限られる中小規模ショップ向けであったが、月額利用額が高く「限られたECショップでしか導入できない」という声が上がったと言う。

沖田貴史(SBIベリトランス・元代表取締役)

当社のサービスは『質はいいのだけれど、価格も相応で、EC市場のトップランナー向け』という評判もありました。現在は、高品質はそのままに、低価格を実現したサービスも提供しています。多くの企業でご利用いただけると自負しています

2002年
商号をベリトランス株式会社に変更
2003年
決済業務受託事業を開始
2004年
大阪証券取引所ヘラクレスに株式上場
爆速成長 2004年〜2011年

SBI傘下へ。DMM.com向け販売が好調

2004年
「BuySmart コンビニ」をリリース
2005年
商号をSBIベリトランス株式会社に変更

2005
ソーシャルゲーム・アダルト向けに顧客開拓

#顧客獲得

2005年を通じて、ベリトランスは販売先として「ゲーム会社」が主な顧客として占めるようになった。

決済代行業界の中で、GMOペイメントゲートウェイが公共料金やZOZOTOWNといった「実生活で必然的に発生する決済」「伸び代のあるEC企業」との関係性を強化したのに対して、SBIベリトランスは「ソーシャルゲーム」という市場が急成長する領域で顧客を獲得していた。

2007年
PCI-DSSに準拠
2006年
DMM.comとの取引を開示、全社売上高の10%超を占める

2009
VeriTrans銀聯ネット決済サービスを開始。いち早く銀聯と提携して中国系カードの利用が可能に

SBIベリトランスでは、グローバルな決済サービスの構築を目論んで、アジア出身の20代の若者を積極採用してきた。海外展開の一環として、2009年に中国の銀嶺の取り扱いをいち早く開始した。

沖田貴史(SBIベリトランス・元代表取締役)

さまざまな業種・業態において、すでに国内市場と海外市場の間に境界を設ける意味が薄くなりつつあります。当社においても、日本企業の海外進出に付いて行くのではなく、グローバルに見ても競争力のあるサービスを早期に構築し、日本企業のみならず、どんな企業が進出しても、迅速に応えられる体制を作りたい

収益低迷 2011年〜2022年

2011
SBIホールディングスがベリトランスを完全子会社化。上場廃止へ

#事業売却

SBIによるベリトランスの売却模索

2011年にSBIホールディングスは、グループ会社の統廃合を本格化し、非注力事業については事業売却を行った。SBIベリトランスは非注力事業とされ、一旦、SBIホールディングスが株式100%を取得した上で、売却先の選定に入ったと推察される。

ベリトランスの経営リスク(競争激化・DMM.comへの依存)

SBIがベリトランスの将来性を悲観した理由は、定かではないが、クレジット決済代行における競争激化していることや、クレジット会社から要求されるセキュリティー水準を満たすためのシステム投資が増加することにあったと推察される。

2000年代を通じて、GMOペイメントゲートウェイ、SPSVといった老舗に加えて、DeNA系のペイジェントといった新規参入企業も出るなど、決済代行をめぐる競争が激化しつつあった。

また、ベリトランスの主な販売先(売上高の10%超)が、アダルト通販事業を運営するDMM.comであったこともリスク要因であった。これは、クレジット会社から「アダルト事業向けの決済停止」という判断を下されるリスクと常に隣り合わせにあることを意味する。実際に、2022年にマスターカードは、DMM.comにおけるクレジット決済を停止した。

これらを総合的に判断し、SBIホールディングスは、高収益・高成長であったベリトランスを手放す準備を始めたものと推察される。

2012
EC決済協議会に加盟

クレジットカード情報のセキュリティーを強化するために、決済代行6社が「EC決済協議会」を設立して、ベリトランスも加盟を決めた。

加盟企業は国内のクレジットカードの決済代行会社であり、GMOペイメントゲートウェイ(GMO系)、スマートリンクネットワーク(SONY系)、ソフトバンク・ペイメント・サービス(ソフトバンク系)、DG、ペイジェント(DeNA系)と、ベリトランス(SBI→DG系)を含めた6社であった。

2013
デジタルガレージ社がベリトランスの株式を130億円で取得

#事業売却

2013年にSBIホールディングスは、ベリトランスの株式100%を、デジタルガレージ(林郁・代表取締役社長)社に130億円で売却することを決定した。この売却により、SBIホールディングスは87億円の売却益を計上した。

DGがベリトランスを買収した理由は、DGが運営する既存のコンビニ決済代行事業(e-context)に加えて、手薄であったクレジット決済代行事業に本格参入する意図があった。インターネット普及とともに、クレジットカードの番号を通販で入力することに抵抗がない時代に突入しつつあり、決済手段も「コンビニからクレジット」に遷移することを見越した打ち手であったと推察される。

2015年
沖田氏が代表取締役を退任
2015年
VeriTrans4Gをメルペイに対応
2019年
決算をIFRSに移行。売り上げ収益ベースへ
2022年
DG傘下のイーコンテクストとベリトランスが経営統合。
159社の歴史を、その日の気分で調べています。