Unipos(旧Fringe81)の歴史

3PASの不振により財務危機へ。Sansanグループ入りを目指す
updated: 2022-03-04
2005

RSS広告社を設立

2005年ごろからブログサービスが日本でも一般化し、ブログ向けのRSSに広告を配信するという市場が台頭した。

これを受けて、インターネット企業で経営危機に陥っていたネットエイジは、収益を確保するためにRSS広告の分野に参入するために「RSS広告社(Fringe81)」を「東京都渋谷区円山町23-2アレトゥーサ渋谷3階」にて設立し、田中弦氏が同社の社長に就任した。

RSS広告社は2005年にリクルートなどから出資を受けて、ネットエイジの関連会社として運営された。事業面ではサイバーエージェントが展開するアメーバブログ向けにも広告を配信するなど、ブログサービスの台頭とともに成長する。

■投資・調達額
計画調達額
推定 2600 万円
■シナリオ(推察)
親会社のネットエイジの経営危機を救うために、成長が見込まれるブログ向け広告市場に参入する
■主な資金の出し手 | 実績
2005/4
100%子会社の設立
1000万円
  • ネットエイジキャピタル
?
■推定評価額の計算根拠
・発行済株式数: 株
・取得株式数: 株
・株式の取得比率: NaN%
・取得合計金額: 1000 万円
推定評価額
-万円
2005/6
第三者割当増資
1600万円
  • リクルート(10.5%)
  • サイバー・コミュニケーションズ(10.5%)
?
■推定評価額の計算根拠
・発行済株式数: 株
・取得株式数: 株
・株式の取得比率: NaN%
・取得合計金額: 1600 万円
推定評価額
-万円

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yusugiura
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Fringe81は、ネット黎明期の伝説の会社「ネットエイジ(現在のユナイテッド)」が設立した子会社。だが、ネットエイジは、株式投資が超一流だが、事業面で何度か経営危機に陥っている。Fringe81も、ネットエイジの経営危機を救うために、すぐに儲かりそうな「広告」に着目して子会社として設立されたのが、その経緯であったという。

2011

RSS広告で国内シェア100%。ただし売上目標は未達

Fringe81はRSS広告を事業化したものの、予想に反して市場の拡大は限定的であった。このため、事業開始から1年で資金を使い果たし、期待された収益を計上できなかったという。この間、企業が存続できた理由は不明だが、親会社のネットエイジから支援があった可能性もある。

ただし、市場が拡大しなかったことによって、Googleやトランコスモスといった競合会社はRSS広告から撤退した。

このため、Fringe81は残存者利益を確保して国内におけるRSS広告サービスでシェア100%を確保したという。とはいえ、2011年ごろのFringe81の売上高は約10億円(推定)であり、爆発的な成長を遂げたわけではなかった。加えて、創業当時に掲げた3年で売上高20億円という目標は、創業6年の時点でも未達となった。

2011

アドサーバーに参入

スマートフォンの普及によりSNSが台頭し、ブログが凋落しつつある中で、Fringe81は新たな収益基盤を求めた広告配信サーバーに参入した。

2011年に、第三者広告配信サービス(3PAS)の「デジタリス(digitalice) 」を開発した。スマホの普及によるインターネット広告の市場成長のスピードが急速なこともあり、Fringe81も3PASで広告事業を拡大した。

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yusugiura
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広告サーバーには「DSP(需要サイド)」「SSP(供給サイド)」「3PAS(第三者配信)」の3つの種類があり、Fringe81は3PASを主戦場とした。3PASはGooleなどのプラットフォーマーに対して広告を配信するサーバーで、広告効果の測定を横断的に行えるメリットがあった。

2012

MBOによりネットエイジから独立

経営危機に陥っていたネットエイジは、資金繰りを改善するために「Fringe81」の売却を決定。Fringe81は経営陣によるMBOを経て、独立した。

2014

本社を六本木ヒルズに移転

新卒採用を強化する目的で、本社を六本木ヒルズに移転した。2017年時点の年間賃料は5800万円と推定される。

なお、2017年の時点でFringe81は、森ビルに対して敷金及び保証金を1.8億円支払っている。2014年時点のFringe81の売上高は12億円に対して純損失0.4億円であることから、保証金だけでも相応の金額を投資したbvcx[po。

オフィス移転や就業環境の改善によって、2014年から2017年におけるFringe81の離職率は12%であり、この間の技術職の退職は0名となるなど、従業員の定着に寄与した。

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yusugiura
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綺麗なオフィスに移転すると、新卒採用では「アピールポイント」になるのは、今も昔も変わらない。ただし、これが業績と関連するかは、全くもって別問題であり、そこまでの家賃コストを払う意義があるのかという問題に帰結する。そして、結構多くの会社が、高価なオフィスと契約してしまったことを後悔するのです。。。

2017

広告事業により業容を拡大。東証マザーズに株式上場

Fringe81は広告事業において、エン・ジャパンに売上高の40%程度を依存しつつ、D2Cやスマートニュースといった大口顧客を抱えることによって業容を拡大した。この結果、2017年にFringe81は東証マザーズへの株式上場を果たした。

株式上場後も、MBOを主導した創業者である田中弦氏が株式の50%超を保有し、筆頭株主であり続けた。

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yusugiura
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2017年〜2019年は、いわゆる検索流入による転職サイトの黄金時代。とはいえ、売上高の40%がエン・ジャパン1社に依存しているのは、リスクが大きい。やはり、売上高の1社依存が、2020年のFringe81の経営危機の布石になったと見るべきだろう。

2017

新規事業Uniposの開始

Fringe81が社内で行なっていた「発見大賞」という人事制度をシステム化することによって、自社による新サービス「Unipos」を開発した。もともと、営業部門に比べて目立たなかったエンジニア部門の士気を高めるために「発見大賞」という制度を社内で導入したことがきっかけで、この制度を持続するために、従業員の間で報酬を送れるようにシステム化したのが事業のスタートであった。

Uniposは法人企業を顧客とし、特にメルカリへの販売成功により事業の拡大の契機となった。Uniposでは顧客企業の従業員が数十円〜数百円のボーナスを、同じ会社の従業員に送れるシステムであり「心理的安全性」を確保し、業務を円滑化させるためのツールとして、2019年には人事領域でも注目を集めた。

なお、技術面ではフロントエンドにElmを採用しており、マイナーな選択として注目を集めた。

2018

増床のため本社を住友不動産六本木グランドタワーに移転

Fringe81は広告事業における業容の拡大と、ワンフロアで業務を遂行できる環境を整備するために、本社を「住友不動産六本木グランドタワー(43階)」に移転した。

Fringe81は「数年にわたる人員拡張計画」「販売人員と技術人員が密接にかかわりあうFringe81にとりワンフロアでの業務効率化は必須」(FY2017/4Q決算説明会資料)という点を見据えた本社の移転であった。

■投資・調達額
年間家賃
推定 2.3 億円
■シナリオ(推察)
ワンフロア業務によって、開発と営業の連携強化する
■主な資金用途
移転関連費用
1.5 億円
支度金(特別利益)
1.9 億円
年間賃料
2.3 億円

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yusugiura
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六本木グランドタワーは2016年に竣工した築浅の高層ビル。家賃はなんと年間2.5億円で、従来比較+1.3億円。当時の従業員は約160名なので、一人当たり80万円昇給できるほどの金額を投資している。この移転も、のちの経営危機の布石になっており、ネット企業におけるオフィス移転の難しさを物語っている。

2019

Unipos成長投資の実施。28億円の借入調達枠を設定

新規事業のUniposへの投資を拡大するために、金融機関からの大規模な借入を決定し、りそな銀行・みずほ銀行・三井住友銀行から最大28億円の借入枠を設定した。

Uniposのターゲット顧客は主に大企業であることから、営業人員の拡大に加えて、タクシー広告への出稿や、セミナーイベントの開催などのマーケティング投資を重視した。

しかし、調達資金は株式の希薄化を避けるために、銀行からの借入枠の設定で実施したため、Fringe81の自己資本比率が低下する要因となった。

■投資・調達額
計画調達額
最大 28.0 億円
期待収益目標
最低 50.0 億円
■シナリオ(推察)
Uniposに大胆な投資を行うことで、法人顧客を獲得する
■主な資金の出し手 | 実績
2019
第三者割当増資
28.0億円
  • りそな銀行
  • みずほ銀行
  • 三井住友銀行

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yusugiura
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2019年3月期のFringe81の純利益は2.5億円であり、この10倍以上の借入枠を設定した点で思い切っている。ただし、資本ではなく借入金による調達であり、財務リスクを背負う選択を行なったと言える(そして1年後に財務危機に陥った)

2020

広告事業の収益性が低下。自己資本比率0.9%で財務危機へ

また、財務面では、Fringe81はソフトウェアを「費用」ではなく「資産」として計上する会計方針であったため、広告事業の低迷によりソフトウェア資産を減損する必要が生じたため、これも財務基盤を悪化させる要因になった。

通常、外注ではないソフトウェアの開発は資産ではなく費用計上するのが一般的である。Fringe81の意図は不明だが、おそらく名目上の営業利益を確保するためにソフトウェアを資産計上していたものと推察される。

この結果、fringe81は主力であった広告事業が赤字に転落し、新規事業であったUniposも利益貢献のフェーズに入ってなかったことから、営業キャッシュフローが悪化した。

FY2020/3Q(2020年12月)時点における自己資本比率は0.9%であり、総資産22億円に対する有利子負債残高が14.9億円に達し、有利子負債比率は67%に及んだ。

この結果、資金調達に失敗すれば、財務危機に陥る可能性があった。

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yusugiura
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凄まじい。自己資本比率0.9%ということは、BSのほぼ全てが負債。赤字を出す中で資金調達に失敗すれば、それは債務超過への道。一歩間違えれば会社が倒産しかねない事態であった。

2020

財務基盤安定化のため、Sansanと業務資本提携

2020年にFringe81は、財務基盤を安定させるために、Sansanとの業務資本提携を発表した。Sansanに対する第三者割当増資(1.6億円)を実施した。

つづいて、クレディ・スイス証券に対しても第三者割当増資(4.9億円)を実施し、Fringe81は2021年3月期末時点で自己資本比率を10.0%まで回復させ、債務超過のリスクを低下させた。

SansanがFringe81の株式を取得することで、広告事業のSansan向けの展開、Uniposの事業連携、六本木からのオフィス移転(2021年4月)をぞれぞれ実施した。

Frnge81は住友不動産(六本木グラントタワー)とのオフィス契約を見直し、Sansanが入居する表参道のオフィスに移転することで、年間1億円の家賃コストの削減を目論んだ。

2021

DBJとSansanに第三者割当増資。Sansanとの経営統合を視野

2021年5月にFringe81は商号を「Unipos」に変更し、Unipos事業が成長して利益貢献のフェーズになった時に、Sansanグループへのへ参画を目指すことを公表した。なお、仮にSansanがUniposを子会社化した場合も、上場を維持する方針を示している。

また、資金面では、日本政策投資銀行(DBJ)とSansanに対する第三者割当増資を実施し、それぞれ19億円(1900株)、合計38億円を調達することによって自己本比率を改善した。A手優先株主の取得請求権における、取得額の下限は1株あたり172円に設定された(ただし取得下限額の修正条項付き)。普通株式の取得実行後に想定される議決権の比率は、Sansan33.54%、DBJ32.47%であり、Uniposは株式の過半数を2社に握られる形となる。

また、資金調達を行う38億円の用途に関しては、2021年7月〜2025年6月の4か年にわたって、Uniposの機能開発に15億円、Uniposのマーケティングに9億円、Uniposの受注拡大の人件費に12億円とした。

2021

広告事業の撤退で人員減。9ヶ月で44名減少(219→175名)

2021年にUnipos(旧Fringe81)は祖業である広告事業の撤退方針を決め、Uniposに投資を集中させた。

Uniposは広告事業からの撤退を決めて、人員削減を開始した。広告事業の売上高に対して、Uniposの売上高は10%程度であり、Unipos売上高に対して旧fringe81の従業員数が多すぎるため、人件費を圧迫するという問題を抱えていた。

Uniposは、2021年度を通じて従業員(パート・派遣・業務委託を含む)44名を削減し、人件費の抑制を目論んでいる。

なお、FY2021/3QにおけるUnipos事業の売上高は1.5億円(四半期)に対して人件費が3.1億円であり、売上高に対する人件費率は約200%という厳しい状況が続いている。

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yusugiura
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非常に厳しい。断腸の決定。上場企業といえども、広告というコモディティー激戦区における経営は至難であった。業態転換による人員の配置転換も容易ではないことが伺える。

2022

オフィス移転解約金などで、減損損失7.3億円を計上

Uniposは広告事業からの撤退による人員減少と、将来のSansanへのグループ入りを見据えて、オフィスを六本木グランドタワーから、表参道のSansan入居ビルに移転することを決めた。この移転により、本社移転に関する特別損失の計上を決定している。

また、広告事業からの撤退によるソフトウェア資産の減損も決め、Uniposはソフトウェアを資産として計上する従来の会計方針を中止した。一般的にソフトウェアの資産計上は、発注先(受託)からのソフトウェアの仕入れによって計上されるものであり、Uniposの会計方針は一般慣行に戻された。

Loss Summary
■ PLへの損失計上額 (2022年3月期3Q)
特別損失
12.17
億円
■ 損失の内訳
減損損失
広告事業の撤退によるソフトウェアの減損など
7.33
億円
本社移転費用
人員削減によるオフィスの移転など
4.84
億円
■ 貸借対照表
2022年3月期3Q末時点
資産の部
43.5億円
現金同等物
38.9億円
のれん
0億円
負債の部
18億円
純資産の部
25.5億円
自己資本比率
58.6
%

売上高の推移

売上高の推移

業績推移