トヨタ自動車と取引開始。交流磁界センサに参入
キーエンスの歴史における転機は、1974年のトヨタ自動車へのセンサ納入である。
1970年代初頭のトヨタ自動車はプレス加工において、板金の二重送りという失敗によって高額な金型が壊れるという事故に悩まされていた。このことを知った滝崎武光は、トヨタ自動車に板金の二重送りを未然に防ぐ「交流磁界を用いた磁気センサ」を提案し、納入に成功。リード電機を株式会社として法人化する契機になるとともに、センサービジネスに本格参入した。
キーエンスの歴史における転機は、1974年のトヨタ自動車へのセンサ納入である。
1970年代初頭のトヨタ自動車はプレス加工において、板金の二重送りという失敗によって高額な金型が壊れるという事故に悩まされていた。このことを知った滝崎武光は、トヨタ自動車に板金の二重送りを未然に防ぐ「交流磁界を用いた磁気センサ」を提案し、納入に成功。リード電機を株式会社として法人化する契機になるとともに、センサービジネスに本格参入した。
1982年の時点でキーエンスの祖業であった「自動線材切断機」は営業利益率が20%(1989/5/22日経ビジネス)の高収益事業であったが。しかし、創業者の滝崎武光氏はセンサ事業(営業利益率40%)よりも収益性が低いことを理由に撤退を決断。
また、顧客の一極集中によるリスクを防ぐために、当時、キーエンスの売上高の20%を占めていた某機械メーカーとの取引縮小を決断するなど、値下げ圧力を回避する方向にビジネスを変えた。
製造子会社としてクレボを設立し、全製品のうちノウハウが鍵を握る25%の製品を子会社で生産。残りの75%はファブレスとして協力会社に製造を委託した。キーエンスは製品開発・企画・販売に注力し、採算が悪化する受注生産はせずに、標準品を販売することで利益率の確保を目論んだ。なお、生産量の目安は月産50個〜1万個とレンジが広いが、他社比較で「より多く量産できる個数」を生産量として定義していた。
当社の営業利益率が高い理由の第二は、受注生産をやらないことだ。センサのようなものは顧客の要望に応える形で設計するようにイメージされがちだが、当社はすべて自社のリスクによって生産計画を立て、標準品を販売する方法をとっている。そのために量産効果が出て、原価率が低くなる。もし同じような製品をユーザーの要望を受けて生産すれば、設計費とか生産管理費などがかかるので、それらを節減できる当社は、当然ながら優位ということになる。
大阪証券取引所に株式を上場し、日本屈指の高収益企業(FY1986 売上高73億円, 経常利益26億円)として注目集めた。
上場後の1989年3月時点で、武崎武光氏が株式25.69%を保有。同氏の資産管理会社である(株)ティ・ティも18.84%を保有しており、滝崎氏が45%を保有する資本政策となった。このため、キーエンスの株価高騰により滝崎氏の資産も膨れ上がることで、(知る人ぞ知る)日本を代表する資産家として認知されるようになった。
当社の最大の特徴は、営業利益率が非常に高いことである。原価率は20%くらいだ。粗利率が80%とすると、経費関係が40%足らずで、40%くらいの営業利益が出る。この理由の第1は、製品の90%が当社オリジナルで、70%がシェア・トップと他のメーカーと競合になりにくい面が多いことだ。他に先駆けて開発すると収益率が高くなる。特にFA用のセンサは、最初にどこかのメーカーのものを使うと、値段が多少高くても、信頼性と安定性の観点から途中で変えにくいという性格が強い。
一つの大きな特徴は直販制度をとっていて、商社、代理店制度をとっていないということである。これは創業当初からで、なぜそうしたかというと、他社にない製品なので、商社、代理店を通してPRすると、当社製品の価値がうまく顧客に伝わらないと考えたためである。代理店にはユーザーの事情で伝票を通すこともあるが、実際の商談は全て当社が行なっており、最終ユーザーまで把握している。
1989年3月:新株発行数250万株に対して、発行価格7074円。合計176億円を調達
1991年9月:新株発行数160万株に対して、発行価格13,510円。合計216億円を調達
1991年時点でキーエンスの社員は平均年齢28歳であり、30歳を過ぎると年収1000万円の給与水準を提示。滝崎氏は、社員にとっての仕事のやりがい以上に、給与として還元することにこだわっており、創業3年目から営業利益の社員への還元を進めてきた。
具体的には「営業利益の一部から半分を毎月の給与に加算して、残り半分を積み立てて賞与に加算するルール」(滝崎氏・2003/10/27日経ビジネス)を策定して運用した。このため、キーエンスの社員は基本給は少ないものの、業績連動賞与で多額の報酬を得る賃金体系のもとで働いた。
人の採用では常に苦労しています。とはいえ、会社の規模を考えれば、その時その時で最高の人が来てくれていると思いますよ。うちはメーカーではトップクラスの給与を支払っている。30歳過ぎて年収1000万円に手が届きます。と言っても、特別な給与体系を採用しているわけではない。人を集めるには、仕事のやりがいも大切ですが、やはり数字に現れる待遇が良くないといけません。将来は株価だけではなく、給与も日本一にしたいですね。
創業者の滝崎武光氏は会長として経営に従事。以後、キーエンス出身者が社長を歴任する体制へ
リーマンショックによる経済不況で、企業の設備投資がストップ。設備投資動向に業績が依存するキーエンスは減収減益に至った。
経営不振に陥っていたジャストシステムを救済するため、第三者割当増資により株式44%を45億円にて取得。異業種ながらも、キーエンスはジャストシステムの開発力を評価して出資を決めた。
2015年ごろのキーエンスは株主との対話を避ける上場企業として投資家から問題視された。特に余剰となった現金の使い道に関する不透明さが不評を買った。このため、
当日出荷などのサポート体制を充実させた海外展開により業績好調を持続。この結果、キーエンスの株価が高騰し、創業者である滝崎氏の資産が4.2兆円へ。ユニクロ(ファストリ)の柳井氏、ソフトバンクの孫正義氏を抑えて、日本一の資産家となった。
高収益を確保する一方で、用途がない資金が株主に還元されないこと受けて、海外の機関投資家を中心にキーエンスの経営陣に対する不信感が増大。2022年6月の株主総会において、中田社長に対する取締役の再任賛成比率は80.88%、名誉会長(創業者)である滝崎武光氏の取締役の再任賛成比率は86.69%であり、投資家からの信頼を喪失しつつある。
海外展開の好調で過去最高益へ