創業から44年。1回の決断

概要- Historical Summary -
1982年にジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキがAdobe Systemsを設立。1985年にAppleへPostScriptを販売しDTP革命の基盤を築き、IllustratorやPhotoshopでクリエイティブツールの業界標準を確立した。1993年にPDFを開発して文書フォーマットの標準化を主導。2005年のMacromedia買収を経て、2013年にCreative Cloudでサブスクリプションモデルへ転換し、デジタルマーケティング領域のM&Aも積極化した。
概要- Historical Summary -
1982年にジョン・ワーノックとチャールズ・ゲシキがAdobe Systemsを設立。1985年にAppleへPostScriptを販売しDTP革命の基盤を築き、IllustratorやPhotoshopでクリエイティブツールの業界標準を確立した。1993年にPDFを開発して文書フォーマットの標準化を主導。2005年のMacromedia買収を経て、2013年にCreative Cloudでサブスクリプションモデルへ転換し、デジタルマーケティング領域のM&Aも積極化した。
1982
Adobe Systemsを設立
1982Adobe Systemsを設立
1983
Appleが出資
1983Appleが出資
1985
AppleにPostScriptを販売
1985AppleにPostScriptを販売
1986
NASDAQ株式上場
1986NASDAQ株式上場
1987
Illustratorを発売
1987Illustratorを発売
1989
フォント戦争
1989フォント戦争
1989
PhotoShopのライセンス契約を締結
1989PhotoShopのライセンス契約を締結
1993
PDFの開発
1993PDFの開発
1998
減収減益決算。350名のレイオフを実施
1998減収減益決算。350名のレイオフを実施
2000
Bruce Chizen氏がCEO就任(創業CEO退任)
2000Bruce Chizen氏がCEO就任(創業CEO退任)
2005
Macromedia, Incを買収
2005Macromedia, Incを買収
2007
S.NarayenがCEO就任
2007S.NarayenがCEO就任
2009
Omniture買収
2009Omniture買収
2010
AppleがFlash拒絶
2010AppleがFlash拒絶
2013
決断
Adobe Creative Cloudを発表
月額5250円への価格再設計が顧客層を入れ替えた構造
2018
Marketo Inc.を買収
2018Marketo Inc.を買収
2022
Figmaを買収(撤回)
2022Figmaを買収(撤回)
業績を見る
売上アドビ:売上高
単体 | 連結(単位:$100M)
17,606$100M
Revenue:2022/12
利益アドビ:売上高_当期純利益率
単体 | 連結(単位:%)
27%
利益率:2022/12
業績を見る
区分売上高利益利益率
1984/11単体 Revenue / NetIncome2$100M0$100M2.2%
1985/11単体 Revenue / NetIncome4$100M0$100M10.6%
1986/11単体 Revenue / NetIncome16$100M3$100M22.3%
1987/11単体 Revenue / NetIncome39$100M8$100M22.8%
1988/11単体 Revenue / NetIncome83$100M21$100M25.1%
1989/11単体 Revenue / NetIncome121$100M33$100M27.8%
1990/11連結 Revenue / NetIncome303$100M63$100M21.0%
1991/11連結 Revenue / NetIncome452$100M78$100M17.4%
1992/11連結 Revenue / NetIncome520$100M57$100M11.0%
1993/11連結 Revenue / NetIncome580$100M42$100M7.2%
1994/11連結 Revenue / NetIncome675$100M15$100M2.2%
1995/11連結 Revenue / NetIncome762$100M93$100M12.2%
1996/11連結 Revenue / NetIncome786$100M153$100M19.4%
1997/11連結 Revenue / NetIncome911$100M186$100M20.4%
1998/11連結 Revenue / NetIncome894$100M105$100M11.7%
1999/11連結 Revenue / NetIncome1,015$100M237$100M23.3%
2000/11連結 Revenue / NetIncome1,266$100M287$100M22.6%
2001/11連結 Revenue / NetIncome1,229$100M205$100M16.6%
2002/11連結 Revenue / NetIncome1,164$100M191$100M16.4%
2003/11連結 Revenue / NetIncome1,294$100M266$100M20.5%
2004/11連結 Revenue / NetIncome1,666$100M450$100M27.0%
2005/11連結 Revenue / NetIncome1,966$100M602$100M30.6%
2006/11連結 Revenue / NetIncome2,573$100M505$100M19.6%
2007/11連結 Revenue / NetIncome3,157$100M723$100M22.9%
2008/11連結 Revenue / NetIncome3,579$100M871$100M24.3%
2009/12連結 Revenue / NetIncome2,945$100M386$100M13.1%
2010/12連結 Revenue / NetIncome3,800$100M774$100M20.3%
2011/12連結 Revenue / NetIncome4,216$100M832$100M19.7%
2012/12連結 Revenue / NetIncome4,403$100M832$100M18.8%
2013/12連結 Revenue / NetIncome4,055$100M289$100M7.1%
2014/12連結 Revenue / NetIncome4,147$100M268$100M6.4%
2015/12連結 Revenue / NetIncome4,795$100M629$100M13.1%
2016/12連結 Revenue / NetIncome5,854$100M1,168$100M19.9%
2017/12連結 Revenue / NetIncome7,301$100M1,693$100M23.1%
2018/12連結 Revenue / NetIncome9,030$100M2,590$100M28.6%
2019/12連結 Revenue / NetIncome9,634$100M2,951$100M30.6%
2020/12連結 Revenue / NetIncome12,868$100M5,260$100M40.8%
2021/12連結 Revenue / NetIncome15,785$100M4,822$100M30.5%
2022/12連結 Revenue / NetIncome17,606$100M4,756$100M27.0%
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1982
Adobe Systemsを設立
1983
Appleが出資
1985
AppleにPostScriptを販売
1986
NASDAQ株式上場
1987
Illustratorを発売
1989
フォント戦争
1989
PhotoShopのライセンス契約を締結
1993
PDFの開発
1998
減収減益決算。350名のレイオフを実施
2000
Bruce Chizen氏がCEO就任(創業CEO退任)
2005
Macromedia, Incを買収
2007
S.NarayenがCEO就任
2009
Omniture買収
2010
AppleがFlash拒絶
2013

Adobe Creative Cloudを発表

2013/12期(連結)Revenue 4,055$100MNetIncome 289$100M
月額5250円への価格再設計が顧客層を入れ替えた構造

パッケージ版はソフト単体で約10万円という価格設定がプロのデザイナー以外を事実上排除していた。月額5,250円のCreative Cloudへの転換は参入費用を大幅に引き下げ、従来は手が届かなかった層に市場を開放する価格再設計であった。転換直後の2期連続減収を経たが、新規顧客比率が半数に達し、アドビの顧客基盤の構成そのものが変わった。SaaS転換の本質は収益モデルの変更ではなく、価格設計を通じた顧客層の再定義にあったと読むことができる。

背景

クラウドインフラの普及がSaaS時代を到来させる

2010年代を通じてAWSをはじめとするクラウドインフラが世界的に普及し、ソフトウェアをサービスとして提供するSaaSモデルの条件が整った。従来のパッケージ型ソフトウェアは小売店でCD-Rを通じて販売する形態であったが、ブラウザやデスクトップアプリケーションへのログインを介した月額課金による利用モデルが、ソフトウェア業界の各領域において急速に台頭しつつあった。

アドビの主力製品群はパッケージ販売に全面的に依存しており、ソフト単体で約10万円という価格設定が続いていた。クラウド環境が成熟するにつれて同社においても従来の販売形態を見直す必要性が高まった。さらに複数デバイスでの作業やチーム間のコラボレーションへの需要が増加し、18〜24ヶ月周期でバージョンを更新する従来型の開発サイクルでは顧客ニーズへの対応が困難になりつつあった。

決断

パッケージソフトの販売中止とクラウドサービスへの全面移行

アドビは月額課金によるクラウドサービスAdobe Creative Cloudへの全面転換を発表した。2014年にはパッケージソフトであるAdobe Creative Suitsの販売を中止し、クラウドへの移行を不可逆なものとした。価格面ではCreative Cloudを月額5250円に設定し、ソフト単体で約10万円であったパッケージ時代と比較して利用開始時の費用負担を引き下げた。

開発体制も抜本的に変更された。従来は18〜24ヶ月かけて1つのバージョンを完成させる方式であったが、SaaSへの転換に伴って頻繁なアップデートが可能な体制へと移行した。さらに顧客の利用フローをDISCOVER・TRY・BUY・USE・REVIEWの5段階に分解し、各段階におけるエンゲージメントを運用指標として設定する管理手法へと切り替えた。

結果

2期連続の減収を経てサブスクリプション収益基盤を確立

SaaSへの転換直後、Digital MediaセグメントではFY2013およびFY2014にかけて2期連続の減収となった。パッケージ販売による一括収入がなくなった一方で月額課金の積み上げには時間を要した。収益認識基準の変更に伴う利益の一時的な低下は、サブスクリプションモデルへの転換に際してあらかじめ織り込まれていた事象であった。

しかしFY2015以降、Creative Cloudの月額利用者数が拡大するにつれて収益は成長軌道に転じた。2015年時点で月額利用者は617万人に達し、Digital Mediaセグメントがアドビの全社業績を牽引する収益構造が定着した。サブスクリプションモデルへの転換によって、アドビは単発のパッケージ販売収入に依存しない継続的な収益基盤を構築する形となった。

2013/12期(連結)Revenue 4,055$100MNetIncome 289$100M
月額5250円への価格再設計が顧客層を入れ替えた構造

パッケージ版はソフト単体で約10万円という価格設定がプロのデザイナー以外を事実上排除していた。月額5,250円のCreative Cloudへの転換は参入費用を大幅に引き下げ、従来は手が届かなかった層に市場を開放する価格再設計であった。転換直後の2期連続減収を経たが、新規顧客比率が半数に達し、アドビの顧客基盤の構成そのものが変わった。SaaS転換の本質は収益モデルの変更ではなく、価格設計を通じた顧客層の再定義にあったと読むことができる。

証言Shantanu Narayen, Adobe CEO

The next generation of creatives are very comfortable with this approach of being able to pay for software as you use it. The world is moving increasingly toward subscription models being the norm on the Internet. If we innovate and attract new customers, it will lead to growth.

証言Bryan Lamkin, Adobe VP

iPhoneやスマートフォンなどによってコンテンツ市場も爆発的に拡大し、そのコンテンツ制作を支える環境も構築しなければなりませんでした。制作はメインデバイス、仕上げは別のデバイスと、複数のデバイスを使いながら、さまざまな人とコラボレーションするには、プラットフォームを統合したクラウドが必要となる。そういった状況下では、それまでの『18カ月ごとに新商品を発表し、アップグレードを促す』ようなサイクルでは、イノベーションのスピードに追いつけなくなってきたのです。その時々の顧客のニーズに合わせ、求められるサービスを都度提供していく必要がありました

出所2019/5/12 Forbes:【独自】「サブスク化」成功のカギはどこにあるのか?Adobe幹部に聞く
証言Bryan Lamkin, Adobe VP

サブスクリプションモデルへ移行し、収益認識基準が変わることで一旦利益が下がるのは避けられないこととはいえ、やはり恐怖感は否めませんでした。けれども長期的にいかに事業を成長させていくか。そして顧客によりよいイノベーションや体験を届けられると説明しつづけることで、信頼を勝ち取っていくことができました。何より喜ばしく、また驚くべきことだったのは、サブスクリプションによって新規顧客比率が飛躍的に伸び、いまではその半数が新規顧客なのです

出所2019/5/12 Forbes:【独自】「サブスク化」成功のカギはどこにあるのか?Adobe幹部に聞く
年表Adobe Creative Cloudを発表に関する出来事
2013Adobe Creative Cloudを発表
2014Adobe Creative Suitsを取扱中止
2015月額利用者617万人
201812月業績好調。利益率28.7%へ
2018
Marketo Inc.を買収
2022
Figmaを買収(撤回)