創業から44年。1回の決断
| 期 | 区分 | 売上高 | 利益※ | 利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 1984/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 2$100M | 0$100M | 2.2% |
| 1985/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 4$100M | 0$100M | 10.6% |
| 1986/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 16$100M | 3$100M | 22.3% |
| 1987/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 39$100M | 8$100M | 22.8% |
| 1988/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 83$100M | 21$100M | 25.1% |
| 1989/11 | 単体 Revenue / NetIncome | 121$100M | 33$100M | 27.8% |
| 1990/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 303$100M | 63$100M | 21.0% |
| 1991/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 452$100M | 78$100M | 17.4% |
| 1992/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 520$100M | 57$100M | 11.0% |
| 1993/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 580$100M | 42$100M | 7.2% |
| 1994/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 675$100M | 15$100M | 2.2% |
| 1995/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 762$100M | 93$100M | 12.2% |
| 1996/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 786$100M | 153$100M | 19.4% |
| 1997/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 911$100M | 186$100M | 20.4% |
| 1998/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 894$100M | 105$100M | 11.7% |
| 1999/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,015$100M | 237$100M | 23.3% |
| 2000/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,266$100M | 287$100M | 22.6% |
| 2001/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,229$100M | 205$100M | 16.6% |
| 2002/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,164$100M | 191$100M | 16.4% |
| 2003/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,294$100M | 266$100M | 20.5% |
| 2004/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,666$100M | 450$100M | 27.0% |
| 2005/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 1,966$100M | 602$100M | 30.6% |
| 2006/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 2,573$100M | 505$100M | 19.6% |
| 2007/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 3,157$100M | 723$100M | 22.9% |
| 2008/11 | 連結 Revenue / NetIncome | 3,579$100M | 871$100M | 24.3% |
| 2009/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 2,945$100M | 386$100M | 13.1% |
| 2010/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 3,800$100M | 774$100M | 20.3% |
| 2011/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 4,216$100M | 832$100M | 19.7% |
| 2012/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 4,403$100M | 832$100M | 18.8% |
| 2013/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 4,055$100M | 289$100M | 7.1% |
| 2014/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 4,147$100M | 268$100M | 6.4% |
| 2015/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 4,795$100M | 629$100M | 13.1% |
| 2016/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 5,854$100M | 1,168$100M | 19.9% |
| 2017/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 7,301$100M | 1,693$100M | 23.1% |
| 2018/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 9,030$100M | 2,590$100M | 28.6% |
| 2019/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 9,634$100M | 2,951$100M | 30.6% |
| 2020/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 12,868$100M | 5,260$100M | 40.8% |
| 2021/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 15,785$100M | 4,822$100M | 30.5% |
| 2022/12 | 連結 Revenue / NetIncome | 17,606$100M | 4,756$100M | 27.0% |
パッケージ版はソフト単体で約10万円という価格設定がプロのデザイナー以外を事実上排除していた。月額5,250円のCreative Cloudへの転換は参入費用を大幅に引き下げ、従来は手が届かなかった層に市場を開放する価格再設計であった。転換直後の2期連続減収を経たが、新規顧客比率が半数に達し、アドビの顧客基盤の構成そのものが変わった。SaaS転換の本質は収益モデルの変更ではなく、価格設計を通じた顧客層の再定義にあったと読むことができる。
2010年代を通じてAWSをはじめとするクラウドインフラが世界的に普及し、ソフトウェアをサービスとして提供するSaaSモデルの条件が整った。従来のパッケージ型ソフトウェアは小売店でCD-Rを通じて販売する形態であったが、ブラウザやデスクトップアプリケーションへのログインを介した月額課金による利用モデルが、ソフトウェア業界の各領域において急速に台頭しつつあった。
アドビの主力製品群はパッケージ販売に全面的に依存しており、ソフト単体で約10万円という価格設定が続いていた。クラウド環境が成熟するにつれて同社においても従来の販売形態を見直す必要性が高まった。さらに複数デバイスでの作業やチーム間のコラボレーションへの需要が増加し、18〜24ヶ月周期でバージョンを更新する従来型の開発サイクルでは顧客ニーズへの対応が困難になりつつあった。
アドビは月額課金によるクラウドサービスAdobe Creative Cloudへの全面転換を発表した。2014年にはパッケージソフトであるAdobe Creative Suitsの販売を中止し、クラウドへの移行を不可逆なものとした。価格面ではCreative Cloudを月額5250円に設定し、ソフト単体で約10万円であったパッケージ時代と比較して利用開始時の費用負担を引き下げた。
開発体制も抜本的に変更された。従来は18〜24ヶ月かけて1つのバージョンを完成させる方式であったが、SaaSへの転換に伴って頻繁なアップデートが可能な体制へと移行した。さらに顧客の利用フローをDISCOVER・TRY・BUY・USE・REVIEWの5段階に分解し、各段階におけるエンゲージメントを運用指標として設定する管理手法へと切り替えた。
SaaSへの転換直後、Digital MediaセグメントではFY2013およびFY2014にかけて2期連続の減収となった。パッケージ販売による一括収入がなくなった一方で月額課金の積み上げには時間を要した。収益認識基準の変更に伴う利益の一時的な低下は、サブスクリプションモデルへの転換に際してあらかじめ織り込まれていた事象であった。
しかしFY2015以降、Creative Cloudの月額利用者数が拡大するにつれて収益は成長軌道に転じた。2015年時点で月額利用者は617万人に達し、Digital Mediaセグメントがアドビの全社業績を牽引する収益構造が定着した。サブスクリプションモデルへの転換によって、アドビは単発のパッケージ販売収入に依存しない継続的な収益基盤を構築する形となった。
パッケージ版はソフト単体で約10万円という価格設定がプロのデザイナー以外を事実上排除していた。月額5,250円のCreative Cloudへの転換は参入費用を大幅に引き下げ、従来は手が届かなかった層に市場を開放する価格再設計であった。転換直後の2期連続減収を経たが、新規顧客比率が半数に達し、アドビの顧客基盤の構成そのものが変わった。SaaS転換の本質は収益モデルの変更ではなく、価格設計を通じた顧客層の再定義にあったと読むことができる。
The next generation of creatives are very comfortable with this approach of being able to pay for software as you use it. The world is moving increasingly toward subscription models being the norm on the Internet. If we innovate and attract new customers, it will lead to growth.
iPhoneやスマートフォンなどによってコンテンツ市場も爆発的に拡大し、そのコンテンツ制作を支える環境も構築しなければなりませんでした。制作はメインデバイス、仕上げは別のデバイスと、複数のデバイスを使いながら、さまざまな人とコラボレーションするには、プラットフォームを統合したクラウドが必要となる。そういった状況下では、それまでの『18カ月ごとに新商品を発表し、アップグレードを促す』ようなサイクルでは、イノベーションのスピードに追いつけなくなってきたのです。その時々の顧客のニーズに合わせ、求められるサービスを都度提供していく必要がありました
サブスクリプションモデルへ移行し、収益認識基準が変わることで一旦利益が下がるのは避けられないこととはいえ、やはり恐怖感は否めませんでした。けれども長期的にいかに事業を成長させていくか。そして顧客によりよいイノベーションや体験を届けられると説明しつづけることで、信頼を勝ち取っていくことができました。何より喜ばしく、また驚くべきことだったのは、サブスクリプションによって新規顧客比率が飛躍的に伸び、いまではその半数が新規顧客なのです