Square, Inc.を設立
2009年にJack Patrick Dorsey(1976年生〜Twitter創業者)とJim McKelvey(1965年生〜・吹きガラス職人)によってSquare, Inc.を共同創業した。2人は古くからの知り合いであった。Jim McKelveyはガラス工房を経営する職人で、かつてはソフトウェアの開発に従事していた。
中小店舗向けのクレカ決済サービスに着眼
クレカ決済の民主化を志向
Jim McKelveyはガラス職人として製品を販売をする中で、自分が運営する店でクレジットカード決済が使えないことに不満を抱えていた。ある日、ガラス製の蛇口を売り出し他ところ、評判だったため2000ドルに価格設定をしたが、クレカ決済ができないことで機会損失する経験もしていた。
Jim McKelveyは自らの決済の悩みをJack Dorseyに話したところ、決済インフラをビジネスとして作る方向が決まった。Jim McKelveyは自らがリアルな店舗を運営していたことから、お店でクレカ決済を可能にする端末とソフトウェア(iOS/Androidアプリ)の開発をスタートさせた。
クレジットカードの手数料に問題提起
Jim McKelveyはクレジットカード会社が、中小規模の加盟店に対して高額な決済手数料を導入していたことに疑問を呈した。クレジットカード会社からすれば、リスクの高い零細加盟店に対して手数料を高額に設定することが当たり前であったが、Jim McKelveyはこの構造を問題視。クレジットカード手数料を引き下げる仕組みを作れないかを模索した。
しかし、Square, Inc.は自らが包括型の加盟店として、店子を募集する構造について、VISA・Mastercardから内規違反で訴訟を起こされるリスクを抱えていた。Jim McKelveyはVISA・Mastercardに対して、適法であることを証明する必要があったが、無名のベンチャーであるSquare, Inc.のために、大手クレジットカード会社が内規を変更するわけがなく、Squareは面会すら許されなかった。
このため、創業期のSquare, Inc.は常にクレジットカード会社からの利用停止及び訴訟リスク抱えた状態で、ビジネスをスタートした。
Squareベータ版をリリース
プロダクト開発を最優先に
Squareはリアル店舗でクレジット決済を行うために、導入コストの抑制を目論んだ。そこで、高額なPOSではなくスマホアプリ(iPhone/Android)を端末として活用し、スマホでクレジットカードの情報を読み取る接続機器をハードウェアとして独自開発した。
ハードウェア「SquareReader」を開発
スマホでクレジットカードを読み取る端末「Square Reader」を、はんだ付けを駆使して独自に開発。イヤホンジャックでスマホに接続するインターフェイスを採用した。材料費はわずか97セントであった。すぐに量産するために、Jim McKelveyは中国の深センを訪問して、現地生産するための協力工場を確保した。
なお、イヤホンジャックによる信号の読み取りは、Apple社が想定た用途を違反している可能性があった。そこで、Twitterを創業した有名人であるJack Dorseyを経由して、Appleのスティーブ・ジョブズに面会を要請。実際には土壇場でキャンセルとなったが、Apple Storeから、Squareのアプリが削除されるリスクを抑えることに成功した。この経緯から、Square, Inc.とAppleの取引関係が発展し、AppleでSquare, Inc.の端末を扱うことになったと思われる。
iOS/Androidアプリ「SquareApp」を開発
SquareReaderはスマホでクレカを読み取ることに特化した端末で、データ連携をPOSではなくスマホアプリ(iOS/Android)で行う点に特徴があった。Appの利用は無料であった。
スマホアプリにおける技術的に最も困難な点は、スマホ上で署名を行うことであった。このため、アプリエンジニアは、指で署名を滑らかに可能にするアプリケーションを開発するなど、独自の技術開発に注力した。
社会保障番号による与信(2010年時点)
SquareAppの特色は、インストール時に米国内のSocialSecurityNumber(社会保障番号=SSN)の入力を必須とした点であった。理由は推察になるが、中小店舗がクレカ決済を導入する上での与信の問題を、社会保障番号の突合によってクリアしようとしたと推察される。すなわち、複雑な仕組みやデータが必要とされる与信プロセスを簡略化したという点で、Squareは画期的な仕組みを作り上げた。
赤字覚悟の決済手数料(2010年時点)
Squareの収益はトランザクションごとに発生する決済手数料2.75%のみであった。
このため、SquareReaderの端末は無料で供給。SquareAppで利用申請を出すと、後日、住所にSquareReaderが無料で郵送され、クレジットカード決済の利用が可能になる仕組みを採用した。
ただし、Squareからクレジットカード会社への手数料は、決済ごとの変動手数料に加えて固定手数料を必要とした。このため、Squareとしては、少額決済の流量が増えれば赤字になる契約構造であったため、高額決済を増やしていくことを宿命づけられた。
加盟店への入金サイクルを迅速化
店舗売上の精算のためには、U.S.Bankの口座が必須であり、売上計上から4〜5日を経て出金を可能とした。当時のクレカ決済としては、素早い入金サイクルであり、資金繰りが厳しい中小企業にとっては願ってもない仕組みであった。
スクエアの最初のカードリーダーにかかったお金は97セントだった。なぜなら私が手で作ったからだ。だから私はその全てについて話すことができる。厚みも、素材も。デザインも。 しかし、いまアントレプレナーになりたいという人は、アイデアをプレゼンして、シードインベスターから資金を貰って、アウトソーシングでプロトタイプを作りたがる。私は、それを正しいとは思わない。今、『いいアイデアを持っているから、投資して欲しい』と言う人には私は言いたい。『それでモノは?ないのなら今すぐ作りなさい』と。プロトタイプを作ってから資金調達をすると、景色が変わるからだ。私たちは資金調達が必要な時にはすでに完成品を持っていたから、全く困らなかった。たくさんのVCが次々に私たちに「出資したい」と会いに来た。 私たちは彼らにその場でクレジットカードを借りて、スクエアでカードを切って、『これがスクエアなんですよ』と実演して見せた。相手によって金額を変えてね(笑)。つまり私たちは起業家からお金を取って会っていた。