2025/3 売上高19,621億円YoY+27.4%
2025/3 営業利益371億円YoY+59.5%
2025/3 従業員-
創業1918
創業地東京都
創業者岩崎家(三菱)

三菱マテリアルは1918年に三菱合資会社の鉱業部門を分離して三菱鉱業として発足した歴史を源流に持つ会社である。戦前には三菱財閥の鉱山と炭鉱を一手に担い、岡山県の吉岡鉱山の1873年取得を起点に尾去沢・細倉・生野・明延といった非鉄金属鉱山を相次いで取得して日本有数の資源企業へと成長していった。戦後の過度経済力集中排除法の適用によって非鉄金属事業が太平鉱業として分離され、後に三菱金属へと商号変更を経て独立企業としての歩みを開始したが、1971年のニクソンショック以降の円高進行と鉱脈品位の低下によって国内鉱山の段階的な閉鎖を余儀なくされ、15年にわたる縮小の末に1987年までに主要鉱山の整理を完了する厳しい局面を辿った。

鉱山整理の完了が三菱金属と三菱鉱業セメントの長年の再合同への条件を整え、1990年に両社が合併して三菱マテリアルが発足する戦後の素材産業再編における歴史的な節目を迎えた。発足後は精錬・セメント・超硬工具を3本柱とする総合素材メーカーとして経営を展開し、シリコンウエハー事業ではSUMCOを設立するなど先端材料への展開も加速させた。しかし2017年12月のグループ会社品質不正の発覚を契機として事業ポートフォリオの絞り込みに踏み切り、セメント事業は2022年のUBE三菱セメント設立で切り離され、焼結部品や銅管なども売却された。現在は銅製錬と超硬工具を軸とする構造再構築を進めており、市況の追い風を背景に2026年3月期業績は大幅な上方修正を経て過去最高水準に到達しつつある。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
歴代社長
FY01
FY02
FY03
FY04
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
FY25
FY26
FY27
FY28
FY29
FY30
井手明彦
取締役社長
矢尾宏
取締役社長
竹内章
取締役社長
小野直樹
取締..
執行役社長
田中徹也
執行..
歴代社長
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
井手明彦
取締役社長
矢尾宏
取締役社長
竹内章
取締役社長
小野直樹
取締役社長
小野直樹
執行役社長
田中徹也
執行役社長

歴史概略

1873年〜1989三菱財閥の資源会社から鉱山閉鎖までの長い道程

吉岡取得から三菱鉱業設立へ至る形成の連鎖

三菱合資会社は1873年に岡山県の吉岡鉱山を買収して鉱山経営に正式に参入し、以後は尾去沢鉱山や生野・明延鉱山など日本有数の非鉄金属鉱山を相次いで取得していくことで資源企業としての基盤を着実に固めていった。石炭事業でも大夕張・高島・端島といった大規模な炭鉱を保有する形で事業の幅を広げていき、1918年には鉱業部門を分離独立させて三菱鉱業を正式に設立する形で組織体制の整備を進めた。三菱財閥の中核事業の一つとして三菱鉱業は戦前期の日本の鉱業界で極めて大きな存在感を長らく保ち続け、戦時中の資源統制の時期においても国家の資源供給を担う重要な役割を果たしていった。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

戦後の財閥解体の過程を経て、1950年には石炭事業が三菱鉱山に、非鉄金属事業が太平鉱業として正式に分離独立する組織再編が実施された。太平鉱業はその後に三菱金属へと商号を変更し、戦前から継承された技術蓄積と鉱山経営のノウハウを基礎として独立企業としての歩みを開始する形となった。三菱金属は尾去沢・細倉・生野・明延の四鉱業所を主力として事業を展開したが、いずれも従業員数千人を超える大規模事業所であり、地域雇用と密接に結びついた企業城下町型の事業モデルを抱えていた点が後年の縮小局面の難しさを規定する要素として機能することとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

1960年代には非鉄金属事業の枠を超えた多角化の動きが本格化し、独ワルター社との提携によって三菱ワルター工具を設立するなど超硬工具分野への進出が進められた。鉱山以外の事業基盤の構築にも着手することで収益源の分散を志向したが、この時点ではあくまで鉱山経営が会社の中心であり、超硬工具事業はまだ規模が限定的な補完事業として位置づけられていた。もっとも超硬工具分野への先行投資は、後年に本業の鉱山事業が縮小していく中で代替的な収益の柱として機能することとなり、結果的に戦略的な先見性を持った判断として評価される展開を辿ることとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

有価証券報告書 沿革三菱鉱業社史日本鉱業史

15年閉鎖が鉱業再合同の条件を生む帰結

1971年のニクソンショックによる円高と鉱脈の品位低下が同時期に重なったことで、三菱金属は1972年から国内鉱山の段階的な閉鎖に本格的に着手することとなった。下川・古遠部・松木・細倉・明延の五鉱山をまず子会社として分離し、1973年には生野鉱山を、1978年には尾去沢鉱山を順次閉山するといった具合に、国内非鉄金属鉱山の縮小が粘り強く進められていった。1985年のプラザ合意でさらに円高が急速に進行すると、1986年から1987年にかけて残る四鉱山も相次いで閉山に追い込まれ、15年という長い時間をかけた段階的閉鎖の過程がほぼ完了するかたちとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

鉱山閉鎖の過程では単に生産拠点を閉じるだけでなく、跡地に加工工場を新設するなど地域の雇用維持への配慮が粘り強く払われた点が三菱金属の経営姿勢の特徴として記憶されている。地方部に長年根付いていた企業城下町を一挙に崩壊させない形での緩やかな事業転換を志向する経営判断は、後の合併後の経営統合の円滑化にも資する組織文化として内部に受け継がれていった。鉱山閉鎖の経験は社内に深く刻まれ、不採算事業を長期の時間軸で段階的に整理するという三菱マテリアル独特の経営スタイルの基礎を形成する契機として機能することとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

国内鉱山の閉鎖がほぼ完了したことによって、戦後の財閥解体以来分離されていた三菱金属と三菱鉱業セメントの合併条件がついに整うこととなった。藤村正哉社長は合併について、歴代の経営者もいずれ一緒になりたいと考えていたものの合併の条件が整っていなかったと述べ、鉱山と炭鉱の整理完了こそが四十年越しの再合同を可能にしたことを明確に示唆した。鉱業の縮小局面がそのまま再統合の前提条件として機能するという逆説的な構造が、1990年2月の三菱マテリアル発足という戦後素材産業史における重要な節目を生む決定的な背景となったのである。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

有価証券報告書 沿革三菱鉱業社史日本鉱業史

1990年〜2017総合素材メーカーの拡大と品質不正が暴く構造疲労

三本柱拡大がもたらす事業分散の重み

1990年2月に三菱金属と三菱鉱業セメントが合併して三菱マテリアルが新たに発足し、戦後の過度経済力集中排除法で分離されていた旧三菱鉱業の非鉄金属とセメント事業が約四十年ぶりに再び一つの会社に統合される歴史的な節目を迎えた。1992年3月期には連結売上高九千百億円・経常利益二百五十億円を計上し、精錬・セメント・超硬工具を三本柱とする総合素材メーカーとしての本格的な経営を開始することとなった。長期計画「MAX21」では十年後の売上目標を一兆八千億円に設定するなど、各事業での投資拡大を志向する積極的な成長戦略が社内外に明確に打ち出された。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

シリコンウエハー事業では2002年に住友金属工業と事業統合を行ってSUMCO(当時の三菱住友シリコン)を設立し、半導体の中核素材である大口径シリコンウエハー分野で業界内での存在感を一段と高める動きを進めた。一方で米国テキサス州での銅製錬所新設計画は地元の環境保護運動の強い反対によって中止に追い込まれ、国際投資における地域社会との合意形成の難しさを経験する苦い局面も迎えた。2004年3月期には3期連続の最終赤字に転落するなど、合併後の事業拡大路線は必ずしも順調とは言えない経営環境が続き、資源価格の変動と事業ポートフォリオの重さが業績を圧迫する構造が徐々に鮮明になっていった。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

総合素材メーカーとしての三菱マテリアルは、合併前の両社が持ち寄った事業群の上にさらに新規投資を積み重ねる形で規模を拡大していったが、その過程で事業ポートフォリオが急速に肥大化し、経営陣がグループ全体を俯瞰する難易度が上がっていくこととなった。精錬・セメント・超硬工具・電子材料・加工部品・エネルギー関連など多岐にわたる事業を抱える構造は、市況変動への耐性を高める一方で意思決定の機動性を低下させるリスクを内包しており、後の品質不正事案の背景として指摘される構造的な論点を水面下に形成していった時期として位置づけられる。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

有価証券報告書三菱マテリアル社史日経産業新聞

不正発覚が事業絞り込みを迫る転換点

2017年12月に三菱マテリアルのグループ企業において品質不正事案が公表される事態が発生し、約二百社にまで膨張したグループの管理統制が十分に行き届いていなかった点が問題の根底にあるとの認識が社内外で広く共有されるに至った。合併や事業拡大を通じて肥大化した事業ポートフォリオが抱える構造的な課題が改めて浮き彫りとなり、経営陣に対して抜本的なガバナンス改革と事業の選択と集中の断行を求める内外の声が一気に強まる局面を迎えることとなった。品質不正はグループ全体の信用問題へと発展し、対顧客関係の修復と内部統制の立て直しに多大な経営資源を割く必要が生じた。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

2019年には子会社ユニバーサル製缶の独占禁止法違反による課徴金百三億円の納付命令を受け、2020年3月期には特別損失百四億円を計上する形で会計上も不祥事の影響が明確に表面化した。これらの一連の不祥事は、経営陣がグループ全体に細かく目を配りきれないほど事業が分散していたという構造的な問題の帰結であり、品質管理やコンプライアンスの問題は個別の不正事案の次元にとどまらず、三菱マテリアルという会社の事業ポートフォリオそのものの見直しを不可避の経営課題として浮上させる決定的な契機となった。これらの決定は長期的な事業戦略の観点から慎重に検討された結果であり、その後の経営判断における重要な指針として組織内に定着していくこととなった。

これらの一連の不祥事を経て、三菱マテリアルの経営陣は事業ポートフォリオの徹底的な見直しを避けて通れない局面に立たされることとなった。総合素材メーカーという自己定義を維持しながらの経営改革では問題の根本解決に至らないという認識が社内で共有され、事業の選択と集中という経営方針への転換が必然的な流れとして形成されていく。合併以来の拡大路線を本格的に反転させる時期が到来したのであり、2018年の社長交代と新たな中期経営戦略の策定がその実行手段として具体化していくこととなった。これらの決定は長期的な事業戦略の観点から慎重に検討された結果であり、その後の経営判断における重要な指針として組織内に定着していくこととなった。

有価証券報告書三菱マテリアル社史日経産業新聞

2018年〜2023銅製錬と超硬工具を軸とする再構築への転換

4事業縮小と超硬への集中が描く新ポートフォリオ

2018年には小野直樹氏が新社長に就任し、2020年3月には3カ年の中期経営戦略を正式に公表する形で三菱マテリアルの事業ポートフォリオ再構築が本格的に始動することとなった。焼結部品(ダイヤメット社)・銅管・セメント・アルミの4事業を縮小対象として明確に位置づける方針が示され、2020年12月にはダイヤメット社が売却されて事業再編損失二百二十三億円が計上されるなど、不採算事業からの撤退が具体的な数字を伴う形で着実に進められていった。ユニバーサル製缶も2022年に売却され、製缶事業からの全面撤退が完了する流れとなり、長年抱えてきた事業群の整理が次々と実行される局面が展開された。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

一方で注力事業として超硬工具分野への経営資源の集中投資が加速し、2020年4月には三菱日立ツールを二百四十九億円で買収する大型の意思決定が下された。切削工具の製品ラインナップを大幅に拡充することでグローバル市場での競争力を抜本的に強化する戦略が明確化され、超硬工具が三菱マテリアルの次世代の収益の柱として位置づけられる構造が鮮明になっていった。不採算事業からの資本回収と注力事業への再投資を組み合わせることで、総合素材メーカーから事業を絞り込んだ体制への根本的な転換が粘り強く進められていく局面が定着することとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

選択と集中の方針のもとで、三菱マテリアルは多数の事業を並列的に抱える総合型から、銅製錬と超硬工具を軸とする専業型へと段階的にシフトしていく戦略を鮮明に打ち出していった。超硬工具分野では原料のタングステンの調達リスクへの対応も経営課題として浮上し、H.C.Starck社買収後のリサイクル原料比率七割という特徴を活かした中国依存の低減戦略が長期的な競争優位の源泉として位置づけられていく。この選択と集中の方針は後年の業績改善の基礎として機能し、構造改革の実行が利益水準の回復につながる好循環を生み出す契機となった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

有価証券報告書三菱マテリアル 中期経営戦略UBE三菱セメント関連リリース

セメント統合が合併30年を集大成する帰結

2022年4月には宇部興産との折半出資によってUBE三菱セメントが設立され、三菱マテリアルのセメント事業は新会社へと正式に移管される歴史的な節目を迎えた。1990年の合併で取得したセメント事業を実に約三十年後に切り離す判断であり、1998年の販売統合から段階的に外部化してきた長い過程の集大成として位置づけられる経営決定であった。合併によって総合素材メーカーの一角を担ってきたセメント事業との決別は、三菱マテリアルの自己定義そのものを大きく書き換える象徴的な経営判断として市場でも広く注目を集めた。これらの決定は長期的な事業戦略の観点から慎重に検討された結果であり、その後の経営判断における重要な指針として組織内に定着していくこととなった。

UBE三菱セメントにおいては青森工場の閉鎖やキルンの停止など過剰設備の抜本的な整理が段階的に進められ、国内セメント需要の長期的な縮小傾向に対応する業界再編が本格化する局面が展開された。2023年3月期には三菱マテリアルは持分法投資損失八十三億円を計上する形でセメント事業の構造調整コストを会計上も認識し、統合新会社の経営改革が進捗する過程を外部から確認できる状況となった。セメント業界全体の再編と地域需要の縮小という構造課題の中での新会社の経営立て直しは、三菱マテリアルの連結業績にも当面影響を及ぼす論点として残存することとなった。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

2024年3月期の三菱マテリアルの連結売上高は一兆五千四百六億円・当期純利益二百九十七億円という水準で推移し、銅製錬と超硬工具を収益の中核に据えた現在の事業構造は1990年の合併発足時とは大きく異なる姿を示している。事業ポートフォリオの膨張と絞り込みを繰り返してきた三十年余りの長い歴史が、現在進行形の再構築の過程を強く規定しており、総合素材メーカーからの脱皮と専業プレイヤーへの変貌が経営の基本線として定着するに至っている。この再構築の過程で培われた構造改革の実行ノウハウは、後年の業績改善局面でも重要な経営資産として機能することとなる。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

有価証券報告書三菱マテリアル 中期経営戦略UBE三菱セメント関連リリース

直近の動向と展望

市況追い風と構造改革が重なる過去最高への上方修正

2026年3月期の業績見通しは銅価格・貴金属価格の歴史的な上昇と円安の進行を背景として大幅な上方修正を経ることとなり、経常利益計画は四百三十億円から七百六十億円へと三百三十億円の大幅な増額修正が2026年2月の決算説明会で発表されることとなった。為替差が百一億円、価格差が百八十七億円、数量差が十八億円、受取配当金が十三億円という内訳で、足元の金属価格上昇が金属事業の実力損益を大きく押し上げる局面が実現した。従来から毎年2Qと4Qに計上している実収差は百億円程度で安定的に推移し、現在の市況水準が維持される前提では来期も同水準の利益が留保されるという経営陣の見通しが示された。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

加工事業でもタングステン価格の上昇局面を捉えた原料価格の過去3カ月平均反映方式による差益計上が進み、中国の輸出制限によるタングステン入手難を背景とした中国依存度の低いMMCへの調達元切り替えの動きが増販につながる好循環も発生した。銅加工事業の第3四半期から第4四半期にかけては、銅価変動に伴う未実現損益の戻り益計上が見込まれ、3Q・4Qともに在庫評価影響を除く実力利益は二十億円程度で横ばいの見通しが示される状況となった。パンパシフィック・カッパー(PPC)への合流に伴うPL構造変化によって、銅価や為替の影響が営業外項目に集約される形への移行も進んでいる。この一連の動きは三菱マテリアルの事業基盤を形成する重要な局面として位置づけられ、後年の経営判断にも長く影響を及ぼすこととなった。

IR 決算説明QA FY25-3Q 2026/2/12IR 決算説明QA FY25-2Q 2025/11三菱マテリアル プレスリリース 業績予想修正 2026/2

特別損失370億円が象徴する改革の前倒し断行

2026年3月期には構造改革に伴う減損や事業撤退損失などを総計三百七十億円規模で計上する見通しが示され、前回予想の百五十億円を大きく上回る金額での抜本的な構造改革の断行が経営陣によって明言される形となった。社内での抜本的構造改革の精査が当初計画よりも前倒しで進捗しており、経済環境の追い風がある今期中に大きな構造改革を終えるべく実行計画の精緻化を加速しているという説明が繰り返し行われた。精査ができていないために当期純利益を二百億円に据え置いているのではなく、抜本的改革を前倒しで完了させるための意図的な積み増しであるという姿勢が投資家向けに明確に示された。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

買鉱条件の粘り強い交渉と並行して銅プレミアムの引き上げ交渉も進められており、トン当たり三百三十ドル水準での決着が達成できればTC/RC悪化分を穴埋めできるという見通しが示された。電子材料事業ではセンサーなどのデバイス関係の販売数量が3Qに集中して利益が大きく計上されたため4Qは反動減が見込まれるが、白金族価格の高騰の影響は短期的な変動の中で適切に管理される方針である。三菱マテリアルは合併以来の事業分散からの脱皮を徹底する過渡期にあり、2027年3月期以降は金属・銅加工・電子材料を軸とする専業型企業としての収益体質確立が経営の中心課題として位置づけられている。経営陣の長期判断の重要な布石として機能した。

IR 決算説明QA FY25-3Q 2026/2/12IR 決算説明QA FY25-2Q 2025/11三菱マテリアル プレスリリース 業績予想修正 2026/2

沿革

沿革一覧
4
三菱鉱業株式会社を設立
非鉄鉱山と炭鉱を併せ持つ財閥資源会社の発足構造
4
石炭・非鉄金属を会社分離
財閥解体で分離した非鉄事業が40年後に再合同する伏線
4
国内鉱山を経営分離・段階的閉山へ
子会社分離と15年の段階的縮小で完了した国内鉱山撤退
4acquisition
三菱鉱業セメントと合併・三菱マテリアルに商号変更
40年越しの再合同を可能にした鉱山・炭鉱の閉鎖完了
4divestiture
中期経営戦略を策定・事業ポートフォリオを入れ替え
品質不正が促した約200社の事業群の絞り込み判断
4
セメント事業を統合・UBE三菱セメントを発足
合併で取得した事業を30年後に切り離したセメントの帰結
6

重要な意思決定

19184
三菱鉱業株式会社を設立

三菱鉱業は三菱合資会社の鉱業部を分離して発足した法人であり、設立時点で非鉄金属と石炭の双方で国内屈指の鉱山群を保有していた。明治期に吉岡・尾去沢の非鉄鉱山と大夕張・高島・端島の炭鉱を取得し、直島製錬所で一貫生産体制を構築した経緯がある。非鉄金属と石炭の二本柱による資源会社という発足時の構造は、戦後の財閥解体で事業分離を求められる伏線となった。

19504
石炭・非鉄金属を会社分離

1950年の財閥解体により旧三菱鉱業は石炭と非鉄金属に分離されたが、1990年に三菱金属と三菱鉱業セメントが合併して再合同を果たしている。分離後の三菱金属は国内4鉱業所を主力に労働集約型の採掘事業を展開したが、この構造は1970年代の円高局面で競争力を喪失する要因となった。財閥解体による分離と40年後の再合同は、非鉄金属と石炭の構造変化が合併条件を規定した事例である。

1972
国内鉱山を経営分離・段階的閉山へ

三菱金属の国内鉱山撤退は、1972年の子会社分離から1987年の最終閉山まで15年を要した。即時閉鎖ではなく子会社として段階的に縮小する方式を採った背景には、地方立地の大規模事業所が抱える雇用問題がある。生野鉱山の跡地に加工工場を新設した対応は、閉山と雇用維持の両立を図る手法として特徴的である。プラザ合意後の急激な円高が最終的な閉山を促す契機となった。

19902
三菱鉱業セメントと合併・三菱マテリアルに商号変更

三菱金属と三菱鉱業セメントの合併は、1950年の財閥解体で分離された2社が40年を経て再合同したものである。合併が長年実現しなかった要因は、両社が国内の非鉄鉱山・炭鉱の閉鎖に経営資源を割かれ続けたことにあり、鉱山・炭鉱の整理完了が合併のタイミングを規定した。国内資源事業の撤退完了が合併条件を整えたという構造は、資源会社の事業転換における時間軸の長さを示している。

20203
中期経営戦略を策定・事業ポートフォリオを入れ替え

三菱マテリアルの事業ポートフォリオ見直しは、2017年の品質不正が契機となった。グループ約200社に膨張した事業を経営陣が管理統制できなかったという反省から、不採算事業の売却と注力事業への集中投資が打ち出された。焼結部品・銅管・セメント・アルミの4事業が縮小対象とされ、超硬工具への投資が強化された。品質不正という危機が事業絞り込みを促した構造は、不祥事が経営改革の契機となる逆説的な構図を示す。

20224
セメント事業を統合・UBE三菱セメントを発足

三菱マテリアルのセメント事業分離は、1990年の合併で取得した事業を30年後に折半出資会社へ移管するという帰結であった。1998年の販売統合を経て2022年に全面統合へ至る段階的な切り離しの過程は、合併で取得した事業の整理に長い時間を要する構造を示す。1606億円の投資認識と83億円の損失計上を伴っており、セメント事業の分離が財務面でも影響の大きい判断であったことを物語る。

全社の業績指標

三菱マテリアル:過去75ヵ年の売上高
連結単体
単位:億円
直近の売上高2025/315,406億円
出所: 会社年鑑、有価証券報告書
三菱マテリアル:過去75ヵ年の純利益
連結単体
単位:億円
直近の純利益2025/3297億円
出所: 会社年鑑、有価証券報告書
売上高分解(原価・販管・営利)億円
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32010/32011/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結
売上高億円10,4689,6479,4829,84811,43714,52116,59314,24111,19413,34014,40812,87314,14815,17314,17913,04115,99516,63015,16114,85118,11816,25915,40619,621
売上原価億円---8,1259,53112,46314,25512,5119,82111,41112,49710,94611,99213,13312,04311,04413,79914,69913,25413,12816,03014,49213,92517,954
売上総利益億円---1,7221,9062,0582,3381,7301,3741,9291,9111,9272,1562,0402,1361,9972,1971,9311,9071,7232,0881,7681,4811,666
販売費及び一般管理費億円---1,1811,2161,2711,3361,3791,2471,3561,3881,4021,4931,3211,4321,3991,4681,5621,5271,4581,5611,2671,2491,295
営業利益億円---5416907881,001351127573523525663719704598728369380266527501233371
営業外収益億円---209366589659418326435368433320313217228278324314383430183520486
営業外費用億円---245248305301369548444466214214221197186210186197203196430211255
経常利益億円-1911043615058081,0721,360400-95564425744769811724639796507496445761253541602
特別利益億円---182504191414357671394512128459385142791662893863358127
特別損失億円---3394601831671622052561542614271823574292602231,06730138144089229
当期純利益億円-613-269-5316458871474361-6661439636952656161328434613-728244450203298341
粗利率%---17.516.714.214.112.112.314.513.315.015.213.415.115.313.711.612.611.611.510.99.68.5
営業利益率%---5.56.05.46.02.51.14.33.64.14.74.75.04.64.62.22.51.82.93.11.51.9
経常利益率%-1.81.13.85.17.17.48.22.8-0.94.22.95.85.45.35.14.95.03.03.33.04.21.63.53.1
純利益率%-5.9-2.8-0.61.75.14.94.50.4-5.91.10.72.93.73.74.32.22.20.1-4.81.62.51.31.91.7
総資産額億円---14,20816,09417,73918,56317,32018,26418,37417,51918,11817,78518,98217,93418,96920,15119,38319,04120,35521,25018,91821,67623,753
自己資本億円---1,9693,0364,1124,4953,6463,4113,4423,5114,0524,5675,5085,5526,2136,8256,3365,0685,4525,8485,9336,5366,772
自己資本比率%---13.918.923.224.221.018.718.720.022.425.729.031.032.833.932.726.626.827.531.430.228.5
営業CF億円4215974088055581,1771,5411,1534541,1519151,0161,0291,0811,1871,1565071,40267578469452514589
投資CF億円-1,028-311-214-3129-748-1,109-1,105-884-603-483-885-449-424-300-266-840-862-669-1,018-32-440-1,030-794
財務CF億円944-613-197-509-512-3430-72251-122-842-363-693-423-1,205-157-110-476289415-5135329-132

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
セグメント別ROIC%
業績データ一覧
セグメント業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY09FY10FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
セメント億円---1,4901,6451,9831,8511,6681,6311,5101,5591,4391,5212,1351,9501,7981,9772,0382,0572,1322,078---
アルミ億円---1,3451,431----1,3401,4861,3681,4891,1131,2201,2971,324-------
銅事業億円---2,5233,5885,9969,6455,3044,1195,8295,9925,4306,2737,0166,0675,1317,514-------
加工億円---1,1711,479----1,1701,1511,0571,1701,2491,3081,1741,3391,3351,1651,1191,2821,3681,3571,442
先端製品億円---497--------------------
エネルギー・システム億円---831--------------------
その他億円---1,9902,5393,017-3,8352,6522,9223,5463,0913,1403,0592,9843,0403,178--2,1962,1481,2371,1261,153
電子材料億円----755----570675487555601650601663-------
加工事業億円-----1,1811,3901,262944---------------
アルミ事業億円-----1,523-1,5131,270---------------
電子材料事業億円-----8211,288659578---------------
高機能製品億円-----------------3,4763,1963,4454,6915,0704,7264,919
金属億円-----------------7,6996,5515,7037,7488,5508,15112,023
環境・エネルギー億円-----------------2,0822,192256170---
再生可能エネルギー億円---------------------354683
売上高(内訳なし)億円10,4689,6479,482---------------------
セグメント別利益
セメント億円---121156-185-695377140188167197205210197150621---
アルミ億円---7234----3844554751367530-------
銅事業億円---131230-461-59432378391365329270275363-------
加工億円---159200----1511231061401661509916815670-814514512385
先端製品億円---32--------------------
エネルギー・システム億円---20--------------------
その他億円---6579---49801011099699997283--9465-159221186
電子材料億円----48-----116-207352273632846-------
加工事業億円------224--52---------------
アルミ事業億円--------15---------------
電子材料事業億円------31-50---------------
高機能製品億円-----------------1321562169721832
金属億円-----------------23281329502299310412
環境・エネルギー億円-----------------104983139---
再生可能エネルギー億円---------------------10926
セグメント別利益率
セメント%---8.19.5-10.0-4.23.55.09.712.47.810.111.410.69.77.32.90.1---
アルミ%---5.42.4----2.83.04.03.24.63.05.82.3-------
銅事業%---5.26.4-4.8-1.47.46.37.25.84.74.55.44.8-------
加工%---13.613.5----12.910.710.012.013.311.48.412.611.76.0-0.711.310.69.05.9
先端製品%---6.5--------------------
エネルギー・システム%---2.5--------------------
その他%---3.33.1---1.82.72.93.53.03.23.32.42.6--4.33.0-12.919.716.1
電子材料%----6.4-----20.3-30.67.14.012.19.84.76.9-------
加工事業%------16.1--5.5---------------
アルミ事業%--------1.2---------------
電子材料事業%------2.4-8.7---------------
高機能製品%-----------------3.80.51.83.61.40.40.6
金属%-----------------0.34.35.86.53.53.83.4
環境・エネルギー%-----------------5.04.512.222.9---
再生可能エネルギー%---------------------28.518.531.3
セグメント別ROIC
セメント%---4.95.9---2.01.72.5--------1.8----
アルミ%---4.51.9----2.62.9-------------
銅事業%---4.45.8---1.18.07.7-------------
加工%---12.712.3----9.77.5---------0.46.76.55.2-
先端製品%---7.6--------------------
エネルギー・システム%---2.1--------------------
その他%---2.22.6---0.92.42.8--------4.56.7-5.97.4-
電子材料%----3.5-----7.2-15.1-------------
加工事業%---------3.4---------------
アルミ事業%--------0.8---------------
電子材料事業%--------2.7---------------
高機能製品%-------------------1.54.01.80.5-
金属%-------------------4.65.73.22.7-
環境・エネルギー%-------------------6.49.0---
再生可能エネルギー%---------------------3.12.7-

出所

有価証券報告書 沿革
三菱鉱業社史
日本鉱業史
有価証券報告書
三菱マテリアル社史
日経産業新聞
三菱マテリアル 中期経営戦略
UBE三菱セメント関連リリース
IR 決算説明QA FY25-3Q 2026/2/12
IR 決算説明QA FY25-2Q 2025/11
三菱マテリアル プレスリリース 業績予想修正 2026/2