1912年に立川勇次郎氏は、岐阜県大垣市にて揖斐川電力株式会社(現イビデン)を設立した。立川氏は美濃を拠点とする裕福な元藩主であり、地元で鉄道ビジネス(養老鉄道)などを立ち上げる実業家であった。そこで、地元の一級河川である揖斐川の水力を活用した発電所を設置し、水力発電に参入した。
ただし、当時は電力に対する需要がそもそも多くなかったため、立川氏は紡績工場を大垣周辺に誘致することで顧客を確保した。大正時代は繊維産業が発展しつつあり、安い電力を活用できる点で紡績会社にもメリットがあった。大垣には大日本紡績などの大企業も進出し、地域の経済を潤した。
この結果、高度経済成長期まで、大垣では繊維産業が発展して、イビデンの目論見通りの展開となった。
このため、立川氏は、大垣の経済発展に寄与した人物として、歴史に記憶されている。また、イビデンは本社を構える地元大垣においては「名門企業」とされた。