Gunosyの歴史

ニュースアプリ
Last Updated: | Author: @yusugiura
創業経緯 2012年〜2013年

大学院生がレコメンドに基づくニュースサービスを開発

2012
株式会社Gunosyを設立

東京大学の大学院に在学していた3名(福島良典、吉田宏司、関喜史)が、2011年にニュースの閲覧サービス「グノシー」を開発した。1日1回、25件の記事をユーザーに提示するサービスであり、ブラウザとメールで提供された。

ユーザーによって個別に記事がレコメンドされる点が新しく、Twitter、Facebook、はてなブックマークのログインアカウントと連携が可能であり、これによってレコメンドに必要なユーザー識別氏を取得できた。そして、SNSを通じた拡散によって、グノシーはユーザーに受け入れられるなど、SNSの普及がグノシーの成長を後押しした。

グノシーのヒットを受けて、2012年にグノシーを株式会社として設立する。2012年12月に共同創業者3名に対して、株式をそれぞれ1/3ずつ割り当てることで、会社設立時点で、資本面における共同創業者3名の立場は対等であったと推察される。経営面では福島氏が統括し、技術面では吉田氏(アプリケーション開発)と関氏(レコメンド開発)の2名がリードした。

2012年にはiOS/Android向けのアプリも開発し、スマホアプリ企業としての色彩を濃くした。この時、グノシーのデザインは、同じく会社が設立されたばかりのグッドパッチが請け負い、グノシーの成長とともにグッドパッチの名前も広まった。

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アプリとレコメンドの相性の良さ

今でこそレコメンドは当たり前の機能であるが、2012年の当時はAmazon、iTunes、Netflixなどの特定企業だけが採用する、珍しい技術であった。レコメンドの技術は、スマホが台頭したことによって、検索の手間を省くために広まっていったが、2012年当時はスマホの普及過程でありニーズも少なかった。

だからこそ、当時の大学院生が開発したレコメンドシステムには価値があった。開発の中心人物である関氏は、博士論文で「ニュースメディアの特性を考慮した ニュース推薦システムの構築」を公表しており、グノシーの技術アイデアを公表している。

特に、スマホアプリでは、アプリをインストールした時点で、サービス提供者のDBにスマホ端末の(=個別ユーザー)unique_keyに保存し、2回目以降のアクセスもid照合によって、識別できることから、レコメンドがしやすいという事情もあったと推察される。

したがって、レコメンドに重要なのはパーソナライズであるが、「識別子(Identifier)」を一意に固定しやすいスマホアプリに着眼したからこそ、グノシーはレコメンドの精度を高めることができたと思われる。ブラウザでは識別子の取得は、一時的なSessionを使用する方法はあるものの、永続化のためにはどこかでログインが必要であることから、認証認可を省くというユーザービリティーの確保が非常に難しい。

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2013
木村新司氏などに第三者割当を実施。共同創業者の株式が40%超希薄化

2013年を通じてグノシーは資本政策を大きく転換した。2012年12月に行われた増資によって、共同創業者3名がそれぞれ1/3の株式を保有していたものの、2013年2月の第三者割当増資によって株主構成が大きく変化した。

この増資では、3160万円を木村新司氏など(大半が木村氏と推察)から調達したが、問題は評価額であった。この時のグノシーの評価額は7240万円と推定され、この増資に参加した株主がグノシーの株式の43%を保有することになった。加えて、この増資には共同創業者3名が割当に参加しておらず、結果として創業者の株式持分が希薄化した。さらに、共同創業者の株式が1/3に分散していたこともあり、この増資によって木村氏がグノシーの筆頭株主(推定超40%保有)となった。

筆頭株主である企業経営者にとって、普通株式を第三者に過半数近くを付与することは「経営難や諸事情により事業譲渡を見据えている」場合に発生するが、グノシーのように成長企業では珍しい資本政策となった。そして、この資本政策によって、共同創業者は、自らグノシーの議決権の過半数と、株式上場時における売り出しによる利益を、実質的に放棄する形となった。

すなわち、グノシーの共同経営者は、評価額を下げたことによって、数千万円の資金調達には成功したものの、自らの株式を希薄化させてしまった。そして、2015年の株式上場時に、共同創業者の株式持分が極端に低いことが公表され、様々な憶測をよんだ。

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グノシーの資本政策に関する賛否

創業期におけるグノシーの資本政策に関しては、賛否がある。公表されている増資の経緯を見ても、A種優先株の発行以前は普通株式を特定の個人に付与しており、この行為が共同創業者にとっては後戻りできない資本政策を決定づけてしまった。

この象徴が、株式上場時点における共同創業者の株式持分が極端に低いことである。グノシーの共同創業者3名が上場する前に保持していた株式比率は、福島良典氏3.53%、関喜史氏3.53%、吉田宏司3.53%であり、全体の10%に過ぎない。

では、誰がグノシーの所有者であったかといえば、木村新司氏であり、1の部で公表された株式持分は41.12%である。すなわち、共同創業者が会社を所有せずに、木村新司氏(元起業家でグリーへの会社売却の実績あり)という個人がグノシーの筆頭株主で、過半数近くの株式を保有している構造があった。そして、一時期、木村氏はグノシーの経営執行にも関わっていたという。

したがって、グノシーの資本政策について、ある一面を見れば「共同創業者が会社の議決権の希薄化を許容した」であるし、別の一面を見れば「木村氏の投資によってグノシーの経営が良い意味で加速された」と捉えることができる。

ただし、確実に言えることは、リスクをとった共同創業者3名が上場時に保有していた株式が1人につき3.53%という事実は、さすがにリターンとして少なすぎる点だろう。株主代表訴訟の対象者であることを勘案しても、割りに合わない。

とはいえ、希薄化に合意したのは共同創業者3名であるから、リターンが少なすぎることに対して良識的に問題があるということでもない。自らの意思決定による自己責任であろう。逆に、金銭的リターンを最重要KPIとする投資家の価値観からすれば「卓越した資本政策」である。

立場によって最適解が異なるからこそ、資本政策は、つくづく難しい。

爆速成長 2013年〜2019年

創業直後のテレビCMへの投資を契機に爆速成長へ

2013
A.B種優先株式で15.5億円を調達。テレビCMへの出稿を開始

2013年にグノシーはKDDIと業務資本提携を締結。優先株式の発行による第三者割当増資によって、KDDIやベンチャーキャピタルから累計12億円の資金調達を実施した。2013年当時、設立1年目のベンチャー企業が10億円規模の資金調達をすることは珍しく、注目を集めた。

資金調達の用途は、テレビCMの放映によるアプリユーザーの獲得にあった。グノシーはテレビCMへの出稿を開始し、2014年5月期を通じて、テレビ広告に年間12億円、ネット広告に年間3億円をそれぞれ広告費として投資したと推察される。この結果、グノシーは年間500万DLを突破し、ユーザーの獲得に伴う広告収入の増大をもたらした。

業績面では、広告収入が売上高として計上され始めた。2014年5月期のグノシーの売上高は3.5億円に対して、当期純損失13億円を計上した。

ただし、借入ではなく増資による資金調達によって、財務基盤は安定しており、自己資本比率は88.2%を確保するなど、財務リスクの毀損を被らない範囲での思い切った広告投資であった。

2014
C種優先株式で12億円を調達。テレビCMへの出稿を継続

テレビCMによるアプリのアクティブユーザーが急増したことを受けて、2015年度を通じて、引き続き広告宣伝に投資を継続するためにC種優先株式の発行による資金調達を実施した。この段階でグノシーの評価額は100億円を突破し、ニュースアプリに対する期待が高騰した。

2015
東証マザーズに株式を上場。48億円を資金調達

2015年にグノシーは東証マザーズへの株式上場を果たした。大学生のベンチャー企業が、会社設立から3年目の株式上場を果たしてスピード上場となった。

一方で、新規上場の有価証券報告書(1の部)で公表された、共同創業者の株式持分の比率が3%台である事実に衝撃が走った。

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業績低迷 2019年〜2021年

SmartNewsの台頭や広告規制により大幅減収へ

2019
福島氏が子会社LaryeXをMBO。グノシーは売却益9000万円を計上

共同創業者である福島氏は、2019年にグノシーの子会社であったLayerX(グノシーとAnyPayの50:50合弁会社)の株式を取得し、独立した。2019年時点のLayerXの売上高は1.04億円に対して営業利益が100万円であり、MBOによってグノシーのLayerXの株式保有比率は50%から5%に低下した。

2020年5月期にグノシーはLayerXの売却価格1.3億円計上(このうち、流動負債・非支配株主持分・投資勘定を控除した売却益は0.9億円)しており、この金額水準で福島氏がLayerXの株式を取得したと推察される。

これを受けて、福島氏はグノシーの経営陣から退任。代わりに、筆頭株主である木村新司氏(2021年度5月期末時点で株式の23.38%を保有)がグノシーの代表取締役会長に就任した。

なお、2019年5月期にグノシーは売上高120億円に対して純利益20億円を計上しており、業績は好調に推移した。

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2021
広告審査の厳格化により大幅減収

2020年以降、グノシーの主要な収入源であった広告事業による収益が低下し、2021年5月期までの2期連続で連続減収を計上した。利益も3.8億円へと低下し、事業効率が悪化したためグノシーの株価も低迷した。

そもそもの問題は、グノシーの収入源である広告における審査の厳格化が影響している。グノシーの売掛金の計上先は(2015年に開示された情報をもとにすると)セプテーニ、サイバーコミュニケーションズ、CyberZなどの広告出稿主(広告枠の買付)であり、「グノシーのアプリに広告を送信したい」という出稿主と密接に関わっている。そして、これらの広告の出稿主は、グノシーの広告において不正な広告が配信されていたことを問題視し、グノシーへの広告配信を縮小した。

この結果、木村新司氏の代表取締役会長の就任以来、グノシーの収益力は大幅に低下した。

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定量KPIの行き着く先

レコメンドの難しさは、閲覧数やクリック数といった定量面をKPIに置いた場合、ニュースアプリにおいては、コンプレックス系(美容・健食)、ゴシップ系、エロ系といった広告配信に行き着くからである。グノシーに限らず、Youtubeなどでも同様であリ、アクセス数が生命線の広告媒体の宿命でもある。

これらのコンテンツは人間の欲望に根ざしており、数値上の効果も大きいものの、ユーザーにとっては「低俗なコンテンツ」と捉えられるリスクも背負う。よって、短期的には許容されても、長期的には広告主の離反を招く恐れも高い。

グノシーの広告収益の低迷は、KPIを愚直に追った結果として、逆説的に起こしてしまった惨事と言えるかもしれない。

KPIにおける数字ばかり追って、長期的な顧客離れを起こすことは、ネット系企業には良くあることで、極端な数字至上主義の企業でよく観察される。例えば、それなりの時価総額で評価されているネット企業(某ゲーム会社など)でも、思い当たる節があるが、どうか筆者の勘違いであってほしい。

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