2008
5月

三菱商事とRHJ Internationalが合弁設立

PwC出身のコンサルタントが経営

コンサルタントとして著名であった倉重英樹氏(PwC日本法人元会長・1990年代のPwC日本法人の成長の立役者)は、RHJインターナショナル(49%)と三菱商事(51%)の合弁会社として設立されたシグマクシスの代表取締役CEOに就任した。

設立に伴って三菱商事は25億円を合弁会社に出資した。三菱商事を顧客としつつも、コンサルティング会社として全方位の顧客を抱えることを見据えた。2013年の上場以前の主な顧客は、売掛金ベースで「三菱商事」「イオンクレジットサービス」「日本IBM」「シュッピン」「日本航空」の5社。

経営におけるITの重要性にいち早く着眼

倉重CEOの狙いは、インターネットの普及によるITの重要性の増加と、それに伴うSIerの質的変化にあった。企業経営においてITと経営を融合させる時代が到来することを予見し、システム構築をSIerに丸投げするのではなく、ITコンサルとSIerと事業会社が三位一体となってITを経営に導入する時代が到来することを予想した。

競合としてアクセンチュアを想定

倉重CEOが想定した競合はアクセンチュアとIBMの2社(ただし日本IBMは顧客でもあった。取引内容は非開示)。IT系コンサルティング会社としては後発となった。なお、日本IBMはITソリューションで自社製品を多く抱えることから、提案で忖度が働くという不利な状況にあったため、実質的な競合は独立系のアクセンチュアであったと推察される。

人員の大量採用計画を策定

売上計画は、コンサルティングによる人月稼働を前提とし、社員1人あたり2000万円の売り上げ(人月160〜170万円)を想定。設立1年目に従業員数900名(2009/3)、設立5年目に従業員数2000名(2013/3)の採用を目指した。

なお、この計画は未達に終わっている。

証言
倉重英樹氏(シグマクシス代表取締役CEO)

いま企業が求めているのは、ITの活用ではなく、経営とITの一体化。その問題解決に向けて最後までしっかりとお供させていただくコンサルティング会社を設立した

2010年5月
賃金決済法対応サービスを提供
2011年7月
日本オラクルと不正検知ソリューションを共同開発

金融機関向けの不正検知サービス(オンライン取引のリアルタイム検知)を強化。2011年時点で「金融犯罪対策チーム」を発足して20名で対応。

決算
シグマクシスの業績
2012年3月期(単体)
売上高
72
億円
当期純利益
4.58
億円
2013年3月
三菱商事との取引開示
2013年3月
イオンクレジットサービスとの取引開示

有価証券報告書において、販売高の10%以上を占める相手先としてイオンクレジットサービスを開示。クレジットカードの不正検知など、システム周りの開発のコンサルティング業務を請け負っていたと推定される

決算
シグマクシスの業績
2013年3月期(単体)
売上高
102
億円
当期純利益
12
億円
2013年9月
大株主の異動(RHJ撤退)

IIJ(インターネットイニシアティブ)とTISがシグマクシスに資本参加した。この時、シグマクシスは増資を行っていないため、大株主による株式の異動が発生したと思われる。2012年にRHJ Internationalが日本事業から撤退したタイミングであり、大株主が移動したと推察される。

決算
シグマクシスの業績
2014年3月期(単体)
売上高
97
億円
当期純利益
7.23
億円
2013年12月
東証マザーズに株式上場
2014年10月
株式会社SXAを買収

旧T-Modelインベストメントを買収。商号を株式会社SXAに変更し、M&A関連業務(アドバイザリー、DD、PMIを一気通貫)に新規参入した。

決算
シグマクシスの業績
2015年3月期(連結)
売上高
82
億円
当期純利益
-3.21
億円
2014年10月
PlanDoSeeSystemに出資

ホテル業界に特化したクラウド業務システム構築のため、Plan Do Seeのシステム子会社における49%の株式を取得

決算
シグマクシスの業績
2015年3月期(連結)
売上高
82
億円
当期純利益
-3.21
億円
2014
3月

日本航空の基幹システム刷新PJに常駐支援

2014年から2017年にかけて、シグマクシスは日本航空向けの基幹システムの刷新「SAKURAプロジェクト」にコンサルティング会社として参画(常駐支援)した。旅客系基幹システムの全面刷新プロジェクト(総費用800億円)であった。

3年間の構築期間を経て2017年11月に稼働。基幹システム稼動後もシグマクシスはJALから定期的な受注(内容非開示)を受けており、2010年代を通じて最大の取引先となった。

FY2015 日本航空向け販売高 10.84億円

FY2016 日本航空向け販売高 13.89億円

FY2017 日本航空向け販売高 13.72億円

FY2018 日本航空向け販売高 14.29億円

FY2019 日本航空向け販売高 17.20億円

決算
シグマクシスの業績
2014年3月期(単体)
売上高
97
億円
当期純利益
7.23
億円
2015年3月
最終赤字に転落

非稼動人員の増加により最終赤字に転落

決算
シグマクシスの業績
2015年3月期(連結)
売上高
82
億円
当期純利益
-3.21
億円
2016年1月
ローソンデジタルイノベーションに出資

ローソンのIT子会社「株式会社ローソンデジタルイノベーション」の設立にあたって、同社に34%出資(残り66%はローソンが出資)。ローソンにおける次世代システムの構築支援を行うことを公表した。

その後、2020年にシグマクシスは同社の株式をローソンに譲渡(FY2020売却益1.4億円)し合弁会社から撤退した。

決算
シグマクシスの業績
2016年3月期(連結)
売上高
95
億円
当期純利益
3.4
億円
2018年6月
三菱商事が保有株式を完全売却
2018年6月
富村隆一氏が代表取締役CEOに就任
2019年2月
モンスターラボに出資

ITシステムの受託開発会社であるモンスターラボに出資。同社は発展途上国に開発拠点を展開して、日本企業向けにSIerとしてサービスを提供。創業者はPwC出身の鮄川宏樹氏である。

その後、モンスターラボは2023年3月に東証マザーズへの上場を公表。上場直前のモンスターラボの株式保有比率は0.64%(2023/5/9時点の時価総額は約370億円)であり、含み益を確保したと推察される。

決算
シグマクシスの業績
2019年3月期(連結)
売上高
133
億円
当期純利益
9.09
億円
2021年10月
伊藤忠と業務資本提携を締結

伊藤忠傘下のIT企業(伊藤忠テクノソリューションズ、ベルシステム24)との連携を深めるために業務資本提携を締結。

決算
シグマクシスの業績
2022年3月期(連結)
売上高
157
億円
当期純利益
17
億円
2021年10月
シグマクシスHDに商号変更

伊藤忠の資本参加とともに、シグマクシスは経営体制をホールディングス(持ち株)に移行。戦略面では大手企業をクライアントとして重視する方針を打ち出し、アクセンチュアなどの先発企業を追随した

決算
シグマクシスの業績
2022年3月期(連結)
売上高
157
億円
当期純利益
17
億円
2023年1月
SXAの株式を売却(MBO)

2021年以降のシグマクシスはHD化によって、大企業のクライアントを重視する一方、SXAは中小企業向けがクライアントであり戦略に相違が生じた。そこで、SXAの経営陣はMBOによる株式買取を決定。シグマクシスはSXAの株式売却を決定し、M&A分野から撤退した。譲渡額は非開示