シリコンバレーから帰国した土屋尚史氏は、2011年に株式会社グッドパッチを設立した。
デザイナーを自社で雇用し、当時としては珍しかったソフトウェアに関するデザインのサービス提供を開始し、顧客企業のデザインパートナーとして事業展開を助けた。
シリコンバレーから帰国した土屋尚史氏は、2011年に株式会社グッドパッチを設立した。
デザイナーを自社で雇用し、当時としては珍しかったソフトウェアに関するデザインのサービス提供を開始し、顧客企業のデザインパートナーとして事業展開を助けた。
グッドパッチは創業直後の2011年から、ニュースアプリを開発するGunosyを顧客としてUX/UIの改善提案を行っていた。
Gunosyとの取引における、もともとの発端は、当時サンフランシスコのbtraxでインターンとして働いていた土屋氏と、Gunosyの創業メンバーで当時は学生だった関喜史氏が、偶然シリコンバレーで知り合ったことに始まる。この当時は、Gunosyは株式会社として設立されておらず、お互いに面識ができた段階であった。
その後、2011年にGunosyはニュースサービスを開始し、関氏からのローンチの連絡を受けて土屋氏の知るところとなったが、ロゴがパワーポイントでデザインされるなど、UX/UIが洗練されていない状態であった。そこで、土屋氏は、大学生が作り上げたGunosyに対して、デザインで手伝えるかもしれないと伝えてアドバイスをし始めたのが、両社の取引の始まりであった。当初、土屋氏は大学生を相手にお金を取ることについて、気が引けたらしく、無料でデザインのアドバイスを行なったという。
この経緯から、グッドパッチはGunosyの創業期からデザインの改善に関わり、iOS・Android向けのスマホアプリのUX/UIにも携わった。洗練されたUXによってGunosyはTwitterでバズり、同時にデザインを手がけたことがグッドパッチであることが知れ渡った。この結果、グッドパッチに対する新しい仕事の問い合わせも相次ぎ、能動的に営業をしなくても顧客を獲得できる状態になった。
その後、2015年までにグッドパッチはマネーフォワードを顧客として抱えるなど、当時の主要なスタートアップと取引を行い、顧客企業の成長とともに、グッドパッチも業容を拡大した。
2015年からドイツの現地法人の責任者およびグッドパッチの取締役を歴任。ドイツ展開のキーマンであった
デジタルガレージの子会社「DGインキュベーション」から資金調達を実施
2015年にグッドパッチは、B種優先株式の発行により3.9億円の資金調達を実施し、将来の株式上場を視野に入れた。
当時、デザイン会社は従業員数名のブティックないし個人事業主の携帯が一般的であり、グッドパッチのように株式上場を目指すデザイン会社は奇特な存在であった。
グッドパッチは積極的にデザイナーの採用を行い、2016年3月期末には従業員数56名となり、大規模なデザイン会社となった。
2017年にグッドパッチは、C種優先株式の発行により4.0億円の資金調達を実施した。推定評価額はB種優先株を発行した際の26億円から、38億円へと向上した。
事業面では、Gunosyやマネーフォワードといった顧客が株式上場を果たすなど、グッドパッチのデザインに対する評判も高まった。
このため、引き続きグッドパッチは社員の採用を積極的に行うことで業容の拡大を目論み、2018年3月期末の従業員数は94名に達した。
2018年ごろにグッドパッチは、従業員50〜100名の規模へと拡大したものの、組織における統率が取れなくなり年間の離職率が40%に及ぶ危機に陥った。当時の従業員のVorkersにおける書き込みを見ると、評価制度や給与に対する不満が多く、スマホ時代の到来により急騰していたデザイナーの市場価値と、グッドパッチ社内の社内評価のギャップの問題も存在したと推察される。
グッドパッチにおける離職率の高い状態は2年間続いたが、UI/UXの重要性が高まる市場成長によって、事業継続が困難になることはなかった。その後、マネージャー層の交代が進んだことや、新卒採用した社員が自発的にグッドパッチへの愛を表明したことにより、社内の空気が徐々に好転し、組織崩壊を食い止めることに成功したという。
組織の改善効果の測定については、リンクアンドモチベーションと契約をした上で改善ツールを導入し、その数値の改善をもって、定量的に改善されたことを示している。
2021年にグッドパッチは東証マザーズへの株式上場を果たした。
しかし、幹事の証券会社に提示された評価額は約40億円であり、資金調達額は4億円に限られてしまった。ところが、株式上場後のグッドパッチの時価総額は200億円で推移しており、結果としてグッドパッチの株価は過小評価された。これは、本来の時価総額の10%である20億円と、実際の調達額4億円の差分である16億円の機会損失を被ったことを意味する。
このため、東証マザーズへの上場における証券会社の評価姿勢が問題視されることになり、2021年に公正取引委員会が調査に乗り出した。しかし、すでに株式上場を果たしてしまった、グッドパッチは市場の歪みの被害者になってしまった側面もある。
2021年にグッドパッチは第三者割当増資による24億円の資金調達を発表した。グッドパッチの上場前の評価額は40億円であったが、その後の時価総額は200億円台で推移しており、企業価値が高い状態で大規模な資金調達を試みた。
ただし、株式上場直後の第三者割当による増資によって、9.9%の株式が希薄化することから既存株主の価値が低下することを恐れた投資家にとって、ネガティブな反応を示した。このため、第三者割当増資の発表とともにグッドパッチの株価は暴落し、TwitterではグッドパッチのMSワラントによる第三者割当増資に関する話題が「炎上」した。
ただし、その後、グッドパッチの株式は買い支えられ、数年スパンではフラットな水準で推移している。
webページの企画制作会社「スタジオディテイルズ」を買収し、デザイン領域の強化を目論む。買収により、のれん5.7億円を計上。同社の売上高3.02億円・当期純損失0.13億円(赤字)。アドバイザリー費用は0.43億円
出資比率は丸井50%・グッドパッチ40%。マルイの事業展開におけるUXを支援
Goodpatch GmbH(従業員数26名)の解散を決定。減損損失0.47億円および事業整理損0.80億円を計上