TIS の歴史

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1971年、三和銀行系60社の共同出資により大阪で発足。東洋コンピュータサービスとの合併、コマツソフト取得、インテックHDとの統合によるITホールディングス設立までの沿革と経緯を執筆。

創業

1971年

母体

三和銀行系60社共同出資

創業地

大阪市

直近売上高(2026/3)

5,965億円

長期業績と転換点(1997/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ1971年に三和銀行系60社の共同出資で東洋情報システムを設立したのか
A 汎用機が1台数億〜十数億円を要した1970年前後、単独で保有するより複数企業で共同利用する方が経済合理性を持ったためである。1971年、三和銀行を中心とするグループ60社が資本金6億円を出資し、東洋情報システムを設立した。三和グループ向けの計算受託から事業を始めた同社は、系列の取引銀行が抱える顧客を初日から引き受け、銀行・カード・信販という金融系の顧客基盤の上に立つ独立系SIerとなった。
Q なぜ2008年にインテックと経営統合し規模拡大を選んだのか
A 100億円超の案件1件で独立系SIerの財務が傾く構造が、JCB案件で露わになったためである。2004年に受注したJCBの基幹刷新「JENIUS」が長期の開発遅延で炎上し、2007年3月期に受注損失引当金51億円を計上、追加コストは80億円に及び、最終損益は8.1億円の赤字に転落した。TISが出した答えは規模だった。2008年4月にインテックと共同持株会社ITホールディングスを設け、2011年には3社合併で本体を拡大し、1件の損失をグループ全体で吸収できる規模を整えた
Q なぜ2024年に決済・東南アジア・量子へ約1,000億円を集中させたのか
A 系列向けの計算受託から国内最大級の独立系SIerへ膨らんだ会社が、資本配分の先を国内の受託開発の外へずらしたためである。2024年5月、TISは長期経営方針「グループビジョン2032」を策定し、2027年3月期までの3年で約1,000億円の成長投資を決済・東南アジア・量子の3領域に集中させる計画を示した。決済では凸版印刷と組んだモバイルWalletとSequent、東南アジアではタイのMFECを子会社化して足場を築いた

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1971年〜 三和銀行系の東洋情報システム設立とJCB案件炎上による最終赤字転落

三和銀行系60社による共同電算機センターとしての出発

1971年4月、株式会社東洋情報システムが三和銀行を中心とするグループ企業60社の出資により資本金6億円で設立された。1970年前後、汎用機(メインフレーム)コンピューターは1台あたりの導入費用が数億円から十数億円に上る高額の投資で、単独企業が自前で保有するよりも複数企業による共同利用が経済合理性を持っていた。三和銀行はこの共同利用センターを系列企業に提供する位置に立ち、東洋情報システムは三和グループ向けの計算受託サービスから事業を始めた。系列内の取引銀行であった三和銀行のクレジットカード会社JCBとは初期からの取引関係が生まれ、後年のTISのクレジットカード・信販系システムの強みの源流となった。三和系の系列出資という出自は、銀行・カード・信販という金融系の顧客基盤を初日から付与する効果を持った。

1975年10月、東洋情報システムは東洋コンピュータサービスを合併[1]した。シンクタンク事業(調査業務)を主軸としていた設立期は、1973年の石油ショックによる経費削減で需要が縮小し、景気変動に左右されにくい事務計算サービスを軸に置く必要に迫られた。事務計算サービスを提供していた東洋コンピュータサービスとの合併は、調査業務から計算受託への事業重心の切り替えにあたる。同月には東京支社を新設し、関西の三和グループ系から首都圏顧客へ事業範囲を広げる体制も整えた。1984年12月には東京第一センターを新設し、首都圏の計算受託需要を捉える拠点を整えた。

大証・東証上場と1990年代の業績低迷

1987年11月、東洋情報システムは大阪証券取引所第2部に株式を上場し、設立から16年で上場企業となった。1990年2月には東京証券取引所市場第2部に上場し、1991年9月には東証・大証[2]の市場第1部へ指定替えとなって、大証上場から4年足らずで1部企業の地位に到達した。1980年代後半は日本企業の汎用機需要が拡大し、ホストコンピューター向けの計算受託・システム開発の市場が成長していた。東洋情報システムの売上高は1980年3月期の62億円から1989年3月期の472億円へ約10年で7.5倍に拡大し、ホストコンピューター市場の成長を取り込んだ。1990年3月期には売上高560億円に到達し、創業以来の急成長の到達点を打った。

1993年3月期、東洋情報システムは減収決算を計上し、急成長に終止符を打った。1990年代前半は大企業向けシステムが自社内製化からSAP等のERPパッケージへ移行する転換期で、内製化支援を主力としていた同社は市場縮小の影響を直接受けた。1990年代後半まで業績低迷が続き、ERPのカスタマイズに活路を見出すまでの数年間は事業の方向転換に時間を要した。2000年4月には小松製作所の子会社・コマツソフト[3](現 クオリカ)を買収し、製造業系の顧客基盤を取り込む布石を打った。UFJグループに属していた東洋情報システムはもともと金融系のシステムに強い一方で製造業には弱く、コマツソフト買収は製造業のノウハウをグループ[4]内に取り込むと同時にコマツという大口ユーザーを獲得する狙いを持っていた。

2001年1月には商号を「TIS株式会社」に変更し、東洋情報システムから略称ベースの商号への切り替えで企業ブランドを再定義した。商号変更は1990年代の業績低迷からの脱却を社外へ示す節目にあたる。同年に創業30周年を迎えたTISの船木隆夫社長は、2000年4月に始動した中期経営計画のもとで、当時700億円程度だった売上高をまず1500億円に[5]、さらに2010年には5000億円に引き上げる目標を掲げた。2002年2月にはアウトソーシングに強いアグレックスの株式を買い増して子会社化し[6]、規模拡大の第2弾とした。

  • 週刊東洋経済(2002年9月7日号)
    • [5]船木隆夫TIS社長「うちは01年に創業三〇周年を迎えた…だからとにかく売り上げ一五〇〇億円を目指そうよ」「これから毎年一五%、複利で成長していけば、10年には五〇〇〇億円になりますよ」=2001年創業30周年・2000年4月からの中期経営計画で売上高700億円程度→1500億円→2010年5000億円の目標
    • [6]TISは翌02年2月に株を買い増し、アウトソーシングに強いアグレックスを子会社にした
    • [2]1990年2月 東京証券取引所市場第二部に株式を上場、1991年9月に東証・大証の市場第一部へ指定替え
    • [3]2000年4月 コマツソフト株式会社の株式を取得(現 クオリカ株式会社)
  • 週刊東洋経済(2002年9月7日号)
    • [4]船木隆夫TIS社長「われわれの業界の場合、企業の価値というのは顧客基盤と技術だと思う」とし、UFJグループのTISは金融系に強く製造業に弱いためコマツソフト買収で製造業ノウハウとコマツという大口顧客を得る狙いだったと解説
    • [5]船木隆夫TIS社長「うちは01年に創業三〇周年を迎えた…だからとにかく売り上げ一五〇〇億円を目指そうよ」「これから毎年一五%、複利で成長していけば、10年には五〇〇〇億円になりますよ」=2001年創業30周年・2000年4月からの中期経営計画で売上高700億円程度→1500億円→2010年5000億円の目標
    • [6]TISは翌02年2月に株を買い増し、アウトソーシングに強いアグレックスを子会社にした

JCB案件炎上と2007年3月期の最終赤字転落

2004年、TISはJCBから基幹システム刷新プロジェクトを受注した。10年前に開発した基幹システムの入れ替えで、ハードウェアは日本IBMの「IBM System z」、開発言語はJava(オンライン)と一部COBOL(バッチ)を採用、新基幹システム「JENIUS」として稼働を目指した。同年に代表取締役に就任した岡本晋社長は、IT投資が聖域として扱われた時代の終わりと「中国価格」による開発コストの値引き圧力という業界環境のもとで、独立系として量と質の両面から生き残る方針を掲げた[7]

  • 週刊東洋経済(2004年12月18日号)
    • [7]岡本晋TIS社長「業界再編の波が押し寄せるのは必至。そうした中で、独立系としていかに生き残っていくか。量と質の両面とも向上させていかなければならない」=IT投資聖域化終焉・中国価格による値引き圧力という業界環境下での方針

量的拡大の核に据えたのがクレジットカード向け事業で、JCBの大型開発案件に加え、準大手・中堅向けにはパッケージ製品「クレジットキューブ」で顧客開拓を進める一方、化学・電機・建機など製造業や流通業へも裾野を広げる戦略[8]を採った。2005年4月には旭化成情報システムを買収し、製造業系の顧客基盤を拡張した。2004年12月時点で連結売上高は2000億円突破が見込まれ、岡本社長は2010年度までに業界[9]トップ3入りを目標に掲げた。JCB案件はTIS社内でも史上最多の人員(数千名規模)を動員した案件で、年間売上高200〜300億円規模の重要顧客向けプロジェクトとなった。

  • 週刊東洋経済(2004年12月18日号)
    • [8]量的拡大の核はクレジットカード向け事業(JCB大型案件+準大手・中堅向けパッケージ「クレジットキューブ」)、化学・電機・建機など製造業や流通業への裾野拡大が戦略
    • [9]「TISは今期ようやく2000億円を突破する見込み」(2004年12月18日号時点)、岡本社長「2010年度までに質、量ともに業界トップ3の位置を占めるのが目標」

JCB向けJENIUSプロジェクトでは想定を超える長期の開発遅延が発生し、当初想定した稼働開始に間に合わずに炎上した。FY06からFY07にかけてTIS連結業績への影響が表面化し、FY06(2007年3月期)には受注損失引当金51億円を貸借対照表に計上、最終損益は8.1億円の赤字に転落した。最終的なTISによる開発の追加コストは80億円と報じられ[10]、TISの業績を圧迫するプロジェクトとなった。JCB案件の収束には3年余を要し、2008年11月にようやくサービスインに至った。1990年代の業績低迷を乗り越えた直後の2000年代半ばに、TISは100億円超規模の受注で発生する品質管理リスクという別の課題に直面し、独立系SIerが単独で複数百億円規模の案件を受注するリスクを業界全体に示した。この経験は2008年のインテックHD経営統合の動機の1つとなった。

  • 日経XTECH(2007年10月26日)
    • [10]TISによるJCB案件の追加開発コストは80億円と報道
  • 週刊東洋経済(2004年12月18日号)
    • [7]岡本晋TIS社長「業界再編の波が押し寄せるのは必至。そうした中で、独立系としていかに生き残っていくか。量と質の両面とも向上させていかなければならない」=IT投資聖域化終焉・中国価格による値引き圧力という業界環境下での方針
    • [8]量的拡大の核はクレジットカード向け事業(JCB大型案件+準大手・中堅向けパッケージ「クレジットキューブ」)、化学・電機・建機など製造業や流通業への裾野拡大が戦略
    • [9]「TISは今期ようやく2000億円を突破する見込み」(2004年12月18日号時点)、岡本社長「2010年度までに質、量ともに業界トップ3の位置を占めるのが目標」
  • 日経XTECH(2007年10月26日)
    • [10]TISによるJCB案件の追加開発コストは80億円と報道

2008年〜 ITホールディングス発足・3社合併・グループビジョン2026策定

TISの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2008年 インテックホールディングスとの共同株式移転によるITホールディングス設立 独立系のまま規模を取るか、系列に入るか——2社が選んだ持株会社という統合の形
  2. 2008年 共同株式移転によりITHDを設立・東京証券取引所一部に上場
  3. 2009年 インテックがインテックHDを吸収合併
  4. 2009年 ソランへの公開買付で子会社化(議決権91.5%)
  5. 2010年 ソラン完全子会社化完了。インテックの子会社2社を持株会社の直接子会社に再編
  6. 2011年 TISがソラン・ユーフィットを吸収合併
  7. 2014年 グループのコーポレートロゴマークを統一しブランドメッセージ「Go Beyond」を制定

TIS・インテック2社の共同持株会社設立

2007年12月、TIS株式会社と株式会社インテックホールディングスは経営統合の基本合意を発表し、株式移転による共同持株会社設立を決議[11]した。2008年4月、両社の共同株式移転により「IT[12]ホールディングス株式会社(ITHD)」を設立し、東京証券取引所市場第一部に上場した。独立系SIer2社の経営統合で、システムの案件規模が増大するなかで2社が協力して受注拡大と重複業務の効率化を狙う構造だった。銀行の情報投資拡大でIT業界が活況を呈す一方、システムの巨大化により業界大手でなければ好採算の大型案件を獲得[13]できない状況が強まっており、中堅以下ではM&Aを通じた規模拡大の機運が高まっていた。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [11]2007年12月 TISとインテックホールディングスが株式移転による共同持株会社設立(経営統合)を各取締役会で決議し基本合意
    • [12]2008年4月 両社の共同株式移転によりITホールディングス株式会社を設立、東京証券取引所市場第一部に上場
  • 週刊東洋経済(2007年12月29日号)
    • [13]「IT業界は銀行の情報投資拡大などで『ITバブル期並みの活況』。が、システムの巨大化で業界大手でなければ好採算の大型案件を獲得できないため、中堅以下ではM&Aを通じた規模拡大の機運が高まっていた」

当時の岡本晋社長は「再編が起こる可能性もあり統合を急いだ」[14]と統合を急いだ背景を明かす一方、JCB案件の炎上は経営統合と無関係であるとも発言し[15]、規模拡大により受注案件1件の炎上による財務リスクを抑える狙いもあった。1964年設立のインテックは富山県富山市に本社を置く独立系SIerで[16]、製造業・流通業を中心とする顧客基盤を持ち、三和銀行系のTISが強い金融・カード分野とは異なる補完関係にあった。両社統合の背景には、金融系と製造・流通系という異なる顧客基盤を組み合わせる経済合理性があった。

  • 週刊東洋経済(2007年12月29日号)
    • [14]「TISの岡本晋社長は『再編が起こる可能性もあり統合を急いだ』と明言」
  • 日経XTECH(2007年12月13日)
    • [15]岡本晋社長(当時)が「全く関係がない」とJCB案件と経営統合の関係を否定する発言(在任はCEO CSVでFY07=2008年3月期に確認)
  • ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【関係会社の状況】
    • [16]インテックは富山(富山県富山市)の独立系SIer(1964年設立)

2008年10月、TISが保有する子会社9社(ユーフィット[17]、アグレックス、クオリカ、AJS、エス・イー・ラボ等)の全株式をITHDが承継する吸収分割を実施し、これら9社をITHD直下の子会社に再編した。2009年6月にはエス・イー・ラボを完全子会社化[18]、7月にエス・イー・ラボとTISソリューションビジネス[19]を統合してネオアクシスを設立、10月にはインテックがインテックホールディングスを吸収合併した[20]。12月にはソラン株式会社の子会社化のため公開買付[21]け(TOB)を実施し、議決権所有割合91.5%を取得した。2010年4月にはソランの完全子会社化を完了し[22]、ITホールディングスの傘下にTIS・インテック・ソランを並列に置く3社体制を整えた。グループ内のシステム子会社群の整理は2008年から2010年にかけて集中的に実行され、ITHDをハブとする多重構造のグループ経営を確立した。

  • ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【沿革】
    • [17]2008年10月 TIS保有の子会社9社(ユーフィット・アグレックス・クオリカ・AJS・エス・イー・ラボ・TISトータルサービス・TISリース・BMコンサルタンツ・TISソリューションビジネス)の全株式をITHDが承継する吸収分割を実施
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [18]2009年6月 エス・イー・ラボの完全子会社化が完了
    • [19]2009年7月 エス・イー・ラボとTISソリューションビジネスが経営統合し「ネオアクシス」を設立
    • [20]2009年10月 インテックがインテックホールディングスを吸収合併(中間持株会社の解消)
    • [21]2009年12月 ソラン株式会社への公開買付で子会社化(議決権所有割合91.5%)
    • [22]2010年4月 ソランの完全子会社化が完了(ITHD傘下にTIS・インテック・ソランの3社)
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [11]2007年12月 TISとインテックホールディングスが株式移転による共同持株会社設立(経営統合)を各取締役会で決議し基本合意
    • [12]2008年4月 両社の共同株式移転によりITホールディングス株式会社を設立、東京証券取引所市場第一部に上場
    • [18]2009年6月 エス・イー・ラボの完全子会社化が完了
    • [19]2009年7月 エス・イー・ラボとTISソリューションビジネスが経営統合し「ネオアクシス」を設立
    • [20]2009年10月 インテックがインテックホールディングスを吸収合併(中間持株会社の解消)
    • [21]2009年12月 ソラン株式会社への公開買付で子会社化(議決権所有割合91.5%)
    • [22]2010年4月 ソランの完全子会社化が完了(ITHD傘下にTIS・インテック・ソランの3社)
  • 週刊東洋経済(2007年12月29日号)
    • [13]「IT業界は銀行の情報投資拡大などで『ITバブル期並みの活況』。が、システムの巨大化で業界大手でなければ好採算の大型案件を獲得できないため、中堅以下ではM&Aを通じた規模拡大の機運が高まっていた」
    • [14]「TISの岡本晋社長は『再編が起こる可能性もあり統合を急いだ』と明言」
  • 日経XTECH(2007年12月13日)
    • [15]岡本晋社長(当時)が「全く関係がない」とJCB案件と経営統合の関係を否定する発言(在任はCEO CSVでFY07=2008年3月期に確認)
  • ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【関係会社の状況】
    • [16]インテックは富山(富山県富山市)の独立系SIer(1964年設立)
  • ITホールディングス 有価証券報告書 第1期(2009年3月期)【沿革】
    • [17]2008年10月 TIS保有の子会社9社(ユーフィット・アグレックス・クオリカ・AJS・エス・イー・ラボ・TISトータルサービス・TISリース・BMコンサルタンツ・TISソリューションビジネス)の全株式をITHDが承継する吸収分割を実施

3社合併・桑野徹社長就任・西新宿への東京本社集約

2011年2月、TISは株式会社ユーフィットを完全子会社化した[23]。同年4月、TIS株式会社はソラン株式会社とユーフィット株式会社を吸収合併し、3社合併によるTIS[24]の規模拡大を実行した。同月、桑野徹氏が代表取締役社長に就任した。桑野徹氏は1976年に東洋情報システムに入社した生え抜きの経営者で、信販会社向けシステム構築の再建経験、JCB向けJENIUSプロジェクトでの担当役員経験を持つ人物だった。2008年4月には専務として金融・カード事業を管掌しており、JCBプロジェクトのキーマンとして業績回復の責任を担う立場にあった。2011年4月の3社合併と社長交代は、ITHD発足後3年でTIS本体の組織再編とトップ交代を同時に実行する経営判断だった。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [23]2011年2月 ユーフィットを完全子会社化
    • [24]2011年4月 TISがソランおよびユーフィットを吸収合併(3社合併)

3社合併に伴う構造改革で、TISは旧TISの人員削減(400名規模)を決定し、オフィス移転と特別転身プログラムによりFY11(2012年3月期)に特別損失78.5億円を計上した。2012年2月には東京本社を新宿区西新宿に移転し[25]、TIS本体を含むグループ会社計9社の東京地区拠点を1カ所に集約した。グループ各社で重複していた本社機能・バックオフィス機能の統合は、ITHD発足以来の課題で、西新宿集約はその物理的な解決策となった。FY11の連結売上高は3,274億円で、営業利益は構造改革費用を吸収しながらも黒字を維持し、FY12(2013年3月期)以降は増益基調に転じた。2014年4月にはTISリース株式会社がリース事業撤退の方針に基づきリース資産売却の上で解散[26]、6月にはグループのコーポレートロゴマークを統一しブランドメッセージ「Go Beyond」を制定した[27]

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [25]2012年2月 東京本社を新宿区西新宿に移転し、グループ会社計9社の東京地区拠点を同所に集約
    • [26]2014年4月 TISリースがリース事業撤退の方針に基づきリース資産売却の上で解散
    • [27]2014年6月 グループのコーポレートロゴマークを統一しブランドメッセージ「Go Beyond」を制定
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [23]2011年2月 ユーフィットを完全子会社化
    • [24]2011年4月 TISがソランおよびユーフィットを吸収合併(3社合併)
    • [25]2012年2月 東京本社を新宿区西新宿に移転し、グループ会社計9社の東京地区拠点を同所に集約
    • [26]2014年4月 TISリースがリース事業撤退の方針に基づきリース資産売却の上で解散
    • [27]2014年6月 グループのコーポレートロゴマークを統一しブランドメッセージ「Go Beyond」を制定

アグレックス完全子会社化とグループビジョン2026策定

2014年12月、ITホールディングスは連結子会社の株式会社アグレックスについてTOBを実施し、議決権所有割合を50.6%から93.3%に引き上げた[28]。アグレックスは上場子会社のBPO(業務処理受託)事業者で、TIS社内のBPO業務を集約する役割を担っていた。2015年3月にアグレックスの完全子会社化を完了し[29]、上場子会社のスクイーズアウトでグループのBPO機能をTISの直接管理下に置く体制を整えた。FY14(2015年3月期)の連結売上高は3,610億円、営業利益211億円、当期純利益102億円となり、3社合併後の本格的な業績回復期に入った。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [28]2014年12月 アグレックスへの公開買付で議決権所有割合を50.6%から93.3%に引上げ
    • [29]2015年3月 アグレックスの完全子会社化が完了

2017年5月、TISは2026年に目指す企業像[30]を「Create Exciting Future」と定めた新たな「グループビジョン2026」を策定した。10年スパンの長期ビジョンで、フィンテック・決済領域での出資・協業の加速を主軸に据えた。同年5月には凸版印刷との業務提携を発表し、モバイルWalletサービスを先行投入した。FY16(2017年3月期)の連結売上高は3,933億円、営業利益270億円、ROE 8.8%で第3次中期経営計画の目標ROE 8%を上回り、計画を1年前倒しで過達した。営業利益300億円を最終年度目標として再設定し、総還元性向35%を株主還元方針として明示した。2008年のITHD発足から2017年のグループビジョン2026策定までの約10年は、JCB案件の負の遺産を清算しつつグループ各社の重複を整理して収益体質を強化する構造改革の時代にあたる。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [30]2017年5月 2026年に目指す企業像「Create Exciting Future」を定めた新グループビジョン(グループビジョン2026)を策定
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [28]2014年12月 アグレックスへの公開買付で議決権所有割合を50.6%から93.3%に引上げ
    • [29]2015年3月 アグレックスの完全子会社化が完了
    • [30]2017年5月 2026年に目指す企業像「Create Exciting Future」を定めた新グループビジョン(グループビジョン2026)を策定

2018年〜 中期経営計画3次連続実行と岡本安史社長によるグループビジョン2032策定

TISの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2020年 MFEC Public Company Limitedを公開買付により子会社化
  2. 2021年 CIロゴとブランドメッセージを刷新し新メッセージ「ITで、社会の願い叶えよう。」に
  3. 2023年 日本ICSを完全子会社化
  4. 2024年 長期経営方針「グループビジョン2032」を策定

第4次中期経営計画とSequent・MFEC買収

2018年4月、TISは第4次中期経営計画(2018-2020)を始動した。総還元性向を40%に引き上げ、ソフトウェア開発・企業買収などの予算枠として最大800億円の投資を計画し、KPIとして高単価案件である「戦略比率」の向上を重視した。2019年3月期から事業セグメントを再構築し、BPO・サービスIT・産業IT・金融ITの4セグメント体制に移行した。FY18(2019年3月期)の連結売上高は4,208億円、営業利益380億円となり、第4次中計初年度の好スタートを切った。2018年12月には連結子会社の株式会社インテック[31]が三菱食品向けの基幹システムの刷新案件で127億円の損害賠償請求訴訟を受け、システム開発の品質管理が複数の100億円超案件で経営課題となる構造は2010年代後半まで続いた。

  • TIS 有価証券報告書 第11期(2019年3月期)【経理の状況】(訴訟)
    • [31]FY18有報の訴訟注記では、三菱食品から損害賠償請求訴訟を受けたのは連結子会社の株式会社インテック(損害賠償請求金額12,703百万円=127億円・訴状受領日2018年12月17日)

2020年2月、TISは米国のSequent Software Inc.を子会社化し[32]、フィンテック領域での海外M&Aを実行した。10月には持分法適用会社であったMFEC Public Company Limited(タイ)を公開買付けを通じて子会社化し[33]、東南アジアでの事業基盤を強化した。FY19(2020年3月期)の連結売上高は4,437億円、営業利益448億円、当期純利益294億円となり、第4次中計の全指標で計画値を1年前倒しで達成した。2020年4月1日付で1株を3株に分割し、株主層の拡大を図った。Sequent社子会社化に伴うのれん減損損失22億円を計上したが、不採算案件抑制は10億円以内の中計目標を達成した。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [32]2020年2月 Sequent Software Inc.(米国)を子会社化
    • [33]2020年10月 持分法適用会社のMFEC Public Company Limited(タイ)を公開買付により子会社化
  • TIS 有価証券報告書 第11期(2019年3月期)【経理の状況】(訴訟)
    • [31]FY18有報の訴訟注記では、三菱食品から損害賠償請求訴訟を受けたのは連結子会社の株式会社インテック(損害賠償請求金額12,703百万円=127億円・訴状受領日2018年12月17日)
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [32]2020年2月 Sequent Software Inc.(米国)を子会社化
    • [33]2020年10月 持分法適用会社のMFEC Public Company Limited(タイ)を公開買付により子会社化

岡本安史社長就任と「ITで、社会の願い叶えよう。」

2021年4月、岡本安史氏が代表取締役社長に就任[34]した。1985年に東洋情報システム(現TIS)に入社した生え抜きの経営者で、2018年に取締役専務執行役員、2020[35]年に副社長を経て社長に就任した。前社長の桑野徹氏は代表権のない取締役会長に移った[36]。同年2月にはグループのCIロゴ及びブランドメッセージを刷新し、新ブランドメッセージを「ITで、社会の願い叶えよう。」とした。[37]3月には東京地区における主要拠点を西新宿と豊洲の2[38]つの基幹オフィスに移転・集約するため、豊洲オフィスを開設した。2012年の西新宿1拠点集約から約9年を経て、グループ[39]の事業規模拡大に応じて2拠点体制への変更に踏み込んだ。

  • TIS 有価証券報告書 第13期(2021年3月期)【役員の状況】
    • [34]2021年4月 岡本安史氏が代表取締役社長に就任
    • [36]桑野徹氏は2021年3月期有報の役員一覧で「取締役会長」(代表権の記載なし)
  • TIS 有価証券報告書 第11期(2019年3月期)・第12期(2020年3月期)【役員の状況】
    • [35]岡本安史氏はFY18有報で取締役専務執行役員、FY19有報で取締役副社長執行役員(2018年専務・2020年副社長の記載と整合)
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [37]2021年2月 グループのCIロゴ・ブランドメッセージを刷新し新メッセージを「ITで、社会の願い叶えよう。」とする
    • [38]2021年3月 東京地区の主要拠点集約のため豊洲オフィスを開設(2拠点集約)
    • [39]timelineでは東京本社の西新宿移転・グループ9社拠点集約は2012年2月(本文前段も「2012年2月には東京本社を新宿区西新宿に移転」と記載)

2021年4月、TIS本体の中央官庁・自治体等行政機関向け事業の一部を株式会社インテックへ承継[40]し、グループ内での事業領域の整理を実施した。11月には中央システム株式会社の発行済全株式をグループ外へ譲渡し、特別利益60億円を計上[41]した。中央システムは中小企業向けシステム(勤怠システム「レコル」等)に集中していたため、大企業向け開発を主力とするTISの選択と集中の方針から外れる位置にあった。2022年4月にはグループシェアードサービス事業を吸収分割によりTISトータルサービスへ承継し[42]、東京証券取引所の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行した。岡本安史社長は2021年6月の取材で[43]、品質が伴わなければ顧客との価値交換は1回で終わってしまうと述べ、JCB案件以来の品質管理の重要性を再度経営の柱に据える方針を明示した。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [40]2021年4月 中央官庁・自治体等行政機関向け事業の一部をインテックへ承継(吸収分割)
    • [41]2021年11月 中央システムの発行済全株式をグループ外へ譲渡し特別利益60億円を計上
    • [42]2022年4月 グループシェアードサービス事業を吸収分割によりTISトータルサービスへ承継(同時に「TISビジネスサービス」へ商号変更)し、東証プライム市場へ移行
    • [43]岡本安史社長の2021年6月取材での発言「質が高くなければ顧客との価値交換が1回で終わってしまう」(本文は趣旨の言い換え)
  • TIS 有価証券報告書 第13期(2021年3月期)【役員の状況】
    • [34]2021年4月 岡本安史氏が代表取締役社長に就任
    • [36]桑野徹氏は2021年3月期有報の役員一覧で「取締役会長」(代表権の記載なし)
  • TIS 有価証券報告書 第11期(2019年3月期)・第12期(2020年3月期)【役員の状況】
    • [35]岡本安史氏はFY18有報で取締役専務執行役員、FY19有報で取締役副社長執行役員(2018年専務・2020年副社長の記載と整合)
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [37]2021年2月 グループのCIロゴ・ブランドメッセージを刷新し新メッセージを「ITで、社会の願い叶えよう。」とする
    • [38]2021年3月 東京地区の主要拠点集約のため豊洲オフィスを開設(2拠点集約)
    • [39]timelineでは東京本社の西新宿移転・グループ9社拠点集約は2012年2月(本文前段も「2012年2月には東京本社を新宿区西新宿に移転」と記載)
    • [40]2021年4月 中央官庁・自治体等行政機関向け事業の一部をインテックへ承継(吸収分割)
    • [41]2021年11月 中央システムの発行済全株式をグループ外へ譲渡し特別利益60億円を計上
    • [42]2022年4月 グループシェアードサービス事業を吸収分割によりTISトータルサービスへ承継(同時に「TISビジネスサービス」へ商号変更)し、東証プライム市場へ移行
    • [43]岡本安史社長の2021年6月取材での発言「質が高くなければ顧客との価値交換が1回で終わってしまう」(本文は趣旨の言い換え)

「グループビジョン2032」と海外・決済・量子への成長投資

2023年4月、TISは日本ICS株式会社を完全子会社化[44]した。日本ICSの業績影響はFY23(2024年3月期)に売上高58億円・営業利益6億円となり、医療ICT領域の事業基盤を強化した。2024年5月、TISは「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマ[45]とする長期経営方針「グループビジョン2032」を策定した。グループビジョン2026の長期版にあたり、社会課題解決を事業の柱に据える方針を10年スパンで再定義した。岡本安史社長は2024年7月の日経xTECH取材で「TISインテックグループ全体[46]のコラボレーションが少しずつ進んできたことが大きい」と述べ、ITホールディングス発足から16年を経たグループ統合の効果を評価した。同取材では2027年3月期までの3年間で約1,000億円規模の成長投資を行う計画を示し、決済・東南アジア・量子の3領域への重点投資を明示した[47]

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [44]2023年4月 日本ICS株式会社を完全子会社化
    • [45]2024年5月 「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマとする長期経営方針「グループビジョン2032」を策定
    • [46]岡本安史社長が2024年7月の日経xTECH取材で「TISインテックグループ全体のコラボレーションが少しずつ進んできたことが大きい」と発言
    • [47]2027年3月期までの3年間で約1,000億円規模の成長投資・決済/東南アジア/量子の3領域へ重点投資

FY24(2025年3月期)の連結売上高は5,717億円、営業利益690億円、当期純利益500億円となり、過去最高業績を更新した。中期経営計画(2024-2026)2年目では総額420億円の自己株式取得を決定し、資本効率性向上のための株主還元を強化した。連結子会社ののれん減損損失42億円を計上したが、キャッシュレス再編・地銀寡占化・医療ICTといった注力市場の構造変化への対応を継続した。FY26(2026年3月期)の最終年度計画では総額500億円規模の自己株式取得を継続中で、年間配当80円、営業利益810億円を計画値として再設定した。1971年に三和銀行系60社の共同電算機センターとして出発したTISは、ITホールディングス発足から日本ICS子会社化までの15[48]年を経て、決済・東南アジア・量子の3領域への成長投資に資本配分を集中する経営フェーズに入った。

  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [48]timelineではITホールディングス設立=2008年4月、日本ICS完全子会社化=2023年4月であり、その間は15年
  • TIS 有価証券報告書 第17期(2025年3月期)【沿革】
    • [44]2023年4月 日本ICS株式会社を完全子会社化
    • [45]2024年5月 「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマとする長期経営方針「グループビジョン2032」を策定
    • [48]timelineではITホールディングス設立=2008年4月、日本ICS完全子会社化=2023年4月であり、その間は15年
    • [46]岡本安史社長が2024年7月の日経xTECH取材で「TISインテックグループ全体のコラボレーションが少しずつ進んできたことが大きい」と発言
    • [47]2027年3月期までの3年間で約1,000億円規模の成長投資・決済/東南アジア/量子の3領域へ重点投資

TISの沿革1975〜2024年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
東洋コンピュータサービス合併による受託計算主軸への転換調査の受託か、計算の受託か——石油危機後の東洋情報システムが選んだ収益の土台 詳細を読む★★★
東京支社を開設
コマツソフト取得による金融偏重の顧客基盤の是正顧客基盤と技術のどちらで補い合うか——東洋情報システムが製造業の入口に選んだ買収 詳細を読む★★★
岡本晋インテックホールディングスとの共同株式移転によるITホールディングス設立独立系のまま規模を取るか、系列に入るか——2社が選んだ持株会社という統合の形 詳細を読む★★★
岡本晋共同株式移転によりITHDを設立・東京証券取引所一部に上場★★
岡本晋インテックがインテックHDを吸収合併
岡本晋ソランへの公開買付で子会社化(議決権91.5%)★★
岡本晋ソラン完全子会社化完了。インテックの子会社2社を持株会社の直接子会社に再編
岡本晋TISがソラン・ユーフィットを吸収合併★★
前西規夫グループのコーポレートロゴマークを統一しブランドメッセージ「Go Beyond」を制定
前西規夫アグレックスへの公開買付で議決権93.3%を取得
桑野徹2026年に目指す企業像「Create Exciting Future」を定めた新グループビジョンを策定
岡本安史MFEC Public Company Limitedを公開買付により子会社化★★
岡本安史CIロゴとブランドメッセージを刷新し新メッセージ「ITで、社会の願い叶えよう。」に
岡本安史日本ICSを完全子会社化
岡本安史長期経営方針「グループビジョン2032」を策定
出典・参考

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