2010年10月にDeNAは、スマホ向けのゲームをグローバルで展開するため、米国カリフォルニア州に拠点をおくngmoco社を251〜342億円で買収すると発表した。
DeNAの経営陣の「グローバル化」と「スマホ対応」への意気込みは凄まじく、2010年度3Qの決算説明会の質疑応答で、経営陣は以下のように語っている。
「国内においてはスマートフォンの普及が想定以上に早く、国内外において、スマートフォン対応をスピーディーに実現することが課題であると認識しております。 2011年は当社の将来を大きく左右する年になると思いますが、課題はチャンスでもあると 考えており、既存の携帯電話からスマートフォンに事業を拡大することでグローバルに展 開できるよう、グループ一丸で取り組んでまいります。 これまでの国内の成功に固執することなく、世界で戦っていくことが大事だと考えており、当社がやれなくて誰ができるんだという気持ちで取り組んでまいります。」
DeNAにとっての狙いは、普及しつつあったスマホゲームの拡大にあった。当時、ngmoco社は2500万ユーザーを抱えるコミュニティー「plus+Network」を運営しつつ、自社でスマホ(iPhone向け)のゲームを開発しており、スマホ時代のソーシャルゲームのプラットフォーマになると見られていた。そこで、DeNAは「plus+Network」のユーザーを自社の「Mobage Global」に移管することによって、グローバルでのソーシャルゲーム市場を確保する狙いがあった。
買収に呼応して、2010年12月にDeNAは国内のモバゲーのスマホ対応を行うなど、全社的にスマホへのシフトに注力した。2010年の時点でDeNAの経営陣は、4年後の2014年にはMobageにおいて、携帯電話(ガラケー)での売上高が全体の10%程度になり、スマートフォンが大半を占めることを予想した。
ngmocoの買収によって、DeNAは2014年度における業績目標を発表。売上高約4000億円(うち国内と海外が半分ずつ)および営業利益2000億円をそれぞれ目標に据えた。
【財務戦略】
買収資金は(1)第三者割当増資による普通株式の発行で124億円(希薄化3.4%)、(2)新株予約権23億円、(3)現金109億円を組み合わせることによって、合計257億円での買収を実施。買収後の業績に連動するアーンアウト条項を設け、規定値に達した場合は追加で85億円(普通株式26億円、新株予約権10億円、現金48億円)を支払う契約を締結した。
なお、契約期限である2012年度までに、アーンアウト条項による追加取得の形跡はないことから、業績目標は未達に終わった可能性が高い。
また、買収の実行により、DeNAは2011年3月期末にはBSにおいて無形固定資産(のれん)を280億円計上したため、買収後は減損リスクを抱えることになった。なお、のれんの計上金額280億円が、発表時の買収価格257億円と比べて上振れした理由は為替変動が原因と思われる。
なお、2010年の買収時点では12年にわたる償却を予定していたが、2011年からDeNAは会計基準をIFRSに移行しており、のれん償却を回避することができるようになった(代わりに減損テストを実施)ため、買収に伴う毎期ごとのPLにおける償却コストの計上を避けることができた。