2025/3 売上高72,438億円YoY+7.2%
2025/3 営業利益30,505億円YoY+16.2%
FY24 単体平均給与1,363万円前年度比+3万円
創業1981孫正義(創業者)
創業地福岡県福岡市
上場-

筆者所感 ソフトバンクグループの源流は1981年9月に孫正義が福岡市内で設立した日本ソフトバンクにある。創業当初の中核事業は、パソコン普及とともに急増していたソフトウェアの卸売流通網を全国規模で構築することだった。1994年の株式公開で得た資金調達力を梃子に、米国の展示会事業コムデックスやジフ・デービス社の買収へ踏み出し、シリコンバレーのベンチャー企業群への情報アクセス経路を手にした。1996年には米ヤフーとの合弁でヤフー株式会社を設立し、インターネット検索市場で最先発のポジションを確保した。同時期には社債発行を通じ、売上高を超える規模の買収資金を自力で調達する財務手法が定着した。IT投資持株会社への脱皮を支える土台が、この段階で整った。

2001年のADSLサービス「Yahoo!BB」参入と2006年の英Vodafone日本法人買収で、ソフトバンクはソフトウェア流通業から携帯キャリア事業へと事業基盤の重心を移した。2013年の米スプリント買収と2016年の英ARM買収を経て、通信キャリアから投資持株会社への転換が進んだ。2017年のソフトバンク・ビジョン・ファンド組成によって、グループの業績は投資先企業の株価変動と直結する財務体質へ変わった。直近では2024年以降の生成AI革命を追い風に、2025年に米オープンAIへ最大300億米ドル規模の出資を決定し、Stargate Projectと呼ばれる米国の大型AIインフラ投資にも参画を表明した。Arm・Ampere・Graphcoreの3社で半導体エンジニア8,400人を結集し、AI半導体とロボティクスへの事業転換を進めている。

ソフトバンクグループ:売上高の内訳と営業利益率(PL 分解 × 営業利益率)
営業利益(億円)その他費用(億円)販管費(億円)売上原価(億円)営業利益率(%)
歴代社長
FY01
FY02
FY03
FY04
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
FY25
FY26
FY27
FY28
FY29
FY30
孫正義
代表取締役社長
代表取締役会長兼社長
代表取締役会長兼社長執行役員
歴代社長
FY05
FY06
FY07
FY08
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FY10
FY11
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FY13
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FY22
FY23
FY24
孫正義
代表取締役社長
孫正義
代表取締役会長兼社長
孫正義
代表取締役会長兼社長執行役員
ソフトバンクグループ:投資CF(M&A・設備投資ほか/事業施策と紐付き)
投資CF(億円)
ARMのNvidiaへの売却破談2022
ソフトバンク・ビジョン・ファンドを組成2017
アローラ・ニケシュ氏が副社長に就任2015
ボーダフォンを買収・携帯キャリアに新規参入2006
日本テレコムを買収(光ファイバーに参入)2004

歴史概略

1981年〜2000ソフトウェア流通からインターネット投資への転身

ソフトウェア流通で掴んだ情報アクセスの連鎖

1981年9月、24歳の孫正義は福岡市内で日本ソフトバンクを設立した。当時の日本ではパソコンが普及し始めており、ゲームから業務用アプリケーションまで多様なソフトウェアが次々と発売される一方で、メーカーから小売店へ商品を届ける流通基盤は未整備のままだった。孫正義はこの空白を埋めるため、創業初期からシャープや日本電気といった大手電機メーカーと独占的な販売契約を結び、ソフトウェアの全国卸売流通網を立ち上げた。並行して専門雑誌の発行や展示会の運営を手がけて業界内の情報集積を進め、設立2年目には月商4億円の水準に達した。創業初期から、情報と流通を一体で押さえるビジネスモデルが拡大した。

ソフトバンク_創業期の業容
  • 2期23億円・従業員21名から4期75億円・194名まで、3年で売上は3倍、従業員は9倍に拡大した。
  • 販売先が1570社から5287社へ増えた事実は、全国卸売流通網の構築が創業初期の数字で既に形を成していたことを示す。
年度回次売上高従業員数ソフト仕入先販売先社長会長
1981/121期孫正義
1982/122期23億円21名約200社1570社孫正義
1983/123期45億円89名3654社孫正義
1984/124期75億円194名5287社大森康彦孫正義(療養のため)
1985/125期115億円210名6645社大森康彦孫正義(療養のため)
出所知識 2(3)(51)

1990年に日本ソフトバンクは商号をソフトバンクへ改め、1994年7月には日本証券業協会における店頭登録を果たして株式公開を実現した。公開で得た資金調達力を梃子に、同年12月には米国の大型展示会事業コムデックスと、シリコンバレーの有力IT出版社ジフ・デービスの買収へ踏み出した。一連の買収の目的は、出版や展示会それ自体の収益よりも、シリコンバレーに広がるベンチャー企業群への情報アクセス経路を獲得することにあったと、後に孫正義自身が語っている。ジフ・デービスの取材網を通じて有望なベンチャーを発掘して出資するしくみは、のちの米ヤフーへの出資や1990年代後半のインターネット投資ブームの出発点として機能した。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • ソフトバンクグループ社史
  • 日経ビジネス

ヤフー出資が財務手法を一変させた転換点

1996年1月、孫正義はジフ・デービス社の情報網を通じて発掘した米ヤフーとの合弁でヤフー株式会社を設立し、日本の検索エンジン市場で最先発のポジションを確保した。同時期にはテレビ朝日株式の取得による衛星放送事業への参入や、トレンドマイクロ株式の35%取得など、インターネットとIT関連領域への投資を矢継ぎ早に展開した。衛星放送はテレビ局側の拒絶によって撤退を余儀なくされたが、米ヤフーへの初期出資2億円は、後にグループの連結資産価値の中核を長期にわたって支えるドル箱へと化けた。1995年から本格化した社債発行も、売上高を超える規模の調達を自力で成立させる財務手法として社内に定着した。

ソフトバンク_社債による資金調達
  • 1995〜1996年の2年間で12本の無担保普通社債を連発し、合計2,200億円を利率1.65〜3.90%で調達した。
  • 売上高を超える規模の資金を社債市場から自力で集める構造は、ここで定着した財務オペレーションにほかならない。
払込日名称調達額利率償還日
1995/2/27第1回無担保普通社債1003.70%1998/2/27
1996/9/27第2回無担保普通社債5003.90%2007/9/27
1995/12/19第3回無担保普通社債2001.65%1998/12/18
1995/12/19第4回無担保普通社債2502.60%2000/12/19
1995/12/19第5回無担保普通社債2503.15%2002/12/19
1996/10/18第6回無担保普通社債2002.30%1999/10/18
1996/10/18第7回無担保普通社債1002.65%2000/10/18
1996/10/18第8回無担保普通社債2503.00%2001/10/18
1996/10/18第9回無担保普通社債1003.45%2003/10/17
1996/10/18第10回無担保普通社債1003.55%2004/10/18
1996/10/18第11回無担保普通社債1003.80%2006/10/18
1996/11/1第12回無担保普通社債503.70%2006/11/1
出所ソフトバンクFactBook(1998)

インターネットバブルの最盛期には、米ヤフー株価の高騰を背景にソフトバンクの時価総額は一時20兆円に達し、同社は世界有数の時価総額を誇る投資会社へと姿を変えた。しかし2000年春からのバブル崩壊によって株価は下落し、投資先の多くが経営危機に陥った。孫正義はこの局面で投資先株式の売却によって2,078億円の売却益を確保し、有利子負債の圧縮と事業の選別を並行して進めた。バブルのピークから崩壊までを短期間で経験したことで、孫正義の中には資本の流れと投資の時点差こそが価値を生むという投資観が形成された。この原体験が、後の通信キャリア買収と巨大ファンド組成に直結した。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • ソフトバンクグループ社史
  • 日経ビジネス

2001年〜2016ADSLと携帯キャリア買収による通信事業体への変貌

Yahoo!BBの先行投資モデルが作った競争体質

2001年6月、ソフトバンクはADSLサービス「Yahoo!BB」をスタートし、ブロードバンド事業に参入した。当時の日本ではNTTが提供するISDNが主流であり、ADSLは既存の電話回線を活用して高速接続を実現できる技術として期待を集めていた。孫正義は街頭でのモデム無料配布という前例のない大規模プロモーションを展開し、先行投資によって短期間で顧客基盤を獲得する手法を採った。この戦略の結果として、参入初年度には売上のおよそ2倍に相当する赤字を計上する事態に陥ったが、孫正義は事業を継続して5年目に黒字転換を達成し、先行投資モデルの実効性を自ら証明した。既存のダイヤルアップ接続からの乗り換え需要を先取りすることで、業界全体のブロードバンド普及そのものを牽引した。

この先行投資モデルの本質は、顧客獲得を先に行うことで固定費の希釈と一顧客あたり収益(ARPU)の長期的な積み上げという二つの効果を同時に得ることにあり、通信事業における資本集約的な競争構造を攻略する発想だった。2004年7月には固定通信事業者である日本テレコムの買収によって光ファイバー事業にも参入し、ADSLを起点として固定通信全般へと事業基盤を広げた。Yahoo!BBで確立された先行投資モデルは、そのまま数年後のボーダフォン買収後の携帯電話事業でも踏襲され、ソフトバンクという企業集団の競争スタイルを通信領域全体で規定する体質となった。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日経新聞朝刊
  • Bloomberg

ボーダフォン買収で完成する外部資金動員の構造

2006年4月、ソフトバンクは英ボーダフォンの日本事業を買収し、携帯電話事業へ新規参入した。買収総額は約1兆7,500億円という当時としては桁外れの規模に上り、その資金は主にLBO(レバレッジド・バイアウト)スキームで調達された。買収対象である日本法人の資産を担保とするノンリコースローンを組成することで、ソフトバンク本体のバランスシートへの影響を限定しつつ巨額投資を実行する財務手法であり、創業期からの社債発行と併せて、ソフトバンクが自らの企業規模を超える投資を継続して実現する体質を決定づけた金融オペレーションだった。外部資金の動員力そのものが競争優位の核心を構成する事実が、ここで確立された。

買収後には孫正義自らが陣頭指揮を執る形でPMI(経営統合)を推進し、ブランドをソフトバンクへ統一する再編作業を進めた。2011年末からは2,500億円の投資を携帯基地局の整備と増強に集中して投下し、競合他社との通信品質差を詰めた。2013年7月には米スプリントを約1兆8,000億円で買収して北米市場へ進出したが、スプリントの赤字体質はその後も残り、最終的には2020年のTモバイルとの合併によってソフトバンクの直接の手を離れた。2016年9月には英国の半導体設計大手であるARMの買収を実行し、通信キャリアから投資持株会社への構造転換という長期的な方向性を経営のあらゆる局面で加速させた。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 日経新聞朝刊
  • Bloomberg

2017年〜2023ビジョン・ファンドと投資持株会社への本格的転換

ビジョン・ファンドが変えた連結業績の構造

2017年5月、ソフトバンクはサウジアラビアの政府系ファンドである公共投資基金(PIF)などの出資を得て、運用額986億米ドル(約10兆円)というソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF1)を組成した。ウーバー、ウィーワーク、滴滴出行(ディディ)といった世界各地のテクノロジー企業に対し、一社あたり数千億円規模という前例のない出資を矢継ぎ早に実行する運用スタイルを採った。外部資金比率は、ソフトバンクが自己資金中心で投資を行っていた時代のおよそ33%から96%へと上昇し、ファンド運営者としての性格がグループ全体の中で前景化する組成だった。単独の投資会社から、外部LPの資金を預かる運用者へと軸足が移り、グループ全体のガバナンス構造にも影響が及んだ。

ソフトバンクグループ_主なファンドの概要
  • SVF1の出資総額986億ドルのうち外部投資家は655億ドル、SVF2は598億ドル中26億ドルと、SVF1で外部資金比率66%を確保した。
  • LPの構成とFY2023累計損益167億ドル/▲193億ドルの対比は、外部資金依存モデルの成否が二ファンドで分岐した姿を示す。
項目SVF1SVF2
主なLPSoftBank Vision Fund L.P.SoftBank Vision Fund II-2 L.P.
出資総額986億ドル598億ドル
出資額_うちソフトバンクG331億ドル572億ドル
出資額_うち外部投資家655億ドル26億ドル
主な外部投資家PIF(サウジ政府系)
運営会社SBIA(SBG100%子会社)SBGA(SBG100%子会社)
投資期間2019/9/12に完了運営会社の裁量による
存続期間2029/11/202032/10/4
主な投資先Uber, Bytedance, WeWorkAI関連企業
FY2023 累計投資銘柄数102銘柄283銘柄
FY2023 累計投資額1020億ドル524億ドル
FY2023 累計リターン896億ドル331億ドル
FY2023 累計損益167億ドル▲193億ドル
出所有価証券報告書

SVF1の組成によって、ソフトバンクグループの連結業績は投資先企業の株価変動と連動する構造へと変化した。投資先企業のIPOや株価上昇が実現する局面では巨額の評価益が計上される一方、市場環境が悪化する局面では同様に大幅な評価損が発生し、純利益が四半期ごとに振れる財務体質が恒常的な姿として定着した。特に共有オフィスを展開するウィーワークの経営危機とIPO中止による大型損失は、ファンドモデルのリスクを象徴する出来事として世界の資本市場から注目され、大規模スタートアップ投資の限界と可能性を同時に浮き彫りにする事例となった。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23
  • Bloomberg
  • Financial Times

アリババ売却と資産流動化が示した財務の現実

2020年3月、ソフトバンクは4兆5,000億円規模の大型資産売却と最大2兆5,000億円の自社株買いを同時に公表し、コロナショックで悪化した財務安定性の回復を最優先課題として打ち出した。中国アリババ株式の段階的な売却や英ARM株式の多様な活用など、保有資産の流動化を通じてグループ全体の負債比率とLTV(Loan to Value)の安定化を進める方針を明示した。2022年にはARMの米国エヌビディアへの売却計画が各国の規制当局の承認を最終的に得られずに破談となる一幕もあったが、ARM自体は2023年9月に米国ナスダック市場への単独上場を実現し、グループにとって新たな含み益の源泉となり、財務戦略の柔軟性を高めた。

孫正義が40年以上にわたる経営の中で一貫して示してきた特徴は、自己資金だけに頼らず外部の巨大な資金を梃子として投資規模を拡大していく発想にある。創業期における財界人脈を通じた信用供与、1995年以降の社債の大量発行、ボーダフォン買収で駆使されたLBOスキーム、そして2017年以降のサウジアラビアを中心とするオイルマネーの動員まで、資金調達の手法は時代とともに変化しても、構造そのものは驚くほど一貫していた。ソフトウェアの卸売流通から出発した福岡の一企業が世界的な投資持株会社へ変貌を遂げた軌跡は、孫正義個人の投資観とグループの資本構成そのものが不可分に結びついた結果として、2023年時点で評価されている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • 決算説明会 FY23
  • Bloomberg
  • Financial Times

直近の動向と展望

オープンAIとStargateへ傾く戦略ピボット

2024年以降のソフトバンクグループにおける最大のテーマは、生成AI革命の到来を経営の中核に据え直すという戦略的なピボットである。2025年4月、SBGは米オープンAIへの大型出資についてアンダーライトで400億米ドルを引き受け、そのうち100億米ドルを外部投資家へシンジケートして基本線は300億米ドルという規模の投資を決定した。後藤芳光最高財務責任者は決算説明会で、営利化を断念したのではなく非営利団体の下に事業推進できる子会社を作っていく方向性で合意していると説明し、オープンAIの組織再編を前提とした投資であることを示した。SBGの持株比率は約11%と、マイノリティ投資の位置づけを維持している。

2025年9月にはStargate Projectの具体像として、米国内5拠点で3年間4,000億米ドルという投資計画が公表され、SBGとオープンAIが直接関わるのはオハイオ州ローズタウンとテキサス州ミラム郡の2拠点と示された。後藤芳光最高財務責任者は、プロジェクト費用はプロジェクトファイナンスで調達するためSBGのエクイティ出資は限定的な水準にとどまると繰り返し説明し、投資規模の大きさに対する財務面でのリスクを市場に対して否定した。2026年2月の決算説明会ではオープンAI株式のすべてをSVF2へトランスファーしたことが公表され、ファンドを通じた投資へと整理する方針が示された。LTV25%以内の財務ポリシーは堅持されている。

参考文献
  • 決算説明会 FY25
  • 決算説明会 FY26-Q2
  • 決算説明会 FY26-Q3
  • 日本経済新聞 2024/5/12
  • 日本経済新聞 2025/7/16
  • 日経クロステック 2024/6
  • 日経ビジネス

半導体結集とロボHDが描くAI総合体への進化

AI投資の大型化と並行して、ソフトバンクは自社グループにおける半導体エンジニアの結集も進めている。2025年の第4四半期決算説明会では、Arm・Ampere・Graphcoreの3社合計で8,400人規模の半導体エンジニアを結集する構想が示された。AmpereはIntel出身のエンジニアを中心とする集団で、x86アーキテクチャのサーバーチップの開発経験を継承しており、GraphcoreはGPUおよびNPUアクセラレーターの開発で実績を積み上げてきた企業である。孫正義は2024年の株主総会で「人工超知能(ASI)が2035年までに実現する」(日経クロステック 2024/06)と述べ、2025年には自社グループで「10億のAIエージェントをつくる」(日本経済新聞 2025/07/16)方針を示した。これまでArmが本格的にカバーしていなかったGPUやMPU領域への能力拡張は、AI半導体という次の時代の競争の主戦場に対する応答を形作っている。

同時に、10年以上前から孫正義が個人的に執着してきたロボティクスの取り組みも、ロボットホールディングス(ロボHD)の設立によってグループ全体での事業化へと進展している。2026年2月の決算説明会において後藤芳光最高財務責任者は、当社は投資しないリスクのほうが遥かに大きいとの判断で行動していると述べ、2000年のネットバブルとの比較論を引き合いに出しつつも、AI革命の初期段階に投資する姿勢を打ち出した。孫正義自身は「AI革命に10兆円」(日本経済新聞 2024/05/12)を投じる構想を繰り返し表明しつつ「今の実績では恥ずかしい。焦っている」(日経ビジネス)と現状への飢餓感を語っており、オープンAI・Stargate・半導体・ロボティクスという四つの領域を連動させながら、投資持株会社からAI時代の総合インフラ事業体への進化を目指している。

参考文献
  • 決算説明会 FY25
  • 決算説明会 FY26-Q2
  • 決算説明会 FY26-Q3
  • 日本経済新聞 2024/5/12
  • 日本経済新聞 2025/7/16
  • 日経クロステック 2024/6
  • 日経ビジネス

重要な意思決定

1981年9月

日本ソフトバンクを設立

ソフトウェア流通の空白を突いた創業構想自体は合理的だが、注目すべきは23歳の孫正義氏がシャープ副社長や野村証券社長といった財界重鎮の人脈を動員して信用力を調達した点にある。卸売業は取引先の信頼が事業基盤となるため、大森氏の招聘と1000名規模の歓迎パーティーは、事業そのものの設計と同等に重要な信用構築の装置であったと考えられる。

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1995年7月

社債調達を本格化

売上高1711億円の企業が2200億円の社債を発行した事実は、通常の信用分析では説明しにくい。北尾吉孝氏の招聘に象徴されるように、ソフトバンクは証券市場の論理を社内に持ち込むことで銀行依存から脱却し、FA債という新方式で調達コストまで圧縮した。買収戦略と財務戦略を一体で設計した点に、この時期のソフトバンクの特徴がある。

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1994年12月

米で展示場事業を買収・ベンチャー企業の情報収集へ

Ziff-Davisの買収は表面的にはメディア企業の取得だが、実態はシリコンバレーのベンチャー情報を収集するための情報基盤への投資であった。買収リターンをZiff-Davisの営業利益ではなくベンチャー投資の成果に依存させた構造は、のちのSVFにおける投資モデルの原型といえる。個人会社MACとの共同買収スキームも含め、従来の企業買収の枠組みに収まらない孫正義氏独自の投資設計が表れた案件であった。

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1996年1月

米国Yahooと合弁でヤフー株式会社を設立

注目すべきは投資規模の非対称性である。米Yahoo株式5%を2億円で取得し、追加出資を含めても約102億円の投下資本が、ネットバブル期には3兆円超の含み益を生んだ。Ziff-Davis買収による情報ネットワークがYahoo発掘の起点となっており、約21億ドルの買収費用を回収する論理が、買収先企業の収益ではなく派生的なベンチャー投資のリターンにあった点が鮮明に表れた。

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1996年2月

テレビ朝日の株式を一部取得・衛星放送に投資

テレビ朝日株式21.4%を間接取得するスキームは財務的には合理的だったが、テレビ局側が経営の独立性を優先してIT企業の介入を排除した点が本件の核心である。1990年代の日本のメディア業界では、新聞社とテレビ局の資本関係が強固であり、外部資本による経営参画を受け入れる土壌がなかった。ソフトバンクのメディア構想は市場環境ではなく業界構造によって頓挫した。

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1996年12月

トレンドマイクロ社の株式35%を取得

トレンドマイクロへの出資は、利益率29%の高収益企業を売上高の約5倍で評価した投資である。1996年のソフトバンクはZiff-Davis、Yahoo、テレビ朝日、キングストンと年間で数千億円規模の投資を連発しており、トレンドマイクロの35億円は相対的に小粒であった。しかし、パソコン普及に伴うセキュリティ需要の構造的拡大を見込んだ投資判断として、IT産業のインフラ層に広く投資する1996年のソフトバンクの方針が表れた案件であった。

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2000年1月

ネットバブル崩壊・投資先の株式売却

ネットバブル期のソフトバンクの時価総額はYahooの含み益に依存しており、株価下落が即座に企業価値の毀損に直結する構造であった。バブル崩壊後の対応として、2年間で合計4000億円超の売却益を確保しつつ、Ziff-Davisや日本債券信用銀行など1990年代の投資資産を段階的に処分した点は、攻めの投資期から守りの資産整理期への切り替え速度を示している。

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2001年6月

ADSLに新規参入(ブロードバンド)

ADSL事業の本質は技術選択ではなく、先行投資で市場シェアを確保し数年後の黒字転換を狙う事業展開モデルの確立にある。売上高399億円に対して営業赤字962億円という数字は、通常の事業判断では許容されない水準であり、孫正義氏の「百数十万ユーザーで損益分岐」という計算に基づくリスクテイクであった。この手法は携帯電話事業やPayPayに継承され、ソフトバンクグループの消費者事業における一貫した行動様式となった。

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2006年4月

ボーダフォンを買収・携帯キャリアに新規参入

ボーダフォン買収で注目すべきは買収金額の大きさよりも、ノンリコースローンによるLBOスキームの設計にある。ボーダフォンの資産を担保に1.2兆円を調達し、買収が不調でもソフトバンク本体への影響を限定する構造は、1990年代のZiff-Davis買収時にMAC(個人会社)を噛ませたスキームと通底する。リスクを限定しつつ巨額の資産を取得する財務設計がソフトバンクの買収における一貫した特徴である。

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2017年5月

ソフトバンク・ビジョン・ファンドを組成

SVF1では外部投資家が運用額の3分の2を占め、ソフトバンクのリスクは限定的であった。しかしSVF2では資金調達の不調により自己資金比率が96%に達し、投資先の評価変動がほぼ直接的にソフトバンクの損益に反映される構造となった。WeWorkの損失に象徴されるように、ファンドの成績が企業価値を規定する体制への移行は、ソフトバンクの財務構造を根本的に変容させた局面であった。

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参考文献・出所

有価証券報告書
ソフトバンクグループ社史
日経ビジネス
日経新聞朝刊
Bloomberg
決算説明会 FY23
Financial Times
決算説明会 FY25
決算説明会 FY26-Q2
決算説明会 FY26-Q3
日本経済新聞 2024/05/12
日本経済新聞 2025/07/16
日経クロステック 2024/06
日本経済新聞
日経クロステック