メルカリの歴史

CtoC物販アプリ
Last Updated: | Author: @yusugiura
歴史概要 2013年〜2022年

2013
株式会社コウゾウを設立し、CtoCアプリ「メルカリ」をリリース

2013年2月に起業家の山田進太郎が海外旅行から日本に帰国し、六本木にてコウゾウを設立。同年7月に「メルカリ」をリリースした直後、同年11月に商号をメルカリに変更した。

中古品のCtoC取引が行えるアプリ「メルカリ」をリリース。当時、PCではYahoo JAPANが展開する「ヤフオク」、スマホではフリルが中古取引のプラットフォームを運営しており、メルカリは中古取引業界では後発参入となった。また、LINE、ヤフー、楽天といった大企業もフリマアプリに参入するなど、この事業領域では激戦が繰り広げられつつあった。

競合各社がひしめく中で、メルカリはプロダクト開発が優位性を作り上げるキーファクターと判断。そこでエンジニアの採用を重視し、プロダクトを磨き続ける体制づくりに注力した。なお、メルカリの会社設立の段階では、創業者の山田進太郎氏がエンジニアの採用を率先し、何ヶ月も口説いて優秀なエンジニアを採用するなど、開発リソースの確保に注力したという。

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なぜメルカリだけが台頭したのか?

ソフトウェアのプロダクトを軸とする事業戦略におけるよくある勘違いとして「何か1つの大きな機能を追加したらユーザーが確保できる」という幻想がある。だが、これは真実ではない。

実際問題として、プロダクト開発は、地道な機能の開発や、微妙なUXの改善によってユーザーを徐々に獲得していく。「ちょっと使いやすくなった」という体験が集積することによって、ユーザビリティーが磨かれるわけで、そこに何か「偉大なプロジェクト」があるわけではない。1px単位のデザインの修正であっても、大きな意味を持つ場合がある。

だとすれば「この機能を追加するぞ!」という一大プロジェクトではなく、地道なプロダクト改善を進める組織作りが重要になる。プロダクトの性質を理解したマネージャーや、プロダクト開発を担うエンジニアを採用し、プロダクト開発に長年コミットできる体制づくりが何よりも重要な経営課題となる。

その意味で、創業期のメルカリにおいて、経営においてエンジニアを重視し、プロダクトの使いやすさ(UX)を向上させる姿勢があったことこそが、競合他社との大きな違いであったと見ている。この重要性に、2013年の時点で気づいていた点で、メルカリは奇特な企業であったといえる。いわゆる、事業の勘所に対して、洞察が冴えていた。

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2013
EastVentures及びユナイテッドから資金調達を実施

2013年6月にベンチャー投資を行うEastVenturesの松山太河氏は、旧知の山田進太郎氏が起業したことを知り、5000万円シード投資を行うことを即座に決定した。一説には、松山太河氏は、六本木の交差点で山田氏に対して投資の申し出をしたらしい。

つづいて、同年8月には、事業会社のユナイテッドは、メルカリへの投資を決定した。ユナイテッドはインターネット関連事業を営む企業であり、仮にメルカリの経営が不振に陥った場合に、事業売却先として資本における利害関係を一致させる狙いもあったと推察される。

ユナイテッドは、当時、まだ一般的ではなかった種類株式の発行を実施している。ダウンサイドリスクを加味した上で、既存株主(=創業者)ではなく投資家の利益を保証したスキームを構築することで、投資リスクの最小化を図ったものと推察される。

日本国内のベンチャー企業においては、メルカリにおける種類株式(優先株)の発行が契機となり、資金調達の1手法として定着した側面もあり、ベンチャーファイナンスにおける重要なエポックメイキングとなった。

2014
年間で累計38億円を調達。マーケティングへ積極投資

従業員10名で運営していたメルカリは、2014年3月に15億円の資金調達を実施した。CtoCのアプリという特性から、ユーザーの拡大によるネットワーク効果が期待できることから、ユーザーの急速な獲得に向けた投資を決定した。

調達資金の用途は、広告宣伝費で推定4.5億円(うちテレビCMに3億円、オンライン広告に1.5億円)に加えて、仙台におけるカスタマーサービスセンターの設立とサポート人員の採用であり、いずれもユーザーの獲得を見据えた打ち手であった。

テレビCMに関しては資金調達が確定する前の、2013年末の段階から検討を開始し、すでにテレビCMの制作を開始していた。このため、投資された資金が銀行口座に振り込まれた段階で、すぐにテレビCMの出稿を行うことができた。

カスタマーサービスに関しては、テレビCMによるアプリのヒットを見越した打ち手であり、ヒット前に拠点を整備するというリスクをとっている。

そして、2014年5月のゴールデンウィーク明けからメルカリはテレビCMによるマーケティングを本格化した。早くも5月内にアプリのダウンロード数100万件を突破し、フリマアプリの先発企業であったフリルを凌駕して、メルカリがフリアアプリとしての認知度を獲得した。

スマートフォンが普及しつつあるという時代の追い風に押されて(2014年7月時点のスマホの国内普及率は推定36%)、メルカリはPMFを達成した。

ユーザー数の獲得によって、2014年内にメルカリはC種優先株式の発行による資金調達に成功。2014年月から9月の半年間で、メルカリの推定時価総額は83億円から225億円へと増大しており、急成長を遂げるベンチャー企業として脚光を浴び始めた。

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2016
エクイティで83.5億円の資金調達に成功。推定評価額1226億円へ

2016年にメルカリは、株式上場を見据えて大規模な資金調達をエクイティ及びデッドの2つから実施した。

まずは、2016年3月に三井物産などから83.5億円のエクイティにより資金調達を実施。この時の評価額は1226億円と推定されており、日本国内で非上場企業ながらも時価総額1000億円を超えるユニコーン企業が誕生したことで話題になった。

つづいて、2016年8月には、営業キャッシュフローが安定してきたことから、銀行からの借入による資金調達を実施した。三井住友銀行などのメガバンクを中心に55億円の借入金による資金調達を実施し、2016年を通じてメルカリは「資本・借入」の両面から累計138億円の資金調達を実施した。

これらの資金を全て投資にまわし、2017年6月期のメルカリにおける年間広告宣伝費は141億円になるなど、フリマアプリとしての認知度を高めるための積極的な投資を継続した。

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2017
アーキテクチャのマイクロサービス化を実施

メルカリは世界展開にあたって、コードを疎結合にするためにNetflixの事例を参考にマイクロサービスアーキテクチャの採用を決定し、モノシリックなアーキテクチャからの脱却を目指した。同時にサーバーサイドの言語をPHPから、静的型付けのGo言語に移行し、サーバーはSakuraからGCPに乗り換え、Routingと認証ではAPIGatewayを新たに導入することで、モダンな技術スタックに切り替えた。

着手の手順としては、まず最初にメルカリUSにおけるマイクロサービス化を実施し、つづいて国内のメルカリについては検索機能などの一部をマイクロサービスに切り出し、徐々にアーキテクチャを移行させていった。ただし、2022年の現時点でもメルカリではモノシリックなアーキテクチャでphpのコードが稼働しており、完全なリプレイスを達成したわけではない。

アーキテクチャの刷新の背景には、メルカリの開発体制の大型化に伴う、エンジニア組織の再編を行うという狙いがあった。数百人のエンジニアが「メルカリ」という1つのプロダクトないし、派生するプロダクトに関わることが予想される中で、コードの複雑化は不可避になりつつあった。

そこで、エンジニア採用におけるアトラクト、グローバル展開を見据えた疎結合なアーキテクチャを実現するための手段として、マイクロサービスを導入したと推察される。

メルカリのマクロサービス化によって、国内のwebエンジニアの間ではマイクロサービス化が議題に挙げられることが多くなり、web企業における技術選定に大きな影響を与えた。

yusugiura
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マイクロサービス化の目的は組織改革

メルカリに触発される形で、2020年前後に国内のネット企業において「マイクロサービス化」が持て囃されてきたが、冷静に考えると、決して万能なアーキテクチャではない。

そもそも、あるサービスに関して、境界線を引いて他のサービスの関心から切り離すという思想であり、サービス間の領域変更には弱いというデメリットもある。サービスの重複領域における共有地の悲劇も生まれやすい。創業初期のプロダクトで、PMFを模索する段階ではモノリスの方が開発における時間効率が良いことも多いため、マイクロサービス化は絶対的なアーキテクチャの選択肢ではない。

マイクロサービス化の大前提として、プロダクトの初期段階において各サービスにおける「領域設定」を的確にできますか?ということになるが、プロダクトの使われ方が成熟していないと難しい。人員面でも、少なくとも、開発人員が30名に満たない組織でマイクロサービスを導入する意義は、見出しにくい。小規模組織のメリットは、モノリスで爆速実装できることなので、このメリットを享受した方が良いフェーズを見極めなければダメであろう。

あくまでも、1つのプロダクトで開発体制が数百人規模と大型化しつつあったメルカリにおいて、マイクロサービス化に意味があった。組織再編を通じたプロダクト開発の効率化を目指すフェースに突入しつつある場合に限り、マイクロサービス化は意味のある技術選択と見ている。

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2018
東証マザーズに株式上場

2018年にメルカリは東証マザーズに株式を上場を達成した。

上場前日のブックビルディングにおける証券会社の評価額は3800億円であったが、上場当日の終値ベースで評価額7172億円を記録して話題となった。

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2018
英国事業から撤退。株価が1/2の水準に低迷へ

2014年からメルカリはグローバル展開を見据えて米国に進出し、2015年にはイギリスへ進出していた。

しかし、2018年12月にメルカリはイギリス子会社の「Mercari Europe Ltd」および「Merpay Ltd」の2社を清算することを発表し、イギリス市場からの撤退を決めた。イギリス子会社の業績は売上高43万円(ユーザー獲得のために手数料を0円に設定したため)に対して営業損失が10億円という莫大なものであり、メルカリは子会社株式の評価損約14億円を計上する会計方針を決めた。

イギリス撤退と同時にメルカリは、グローバル展開のリソースをアメリカに集中させることを決め、海外展開の継続を表明している。

上場したばかりのメルカリにとっては経営上のネガティブサプライズとなり、メルカリの株価も上場時点の4500円台から、2018年12月には1800円台へと低迷した。

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2019
決済事業に集中投資を決定し、シェアサイクル事業から撤退

2018年末にソフトバンクグループのPayPayがスマホ決済領域に参入し、100億円の還元キャンペーンなど、莫大な販促費を投資した。

そこで、2019年1月にメルカリは全社的な事業構造の変革を実施して決済領域への集中投資を決定した。2019年1月から全社戦略における最重要事項として「メルペイ」の急速な立ち上げを実施する。

このため、2018年2月に開始したシェアサイクル事業「メルチャリ」に関して、フリマおよび決済との関連が薄いと判断し、2019年に事業売却による撤退を決めた。売却先はクララオンライン(家本賢太郎・代表取締役)であり、同社では2022年の時点でもシェアサイクル事業を「チャリチャリ」として継続している。

メルカリにおけるシェアサイクルを含めた新事業は子会社の「ソウゾウ」を通じて運営されており、2018年6月期における同子会社の業績は売上高4.5億円に対して、営業損失16.8億円であった。

yusugiura
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PayPayの対抗策としての事業譲渡

先行投資による赤字を許容してきたメルカリにとって、年間10億円以上の損失を計上するシェアサイクル事業の赤字も想定内だったと思われる。にもかかわらず、撤退を決めた背景は、PayPayの登場による決済領域における競争の激化がある。

Yahoo JAPANはPayPayに対して莫大な広告宣伝費を投下して決済領域のポジションの確保をもくろみ、同じ領域のプレイヤーを一掃することを狙った。2018年の年末商戦における100億円の還元キャンペーンは、日本国内で大きな話題となったことも記憶に新しい。

このため、年明けの2019年1月にメルカリはPyaPayへの対抗策として経営資源をメルペイに集中させる方針を固め、スピーディーにシェアサイクル事業の譲渡を決めたと考えるのが妥当であろう。「決済か?新事業か?」という究極の選択肢の中での決定であり、シェアサイクル市場の前途を悲観した撤退ではない。

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