結果

メルカリの長期業績

2013年〜2024年
売上高
■単体 | ■連結 (単位:億円)
1,874億円
売上高:2024/6
売上高_経常利益率
○単体 | ○連結
8.6%
利益率:2024/6
2013
7月

スマホアプリ「メルカリ」をリリース

アプリを優先リリース

約半年間の開発期間を経て、2013年7月2日に、CtoC取引が行えるAndroidアプリ「メルカリ」をリリース。メルカリというサービス名はラテン語の「マーケット」に由来する。

リリース初日の売上品数は16品、流通総額は2万円だった。また、同月内にiPhone向けアプリも展開し、メルカリの事業展開を開始した。

注目すべきは、ブラウザで閲覧できる「メルカリ」よりも、スマホアプリとしての「メルカリ」を先にリリースした点である。ブラウザでのサービスが一般的だった2013年においては思い切った施策であった。これは、メルカリがスマートフォンの普及を重視ていたことに由来する。

プライシング

手数料は「リリース記念キャンペーン」として無料に設定し、売上1万円未満の振込手数料210円のみを徴収。手数料無料のフリマアプリとして思い切った価格施策を決定した。このため、メルカリは手数料(販売手数料)を有料化した2014年10月までは、売上高(手数料収入)0円の時期が続いた。

配送設定

メルカリのリリース時点で、山田進太郎氏はフリマアプリにおける相手とのやり取りにおける煩雑さの解消に重点をおいた。そこで、配送料金の負担について「購入者・出品者」のいずれかを事前に選択するようにし、購入後のトラブルの未然防止を図った。なお、エスクローとして配送に関連するやりとりが「匿名化・自動化」されたのは、2015年のヤマト運輸との提携後であり、2013年時点のメルカリでは住所情報を「出品者・購入者」の両方が知れるという問題が存在していた。

決済方法

メルカリはリリース時点で「クレジットカード」「コンビニ払い」「銀行振り込み」の3種類の決済に対応した。決済代行企業は不明である。

なお、出品者に対する入金は「購入者の評価後」とすることで、詐欺防止を目論んだ。

2014年10月
販売手数料を有料化。売上計上を開始

ユーザーの拡大を受けてメルカリの出品者に対する手数料の徴収を開始。取引完了時点の出品者に対して売上高の10%を手数料として徴収。2014/10/1 9:00以降に出品された商品が対象で、メルカリは収益化のフェーズへ。ユーザーには9/26メールで通知しており猶予期間はわずか4日。プレスリリースは見当たらず。実質的な値上げで、プレスによる発表を回避したと推察される

決算
メルカリの業績
2015年6月期(単体)
売上高
42
億円
経常利益
-10.9
億円
従業員数
56
2014年1月
Mercari, Inc.を設立(米国)
2014年
1月
Mercari, Inc.を設立(米国)
2014年
9月
米国でメルカリを開始(手数料0円)
2017年
6月
John Lagerling氏が執行役員就任(米国責任者)
2015年3月
本社を六本木ヒルズに移転

著名ビルに入居して人員採用を強化

決算
メルカリの業績
2015年6月期(単体)
売上高
42
億円
経常利益
-10.9
億円
従業員数
56
2015年4月
ヤマト運輸と提携
2015年11月
Mercari Europoe Ltd.を設立(英国)
2017年
3月
英国でメルカリを開始(手数料0円)
2015年9月
完全子会社ソウゾウを設立

CtoCのメルカリ以外の新規事業を本格化。特にシェアサイクルの「メルチャリ」に投資するも撤退へ

2017年
11月
メルカリNOWのサービス開始
2018年
2月
メルチャリのサービス開始
2018年
4月
teachaのサービス開始
2018年
8月
メルカリNOWのサービス終了
2018年
8月
teachaのサービス終了
2019年
6月
メルチャリを事業譲渡
2019年
6月
完全子会社ソウゾウを清算
決算
メルカリの業績
2016年6月期(連結)
売上高
122
億円
経常利益
-0.9
億円
従業員数
329
営業CF
90
億円
投資CF
-5
億円
財務CF
81
億円
2016年8月
三井住友銀行などから55億円を借入調達
2017年6月
年間141億円を広告宣伝費投資
2017年11月
メルペイを設立。決済の内製化に注力
2017年
11月
完全子会社メルペイを設立
2017年
12月
資金決済法に抵触の疑い
2018年
3月
第二種資金移動業者に登録
2018年6月
東証マザーズに株式上場

上場初日の終値ベースで時価総額7100億円を突破。ベンチャー企業の大型上場として注目を浴びたが、半年後に株価1/3へ

2017年
7月
東証に対して上場申請(年内上場が目標)
2017年
12月
資金決済法に抵触の疑い(年内上場が頓挫)
2018年
6月
東証マザーズに株式上場
2018年
6月
上場初日の評価額7172億円
2018年
12月
赤字拡大で株価が1/3に暴落
決算
メルカリの業績
2018年6月期(連結)
売上高
357
億円
経常利益
-47
億円
従業員数
1140
営業CF
-34
億円
投資CF
-19
億円
財務CF
636
億円
2018年11月
マイケル社を買収

自動車関連SNSサービス「CARTUNE」を展開するマイケル社(FY2019の営業赤字2億円)を12億円で買収。しかし、2020年6月時にのれん減損を計上した上で、イード社への事業売却を決定

決算
メルカリの業績
2019年6月期(連結)
売上高
516
億円
経常利益
-121
億円
従業員数
1826
営業CF
-72
億円
投資CF
-28
億円
財務CF
322
億円
2018
7月

マイクロサービス化の開始を公表(re-architectureプロジェクトの推進)

マイクロサービスアーキテクチャの導入背景

メルカリは世界展開にあたって、コードを疎結合にするためにNetflixの事例を参考に、マイクロサービスアーキテクチャの採用を決定し、モノシリックなアーキテクチャからの脱却を目指した。

同時にサーバーサイドの言語をPHPから、静的型付けのGo言語に移行(Goの採用はメルペイが先行)し、サーバーはSakuraからGCPに乗り換え、Routingと認証ではAPIGatewayを新たに導入することで、当時としては先端と言われる技術スタックに切り替える方針を発表した。このため、メルカリは先端技術を採用したweb企業として、一時的な注目を集めるに至った。

マイクロサービスへの移行

着手の手順としては、まず最初にメルカリUSにおけるマイクロサービス化を実施し、つづいて国内のメルカリについては検索機能などの一部をマイクロサービスに切り出し、徐々にアーキテクチャを移行させていった。ただし、2022年の現時点でもメルカリではモノシリックなアーキテクチャでphpのコードが稼働しており、完全なリプレイスを達成したわけではない。

アーキテクチャの刷新の背景には、メルカリの開発体制の大型化に伴う、エンジニア組織の再編を行うという狙いがあった。数百人のエンジニアが「メルカリ」という1つのプロダクトないし、派生するプロダクトに関わることが予想される中で、コードの複雑化は不可避になりつつあった。

そこで、エンジニア採用におけるアトラクト、グローバル展開を見据えた疎結合なアーキテクチャを実現するための手段として、マイクロサービスを導入したと推察される。ただし高負荷な既存サービスを稼働させつつの移行であり、数年がかかりのPJとなった。

マイクロサービスの帰結

メルカリのマクロサービス化によって、国内のwebエンジニアの間ではマイクロサービス化が議題に挙げられることが多くなり、2010年代後半のweb企業における技術選定に大きな影響を与えた。

ただし、多くの国内IT企業においては、グローバル展開を志向していないことや、単一サービスの提供が基本であること、ビジネスを前提とした領域区分の難しさに直面することが多く、結果としてマイクロサービスの導入による「サイロ化」が課題として露呈するようになった。このため、2022年頃にはマイクロサービスにおける設計ブームは一巡し、モノリスによる原点回帰なアーキテクチャを採用する企業も増加する形となった。

2018年
5月
Web re-architectureプロジェクトを開始
2019年
6月
マイクロサービスのリリース開始(Web)
2022年
6月
Webにおけるマイクロサービス化が一巡
証言
若狭建氏(メルカリ執行役員・メリカリジャパンCTO)

メルカリには「変更が容易なソフトウエアを作る」という大きなチャレンジがありました。そこで2018年の8月にマイクロサービスに舵を切ったんですよ。それで、「じゃあマイクロサービスを実現するための組織とは」という話をして、各モジュールが自律的に機能するのと同様に、組織もそれと同じ構造にしようとしていたんです。「逆コンウェイの法則(※)」というやつですね。(略)

でも、これは上手くいったかどうかは抜きにして、個人的にはかなり野心的な挑戦だったなと思います。やっぱりソフトウエアとエンジニア(人)は違うんですよ。同じように扱うのは難しい。前職のGoogleを振り返ってみると、誰もマイクロサービスとか言ってなかったんですよ。(略)

そう。でも、思い起こせばエンジニア一人一人はかなりマクロなサービスを触ってたんです。つまり「組織の話と作っているものの話って、そこまでリンクしてないんじゃない?」と思ったりするわけです。で、モノリスからマイクロサービスに切り出そうとしたときに、どう切ればいいかなんて誰も分からないじゃないですか。この切り方で良いのかなんて分かんないけど、とりあえず切る。マイクロサービスと組織は相似形でやりたいから組織も同じように切る。でも、後で「この切り方は間違いだったね」なんて話もあるわけです。すると、ソフトウエアは100歩譲って直せばいいですけど、組織は簡単には直せないじゃないですか。「チームAの一部をチームBに合流させよう」と言ったって、そこにはいろいろな調整が発生して、数週間、ときには数カ月を要することもあります。

決算
メルカリの業績
2019年6月期(連結)
売上高
516
億円
経常利益
-121
億円
従業員数
1826
営業CF
-72
億円
投資CF
-28
億円
財務CF
322
億円
2019年7月
鹿島アントラーズの株式取得

メルカリの認知向上のため、サッカークラブの運営に参入。株式61.6%を約15億円で取得すると発表。取得先は大株主の日本製鉄(新日本製鐵)から

決算
メルカリの業績
2020年6月期(連結)
売上高
762
億円
経常利益
-193
億円
従業員数
1792
営業CF
125
億円
投資CF
-26
億円
財務CF
4
億円
2019年10月
フリマアプリの競争激化

2019年10月にヤフーが「PayPayフリマ」のサービス提供を開始してメルカリに宣戦布告。PayPayフリマは2022年10月までの3年間でダウンロード数1500万件を突破し、スマホのフリマアプリをめぐる競争が激化へ

決算
メルカリの業績
2020年6月期(連結)
売上高
762
億円
経常利益
-193
億円
従業員数
1792
営業CF
125
億円
投資CF
-26
億円
財務CF
4
億円
2020年2月
メルペイがOrigamiを買収
2020年7月
BASEの株式6%を約70億円で売却

保有していたBASE社の株式を完全売却。売却先はメルリリンチ証券で市場外取引による。FY2021にメルカリは投資有価証券売却益(特別利益)として70億円を計上

決算
メルカリの業績
2021年6月期(連結)
売上高
1061
億円
経常利益
49
億円
従業員数
1752
営業CF
33
億円
投資CF
69
億円
財務CF
197
億円
2021
5月

情報漏洩・不正決済が継続的に発生

2017年の個人情報流出(CDN設定起因)

開発基盤におけるCDN(Fastlyと推定)切り替え作業中に「Cache-Control: private」の削除漏れで、異なるアクセスに対して個人情報が全世界に配置されるCDNにキャッシュされる問題が発生。影響範囲はwebブラウザ版のメルカリで、「マイページをクリックしたら他人のアカウントのページが表示された」という問い合わせにより発覚。459名の「名前・住所・メールアドレス・電話番号」等が流出した疑い。クレジットカード情報は下4桁の番号流出あり。なお、推察だが、恒久的な対応策は、個人情報ページにおけるCDNの利用停止と思われる

2021年の個人情報流出(CI/CDツール起因)

2021年に開発のCI環境におけるテストコードのカバレッジを計測する外部ツール「Codecov」の脆弱性が発覚。CIを通じてGitHubの認証トークンが露呈し、プログラムにハードコードされた一部の個人情報が流出した。本来はCodecovの脆弱性問題だが、今回の場合、メルカリはDBに保持すべき個人情報を、プログラムにハードコードし、GitHubのcommitログとして残してしまった点が大きな問題であった。

不正アクセスの実際の手口はシンプルである。悪意のある第三者がCodecov経由で、GitHubの認証を取得し(以下略)。GitHubにpushされたコードのうち、個人情報がハードコードされた(DBに格納されずにプログラムに記載された)情報について、情報流出が発生したと推察される。また、メルカリの運用中のコードの閲覧も可能な状況だったと推定される。攻撃実施期間は、2021年1月〜4月にかけて。

主な流出情報は、2013年8月5日〜2014年1月20日に実行された個人の銀行口座情報(1.7万件)や、メルカリ及び子会社の社員の氏名・電話番号など。

恒久的な対処策は、Codecovの利用停止(カバレッジツールなので停止しても支障はきたさない)およびGitHubにおける個人情報を含むcommitの削除(GitHubに連絡の上実施)と推定される

2022年の不正決済

フィッシング詐欺やクレカの不正利用(番号盗用)が横行し、メルカリは半年間(2022年1月-6月)で32億円の補償を発表。クレカで3Dセキュアの導入などで対処へ。

2017年
6月
個人情報の流出を公表
流出件数 459
2021年
5月
個人情報の流出を公表
流出件数 1.7 万名
2022年
8月
不正決済による補償(損失)
6ヶ月間の補償額 32 億円
決算
メルカリの業績
2021年6月期(連結)
売上高
1061
億円
経常利益
49
億円
従業員数
1752
営業CF
33
億円
投資CF
69
億円
財務CF
197
億円
2021
6月

Mercari, Inc.で巨額減損を計上

米国事業の苦戦

2015年のUSにおけるサービス開始以降、一貫してメルカリは北米展開で苦戦を強いられている。2020年のコロナウイルスの蔓延とともに、一時的に流通総額が上昇したものの、その後は低迷が続いており打開策を見出せない状況にある。

この結果、2021年6月期のメルカリ本社(単体決算)において、100%子会社の米国事業について経営不振により78億円の減損損失を計上した。FY2018の関係会社株式(Merucari, Inc.など)103億円の減損損失の計上に続き、巨額減損を計上する形となった。ただし、連単で相殺されるため、連結における減損損失の計上は無い。

機関投資家による公開質問・メルカリ株式売却

メルカリの大株主であるLuxor Capital Group LP(Douglas Friedman・Partner)は、山田進太郎氏とオンラインで対談。その後、Luxor Capital Groupはメルカリの株式の大量売却を開始し、2021年6月時点の保有比率7.53%→2022年8月時点の同3.17%へと大幅に減少。実質的にメルカリを投資対象として見限った可能性が高い。

2018年
6月
Mercari, Inc.で減損を計上
減損損失 103 億円
2021年
6月
Mercari, Inc.で減損を計上
減損損失 78 億円
証言
D.Friedman氏と山田進太郎氏の質疑応答

D.Friedman氏:メルカリの株価がアンダーパフォームしている要因として、投資家の期待がグロースよりも利益の創出にシフトしてきていると思う。今後、メルカリはどのようにして利益を創出していく計画か?

山田進太郎氏の答:我々も投資規律をアップデートしており、業績予想から計算すれば分かる通り、4Q は損益が大きく改善する見込みを立てている。マーケティングだけでなく、コスト全般を見直し、筋肉質な体制を目指している。投資についても半年ほど前まで行っていたような全方位に積極的な投資モードから、特に新規事業については慎重に見極めながら投資をするように変更している。グループ全体としての黒字化を目指すという話ではないが、世の中的な流れを受けて、我々も投資の考え方をアップデートしたということ。一方、周りの状況も刻々と変化しているので、その中でチャンスがあれば投資をしていくことも検討する。

決算
メルカリの業績
2021年6月期(連結)
売上高
1061
億円
経常利益
49
億円
従業員数
1752
営業CF
33
億円
投資CF
69
億円
財務CF
197
億円
2021
3月

完全子会社ソウゾウを設立(2代目)

背景
コロナによる事業者向けECニーズの顕在化
2020年のコロナウイルスの蔓延によって、小規模事業者のECニーズが顕在化する形となった。そこで、メルカリは「小規模事業者」向けの新しい...
設立
2代目ソウゾウを設立
2021年3月にメルカリは完全子会社としてソウゾウ(2代目)を設立した。設立の目的は国内向けの新規事業の開発であり、BtoCのサービスと...
開発
メルカリShopsの新規開発を開始
ソウゾウの設立と同時に、メルカリShopsの新規開発を開始した。開発面で特筆すべきは、メルカリのAPIを叩きつつも、メルカリShopsは...
開始
メルカリShopsをリリース。手数料を10%に設定
2021年7月にメルカリは「メルカリShops」を限定公開した。そして2021年10月に「メルカリShops」を公式リリースするとともに...
結果
20万店で頭打ちか?減損28億円を計上して従業員を100名削減
2023年6月期において、メルカリは有価証券報告書において子会社ソウゾウの従業員数を開示。前年との比較で正社員100名が減少しており、ソ...
人事
石川佑樹CEOの退任。藤樹CEOの就任で営業強化へ
2023年5月にソウゾウのCEOとして藤樹賢司氏が就任した。藤樹氏はEC営業の経験が豊富であり(ソウゾウでは営業本部長を歴任)、メルカリ...
詳細をよむ
2021年
3月
ソウゾウを会社設立
2021年
10月
メルカリShopsをリリース
2022年
4月
メルカリShops20万店舗を突破
Shops出店数 20 万店
2022年
6月
ソウゾウで減損28億円を計上
ソウゾウ減損損失 28 億円
2023年
6月
前年比で従業員100名削減
人員削減 100
2023年6月
未収入金が増加

メルペイを通じた「定額払い」「メルカード」の提供により、後払いの増加によって未収入金がYoYで353億円増加。この結果、営業キャッシュフローはマイナスとなり悪化した。

また、FY2023期末時点の貸倒引当金は54億円であり、あと払いによる潜在的な財務リスクが発生

決算
メルカリの業績
2023年6月期(連結)
売上高
1720
億円
営業利益
174
億円
営業CF
-358
億円
投資CF
-6
億円
財務CF
251
億円
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