web

メルカリの歴史

スマートフォンの普及に合わせて成長し、グローバル展開と決済の内製化に注力。ただし近年、海外機関投資家はメルカリの将来性を疑問視

TimeLine
2013→2014

スマートフォンの普及を受けてフリマアプリを開発。後発参入

2013 02月
[*1-1]
創業
会社設立
株式会社コウゾウを設立。山田進太郎氏が創業
起業家の山田進太郎氏は半年間の世界一周旅行から帰国し、2013年2月に六本木にて株式会社コウゾウ(現メルカリ)設立した。山田進太郎氏は自身が創業したゲーム会社「ウノウ」をZyngaに売却した実績があり、メルカリは2度目の起業となった。日本国内でのスマートフォンの普及に着目し、フリマアプリ「メルカリ」の開発を開始した。
山田進太郎氏(メルカリ創業者)
山田進太郎氏(メルカリ創業者)
ps.nikkei.com
Twitterを読み込み中....
2013 03月
[*1-2]
創業
資金調達
創業メンバーから資金調達。増資を実施
メルカリとしては1000万円を調達。資本金2500万円(資本準備金500万円)へ。出資者は不明だが、山田進太郎氏が中心と推察される
2013 07月
新規事業
「メルカリ」をリリース。個人間取引のマッチングに新規参入
2013年7月2日に、CtoC取引が行えるAndroidアプリ「メルカリ」をリリース。初日の売上品数は16品、流通総額は2万円だった。また、... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2013 06月
[*1-4]
資金調達
第三者割当増資
EastVenturesから資金調達(第三者割当増資・5000万円)
2013年6月にベンチャー投資を行うEastVenturesの松山太河氏は、旧知の山田進太郎氏が起業したことを知り、5000万円シード投資を行うことを即座に決定し、オフィスを提供。これを受けてメルカリは本社を「東京都港区六本木4-11-4六本木ビル304」に移転した。
松山太河氏(EastVentures)
松山太河氏(EastVentures)
2015/2ForbesJAPAN
Twitterを読み込み中....
2013 08月
[*1-5]
資金調達
第三者割当増資
新株予約権付社債
種類株式
Unitedから資金調達(第三者割当増資=A種優先株・新株予約権付社債)
2013年8月には、事業会社のユナイテッドは、メルカリへの投資を決定した。メルカリの調達額は合計3億円(第三者割当増資2.2億円、新株予約権付社債0.8億円)。また種類株式を発行。メルカリの事業失敗に備えて、Unitedに対して優位な条項があったと推察される。
2013 11月
[*1-6]
商号変更
株式会社メルカリに商号変更
2013 12月
マーケティング
販売促進として友達紹介キャンペーンを実施
2013 12月
キーパーソン参画
小泉文明氏が入社
元ミクシィCFO。2014年メルカリ取締役に就任。SNSの発展でCtoC取引が広がると判断してメルカリに入社した
小泉文明氏(メルカリ)
小泉文明氏(メルカリ)
2015/2ForbesJAPAN
Twitterを読み込み中....
2013 12月
業績好調
国内アプリDL数100万件を突破
2014 03月
[*1-10]
本社移転
新六本木ビルに本社移転
業容拡大に備えてオフィスを移転。東京都港区六本木7-15-7新六本木ビル7F
Performance
2013→2014
TimeLine
2014→2016

マーケティングへの巨額投資を遂行。CSや配送の座組みも整備

2014 03月
[*2-1]
資金調達
第三者割当増資
種類株式
VCなどから14.5億円を資金調達(第三者割当増資=B種優先株)
2014年3月にメルカリ(当時の社員数約10名)は14.5億円の資金調達を実施した。グローバルブレインなどのベンチャーキャピタルに対して種類株式の発行による第三者割当を実施。資金用途は広告宣伝費4.5億円(テレビCM3億円・オンライン1.5億円)と、カスタマーサービスセンターでの人員採用など
Twitterを読み込み中....
2014 03月
業績好調
国内アプリDL数200万件を突破
2014 04月
カスタマーサポートセンターを仙台市に新設
サービス拡大に向けてカスタマサポートへの投資を優先。社員の半数以上をCS担当にし、CtoCアプリの宿命であるトラブルの最小化を目論む
2014 05月
サービス拡充
マーケティング
テレビCMの放映を開始。3億円を投資
3
億円
テレビCM放映(2014.5)
「2人の再会」篇と「お土産だった」篇の2つを放映。テレビCMの放映を受けて、2015/6/6に国内DL数300万件を突破
小泉文明の発言(メルカリ・取締役)
小泉文明の発言(メルカリ・取締役)
merucan「メルカリ激動の5年間は挑戦の連続だった。」
2014 07月
業績好調
流通総額10億円を突破
この頃の1日出品数は10万点(出所:2017/10日経Associe)
2014 09月
業績好調
国内アプリDL数500万件を突破
500万ダウンロードを達成。抽選5000名にポイントを付与するキャンペーンを実施。キャンペーンの販促費の予算枠は毎月100万円
Twitterを読み込み中....
2014 09月
米国
米国でMercariをリリース
2014年にアメリカへの進出を決定。グローバルでフリマアプリを普及させることを目論む。シリコンバレーで企業経験のある石塚亮氏を中心に組織を結成。アプリは現地向けにデザインや機能をアレンジ。
山田進太郎氏(メルカリ創業者)
山田進太郎氏(メルカリ創業者)
2016/1ForbesJAPAN
2014 10月
サービス拡充
価格改定
重大リスク
出品者手数料10%の徴収を開始。利用者には4日前に通告(サイレント値上げの疑義)
ユーザーの拡大を受けてメルカリの出品者に対する手数料の徴収を開始。取引完了時点の出品者に対して売上高の10%を手数料として徴収。2014/10/1 9:00以降に出品された商品が対象で、メルカリは収益化のフェーズへ。ユーザーには9/26メールで通知しており猶予期間はわずか4日。プレスリリースは見当たらず。実質的な値上げで、プレスによる発表を回避したと推察
Twitterを読み込み中....
2015 02月
[*2-9]
業績好調
国内アプリDL数1000万件を突破
1000万ダウンロードを突破してキャンペーンを開催。当時の出品ジャンルは「1位レディース27%、2位エンタメ・ホビー20%、3位ベビーキッズ12%、4位メンズ10%、5位コスメ9%」であり、若年層の女性を中心にユーザーを確保
Twitterを読み込み中....
2015 03月
本社移転
本社を六本木ヒルズに移転
2015 03月
業務提携
ヤマト運輸との提携サービスを発表
全国一律料金を実現。複雑な配送料をシンプルに整備
2015 04月
新機能
らくらくメルカリ便のサービス提供を開始
2015 09月
会社設立
完全子会社
完全子会社ソウゾウを設立
メルカリの新規事業を子会社を通じて運営
2015 11月
海外進出
Mercari Europe Ltdを英国に設立
Performance
2014→2016
TimeLine
2016→2018

事業拡大のためにグローバル展開を本格化。国内は新規事業にも注力

2016 03月
資金調達
第三者割当増資
種類株式
83.5億円を資金調達(種類株発行による第三者割当増資)。推定評価額1226億円
2016年にメルカリは、株式上場を見据えて大規模な資金調達をエクイティ及びデッドの2つから実施した。 まずは、2016年3月に三井物産などか... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2016 04月
採用
新卒採用を開始。2016年度は5〜6名入社
2016 06月
業績好調
売上高123億円・純利益30億円
第4期決算公告(2016年6月期)より
2016 12月
業績好調
国内事業で単月黒字化を達成
2017 02月
企業買収
ザワット株式会社の株式100%取得
2017 02月
サービス
カスタマーサポートセンターを九州博多に新設
2017 04月
業績好調
国内アプリDL数5000万件を突破
2017 04月
新機能
大型らくらくメルカリ便のサービス提供を開始
2017 07月
異動
[*3-9]
山田進太郎氏が代表取締役会長兼CEOに就任。小泉文明氏が取締役社長COOに就任
2017 06月
新機能
ゆうゆうメルカリ便のサービス提供を開始
2017 06月
重大リスク
インシデント
459名の個人情報が流出。CDNの設定ミス
開発基盤におけるCDN(Fastlyと推定)切り替え作業中に「Cache-Control: private」の削除漏れで、異なるアクセスに対... 続きを読む
2017 07月
働き方
コーポレート部門でもフレックスを導入(12-16時)
2017 07月
新機能
ライブ配信機能メルカリチャンネルを開始
2017 07月
東証に上場申請
予備審査を開始して2017年内の上場を目指すが、当初計画より遅れが発生
2017 11月
サービス拡充
事業失敗
即時買取サービス「メルカリNOW」を開始(2018年撤退済)
2017 11月
会社設立
完全子会社
完全子会社メルペイを設立
決済事業の完全子会社として設立。金融関連の特別法を見据えつつ業者としての登録を開始。2018年3月に第二種資金移動業者に登録。2021年9月に認定包括信用購入あっせん業者として認定
2017 12月
重大リスク
出品者の売上金(未払金)保持期間を1年から90日に短縮。資金決済法に抵触の疑い
メルカリは出品者の売上金の保持期間を1年から90日に短縮。理由は、仮にメルカリの事業が資金決済法によって規定される資金移動業者に該当すると判... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2018 02月
子会社
サービス拡充
事業失敗
子会社ソウゾウにて新規事業「メルチャリ」を開始(2019年撤退済)
シェアサイクル事業を展開。プロダクトオーナーは横田結氏(現・デジタル庁)。2019年に事業終了
2018 04月
子会社
サービス拡充
事業失敗
子会社ソウゾウにて新規事業「teacha」を開始(2018年撤退済)
スキルシェアサービス事業を展開。プロダクトオーナーは鶴田浩之氏(現・CODEGYM創業者)。2018/8/21に事業終了
2018 05月
[*3-20]
重大リスク
国税局から更正通知書を受領。課税処理の認識相違の疑い
メルカリポイントの課税における取り扱いで当局と認識相違が発生
Performance
2016→2018
TimeLine
2018→2019

株式上場で時価総額7172億円へ。ユニコーンの上場として注目された

2018 06月
株式上場
東証マザーズに株式上場
2017年7月に東証に対して上場の予備申請を実施。当初は2017年内の上場を目指したが、種々の事情により2018年6月にズレ込んだと推察される。ブックビルディングの評価額は3800億円で、上場当日の終値ベースの評価額は7172億円。ベンチャー企業の大型上場として注目を浴びた
Twitterを読み込み中....
2018 07月
サービス拡充
ソフトウェア開発
マイクロサービス化を開始
メルカリは世界展開にあたって、コードを疎結合にするためにNetflixの事例を参考にマイクロサービスアーキテクチャの採用を決定し、モノシリッ... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2018 11月
[*4-3]
完全子会社
事業失敗
マイケル株式会社を完全子会社化(2020年撤退済)
車好き向けのサイト「CARTUNE(会員数30万)」を運営するマイケル株式会社を株式交換によって完全子会社化。メルカリとのID連携・出品連携・購入連携を進める方針を公表。ただし事業拡大に苦戦し、2020年5月にマイケル株式会社をイードに0.8億円で売却して撤退済
2018 11月
[*4-4]
マーケティング
草彅剛氏を起用したテレビCMを放映
Twitterを読み込み中....
2018 12月
子会社
事業失敗
英国子会社Mercari Europe LtdとMerpay Ltdを清算してイギリスから撤退。株価低迷へ
イギリス子会社の業績は売上高43万円に対して営業損失が10億円。メルカリは子会社株式の評価損約14億円を計上し、子会社2社を清算した。 上場直後のネガティブサプライズとなり、メルカリの株価は上場時点の4500円台から、2018年12月には1800円台へと低迷した。
Twitterを読み込み中....
Performance
2018→2019
TimeLine
2019→2021

決済事業への注力により財務効率は悪化へ。PayPayとの競争で疲弊

2019 01月
経営方針
決済事業に集中投資。新規事業を一部縮小
2018年末にソフトバンクグループのPayPayがスマホ決済領域に参入し、100億円の還元キャンペーンなど、莫大な販促費を投資した。 そこで... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2019 06月
事業撤退
完全子会社ソウゾウを清算
シェアサイクルなど、新事業縮小のため
2019 07月
株式取得
鹿島アントラーズの株式取得
メルカリの認知向上のため、サッカークラブの運営に参入。株式61.6%を約15億円で取得すると発表。取得先は大株主の日本製鉄(新日本製鐵)から
2019 09月
異動
[*5-4]
山田進太郎氏が代表取締役CEO社長に復帰。小泉文明氏が取締役President会長に就任
小泉文明氏は、2019年7月に買収した鹿島アントラーズの経営とメルカリの対外折衷に専念するためにメルカリの社長を退任。小泉氏は取締役を継続しつつ、メルカリにおける役職を「President会長」に変更。メルカリの社長には山田進太郎氏が復帰した
Twitterを読み込み中....
2020 06月
採用方針
積極採用の方針から転換。2年間の採用抑制へ
社員数の推移: 2018/6=1140名, 2019/6=1826名, 2020/6=1792名, 2021/6=1752名, 2022/6=2209名
2020 07月
新機能
完全子会社メルペイを通じてスマート払いの提供を開始
2020 08月
ガバナンス
上級執行役員制度を導入
2020 10月
値上げ
米国メルカリで決済手数料の徴収を開始
2021 03月
新規事業
完全子会社ソウゾウを設立(2度目)
メルカリShopの開発に向けて新会社を設立。実質的にソウゾウを復活させた
2021 03月
新機能
完全子会社メルペイを通じてバーチャルカードの提供を開始
2021 04月
新規事業
完全子会社メルコインを設立
Performance
2019→2021
TimeLine
2021→2022

米国事業の不振が継続

2021 04月
[*6-1]
子会社
事業失敗
業績低迷
米国
米国子会社Mercari, Inc.で78億円の減損損失を計上
メルカリ本社(単体決算)は、100%子会社の米国事業について経営不振により78億円の減損損失を計上。ただし、連単で相殺されるため、連結における減損損失の計上は無し
2021 06月
資金調達
転換社債の発行で約500億円を調達
ユーロ円建転換社債。CBのアップ率は54.99%。転換時の希薄化率3.39%。強気の水準
2021 06月
完全子会社
完全子会社メルコインを通じてBassetの株式を取得
2021 05月
重大リスク
インシデント
ハードコードされた個人情報が流出。2.7万件の個人情報が流出
開発のCI環境におけるテストコードのカバレッジを計測する外部ツール「Codecov」の脆弱性が発覚。CIを通じてGitHubの認証トークンが... 続きを読む
Twitterを読み込み中....
2021 09月
新機能
米国メルカリにて「後払い決済サービス」の提供を開始
2021 10月
新規事業
完全子会社ソウゾウを設立。メルカリShopsの提供を開始
CtoCのメルカリに対して、BtoCとしてメルカリShopsを開発。出品者はメルカリに自前のショップを作成できるサービスを提供。出品者が負担する手数料は、販売時の10%であり、月額及び初期必要の負担は0円
2021 12月
ガバナンス
諮問機関ESG委員会を発足
Performance
2021→2022
TimeLine
2022→2023

海外の機関投資家がメルカリの将来性を疑問視して株式の大量売却を開始。メルカリは利益創出を急ぐ

2022 04月
CapitalResearchがメルカリの株式を大量売却
Capital Research and Management Companyはメルカリの株式2.38%を売却したことを公表。同ファンドにおけるメリカリの株式保有比率は、2020年9月に5.02%(取得後比率)、2020年11月に6.21%(取得後比率)、2022年4月に3.83%(売却比率)と推移。同ファンドは長期保有を志向しており、メルカリの株式売却は注目に値する
2022 06月
資本政策
東証プライムに市場区分を変更
2022 06月
[*7-3]
LuxorCapitalGroupがメルカリの株式を大量売却
メルカリの大株主であるLuxor Capital Group LP(Douglas Friedman・Partner)は、山田進太郎氏とオンラインで対談。その後、Luxor Capital Groupはメルカリの株式の大量売却を開始し、2021年6月時点の保有比率7.53%→2022年8月時点の同3.17%へと大幅に減少。実質的にメルカリを投資対象として見限った可能性があると推察
D.Friedman氏と山田進太郎氏の質疑応答
D.Friedman氏と山田進太郎氏の質疑応答
Mercari Management and Shareholder Dialogue
[表] 海外機関投資家によるメルカリの株式保有比率の推移
2022 06月
海外展開
[*7-4]
Mercari Software Technologies India Private Limitedを設立
国内でエンジニアの確保が逼迫して難しいため、インドでの開発体制を強化するため完全子会社を設立。国内向けメルカリに加えて、米国向けメルカリの開発に従事する予定
Twitterを読み込み中....
2022 06月
業績低迷
自己資本比率10%台に低下。国内メルカリのGMVが3Q→4Qで大幅減
自己資本比率10.8%。GMVの推移は3Q:2326億円→4Q:2186億円。GMVが頭打ちなことに加えて借入金が多く、「資金決済法」による供託金の計上(FY2023/1Q時点:差入保証金467億円)が必要なことから、財務体質の改善は前途多難。不正決済による貸倒引当金も増加。今後の資本政策に注視
2022 06月
キーパーソン
元執行役員CTOの名村卓氏が退職
名村卓氏がメルカリを退職し、LayerX執行役員に就任。メルカリの成長期を支えたCTOの転職として注目を浴びた
Twitterを読み込み中....
2022 08月
重大リスク
インシデント
不正決済で半年間32億円を補償
フィッシング詐欺やクレカの不正利用(番号盗用)が横行し、メルカリは半年間(2022年1月-6月)で32億円の補償を発表。クレカで3Dセキュアの導入などで対処
2022 11月
[*7-8]
新規事業
サービス拡充
「メルカード」の発行開始。クレジットカードに新規参入
JCBと提携してクレジットカードの発行に参入。機械学習を用いた独自与信の技術を活用し、従来の金融機関の審査で落ちていたユーザーにも発行できる点を訴求。メルカリの利用履歴があるユーザーへの与信精度(途上与信)が高いと推察される。メルカリとしては「リスクの高いユーザー」に対してもクレカを発行する意向で、今後の貸倒引当金の計上額の増加(BSリスク増大)が予想される
Twitterを読み込み中....
Performance
2022→2023
2013
Report

「メルカリ」をリリース。個人間取引のマッチングに新規参入

2013年7月2日に、CtoC取引が行えるAndroidアプリ「メルカリ」をリリース。初日の売上品数は16品、流通総額は2万円だった。また、同月内にiPhone向けアプリも展開し、メルカリの事業展開を開始した。

当時、PCではYahoo JAPANが展開する「ヤフオク」、スマホではフリル(Fablic社・創業者は堀井翔太氏)が中古取引のプラットフォームを運営しており、メルカリは中古取引業界では後発参入となった。また、LINE、ヤフー、楽天といった大企業もフリマアプリに参入するなど、この事業領域では激戦が繰り広げられつつあった。

競合各社がひしめく中で、メルカリはプロダクト開発が優位性を作り上げるキーファクターと判断。そこでエンジニアの採用を重視し、プロダクトを磨き続ける体制づくりに注力した。なお、メルカリの会社設立の段階では、創業者の山田進太郎氏がエンジニアの採用を率先し、何ヶ月も口説いて優秀なエンジニアを採用するなど、開発リソースの確保に注力したという。

この結果、フリマアプリとして「メルカリ」を2013年7月にリリースした。iOSとAndroidの2つのみで、webブラウザはしばらく開発せずアプリに集中した。リリース時のサーバーサイド言語はphp。クラウドが普及してなかったためオンプレ(さくらインターネット)のサーバーで稼働する構成だった。

山田進太郎氏(メルカリ創業者)

もともと『楽オク』や『Fujisan.co.jp』でeコマースの経験はありましたし、トランザクションが発生するサービスが好きなんです。あと、今度サービスを作るなら、プラットフォーマーをやりたいという思いもありました。こうした思いを実現できそうなのが、スマホを使ったフリマサービスだったんです。ここ1、2年でフリマアプリが複数リリースされ、いくつかは一定のユーザー数を獲得するのに成功していましたし、確実に市場があると思っていました

(略)

会社としてきちんと運営していきたいため、社会保険を整えたり、ワークフローを整えたり、上場基準で仕組みを作っています。良いエンジニアにはきちんとした対価を受け取ってほしいのですが、そこはベンチャーなので『給与は若干抑え目でもいい』という人には多めにストックオプションを付与しています。最終的に、その方がリターンも圧倒的に大きくなるようにしていきたいと思ってます。会社という組織で活動するのが、結果的に良いサービスを作るのに一番早いんです

2016
Report

83.5億円を資金調達(種類株発行による第三者割当増資)。推定評価額1226億円

2016年にメルカリは、株式上場を見据えて大規模な資金調達をエクイティ及びデッドの2つから実施した。

まずは、2016年3月に三井物産などから83.5億円のエクイティにより資金調達を実施。この時の評価額は1226億円と推定されており、日本国内で非上場企業ながらも時価総額1000億円を超えるユニコーン企業が誕生したことで話題になった。

つづいて、2016年8月には、営業キャッシュフローが安定してきたことから、銀行からの借入による資金調達を実施した。三井住友銀行などのメガバンクを中心に55億円の借入金による資金調達を実施し、2016年を通じてメルカリは「資本・借入」の両面から累計138億円の資金調達を実施した。

これらの資金を全て投資にまわし、2017年6月期のメルカリにおける年間広告宣伝費は141億円になるなど、フリマアプリとしての認知度を高めるための積極的な投資を継続した。

2017
Report

459名の個人情報が流出。CDNの設定ミス

開発基盤におけるCDN(Fastlyと推定)切り替え作業中に「Cache-Control: private」の削除漏れで、異なるアクセスに対して個人情報が全世界に配置されるCDNにキャッシュされる問題が発生。影響範囲はwebブラウザ版のメルカリで、「マイページをクリックしたら他人のアカウントのページが表示された」という問い合わせにより発覚。459名の「名前・住所・メールアドレス・電話番号」等が流出した疑い。クレジットカード情報は下4桁の番号流出あり。なお、推察だが、恒久的な対応策は、個人情報ページにおけるCDNの利用停止と思われる

2017
Report

出品者の売上金(未払金)保持期間を1年から90日に短縮。資金決済法に抵触の疑い

メルカリは出品者の売上金の保持期間を1年から90日に短縮。理由は、仮にメルカリの事業が資金決済法によって規定される資金移動業者に該当すると判断された場合、資産保全義務が必要となるためであった。これはメルカリが倒産した場合に、従前に資金決済法が適用されていれば、供託先で利用者の資産(売上金)を保全できることを意味する。

しかし、メルカリにとって保全義務の遂行にはコストがかかるため資金移動業者の規制を避けたと推定される。具体的な妥結策として売上金の保持期限を90日に設定したと見るとが妥当だろう。

2017年11月にメルカリは金融庁に対して「第三者型前払式支払手段発行者登録」を行っており、(従来は軽視していたと思われる)資金決済法への対応を急いだ。

なお、完全子会社メルペイ設立の動きも資金移動業と関連しており、メルカリではなくメルペイを「第二種資金移動業者」として登録することで、金融事業を別会社として行うことで対処する道を選択した。当時のメルカリは上場審査のタイミングにあたり、これらの規制対応によって本来予定していた2017年内の上場計画が遅れた可能性もある。

2018
Report

マイクロサービス化を開始

メルカリは世界展開にあたって、コードを疎結合にするためにNetflixの事例を参考にマイクロサービスアーキテクチャの採用を決定し、モノシリックなアーキテクチャからの脱却を目指した。同時にサーバーサイドの言語をPHPから、静的型付けのGo言語に移行し、サーバーはSakuraからGCPに乗り換え、Routingと認証ではAPIGatewayを新たに導入することで、モダンな技術スタックに切り替えた。

着手の手順としては、まず最初にメルカリUSにおけるマイクロサービス化を実施し、つづいて国内のメルカリについては検索機能などの一部をマイクロサービスに切り出し、徐々にアーキテクチャを移行させていった。ただし、2022年の現時点でもメルカリではモノシリックなアーキテクチャでphpのコードが稼働しており、完全なリプレイスを達成したわけではない。

アーキテクチャの刷新の背景には、メルカリの開発体制の大型化に伴う、エンジニア組織の再編を行うという狙いがあった。数百人のエンジニアが「メルカリ」という1つのプロダクトないし、派生するプロダクトに関わることが予想される中で、コードの複雑化は不可避になりつつあった。

そこで、エンジニア採用におけるアトラクト、グローバル展開を見据えた疎結合なアーキテクチャを実現するための手段として、マイクロサービスを導入したと推察される。

メルカリのマクロサービス化によって、国内のwebエンジニアの間ではマイクロサービス化が議題に挙げられることが多くなり、web企業における技術選定に大きな影響を与えた。

2019
Report

決済事業に集中投資。新規事業を一部縮小

経営方針

2018年末にソフトバンクグループのPayPayがスマホ決済領域に参入し、100億円の還元キャンペーンなど、莫大な販促費を投資した。

そこで、2019年1月にメルカリは全社的な事業構造の変革を実施して決済領域への集中投資を決定した。2019年1月から全社戦略における最重要事項として「メルペイ」の急速な立ち上げを実施する。

このため、2018年2月に開始したシェアサイクル事業「メルチャリ」に関して、フリマおよび決済との関連が薄いと判断し、2019年に事業売却による撤退を決めた。売却先はクララオンライン(家本賢太郎・代表取締役)であり、同社では2022年の時点でもシェアサイクル事業を「チャリチャリ」として継続している。

メルカリにおけるシェアサイクルを含めた新事業は子会社の「ソウゾウ」を通じて運営されており、2018年6月期における同子会社の業績は売上高4.5億円に対して、営業損失16.8億円であった。

2021
Report

ハードコードされた個人情報が流出。2.7万件の個人情報が流出

開発のCI環境におけるテストコードのカバレッジを計測する外部ツール「Codecov」の脆弱性が発覚。CIを通じてGitHubの認証トークンが露呈し、プログラムにハードコードされた一部の個人情報が流出した。本来はCodecovの脆弱性問題だが、今回の場合、メルカリはDBに保持すべき個人情報を、プログラムにハードコードし、GitHubのcommitログとして残してしまった点が大きな問題であった。

不正アクセスの実際の手口はシンプルである。悪意のある第三者がCodecov経由でGitHubの認証状態を取得し、メルカリ社内のオーガニゼーションのGitHubに侵入することで不正アクセスが発生。GitHubにpushされたコードのうち、個人情報がハードコードされた(DBに格納されずにプログラムに記載された)情報について、情報流出が発生したと推察される。また、メルカリの運用中のコードの閲覧も可能な状況だったと推定される。攻撃実施期間は、2021年1月〜4月にかけて。

主な流出情報は、2013年8月5日〜2014年1月20日に実行された個人の銀行口座情報(1.7万件)や、メルカリ及び子会社の社員の氏名・電話番号など。

恒久的な対処策は、Codecovの利用停止(カバレッジツールなので停止しても支障はきたさない)およびGitHubにおける個人情報を含むcommitの削除(GitHubに連絡の上実施)と推定される。

2022
Report

CapitalResearchがメルカリの株式を大量売却

Capital Research and Management Companyはメルカリの株式2.38%を売却したことを公表。同ファンドにおけるメリカリの株式保有比率は、2020年9月に5.02%(取得後比率)、2020年11月に6.21%(取得後比率)、2022年4月に3.83%(売却比率)と推移。同ファンドは長期保有を志向しており、メルカリの株式売却は注目に値する

2022
Report

LuxorCapitalGroupがメルカリの株式を大量売却

メルカリの大株主であるLuxor Capital Group LP(Douglas Friedman・Partner)は、山田進太郎氏とオンラインで対談。その後、Luxor Capital Groupはメルカリの株式の大量売却を開始し、2021年6月時点の保有比率7.53%→2022年8月時点の同3.17%へと大幅に減少。実質的にメルカリを投資対象として見限った可能性があると推察

D.Friedman氏と山田進太郎氏の質疑応答

D.Friedman氏:メルカリの株価がアンダーパフォームしている要因として、投資家の期待がグロースよりも利益の創出にシフトしてきていると思う。今後、メルカリはどのようにして利益を創出していく計画か?

山田進太郎氏の答:我々も投資規律をアップデートしており、業績予想から計算すれば分かる通り、4Q は損益が大きく改善する見込みを立てている。マーケティングだけでなく、コスト全般を見直し、筋肉質な体制を目指している。投資についても半年ほど前まで行っていたような全方位に積極的な投資モードから、特に新規事業については慎重に見極めながら投資をするように変更している。グループ全体としての黒字化を目指すという話ではないが、世の中的な流れを受けて、我々も投資の考え方をアップデートしたということ。一方、周りの状況も刻々と変化しているので、その中でチャンスがあれば投資をしていくことも検討する。

Performance > Details

[表] 海外機関投資家によるメルカリの株式保有比率の推移
References [資料整理中]