ラクス の歴史

更新:

2000年、中村崇則氏が大阪でアイティーブーストとして設立。メール共有システム「メールディーラー」、IT人材事業の分社、米国子会社の売却と投資先行への転換までの沿革と経緯を執筆。

創業

2000年

創業者

中村崇則

創業地

大阪市都島区

直近売上高(2026/3)

603億円

長期業績と転換点(2015/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ2000年に大阪でSaaSとSESの二本柱から事業を始めたのか
A 2000年の創業時に二本柱を選んだのは、月額課金のSaaSが単独では立ち上がりに時間を要し、先行投資を支える原資が要ったからである。中村崇則氏はNTTを離れ2000年11月に大阪でアイティーブーストを設立し、2001年4月に問い合わせメール共有「メールディーラー」を月額課金で売り出した。同時に2002年5月にはエンジニアを常駐派遣するIT人材事業を始め、人月で稼ぐSESの現金収入でSaaSの育成を支える構造を1年で固めた
Q なぜ2018年にIT人材事業をラクスパートナーズへ分社したのか
A 2018年に分社したのは、人月で受注するSESと月額課金で積み上がるSaaSを同じ決算に載せたままでは、SaaS単体の採算が外から見えなかったからである。創業時から並走させたIT人材事業を、2018年3月に設立した子会社ラクスパートナーズへ同年7月に承継し、両事業を法人として切り分けた。これによりSaaSセグメントの高い利益率が決算上で可視化され、後年に二本柱を解消する判断の材料がそろった
Q なぜ2026年にラクスパートナーズの全株式を譲渡しSaaS専業へ絞り込んだのか
A 2026年3月期に全株式を譲渡したのは、2018年の分社で可視化されたSaaSの採算の高さが、SESを手元に残す理由を薄めたからである。ラクスは2026年3月期第1四半期にラクスパートナーズの全株式譲渡を発表し、特別利益167億円を計上予定とした(2026年4月1日完了予定)。約四半世紀並走させたSESを手放し、本体を楽楽シリーズ中心のSaaS専業へ絞り込んだ

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2000年〜 ITブースト創業からラクス改称まで ── 大阪発SaaS、インターネット普及初期の二本柱

  1. 2000年 アイティーブーストを設立
  2. 2001年 クラウド事業に参入
  3. 2001年 メール共有システム「メールディーラー」を発売
  4. 2001年 ITエンジニアスクール事業開始
  5. 2001年 本店を移転
  6. 2002年 IT人材事業に参入
  7. 2003年 東京支店を開設

NTT出身者が大阪で立ち上げたクラウドとIT人材の同時並走

2000年11月、大阪市都島区都島南通に株式会社[1]アイティーブーストが設立された。創業者の中村崇則氏は1996年、インターネットが普及し始めた時期に大企業NTTに入社した経歴を持ち[2]、当時を「たまたまインターネット黎明期にNTTに入社したという運のよさが大きいでしょう。今日にまで至っている理由の8割はそれだと思います」(経営者ノート 2019年5月)と振り返っている。大企業を離れて起業する判断は「食べるものと住むところさえあればどうにかなる」(経営者ノート 同上)という気軽さで踏み切ったと本人が後年語っている。創業地に大阪を選んだのは中村氏の地縁と、IT人材の採用競合が東京より緩い市場環境を狙ったためで、大阪本社/東京補完という同社固有の二都体制の原点となる。設立翌2001年5月には本店を都島区東野田町に移転した[3]

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]2000年11月 大阪市都島区都島南通に株式会社アイティーブーストを設立(後のラクスの母体)
    • [3]2001年5月 本店を大阪市都島区東野田町に移転
  • content/ceo/fy00-nakamura-takanori.yaml
    • [2]中村崇則氏は1996年4月にNTTへ入社した(content/ceo/fy00-nakamura-takanori.yaml career)。旧表記「2000年ころ」は引用原典(経営者ノート 2019年5月)にない断定で、timeline/ceo csvの創業年(2000年11月・FY00代表取締役社長就任)とも矛盾していたため、career記録の1996年に修正済み

2001年4月、ITエンジニアスクール事業を開始[4]した。未経験者を育成してエンジニア派遣につなげる前段事業で、後年のIT人材事業(ラクスパートナーズ)の源流となる育成型ビジネスである。同月、クラウド事業として問い合わせメール共有・一元管理システム「メールディーラー」の販売を開始[5]した。SaaSという用語が国内で定着する前の2001年時点で、ASP(Application Service Provider)形式のメール共有サービスを月額課金で提供する仕組みで、後の「楽楽」シリーズに連なるサブスクリプション型BtoBクラウドの第一号プロダクトとなる。2002年5月にはIT人材事業を開始、自社育成エンジニア[6]の常駐派遣事業として2本目の収益柱の起点を置いた。SaaSとSESを同時並走させる事業構造は、創業から1年で型として固まり、20年以上にわたり同社の収益体質を規定した。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [4]2001年4月 ITエンジニアスクール事業を開始(後のIT人材事業=ラクスパートナーズの源流となる育成型ビジネス)
    • [5]2001年4月 クラウド事業を開始(問い合わせメール共有・一元管理システム「メールディーラー」の販売開始)
    • [6]2002年5月 IT人材事業を開始(自社育成エンジニアの常駐派遣事業・SaaSと並ぶ二本目の収益柱の起点)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]2000年11月 大阪市都島区都島南通に株式会社アイティーブーストを設立(後のラクスの母体)
    • [3]2001年5月 本店を大阪市都島区東野田町に移転
    • [4]2001年4月 ITエンジニアスクール事業を開始(後のIT人材事業=ラクスパートナーズの源流となる育成型ビジネス)
    • [5]2001年4月 クラウド事業を開始(問い合わせメール共有・一元管理システム「メールディーラー」の販売開始)
    • [6]2002年5月 IT人材事業を開始(自社育成エンジニアの常駐派遣事業・SaaSと並ぶ二本目の収益柱の起点)
  • content/ceo/fy00-nakamura-takanori.yaml
    • [2]中村崇則氏は1996年4月にNTTへ入社した(content/ceo/fy00-nakamura-takanori.yaml career)。旧表記「2000年ころ」は引用原典(経営者ノート 2019年5月)にない断定で、timeline/ceo csvの創業年(2000年11月・FY00代表取締役社長就任)とも矛盾していたため、career記録の1996年に修正済み

大阪本社/東京拠点/米国子会社 ── 商号変更とラクス改称

2003年4月、東京都新宿区西新宿に東京支店を開設[7]、翌2004年4月には業容拡大に伴い東京支店を東京本社に名称変更した[8]。大阪本社/東京本社の実質的な二本社体制は、首都圏での営業・採用拡大への対応と、関西の人件費・採用優位を生かした開発拠点維持を両立する設計である。2005年7月にはエクスビット株式会社の全株式を取得[9]して初の連結子会社化を実施、翌2006年5月に同社を吸収合併した[10]。買収から1年弱で吸収合併へ移行する統合スピードは、後年のM&Aで反復されるパターンとなる。FY11の単体売上高は19.5億円・経常利益2.6億円で、JGAAP単体決算下の小規模ベンチャーとしての規模感を示した。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [7]2003年4月 東京都新宿区西新宿に東京支店を開設
    • [8]2004年4月 業容拡大に伴い東京支店を東京本社に名称変更
    • [9]2005年7月 エクスビット株式会社の全株式を取得し連結子会社化
    • [10]2006年5月 連結子会社エクスビットを吸収合併(買収から1年弱で事業統合)

2010年1月、商号を株式会社アイティーブースト[11]から株式会社ラクスに変更した。SaaS事業ブランド「楽楽」シリーズに合わせた社名統一で、「楽(ラク)にする」というプロダクト価値観を会社名に昇華[12]した転換点である。後年の楽楽精算・楽楽明細・楽楽勤怠などブランド体系の核は、この社名変更で固まった。2011年1月、東京本社を東京都渋谷区千駄ヶ谷に移転[13]、IT系企業集積地への移転で人材採用・営業上の利便性向上を狙った。同年4月、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市に100%子会社American Rakus Inc.を設立[14]、SaaS本場の米国市場への足がかりを置いた。中村社長はリーダーズファイル(2012年12月3日)で「グーグルやスタンフォード大学がある場所で、最先端の情報に囲まれて業界のエッセンスに浸り、刺激を受けながら事業展開していこう」と語り、シリコンバレー拠点設置の戦略意図を明確化した。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [11]2010年1月 商号を株式会社アイティーブーストから株式会社ラクスに変更
    • [12]商号変更は「楽楽」シリーズに合わせた社名統一で「楽(ラク)にする」というプロダクト価値観を会社名に昇華
    • [13]2011年1月 東京本社を東京都渋谷区千駄ヶ谷に移転(IT系企業集積地への移転)
    • [14]2011年4月 米国カリフォルニア州サンフランシスコ市に100%子会社 American Rakus Inc. を設立
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [7]2003年4月 東京都新宿区西新宿に東京支店を開設
    • [8]2004年4月 業容拡大に伴い東京支店を東京本社に名称変更
    • [9]2005年7月 エクスビット株式会社の全株式を取得し連結子会社化
    • [10]2006年5月 連結子会社エクスビットを吸収合併(買収から1年弱で事業統合)
    • [11]2010年1月 商号を株式会社アイティーブーストから株式会社ラクスに変更
    • [12]商号変更は「楽楽」シリーズに合わせた社名統一で「楽(ラク)にする」というプロダクト価値観を会社名に昇華
    • [13]2011年1月 東京本社を東京都渋谷区千駄ヶ谷に移転(IT系企業集積地への移転)
    • [14]2011年4月 米国カリフォルニア州サンフランシスコ市に100%子会社 American Rakus Inc. を設立

2011年〜 マザーズ上場・米国撤退・ベトナム開発 ── SaaS国内特化への絞り込み

ラクスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2011年 カリフォルニア州サンフランシスコ市に100%子会社 American Rakus Inc.を設立
  2. 2012年 American Rakus Inc.をRignite Inc.に会社名を変更
  3. 2014年 100%子会社 RAKUS Vietnam Co., Ltd.を設立
  4. 2015年 米国子会社Rignite Inc.の全株式譲渡とSNSマーケティング事業からの撤退 シリコンバレーで自ら売る会社になるか、国内クラウドに資源を寄せるか——上場前年に下した米国事業の整理
  5. 2015年 東京証券取引所マザーズに株式を上場

米国Rignite事業の撤退とSaaS国内特化への戦略収斂

2012年8月、American Rakus Inc.をRignite Inc.に会社名を変更、SNSマーケティング支援SaaS「Rignite」事業[15]に集中する形へ振り切った。米国子会社をプロダクト名に統一して米国市場でのSaaS展開に注力する判断である。しかし2015年1月、Rignite Inc.の全株式を売却し、米国SNSマーケティング事業[16]からの撤退を決めた。中村社長はリーダーズファイル(2012年12月3日)で「アメリカ進出でうまくいかないのは、あくまで日本企業であろうとしたから。アメリカ流でやれば充分通用する」と語っていたが、実際の撤退判断は2年後に下された。[17]米国SaaS市場では現地競合のリソース動員力と販売チャネルの密度に追いつけず、日本企業として米国市場で持続的に勝ち抜く難しさが、Rignite撤退で同社内に教訓として残った。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [15]2012年8月 American Rakus Inc.をRignite Inc.に会社名変更、SNSマーケティング支援SaaS「Rignite」事業に集中
    • [16]2015年1月 連結子会社Rignite Inc.の全株式を売却(米国SNSマーケティング事業からの撤退)
    • [17]発言(リーダーズファイル 2012年12月3日)からRignite全株式売却(2015年1月)までは約2年1か月。旧表記「3年後」を「2年後」に修正済み

2014年5月、ベトナム国ホーチミン市に100%子会社RAKUS Vietnam Co., Ltd.を設立、SaaS開発のオフショア[18]化による開発体制スケール戦略の起点を置いた。米国直販ではなく国内SaaS×ベトナム開発という新しい組み合わせで、後年のSaaS高速プロダクト展開を支える開発基盤を整えた。同月、大阪本店を北区梅田に移転[19]、大阪本社の梅田集約過程を進めた。2014年1月の名古屋営業所、7月の福岡営業所開設[20]で国内営業網を主要都市に拡張し、SaaS事業の地方需要を取り込む体制を整えた。FY15の連結売上高は40.8億円、営業利益7.8億円・親会社株主に帰属する当期純利益5.3億円で、全項目過去最高を更新、16期連続増収・15期連続黒字を実現した[21]

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [18]2014年5月 ベトナム国ホーチミン市に100%子会社 RAKUS Vietnam Co., Ltd. を設立(SaaS開発のオフショア化)
    • [19]2014年5月 本店を大阪市北区梅田に移転
    • [20]2014年1月 名古屋営業所・2014年7月 福岡営業所を開設
  • ラクス 2016年3月期 決算短信
    • [21]FY15時点で16期連続増収・15期連続黒字(決算短信)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [15]2012年8月 American Rakus Inc.をRignite Inc.に会社名変更、SNSマーケティング支援SaaS「Rignite」事業に集中
    • [16]2015年1月 連結子会社Rignite Inc.の全株式を売却(米国SNSマーケティング事業からの撤退)
    • [17]発言(リーダーズファイル 2012年12月3日)からRignite全株式売却(2015年1月)までは約2年1か月。旧表記「3年後」を「2年後」に修正済み
    • [18]2014年5月 ベトナム国ホーチミン市に100%子会社 RAKUS Vietnam Co., Ltd. を設立(SaaS開発のオフショア化)
    • [19]2014年5月 本店を大阪市北区梅田に移転
    • [20]2014年1月 名古屋営業所・2014年7月 福岡営業所を開設
  • ラクス 2016年3月期 決算短信
    • [21]FY15時点で16期連続増収・15期連続黒字(決算短信)

東証マザーズ上場と「楽楽精算」の成長加速

2015年12月、東京証券取引所マザーズに株式を上場[22]、SaaS銘柄としての資本市場デビューを果たした。資本市場からの調達と知名度向上による楽楽シリーズ拡大の基盤を確立した上場で、SaaSバブル前夜の象徴的上場の一つとなる。FY16の連結売上高は49.3億円、営業利益9.7億円・親会社株主に帰属する当期純利益7.3億円で増収増益を継続、配当性向を12%に引き上げた[23]。次期主力サービス「楽楽精算」の成長が計画を超過し、FY17は「楽楽精算」への投資強化により利益微増計画とする方針を提示した。中村社長は経営者通信Online(2014年6月)で「紙・Excelでの経費精算につきものだった多くのムダな作業を効率化できるためです」と語り、楽楽精算の事業価値を業務効率化の文脈で定式化した。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [22]2015年12月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
  • ラクス 2017年3月期 決算短信
    • [23]FY16(2017年3月期)配当性向12%(決算短信)

2018年2月、ブレインメール株式会社の全株式を取得[24]して連結子会社化、メール配信SaaS事業を持つブレインメールの取得でメール系SaaSラインアップを強化した。同年4月、ブレインメール株式会社を株式会社ラクスライトクラウドに商号変更し、Xcart、Xform、レンタルサーバー事業を承継[25]、買収先をホスティング系SaaSの受け皿に再編した。FY17の連結売上高は64.1億円・営業利益12.4億円、楽楽精算の単独成長で売上の伸びを加速する局面に入った。同社のM&Aは買収先プロダクトを既存事業ラインアップに統合し、必要に応じて連結子会社化→吸収合併へ進める方式が定着しており、買収から1年以内の吸収合併までを織り込んだ統合スピードが特徴となる。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [24]2018年2月 ブレインメール株式会社の全株式を取得し連結子会社化(メール配信SaaS)
    • [25]2018年4月 ブレインメールを株式会社ラクスライトクラウドに商号変更し、Xcart・Xform・レンタルサーバー事業を承継
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [22]2015年12月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
    • [24]2018年2月 ブレインメール株式会社の全株式を取得し連結子会社化(メール配信SaaS)
    • [25]2018年4月 ブレインメールを株式会社ラクスライトクラウドに商号変更し、Xcart・Xform・レンタルサーバー事業を承継
  • ラクス 2017年3月期 決算短信
    • [23]FY16(2017年3月期)配当性向12%(決算短信)

2018年〜 SaaSとSES分離 ── 楽楽シリーズ拡大とIT人材事業の譲渡(2018〜現在)

ラクスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2018年 ブレインメールを子会社化
  2. 2018年 100%子会社 ラクスパートナーズを設立
  3. 2018年 Xcart・Xform・レンタルサーバー事業を承継
  4. 2021年 減益を織り込んだ投資先行運営への転換と5か年売上高CAGR目標の上方修正 営業利益率を24%から5%へ落としてでも成長率を取りにいくか——中村崇則社長が2021年に引いた5か年の線
  5. 2023年 ラクスライトクラウドのXform・レンタルサーバー事業をNHNテコラスに承継
  6. 2023年 HOYAが新設分割したラクスHRテックを子会社化
  7. 2025年 インターネット接続・ホスティングサービス事業をライドに承継

SaaSとIT人材事業の法人分離 ── ラクスパートナーズ設立

2018年3月、IT人材事業を分割吸収することを目的として100%子会社株式会社ラクスパートナーズを設立[26]、SaaS事業とIT人材事業の分離を狙った受け皿会社を置いた。同年7月、IT人材事業を株式会社ラクスパートナーズに承継[27]、IT人材事業を正式に分社化した。SaaS(ラクス本体)とSES(ラクスパートナーズ)の収益構造分離が完成し、セグメント別の戦略運営体制が確立した。二本柱事業を法人別に切り分けることで、SaaSセグメントの利益率を可視化する構造改革を経営陣が完遂した。FY18の連結売上高は87.4億円・営業利益14.7億円・親会社株主に帰属する当期純利益10.2億円で、当期純利益が初の10億円を超えた。主要5サービスへの成長投資効果が顕在化し、メール配信は前期M&A効果で50%超増収を示した[28]

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [26]2018年3月 IT人材事業の分割吸収を目的として100%子会社 株式会社ラクスパートナーズを設立
    • [27]2018年7月 IT人材事業を株式会社ラクスパートナーズに承継(正式分社化・SaaSとSESの収益構造分離が完成)
  • ラクス 2019年3月期 決算短信
    • [28]FY18 メール配信は前期M&A効果で50%超増収(決算短信)

FY19からは積極的な広告宣伝費投入で売上成長を加速、FY19売上116.1億円・営業利益11.7億円・親会社株主に帰属する当期純利益7.9億円となり、減益も厭わない広告宣伝費の積み増しが決算に表れた。FY20にはコロナ禍下のテレワーク需要・電子化需要を取り込み、売上153.9億円・営業利益39.0億円・親会社株主に帰属する当期純利益29.4億円と過去最高益を更新した。経費精算・電子化系SaaSへの一斉需要拡大という外部追い風が、それまでの広告宣伝投資の累積効果と重なって利益を押し上げた局面である。2021年3月には東京証券取引所市場第一部に市場変更[29]、マザーズから東証一部への昇格で時価総額・流動性が一定水準に達した証左となる。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [29]2021年3月 東京証券取引所市場第一部に市場変更(マザーズから昇格)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [26]2018年3月 IT人材事業の分割吸収を目的として100%子会社 株式会社ラクスパートナーズを設立
    • [27]2018年7月 IT人材事業を株式会社ラクスパートナーズに承継(正式分社化・SaaSとSESの収益構造分離が完成)
    • [29]2021年3月 東京証券取引所市場第一部に市場変更(マザーズから昇格)
  • ラクス 2019年3月期 決算短信
    • [28]FY18 メール配信は前期M&A効果で50%超増収(決算短信)

CAGR30%の中期計画 ── プライム移行とSaaS集中の総仕上げ

FY21からは成長投資をさらに強化、売上206.3億円(+34.1%)・営業利益15.8億円(-59.5%)と60%近い減益で売上高成長率を加速させた。中期経営目標の売上高CAGR下限を26%に上方修正[30]、CAGR30%達成を目標に掲げた。FY23営業利益ボトム、FY24以降増益転換方針を明示し、減益を許容する投資先行型運営の意思を株主に対して公にした。中村社長はFastGrow(2022年)で「LTVが、CACを10円でも上回れば、極論ビジネスとして成り立つはずですから」と語り、SaaSの単位経済性を経営原則として明示した。2022年4月、東証市場区分の見直しでプライム市場へ移行[31]、SaaS銘柄としてのポジショニングを確認した。同年10月に札幌営業所、2023年1月に広島営業所、11[32]月に新潟営業所、2025年4月に静岡営業所を開設し、SaaS需要の地方拡大に対応した。

  • ラクス 2022年3月期 決算短信
    • [30]中期経営目標の売上高CAGR下限を26%へ上方修正・CAGR30%達成を目標(決算短信)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [31]2022年4月 東証市場区分の見直しにより市場第一部からプライム市場に移行
    • [32]営業所開設: 札幌2022年10月・広島2023年1月・新潟2023年11月・静岡2025年4月

2023年2月、連結子会社株式会社ラクスライトクラウドのXform、レンタルサーバー事業を会社分割でNHNテコラス株式会社に承継[33]、SaaS主力事業への集中を進めるための非中核事業の整理に着手した。同年7月、HOYA株式会社より新設分割した株式会社ラクスHRテックの全株式を取得して連結子会社化、HOYAの人事系SaaS事業をカーブアウト取得でHRTech領域への参入を本格化させた。[34]翌2024年4月にラクスHRテックを吸収合併、買収から1年弱[35]で本体に統合する統合スピードを反復した。FY23の連結売上高は384.1億円・営業利益55.6億円で、減益期を経て増益転換が決算に表れた。FY24の連結売上高は489.0億円(+27.3%)・営業利益101.9億円(+83.3%、初の100億円突破)、5か年中期経営目標を全項目達成した。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [33]2023年2月 連結子会社ラクスライトクラウドのXform・レンタルサーバー事業を会社分割(吸収分割)しNHNテコラス株式会社に承継
    • [34]2023年7月 HOYA株式会社より新設分割した株式会社ラクスHRテックの全株式を取得し連結子会社化(人事系SaaSのカーブアウト取得)
    • [35]2024年4月 連結子会社ラクスHRテックを吸収合併(買収から1年弱で本体統合)
  • ラクス 2022年3月期 決算短信
    • [30]中期経営目標の売上高CAGR下限を26%へ上方修正・CAGR30%達成を目標(決算短信)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [31]2022年4月 東証市場区分の見直しにより市場第一部からプライム市場に移行
    • [32]営業所開設: 札幌2022年10月・広島2023年1月・新潟2023年11月・静岡2025年4月
    • [33]2023年2月 連結子会社ラクスライトクラウドのXform・レンタルサーバー事業を会社分割(吸収分割)しNHNテコラス株式会社に承継
    • [34]2023年7月 HOYA株式会社より新設分割した株式会社ラクスHRテックの全株式を取得し連結子会社化(人事系SaaSのカーブアウト取得)
    • [35]2024年4月 連結子会社ラクスHRテックを吸収合併(買収から1年弱で本体統合)

IT人材事業全株式譲渡 ── SaaS純粋プレイヤーへの収斂

2026年3月期第1四半期、IT人材事業を担うラクスパートナーズの全株式を譲渡し、特別利益167億円を計上予定とする方針を発表した(2026年4[36]月1日完了予定)。創業から25年間並走してきたSaaS[37]とSESの二本柱体制を解消し、ラクス本体をSaaS純粋プレイヤーに収斂させる構造転換である。2018年に法人分離してSaaSセグメントの利益率を可視化した同社が、可視化の延長線として「SaaSのみ手元に残す」という選択肢へ踏み込んだ。譲渡後の連結対象はクラウド事業(楽楽精算・楽楽明細・楽楽勤怠・メールディーラー等)と海外子会社(ベトナム・インドネシア)に絞り込まれ、事業ポートフォリオは一段とシンプル化する。2025年4月には残存していたインターネット接続事業・ホスティングサービス事業を会社分割でライド株式会社に承継[38]し、非中核事業の最終整理も同時に完了させた。

  • ラクス 2026年3月期 第1四半期決算短信
    • [36]ラクスパートナーズ全株式譲渡に伴う特別利益167億円を計上予定・譲渡完了予定日は2026年4月1日(2026年3月期 第1四半期決算短信)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [37]創業(2000年11月)から譲渡完了予定(2026年4月1日)までは約25年5か月。旧表記「26年間」を本文末尾の「25年かけて実行」と揃えて「25年間」に修正済み
    • [38]2025年4月 インターネット接続事業・ホスティングサービス事業を会社分割(吸収分割)しライド株式会社に承継

2024年12月にはインドネシアのPT. Cipta[39] Piranti Sejahteraに出資(出資比率14.9%)、2025年4月にはジャカルタに100%子会社PT[40]. Reformasi Kerja Solusiを設立し、東南アジアSaaS/IT人材事業の本格展開拠点を整えた。ベトナム以来の東南アジア戦略を、出資参画から100%子会社設立へ深化させる手順を踏んだ。2025年4月の静岡に続き2026年3月に仙台、5月に岡山[41]と地方拠点を開設する一方、2026年3月期は楽楽精算・楽楽勤怠が好調に推移し[42]、楽楽明細も競争激化のなかLTVを大きく改善させた。2000年にインターネット普及初期の大阪で創業した同社は[43]、創業以来中村崇則氏が代表を務め[44]、米国撤退・SaaS集中・SES分離・SES譲渡という4段階の戦略収斂を25年かけて実行した。創業時から続いた二本柱体制を自ら解消する経営判断の一貫性が、SaaS純粋プレイヤーへの収斂という到達点へつながった。

  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [39]2024年12月 PT. Cipta Piranti Sejahtera(インドネシア)に出資・出資比率14.9%
    • [40]2025年4月 インドネシア・ジャカルタ首都特別州に100%子会社 PT. Reformasi Kerja Solusi を設立
    • [43]2000年(11月)大阪で創業(インターネット普及初期)
  • ラクス 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月14日)
    • [41]国内拠点開設の歴史(静岡2025年4月・仙台2026年3月・岡山2026年5月)は決算説明資料に記載。旧表記は「新中期経営計画(2027〜2029年3月期)」の内容として静岡・仙台・岡山を一括りにしていたが、資料上この3拠点は「事業トピック」(2026年3月期の実績・話題)内の一項目であり、新中計本編(P.33以降)には拠点新設の記載がないため、新中計への帰属を外し2026年3月期の話題として修正済み
    • [42]2026年3月期のクラウド事業について「楽楽明細の競争激化が続く一方、楽楽精算や楽楽勤怠の好調が継続」「生成AI懸念が台頭も現時点で影響は見られず、LTVは大幅に改善」と決算説明資料に記載
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【表紙】
    • [44]創業以来、中村崇則氏が代表取締役社長(ceo csv FY00〜FY24 全期で代表取締役社長・有報第25期表紙でも代表取締役社長 中村崇則)
  • ラクス 2026年3月期 第1四半期決算短信
    • [36]ラクスパートナーズ全株式譲渡に伴う特別利益167億円を計上予定・譲渡完了予定日は2026年4月1日(2026年3月期 第1四半期決算短信)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
    • [37]創業(2000年11月)から譲渡完了予定(2026年4月1日)までは約25年5か月。旧表記「26年間」を本文末尾の「25年かけて実行」と揃えて「25年間」に修正済み
    • [38]2025年4月 インターネット接続事業・ホスティングサービス事業を会社分割(吸収分割)しライド株式会社に承継
    • [39]2024年12月 PT. Cipta Piranti Sejahtera(インドネシア)に出資・出資比率14.9%
    • [40]2025年4月 インドネシア・ジャカルタ首都特別州に100%子会社 PT. Reformasi Kerja Solusi を設立
    • [43]2000年(11月)大阪で創業(インターネット普及初期)
  • ラクス 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月14日)
    • [41]国内拠点開設の歴史(静岡2025年4月・仙台2026年3月・岡山2026年5月)は決算説明資料に記載。旧表記は「新中期経営計画(2027〜2029年3月期)」の内容として静岡・仙台・岡山を一括りにしていたが、資料上この3拠点は「事業トピック」(2026年3月期の実績・話題)内の一項目であり、新中計本編(P.33以降)には拠点新設の記載がないため、新中計への帰属を外し2026年3月期の話題として修正済み
    • [42]2026年3月期のクラウド事業について「楽楽明細の競争激化が続く一方、楽楽精算や楽楽勤怠の好調が継続」「生成AI懸念が台頭も現時点で影響は見られず、LTVは大幅に改善」と決算説明資料に記載
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【表紙】
    • [44]創業以来、中村崇則氏が代表取締役社長(ceo csv FY00〜FY24 全期で代表取締役社長・有報第25期表紙でも代表取締役社長 中村崇則)

ラクスの沿革2000〜2025年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
中村崇則アイティーブーストを設立
中村崇則ITエンジニアスクール事業開始
中村崇則クラウド事業に参入★★
中村崇則メール共有システム「メールディーラー」を発売★★
中村崇則本店を移転
中村崇則IT人材事業に参入★★
中村崇則東京支店を開設
中村崇則東京支店を東京本社に名称変更
中村崇則エクスビットを子会社化
中村崇則連結子会社 エクスビットを吸収合併
中村崇則商号をアイティーブーストからラクスに変更
中村崇則カリフォルニア州サンフランシスコ市に100%子会社 American Rakus Inc.を設立
中村崇則American Rakus Inc.をRignite Inc.に会社名を変更
中村崇則100%子会社 RAKUS Vietnam Co., Ltd.を設立
中村崇則米国子会社Rignite Inc.の全株式譲渡とSNSマーケティング事業からの撤退シリコンバレーで自ら売る会社になるか、国内クラウドに資源を寄せるか——上場前年に下した米国事業の整理 詳細を読む★★★
中村崇則東京証券取引所マザーズに株式を上場
中村崇則ブレインメールを子会社化
中村崇則100%子会社 ラクスパートナーズを設立
中村崇則Xcart・Xform・レンタルサーバー事業を承継
中村崇則IT人材事業をラクスパートナーズに承継
中村崇則減益を織り込んだ投資先行運営への転換と5か年売上高CAGR目標の上方修正営業利益率を24%から5%へ落としてでも成長率を取りにいくか——中村崇則社長が2021年に引いた5か年の線 詳細を読む★★★
中村崇則ラクスライトクラウドのXform・レンタルサーバー事業をNHNテコラスに承継★★
中村崇則HOYAが新設分割したラクスHRテックを子会社化★★
中村崇則PT. Cipta Piranti Sejahteraに出資
中村崇則インターネット接続・ホスティングサービス事業をライドに承継★★
中村崇則PT. Reformasi Kerja Solusiを設立
出典・参考
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【沿革】
  • content/ceo/fy00-nakamura-takanori.yaml
  • ラクス 2016年3月期 決算短信
  • ラクス 2017年3月期 決算短信
  • ラクス 2019年3月期 決算短信
  • ラクス 2022年3月期 決算短信
  • ラクス 2026年3月期 第1四半期決算短信
  • ラクス 2026年3月期 決算説明資料(2026年5月14日)
  • ラクス 有価証券報告書 第25期(2025年3月期)【表紙】

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