2025/3 売上高25,279億円YoY+7.6%
2025/3 営業利益638億円YoY+2.9%
2025/3 従業員-
創業1936
創業地東京都千代田区
創業者市村清

リコーの源流は、富国生命の保険セールスマンから理研コンツェルンの感光紙部門長に抜擢された市村清が、古参社員との衝突の末に大河内正敏博士から感光紙部門の分離独立を任された1936年2月の出来事にある。資本金35万円・従業員33名で発足した理研感光紙は、1938年に理研光学工業へ改称してカメラ製造に進出し、1950年発売のリコーフレックスが朝鮮戦争特需で月産1万台を記録する「花形三羽烏」の一角として成長した。しかしカメラブームは短命に終わり、1955年には感光紙技術を応用した卓上型複写機「リコピー101」を発売して事務機市場に参入する。1960年代前半の泰平ムードのなかで五輪後不況により経営は悪化し、1965年3月期に8億4000万円の不良資産を一括処理して無配転落する最初の危機を迎え、市村自身が自殺を考えるほどの窮地に立たされた。

1977年のOAコンセプト提唱を起点に「販売のリコー」として事務機メーカーの地位を築いたリコーは、三層販売網と保守・消耗品のアフター収益モデルを組み合わせ、1989年3月期に経常利益219億円の絶頂期を迎えた。しかし1992年3月期の営業赤字17億円を契機に浜田広が二度目の膿の一括処理であるCRPを断行し、1995年3月期の営業利益185億円まで回復させる。その後、桜井時代の海外M&A拡大と近藤時代の1705億円IKON買収はリーマンショックと文化的摩擦の二重の壁に阻まれ、2017年に山下良則社長のもとで1759億円の減損を一括計上して三度目の膿処理に踏み切った。直近では2026年3月の新中期経営戦略発表を控え、構造改革費用と半導体メモリ逼迫の影響に対応しつつ、「デジタルサービスの会社」への再定義を成長軌道につなげる段階にある。

売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益その他費用販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
歴代社長
FY01
FY02
FY03
FY04
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
FY25
FY26
FY27
FY28
FY29
FY30
桜井正光
代表..
近藤史朗
代表..
代表..
三浦善司
代表取締役社長執行役員・CEO
山下良則
代表取締役社長執行役員・CEO
大山晃
代表取締役社長執行役員・CEO
歴代社長
FY05
FY06
FY08
FY12
FY13
FY14
FY15
FY16
FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
桜井正光
代表取締役社長執行役員
近藤史朗
代表取締役社長執行役員
三浦善司
代表取締役社長執行役員・CEO
山下良則
代表取締役社長執行役員・CEO
大山晃
代表取締役社長執行役員・CEO

歴史概略

1936年〜1976感光紙・カメラから複写機メーカーへの転換

理研コンツェルンからの分離独立という特異な起点

市村清は佐賀県出身で、富国生命の保険セールスマンの実績をもって理研コンツェルンの感光紙部門長に抜擢された異色の経歴を持つ経営者であった。外部から招かれた人材に対する古参社員の反発は激しく、両者の対立は感光紙製造装置を市村自らがハンマーで破壊するという極端な形にまで発展した。通常であればこの種の対立は経営者の処分をもって決着するはずであったが、理研コンツェルン総帥の大河内正敏博士は市村を処分する代わりに、1936年2月に感光紙部門を組織から分離して資本金35万円・従業員33名の理研感光紙株式会社として独立させ、経営の一切を市村に一任するという異例の決断を下した。この判断が大河内の慧眼を示すエピソードとして語り継がれている。

独立後の市村は感光紙事業を軌道に乗せ、1938年には理研光学工業へ商号を改称してカメラ製造へ進出した。1950年発売のリコーフレックスは朝鮮戦争特需を背景に月産1万台を輸出し、ソニー・本田技研と並ぶ戦後日本の「花形三羽烏」と称されるまでに成長する。しかしカメラブームは短命に終わり、1955年には感光紙技術を応用した卓上型複写機「リコピー101」を開発して事務機市場へ本格参入した。この一台が感光紙メーカーから事務機メーカーへの長い転換の起点となり、市村の連続的な事業転換が会社の性格を形成していった。市村は一つの製品カテゴリに固執せず、次の成長領域へ経営資源を機動的に付け替える経営スタイルを自然に体現していた点に特徴があった。

有価証券報告書 沿革リコー社史市村清伝

経営の神様の泰平ムードと無配転落からの再建

1960年代前半、リコーは「経営の神様」と称された市村清の指導のもとで順調に成長していたが、社内には成功企業に生じがちな「泰平ムード」が蔓延していた。1964年の東京五輪後の不況局面で経営は悪化し、1965年3月期には不良資産8億4000万円を一括処理して無配転落を余儀なくされる戦後初の本格的な経営危機が襲った。市村は後に「寝れない日が幾晩も続いた。一時は自殺することも考えた」と述懐しており、精神的極限状態にまで追い込まれた経験が当事者証言として記録されている。4000人中800人を関連会社へ出向させる大規模な合理化を断行して再建の道筋を描いた。この最初の危機は、以後のリコーの経営史に繰り返し現れる膿の一括処理パターンの原型として記録された。

再建の起死回生となったのは1965年発売の静電複写機「電子リコピーBS2」であった。事務合理化を求める社会の波と製品投入のタイミングが合致し、わずか2年半で復配を実現するターンアラウンドを果たす。市村は1968年に68歳で急逝するが、感光紙からカメラへ、カメラから複写機へという連続的な事業転換を主導した経営スタイルは、既存技術を新しい応用領域で商品化し徹底した販売力でシェアを獲得する独自手法として社内に刻み込まれた。保険セールスマン時代に培われた市場感覚と営業規律が経営の底流に一貫して流れ、その後の「販売のリコー」の基礎として機能した。市村の事業観は、技術そのものよりも、技術を市場と結びつける販売の力を重視する点に特徴があった。

有価証券報告書 沿革リコー社史市村清伝

1977年〜2016OAの旗手から三度目の危機までの長い航路

三層販売網が支えた「販売のリコー」の絶頂

1977年にリコーはドイツのハノーバーメッセで世界初となるOA(オフィス・オートメーション)コンセプトを正式に提唱し、事務機メーカーとしてのブランドを国際的に確立した。大植武士社長は1978年に35歳能力主義という人事制度を導入し、1980年には自社ブランドでの欧米市場展開を本格化させる。後任の浜田広は49歳という若さで社長に就任し、「緩い統制」と「使いにくい部下を育てなさい」という独特の経営哲学を前面に掲げて組織運営にあたった。国内では、直系販売会社・大塚商会をはじめとする事務機専門商社と文具問屋の三層構造が、全国約7000人のセールスマンによる中小企業の戸別訪問を支え、業界内で「販売のリコー」と広く称される独自の地位を築いた。

PPC複写機市場の成長と三層販売網という独特の流通構造が噛み合い、1989年3月期の経常利益は219億円という絶頂期の水準に達した。設置台数の積み上がりに伴う保守サービス料金と消耗品の継続的な収益を組み合わせた「アフター収益モデル」が利益成長を複利的に増幅する効果を生み、事務機メーカーとしての収益構造の強固さが数字の上にも表れた。販売力の強さと継続課金の両方を組み合わせた事業モデルは、後年のサブスクリプションモデルの先行事例と呼びうるほどの完成度を備え、リコーが事務機市場で独自の地位を確保する決定的な基盤となった。しかし、この絶頂期の成功体験そのものが、後にデジタル化への転換を鈍らせる慣性の源泉にもなる。

有価証券報告書 沿革リコー社史日経産業新聞

CRP断行からIKON買収の失敗へ

1987年にリコーは業界初となるデジタル複写機「イマジオ320」を発売したが、複写の最中にファクシミリを受信できないという技術的な制約などが原因となり、発売からの約6年間にわたって市場で苦戦した。レーザープリンターの市場ではキヤノンに市場の読みで後手を踏み、カラー複写機でも4年の遅れが続いた。多角化路線のもとでパソコンやLAN事業に資源が分散した結果、1992年3月期には上場以来初の営業赤字17億円に転落する事態に直面する。1991年11月、浜田広社長は約370億円のコストダウンを目標に掲げるCRP(リストラプログラム)を発表し、役員23人に辞表提出を要求する厳しい形で改革に本格着手した。

TSS(統合的設計生産方式)を導入して開発費を4分の1、開発期間を半分まで圧縮する改革を実行し、複写機とファクシミリへの本業回帰を宣言する。1995年3月期には営業利益185億円まで回復し、多角化路線を「天動説から地動説へ」と転換させる経営転換を果たした。1996年就任の桜井正光は在任11年で連結売上高を約2倍の2兆689億円に拡大し、1995年のSAVIN・GESTENER買収に始まり、2001年のLANIER、2004年の日立プリンティング買収と海外販売網を広げた。近藤史朗は2008年10月に北米事務機販売大手IKONを1705億円で買収したが、リーマンショック直後と重なり統合は難航した。国内で「販売のリコー」を支えた三層構造の暗黙知は海外の買収先には移転できず、10年後の巨額減損処理につながる。

有価証券報告書 沿革リコー社史日経産業新聞

2017年〜2023三度目の膿処理とデジタルサービス企業への再定義

1759億円減損と山下良則の再起動戦略

2017年4月に就任した山下良則社長は「リコー再起動」を掲げ、マーケットシェアの追求・フルラインアップ・ものづくり自前主義など、それまで会社の根幹とされてきた五つの従来原則の全面的な見直しを宣言した。2018年3月期にはIKONおよびmindSHIFTを中心に1759億円の減損損失を計上し、営業赤字1156億円・最終赤字1180億円という80年余の歴史のなかで過去最大の赤字決算となった。この処理は、1965年の市村清による8億4000万円の不良資産処理、1991年の浜田広によるCRPに続く、三度目の「膿の一括処理」にあたる。規模は過去二度を大きく上回り、海外M&Aの戦略的破綻を株主に正面から開示する形を取った点で、リコーの経営ガバナンスの成熟を示すエピソードでもあった。

山下はリコー電子デバイスやリコーロジスティクスをはじめとする非注力事業を次々と売却し、事業ポートフォリオの整理を徹底して進めた。翌2019年3月期には営業利益868億円まで回復し、三度の危機がいずれも経営者交代の直後に断行されているという共通のパターンを示している点も特徴的である。リコーの三度の経営危機とそこからの再建は、個々の経営判断の成否を超えて、成熟市場における変革の難しさと経営者交代というイベントの構造的な重要性を象徴する事例として経営史に残る。本業の強さが生む組織慣性そのものが危機の種となる循環を、いかに早く自覚して打ち破るかが問われ続けてきた。

有価証券報告書リコーIRBloomberg決算説明資料

デジタルサービスの会社への構造転換と事業再編

減損処理の後、リコーは「デジタルサービスの会社」への転換を経営の中心に据えた。2022年9月にPFU(富士通子会社)の株式80%を840億円で取得してスキャナー事業を自社に取り込み、2024年7月には東芝テックとの合弁会社エトリアを設立してオフィスプリンティング事業の大規模な再編に踏み出した。複写機の販売台数ではなくデジタルサービスの契約数を成長指標として据え直す方針転換は、90年間にわたって続いてきた「ハードウェア販売モデル」からの構造的な脱却を意味する歴史的な試みである。業界全体の成熟化が進むなかでメーカーとしての自己定義を変えるのは容易ではなく、事業運営の現場でも長い時間を要する漸進的な変革となる。

2024年3月期の連結売上高は2兆3489億円、営業利益441億円となり、減損処理後の堅調な回復が数字の上にも表れた。三度の経営危機をいずれもヒット商品の投入によって乗り越えてきたリコーにとって、デジタルサービスへの転換は「次のヒット商品さえ生まれれば回復できる」という組織に深く染みついた学習そのものを超える試みとなる。90年の歴史のなかで繰り返し機能してきた「二番手の商品化力」という伝統的な強みを、ソリューションやサブスクリプションという新しい価値提供の形式のなかでどう再定義するか。市村清の分離独立以来の長い連続的転換の新たな段階として、いま経営陣に問われ続けている課題である。製品ではなく関係性を収益源として組み替える挑戦が現在進行形で続く。

有価証券報告書リコーIRBloomberg決算説明資料

直近の動向と展望

Q3上振れとQ4下振れが映す構造改革の上積み

FY2025/3期第3四半期決算において、リコーはオフィスサービスでの事業譲渡益の計上と想定為替レート対比での円安という二つの追い風によって、当初想定比で約100億円上振れた345億円の営業利益を計上した。事業の進捗そのものはプラスマイナスが混在しつつも総じて想定の範囲内におさまっており、為替と一過性の譲渡益という外部要因が主たる上振れ要因として経営陣から説明されている。一方で通期の営業利益見通しは900億円、第3四半期累計実績が700億円であることから、第4四半期の見通しは200億円となり、前回説明会で想定されていた300億円の水準からは100億円の減額となった。2024年3月期の売上高2兆3489億円という足元水準を前提にしつつも、見通し修正は短期的な収益力への関心を呼び起こしている。

この減額の背景には、追加の構造改革費用70億円と半導体メモリ調達価格の上昇によるコスト増20億円程度という二つの要因がある。構造改革費用にはリコーデジタルプロダクツ、リコーデジタルサービスおよびその他のセグメントにわたる不要資産の見直しなどが含まれ、2026年3月25日に予定される新中期経営戦略の発表に先駆けて前倒しで処理される形を取る。成長期待を寄せるのはオフィスサービスで、買収企業とのシナジー創出やワークプレイスエクスペリエンス体制の強化などが進行しており、当期においても増益が続いている。山下良則から次期経営トップへと引き継がれる転換期における最後の構造調整作業の色彩を帯びている。

IR 決算説明会QA FY25 2025/5/14IR 決算説明会QA FY26-3Q 2026/2/5リコー プレスリリース 新中期経営戦略 2026/3/25予定

新中期経営戦略と半導体メモリ逼迫への対応

次期中期経営戦略の発表は2026年3月25日に予定されており、2022年9月のPFU株式80%・840億円取得や2024年7月の東芝テックとのエトリア設立を経て進めてきた「デジタルサービスの会社」への転換をさらに前進させる具体的な計画の提示が市場から強く期待されている。オフィスプリンティング事業は来期も減益要因を前提に考えざるを得ないが、欧州における代売強化施策の効果が表れるなどハードの拡販が進み、ノンハードの減益幅の緩和が見込まれている。商用印刷は来期の早い時期にはまだパイプライン構築の段階が続くものの、年度を通じて見れば回復に向かう見込みで、リコーグラフィックコミュニケーションズの通期見通しも経費抑制と為替前提の変更によって上方修正された。

一方で半導体メモリー部品のひっ迫の影響は来期も継続し、三桁億円規模のコスト増が想定されている。これに対しては生産面と販売面での対策の検討が並行して進められており、来期の計画にはその効果も含めた影響が織り込まれる見通しである。不透明な事業環境のなかで経営陣は当期を超える営業利益を来期の目標として掲げる姿勢を示しており、三度の膿処理を経てきた会社が長い時間をかけて築き直してきた組織の再起動力を次のステージにおいてどこまで発揮できるかが試されている。市村清の感光紙部門分離独立という原点から現代のデジタルサービス転換に至るまで、リコーの経営史は常に既存事業の再解釈と新領域への挑戦の連続であり続けてきた。

IR 決算説明会QA FY25 2025/5/14IR 決算説明会QA FY26-3Q 2026/2/5リコー プレスリリース 新中期経営戦略 2026/3/25予定

沿革

沿革一覧
4
理研感光紙部門の分離独立
「追放」が生んだ創業——理研コンツェルンの人材排出メカニズム
4
ジアゾ式複写機「リコピー101」開発
感光紙メーカーの「隣接領域への展開」が生んだ事業転換
4
無配転落と不良資産の一括処理
「膿の一括処理」が示す経営者の覚悟と、再建を繰り返す組織の宿痾
4
初のデジタル複写機「イマジオ320」発売
「技術で先行、市場で後手」——先駆者が先行者利益を取れなかった構造
4
CRP(リストラプログラム)の発表
「赤字」というショック療法が動かした「緩い統制」の組織
4acquisition
米IKON Office Solutions買収
「販売のリコー」が海外で再現できなかった三層構造の暗黙知
4
IKON等の減損1,759億円の一括計上
10年越しの減損処理が示す「買収の出口戦略」の不在
7

重要な意思決定

19362
理研感光紙部門の分離独立

理研コンツェルンは研究成果の事業化を目的とする組織だったが、市村清の事例が示すのは、事業化の担い手を内部に留めておけないという逆説的な構造である。外部から招いた人材を組織が受容できず、結果として独立させざるを得なかったという創業経緯は、「計画された起業」とも「偶発的な独立」とも異なる第三の類型を示している。大河内博士が最終的に「任せる」と判断した背景には、市村の販売実績に対する評価と、組織の軋轢を解消するコストの天秤があったと推定される。

195510
ジアゾ式複写機「リコピー101」開発

リコピー101の開発は、感光紙という自社の中核技術を「素材」から「機器」へと応用した事例である。市村清が複写機に着目した背景には、感光紙の販売先であるオフィスの現場を日常的に訪問するなかで掴んだ需要への直感があった。技術的な飛躍よりも、既存の顧客接点と技術基盤を活かした「隣接領域への展開」であり、このパターンはリコーがその後も繰り返す事業開発の原型となった。

19653
無配転落と不良資産の一括処理

市村清が選んだのは、粉飾的に赤字を分散させるのではなく、一期に集中して不良資産を吐き出すという手法だった。この「膿の一括処理」は、27年後の浜田広によるCRP、53年後の山下良則による減損処理と、リコーの歴史上3度にわたって繰り返される。危機のたびにドラスティックな処理を断行して再生する力がリコーにはある一方、危機に至るまでの予防的な舵取りが機能しにくい組織体質も浮き彫りになる。「経営の神様」でさえ、嬉野温泉で同級生に指摘されるまで自社の実態を把握できなかったという逸話が、この構造を象徴している。

1987
初のデジタル複写機「イマジオ320」発売

イマジオの事例は、技術的な先行が必ずしも市場での優位に結びつかないことを示している。初代機の「複写中にファクシミリを受信できない」という制約は、技術者が描いた理想と、ユーザーが求める実用性との乖離を端的に表している。リコーの開発部門には「難しい技術を最初にクリアすれば、普及機の開発はやさしい」という発想があったとされるが、この論理は市場投入のタイミングという変数を見落としていた。

199111
CRP(リストラプログラム)の発表

浜田広が掲げた「緩い統制」は、現場の自律性を尊重する経営哲学として機能した一方、エネルギーの拡散を制御できないという限界を露呈した。興味深いのは、リストラの引き金が社長自身の判断ではなく、役員からの突き上げだったという点である。「緩い統制」の組織では、トップダウンの危機対応が遅れがちになる。結果として「赤字」という外部からの明確なシグナルが、組織を動かす最も有効なショック療法として機能した。浜田自身が「赤字になったのが結果的に良かったのかもしれない」と述懐しているのは、この構造を正確に認識していたことを示している。

200810
米IKON Office Solutions買収

リコーが国内で築いた三層構造の販売網は、長年にわたる取引関係と業界特有の商慣行の上に成り立っていた。IKON買収は、この成功体験を海外にも移植しようとする試みだったが、買収した販売網と自社の製品・サービス体制を統合するには、国内で自然に醸成された暗黙知を組織的に移転する必要があった。1,705億円という買収対価は販売網の「ハードウェア」に対するものだったが、それを機能させる「ソフトウェア」は買収では手に入らなかった。

20183
IKON等の減損1,759億円の一括計上

IKON買収(2008年)から減損処理(2018年)まで10年を要したという事実は、買収時点で「期待通りにいかなかった場合の出口戦略」が十分に設計されていなかったことを示唆している。この10年間、北米事業の収益性は段階的に悪化していたが、巨額ののれんを抱えたまま抜本的な対策を先送りし続けた。山下社長が就任1年目で減損に踏み切れたのは、前任者が積み上げた負の遺産に対して「新任社長」という立場が持つ政治的な自由度が作用した面もある。リコーの3度の「膿の一括処理」はいずれも、経営者交代の直後に実行されている。

全社の業績指標

リコー:過去75ヵ年の売上高
連結単体
単位:億円
直近の売上高2025/323,489億円
出所: 会社年鑑、有価証券報告書
リコー:過去75ヵ年の純利益
連結単体
単位:億円
直近の純利益2025/3441億円
出所: 会社年鑑、有価証券報告書
売上高分解(原価・販管・営利)億円
営業利益その他費用販管費売上原価
売上高利益率(粗利・営利など)%
営業利益率粗利率経常利益率純利益率
特別利益・特別損失億円
特別利益特別損失
キャッシュフロー億円
営業CF投資CF財務CF
自己資本比率・現預金残高
自己資本比率現預金残高
業績データ一覧
全社業績
FY01FY02FY03FY04FY05FY06FY07FY08FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
2002/32003/32004/32005/32006/32007/32008/32009/32012/32013/32014/32015/32016/32017/32018/32019/32020/32021/32022/32023/32024/32025/3
JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結JGAAP・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結IFRS・連結
売上高億円---18,14119,15120,68922,20020,91719,03518,86021,95721,51422,09020,28920,63420,13220,08616,82117,58621,34223,49025,279
売上原価億円---10,59511,15512,06512,92312,37311,50911,36413,22512,44513,27112,40312,72412,46312,87011,09811,35913,88815,28916,593
売上総利益億円---7,5467,9968,6249,2778,5447,5267,4968,7329,0698,8207,8867,9107,6697,2165,7236,2277,4548,2018,686
販売費および一般管理費億円---6,1916,4766,8807,4627,7997,7076,7617,5297,9407,9947,5549,0677,0296,5846,1976,0036,8827,6988,189
営業利益億円---1,3551,5201,7441,815745-1817361,2031,1581,023339-1,157868790-454401787620638
営業外収益億円---46948790523131684051464351528081107151168
営業外費用億円---47528515948817186917411886128808336388189105
税金等調整前当期純利益億円---1,3541,5621,7451,747309-3196811,1811,123957300-1,242840759-410444813682701
当期純利益億円---8319711,1171,06565-44638972868663035-1,354495395-327304544442457
粗利率%---41.641.841.741.840.839.539.739.842.239.938.938.338.135.934.035.434.934.934.4
営業利益率%---7.57.98.48.23.6-0.93.95.55.44.61.7-5.64.33.9-2.72.33.72.62.5
経常利益率%---7.58.28.47.91.5-1.73.65.45.24.31.5-6.04.23.8-2.42.53.82.92.8
純利益率%---4.65.15.44.80.3-2.32.13.33.22.90.2-6.62.52.0-1.91.72.51.91.8
総資産額億円---19,53720,41222,43422,14425,13523,10023,91225,91427,30227,76527,59326,41027,25128,67618,87918,53321,50022,86223,571
自己資本億円---8,6309,60210,70910,8029,7548,3739,13710,29410,84210,77810,4219,0969,3269,2049,2029,0209,31610,38710,301
自己資本比率%---44.247.047.748.838.836.238.239.739.738.837.834.434.232.148.748.743.345.443.7
営業CF億円1,0511,8571,5491,3281,7691,6731,9448751121,3731,4691,0259998831,1038191,1671,2708256671,2561,369
投資CF億円-814-982-634-962-1,201-1,154-1,983-2,832-1,124-1,217-1,229-1,435-1,041-1,067-811-459-1,646-636-594-1,339-978-794
財務CF億円362-671-748-564-60093-7222,959878-618-92299427-19964424758-41-1,317355-829-456

セグメント別の業績指標

セグメント別売上高億円
セグメント別利益億円
セグメント別利益率%
業績データ一覧
セグメント業績
FY04FY05FY06FY07FY08FY11FY12FY13FY14FY15FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24
セグメント別売上高
日本億円9,9459,98810,26710,5099,607--------------
米州億円3,2303,8574,2604,3235,023--------------
欧州億円4,1234,3435,0826,0225,211--------------
その他地域億円8439621,0811,3461,076--------------
画像&ソリューション億円-----16,71116,82019,69919,16719,745---------
産業億円-----1,0289741,0891,3131,380---------
その他億円-----1,3431,1091,2081,1701,0912,5802,7602,1811,976401356406456562
オフィスプリンティング億円----------11,66011,44110,86410,063-----
オフィスサービス億円----------4,2564,4804,8145,690-----
商用印刷億円----------1,8611,8591,8531,784-----
産業印刷億円----------119192207230-----
サーマル億円----------573615664619-----
デジタルサービス億円--------------13,76614,28216,84418,52819,301
デジタルプロダクツ億円--------------3,5723,6504,9344,8445,846
グラフィックコミュニケーションズ億円--------------1,5991,8712,3482,6212,927
インダストリアルソリューションズ億円--------------1,1531,1931,1631,1361,132
セグメント別利益
日本億円8819921,1031,079616--------------
米州億円13815321124-259--------------
欧州億円244214334391194--------------
その他地域億円119150176265127--------------
画像&ソリューション億円-----5501,4961,8431,7231,477---------
産業億円------17-15364110---------
その他億円------48-492-3114-2910017323-139-155-92-105-56
オフィスプリンティング億円----------997-4431,180903-----
オフィスサービス億円-----------67-256147291-----
商用印刷億円----------189252272232-----
産業印刷億円-----------34-22-71-49-----
サーマル億円----------59504232-----
デジタルサービス億円---------------26162313408323
デジタルプロダクツ億円--------------165417346174287
グラフィックコミュニケーションズ億円---------------475-5146155232
インダストリアルソリューションズ億円---------------161332-3-18
セグメント別利益率
日本%8.99.910.710.36.4--------------
米州%4.34.05.00.5-5.2--------------
欧州%5.94.96.66.53.7--------------
その他地域%14.115.616.219.711.8--------------
画像&ソリューション%-----3.38.99.49.07.5---------
産業%------1.6-0.14.84.98.0---------
その他%------3.5-4.50.2-2.61.3-1.13.67.91.2-34.6-43.7-22.8-23.1-10.0
オフィスプリンティング%----------8.5-3.910.99.0-----
オフィスサービス%-----------1.6-5.73.15.1-----
商用印刷%----------10.113.514.713.0-----
産業印刷%-----------28.9-11.7-34.4-21.5-----
サーマル%----------10.38.26.45.2-----
デジタルサービス%---------------0.21.11.92.21.7
デジタルプロダクツ%--------------4.611.47.03.64.9
グラフィックコミュニケーションズ%---------------29.7-0.26.25.97.9
インダストリアルソリューションズ%---------------1.41.12.7-0.3-1.6

出所

有価証券報告書 沿革
リコー社史
市村清伝
日経産業新聞
有価証券報告書
リコーIR
Bloomberg
決算説明資料
IR 決算説明会QA FY25 2025/5/14
IR 決算説明会QA FY26-3Q 2026/2/5
リコー プレスリリース 新中期経営戦略 2026/3/25予定