積水化学工業 の歴史

創業

1947年

創業者

上野次郎

創業地

大阪市北区

直近売上高(2026/3)

13,093億円

長期業績と転換点(1997/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ1947年に原料を持たない加工屋として出発したのか
A 原料を持たない加工屋として出発したのは、設立そのものが事業の理想ではなく引揚者救済を目的としたからである。1947年3月、日本窒素肥料の一部従業員が、敗戦で朝鮮半島の工場を失った本体で吸収しきれない余剰人員の受け皿の一つとして積水産業を設けた。資本金は10万円にすぎず、石油化学から多角化する総合化学会社と違い原料を持たなかった。それゆえ樹脂を何の用途に当てるかという用途開発で品種を増やすほかなく、塩化ビニルパイプや合わせガラス中間膜へ製品群を広げた
Q なぜ1971年に化学会社が住宅事業へ参入したのか
A 1971年に化学会社が家を造ったのは、塩ビパイプや建材で蓄えた樹脂加工技術と量産工場の運営経験を、最終消費財へ転用できると見たからである。同年2月、鉄骨系ユニット住宅「セキスイハイム」を発売し、住宅一棟を工場で箱型に組み立てるユニット工法で在来工法に対抗した。樹脂を別の用途へ当てる発想を、製品から建物の規模へ押し広げた決断だった。同年10月の奈積工業など量産拠点を相次いで設け、住宅はのちに最大の収益源へ育った
Q なぜ2001年の3カンパニー制を25年間再編せず買収で外側に足し続けるのか
A 3カンパニー制を25年再編しないのは、住宅を売る引き算ではなく、既存の枠に新会社を足す加算で規模を広げる方針をとるためである。2001年3月に住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックスの3カンパニー制を敷いて以降、枠は一度も統廃合していない。医薬・モビリティ・太陽電池はいずれも買収か新会社で外側に足して入った。2019年の米Sekisui Aerospace、2025年の積水ソーラーフィルムがその典型である

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1947年〜 日本窒素肥料系プラスチック専業からの出発と高度成長期の住宅事業参入

積水化学工業の業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1947年 積水産業として発足
  2. 1948年 プラスチック自動射出成型事業に参入
  3. 1948年 奈良工場を新設
  4. 1963年 北米進出「第三の紙」の栄光と挫折 ── 成長会社セキスイの転落(1962〜1965) 日本企業に先駆けて北米で現地生産に挑んだ上野次郎男社長は、なぜ成長会社の座を明け渡したのか
  5. 1963年 1965年に赤字計上と社長更迭
  6. 1971年 鉄骨系ユニット住宅「セキスイハイム」による住宅事業への参入 設計図を引ける社員が一人もいない「素人集団」に、なぜ社運をかけたのか
  7. 1971年 住宅事業に参入

引揚者救済から出発したプラスチック専業の原料一貫体制

積水化学工業の源流は、1947年3月に日本窒素肥料株式会社(現・チッソ)の一部従業員がプラスチックの総合事業化を計画して積水産業株式会社を発足させた点にある。敗戦により朝鮮半島の工場を失った日本窒素は、国内工場で吸収しきれない余剰人員を別会社に収容して引揚者を救済する道を選び、その受け皿の一つとして積水産業が生まれた。当初資本金は10万円にすぎず、設立と同時に化学工業技術の研究機関として京都化学研究所も置いた。設立翌年の1948年1月には日本窒素から奈良工場を譲り受け、わが国最初の自動射出成型によるプラスチック成型事業を開始すると同時に、積水化学工業株式会社へ商号変更した。同年8月には大阪工場を設けた。総合化学会社の多くが石油化学から多角化する中で、原料を持たないプラスチック加工の専業として出発した出自は、その後の事業構造を方向づけた。 [1][2][3][4][5][6]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]1947年3月 日本窒素肥料(現・チッソ)の一部従業員がプラスチック総合事業化を計画し積水産業株式会社を発足
    • [4]1948年1月 奈良工場を(日本窒素から譲り受けて)新設し積水化学工業株式会社へ商号変更
    • [5]奈良工場でわが国最初の自動射出成型によるプラスチック成型事業を開始
  • 積水化学の歴史/上野次郎男
    • [2]敗戦で朝鮮半島の工場を失った日本窒素が余剰人員を収容する別会社の一つとして積水化学を設立した
  • 企業の歴史 : 明治百年(経済春秋社, 1968)
    • [3]設立当初の資本金は10万円で、同時に研究機関として京都化学研究所を設置した
    • [6]1948年8月 大阪工場を設置(沿革には記載なし。概略書による)

事業の基礎を固めたのは1949年暮れごろから売れ始めたプラスチックテープで、ヒットして社業が軌道に乗った。1951年9月に上野次郎男氏が社長に就任すると、積極的な拡大策のもとで急成長を遂げた。1952年に完成させた京都工場では硬質塩化ビニル管の製造に進み、金属パイプを置き換えてパイプ市場で地歩を築いた。1953年3月に大阪証券取引所、1954年4月に東京証券取引所へ上場し、東京工場新設(1953年9月)と中央研究所(現・開発研究所、1956年6月)で全国展開と研究開発体制を整えた。さらに1960年の滋賀栗東工場(塩化ビニルパイプ・建材)、滋賀水口工場(ポリビニルブチラール・合わせガラス用中間膜)、1962年の武蔵工場(プラスチックテープ・塩化ビニルテープ)と品種を広げ、1964年1月には徳山積水工業を設立して塩化ビニル樹脂の製造を始め、原料から成型品まで一貫して手がける事業基盤を整えた。 [7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17]

  • 企業の歴史 : 明治百年(経済春秋社, 1968)
    • [7]1949年暮れごろから売れ始めたプラスチックテープがヒットし社業の基礎が固まった
    • [8]1951年9月 上野次郎男が社長に就任し積極拡大策で高度成長を遂げた
  • 積水化学の歴史/上野次郎男
    • [9]1952年 京都工場を完成させ硬質塩化ビニル管の製造に進み金属パイプを置き換えた
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [10]1953年3月 大阪証券取引所に上場
    • [11]1954年4月 東京証券取引所に上場
    • [12]1953年9月 東京工場を新設
    • [13]1956年6月 中央研究所(現・開発研究所)を新設
    • [14]1960年8月 滋賀栗東工場で塩化ビニルパイプ・塩化ビニル建材製品の製造を開始
    • [15]1960年11月 滋賀水口工場でポリビニルブチラール・合わせガラス用中間膜の製造を開始
    • [16]1962年7月 武蔵工場でプラスチックテープ・塩化ビニルテープの製造を開始
    • [17]1964年1月 徳山積水工業を設立し塩化ビニル樹脂の製造を開始

高度成長期の積水化学は、たびたび増資を重ねて資本金を85.5億円まで膨らませ、売上高は創業から15年で実に58倍に伸びた。1964年には、戦後の急成長企業としてソニー・本田技研と並び「ソニー、ホンダ、セキスイ」と称されるほど勢いがあった。しかし、主力の塩ビパイプや波板に他社が相次いで参入して過剰生産と値下がりを招き、北米へ進出した「第三の紙」発泡ポリスチレンペーパー事業もダウやモンサントなど現地の大手化学会社の追い上げに遭った。在庫を抱え込んだ積水化学は1965年に赤字を計上して成長企業の座から転げ落ち、上野次郎男社長は代表権のない会長へと退いた。1967年3月、旧日本窒素グループの旭化成から小幡謙三氏が再建のために送り込まれ、不採算部門の整理売却を進めるとともに、同年7月には資本金を半分に減らす半額減資という荒療治を断行して、わずか二年で大きな負債を消却し復配にこぎ着けた。 [18][19][20][21][22]

  • 企業の歴史 : 明治百年(経済春秋社, 1968)
    • [18]増資を重ねて資本金は85.5億円、売上高は創業15年で58倍に伸長した
    • [22]1967年3月 旭化成から小幡謙三が再建のために派遣され、同年7月に半額減資を断行して二年で負債を消却し復配した
  • 積水化学の歴史/上野次郎男
    • [19]1964年に戦後の急成長企業として「ソニー、ホンダ、セキスイ」と並称された
    • [20]主力の塩ビパイプ・波板への他社参入による過剰生産・値下がりと、北米進出した発泡ポリスチレンペーパー事業のダウ・モンサント等との競合で苦境に陥った
    • [21]1965年 赤字を計上して成長企業の座から脱落し、上野次郎男社長は代表権のない会長へ退いた
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [1]1947年3月 日本窒素肥料(現・チッソ)の一部従業員がプラスチック総合事業化を計画し積水産業株式会社を発足
    • [4]1948年1月 奈良工場を(日本窒素から譲り受けて)新設し積水化学工業株式会社へ商号変更
    • [5]奈良工場でわが国最初の自動射出成型によるプラスチック成型事業を開始
    • [10]1953年3月 大阪証券取引所に上場
    • [11]1954年4月 東京証券取引所に上場
    • [12]1953年9月 東京工場を新設
    • [13]1956年6月 中央研究所(現・開発研究所)を新設
    • [14]1960年8月 滋賀栗東工場で塩化ビニルパイプ・塩化ビニル建材製品の製造を開始
    • [15]1960年11月 滋賀水口工場でポリビニルブチラール・合わせガラス用中間膜の製造を開始
    • [16]1962年7月 武蔵工場でプラスチックテープ・塩化ビニルテープの製造を開始
    • [17]1964年1月 徳山積水工業を設立し塩化ビニル樹脂の製造を開始
  • 積水化学の歴史/上野次郎男
    • [2]敗戦で朝鮮半島の工場を失った日本窒素が余剰人員を収容する別会社の一つとして積水化学を設立した
    • [9]1952年 京都工場を完成させ硬質塩化ビニル管の製造に進み金属パイプを置き換えた
    • [19]1964年に戦後の急成長企業として「ソニー、ホンダ、セキスイ」と並称された
    • [20]主力の塩ビパイプ・波板への他社参入による過剰生産・値下がりと、北米進出した発泡ポリスチレンペーパー事業のダウ・モンサント等との競合で苦境に陥った
    • [21]1965年 赤字を計上して成長企業の座から脱落し、上野次郎男社長は代表権のない会長へ退いた
  • 企業の歴史 : 明治百年(経済春秋社, 1968)
    • [3]設立当初の資本金は10万円で、同時に研究機関として京都化学研究所を設置した
    • [6]1948年8月 大阪工場を設置(沿革には記載なし。概略書による)
    • [7]1949年暮れごろから売れ始めたプラスチックテープがヒットし社業の基礎が固まった
    • [8]1951年9月 上野次郎男が社長に就任し積極拡大策で高度成長を遂げた
    • [18]増資を重ねて資本金は85.5億円、売上高は創業15年で58倍に伸長した
    • [22]1967年3月 旭化成から小幡謙三が再建のために派遣され、同年7月に半額減資を断行して二年で負債を消却し復配した

樹脂加工技術を住宅へ転用した1971年のユニット住宅参入

1971年2月、積水化学工業は鉄骨系ユニット住宅「セキスイハイム」の販売を開始し、住宅事業に進出した。塩化ビニルパイプ・建材で蓄積した樹脂加工技術と、住宅一棟を工場で箱型に組み立てる「ユニット工法」を組み合わせた発想による。建設現場での施工に依存する在来工法に対し、工場で躯体を生産して品質と工期を管理する方式は、品種ごとに量産工場を立ち上げてきた成型品メーカーにとって、既存の生産技術と工場運営の経験を住宅市場へ転用する道筋となった。プラスチック成型品から住宅という最終消費財へ事業対象を広げる転換でもあった。 [23]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [23]1971年2月 鉄骨系ユニット住宅「ハイム」の販売を開始し住宅事業に進出(沿革表記は「ハイム」)

参入直後から量産体制の整備が続いた。1971年10月に奈積工業(現・セキスイハイム工業)、1972年3月にサンエスハイム製作所(現・セキスイハイム工業)を相次いで設立し、ユニット住宅の製造拠点を確保した。住宅は塩化ビニルパイプや成型品とは販売先も流通も異なる事業であり、製造業の発想で住宅を量産する試みは、のちに住宅・高機能プラスチック・環境ライフラインの3本柱へと広がる事業多角化の最初の一歩となった。化学会社が住宅を主力事業の一つに据える積水化学の事業構造は、この1971年の参入から始まった。 [24][25]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [24]1971年10月 奈積工業(現・セキスイハイム工業)を設立しユニット住宅の製造を開始
    • [25]1972年3月 サンエスハイム製作所(現・セキスイハイム工業)を設立しユニット住宅の製造を開始
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [23]1971年2月 鉄骨系ユニット住宅「ハイム」の販売を開始し住宅事業に進出(沿革表記は「ハイム」)
    • [24]1971年10月 奈積工業(現・セキスイハイム工業)を設立しユニット住宅の製造を開始
    • [25]1972年3月 サンエスハイム製作所(現・セキスイハイム工業)を設立しユニット住宅の製造を開始

1971年〜 住宅・高機能プラスチック・環境ライフラインの3本柱体制の確立と海外展開

積水化学工業の業績推移:単体

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 1971年 鉄骨系ユニット住宅「セキスイハイム」による住宅事業への参入 設計図を引ける社員が一人もいない「素人集団」に、なぜ社運をかけたのか
  2. 1971年 住宅事業に参入
  3. 1971年 奈積工業を設立、ユニット住宅の製造を開始
  4. 1972年 サンエスハイム製作所を設立、ユニット住宅の製造を開始
  5. 1977年 事業本部制を導入
  6. 1982年 木質系ユニット住宅「ツーユーホーム」の販売を開始
  7. 2006年 第一化学薬品を子会社化

1977年事業本部制導入と研究開発・国内補強買収の並行展開

第二期は、住宅事業を収益の柱へ育てる一方で、プラスチック成型品と管材・建材の事業をそれぞれ専門領域として確立していった時期にあたる。1977年5月に事業本部制を導入し、住宅・プラスチック成型品・環境(管材・建材)の各事業を経営的に独立させる組織へと改めた。住宅では1982年3月に木質系ユニット住宅「ツーユーホーム」を発売し、鉄骨系のセキスイハイムに木質系を加えて品種を広げ、同年4月の群馬工場新設で生産拠点も増やした。1983年12月にはSekisui America Corporationを設立して米国市場への展開を始め、国内で固めた事業を海外へ広げる段階へ入った。 [26][27][28][29]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [26]1977年5月 事業本部制を導入
    • [27]1982年3月 木質系ユニット住宅「ツーユーホーム」を発売
    • [28]1982年4月 群馬工場を新設
    • [29]1983年12月 米国にSekisui America Corporationを設立

1987年7月の応用電子研究所(現・R&Dセンター先進技術研究所)、1990年9月の住宅綜合研究所(現・住宅技術研究所)、1992年4月の京都技術センター(現・総合研究所)と、研究拠点を相次いで設けた。住宅と機能材料という性格の異なる両事業をそれぞれ専門の研究組織で支える体制を整えた点に、3本柱化を見据えた研究開発投資の意図が表れている。一方で、1997年8月の小松化成(現・ヴァンテック)買収でパイプ事業を、2000年1月のヒノマル(現・九州セキスイ商事インフラテック)買収で九州地区の営業をそれぞれ強化するなど、国内事業の補強を目的とした買収も並行して進めた。 [30][31][32][33][34]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [30]1987年7月 応用電子研究所(現・R&Dセンター先進技術研究所)を新設
    • [31]1990年9月 住宅綜合研究所(現・住宅技術研究所)を新設
    • [32]1992年4月 京都技術センター(現・総合研究所)を新設
    • [33]1997年8月 小松化成(現・ヴァンテック)を買収しパイプ事業を強化
    • [34]2000年1月 ヒノマル(現・九州セキスイ商事インフラテック)を買収し九州地区の営業を強化
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [26]1977年5月 事業本部制を導入
    • [27]1982年3月 木質系ユニット住宅「ツーユーホーム」を発売
    • [28]1982年4月 群馬工場を新設
    • [29]1983年12月 米国にSekisui America Corporationを設立
    • [30]1987年7月 応用電子研究所(現・R&Dセンター先進技術研究所)を新設
    • [31]1990年9月 住宅綜合研究所(現・住宅技術研究所)を新設
    • [32]1992年4月 京都技術センター(現・総合研究所)を新設
    • [33]1997年8月 小松化成(現・ヴァンテック)を買収しパイプ事業を強化
    • [34]2000年1月 ヒノマル(現・九州セキスイ商事インフラテック)を買収し九州地区の営業を強化

2001年3カンパニー制確立とライフサイエンス・川上統合の加速

2000年3月、従来の7事業本部を住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックスの3事業本部に再編し、新規事業本部を新設した。2001年3月にカンパニー制を導入し、住宅カンパニー・環境ライフラインカンパニー・高機能プラスチックスカンパニーの3カンパニー体制となった。この3カンパニー制は2026年現在まで維持されている積水化学の事業構造の基本フレームであり、住宅で稼ぎ、環境ライフラインで国内インフラ需要を取り込み、高機能プラスチックスで成長領域(エレクトロニクス・モビリティ・メディカル)を開拓する設計を持つ。 [35][36]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [35]2000年3月 従来の7事業本部を3事業本部に再編し新規事業本部を新設
    • [36]2001年3月 カンパニー制を導入し住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックスの3カンパニー体制となる

2003年4月には韓国の映甫化学(現・連結子会社、韓国取引所上場)を買収し、グローバル競争力を強化。2006年10月の第一化学薬品(現・積水メディカル)買収で、高機能プラスチックスカンパニーのライフサイエンス分野を強化した。2008年4月の執行役員制度導入、2008年10月の多賀工場(IT分野向けフィルム・テープ)設立、2009年7月の米Celanese社からのポリビニルアルコール樹脂事業買収(合わせガラス用中間膜の原料安定供給)と、コーポレートガバナンス改革と高機能プラスチックの川上統合を並行して行った。 [37][38][39][40][41]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [37]2003年4月 韓国の映甫化学(韓国取引所上場)を買収しグローバル競争力を強化
    • [38]2006年10月 第一化学薬品(現・積水メディカル)を買収しライフサイエンス分野を強化
    • [39]2008年4月 執行役員制度を導入
    • [40]2008年10月 多賀工場を設立しIT分野向けフィルム・テープ製品群の製造を開始
    • [41]2009年7月 米Celanese社のグループ会社からポリビニルアルコール樹脂事業を買収
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [35]2000年3月 従来の7事業本部を3事業本部に再編し新規事業本部を新設
    • [36]2001年3月 カンパニー制を導入し住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックスの3カンパニー体制となる
    • [37]2003年4月 韓国の映甫化学(韓国取引所上場)を買収しグローバル競争力を強化
    • [38]2006年10月 第一化学薬品(現・積水メディカル)を買収しライフサイエンス分野を強化
    • [39]2008年4月 執行役員制度を導入
    • [40]2008年10月 多賀工場を設立しIT分野向けフィルム・テープ製品群の製造を開始
    • [41]2009年7月 米Celanese社のグループ会社からポリビニルアルコール樹脂事業を買収

2010年〜 ESG経営と医薬・モビリティ・ペロブスカイトへの成長領域拡張(2010〜現在)

積水化学工業の業績推移

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2011年 Genzyme Corporationから検査薬事業を買収
  2. 2012年 三菱樹脂の管材事業を買収
  3. 2015年 エーザイからエーディアを買収
  4. 2017年 ポリマテック・ジャパングループの経営権を取得
  5. 2019年 AIM Aerospaceを買収
  6. 2022年 プライム市場に移行
  7. 2025年 ペロブスカイト太陽電池事業の運営を開始

Genzyme・AIM Aerospace買収で医薬・モビリティ領域拡張

第三期、積水化学工業は3カンパニー体制を維持したまま、買収を軸に医薬・モビリティ分野の事業を広げた。2011年1月、米Genzyme Corporationから検査薬事業を買収して新会社を設立し、メディカル分野のグローバル展開を進めた。2012年12月の三菱樹脂管材事業買収で管材を中心とする基盤事業を強化、2013年3月のタイユニット住宅量産工場新設で住宅事業の海外展開を本格化、と国内外で事業基盤の補強を続けた。2015年12月のエーザイから検査薬事業子会社エーディア買収、2016年12月の積水化学投資(上海)設立、2017年4月の積水メディカル・エーディア統合と、ライフサイエンス事業の規模拡大が進んだ。 [42][43][44][45][46][47]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [42]2011年1月 米Genzyme Corporationから検査薬事業を買収し新会社を設立
    • [43]2012年12月 三菱樹脂の管材事業を買収し基盤事業を強化
    • [44]2013年3月 タイにユニット住宅量産工場を新設
    • [45]2015年12月 エーザイから検査薬事業子会社エーディアを買収
    • [46]2016年12月 中国に積水化学投資(上海)有限公司を設立
    • [47]2017年4月 積水メディカルとエーディアを統合

2017年8月のポリマテック・ジャパン(現・積水ポリマテック)取得で車輌・輸送分野等の事業拡大や素材配合・加工技術の基礎技術強化、2017年12月の東洋ゴム工業からのソフランウイズ買収で耐火・不燃製品の開発・販売強化、2018年3月のシンガポール検査事業会社Veredus Laboratories取得で中国・アジア市場開拓を加速、2019年11月の米AIM Aerospace(現・Sekisui Aerospace)買収でモビリティ材料領域の業容拡大を加速、と機能材料・医薬・モビリティ領域での買収を連続的に実施した。 [48][49][50][51]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [48]2017年8月 ポリマテック・ジャパン(現・積水ポリマテック)グループの経営権を取得
    • [49]2017年12月 東洋ゴム工業からソフランウイズを買収
    • [50]2018年3月 シンガポールのVeredus Laboratoriesの発行済全株式を取得
    • [51]2019年11月 米AIM Aerospace(現・Sekisui Aerospace)を買収しモビリティ材料領域の業容拡大を加速
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [42]2011年1月 米Genzyme Corporationから検査薬事業を買収し新会社を設立
    • [43]2012年12月 三菱樹脂の管材事業を買収し基盤事業を強化
    • [44]2013年3月 タイにユニット住宅量産工場を新設
    • [45]2015年12月 エーザイから検査薬事業子会社エーディアを買収
    • [46]2016年12月 中国に積水化学投資(上海)有限公司を設立
    • [47]2017年4月 積水メディカルとエーディアを統合
    • [48]2017年8月 ポリマテック・ジャパン(現・積水ポリマテック)グループの経営権を取得
    • [49]2017年12月 東洋ゴム工業からソフランウイズを買収
    • [50]2018年3月 シンガポールのVeredus Laboratoriesの発行済全株式を取得
    • [51]2019年11月 米AIM Aerospace(現・Sekisui Aerospace)を買収しモビリティ材料領域の業容拡大を加速

ESG経営推進部新設と2019年加藤体制によるVision 2030策定

2019年に入ると、積水化学工業は環境・社会への対応を経営の前面に置く改革を進めた。1月にはまちづくり事業を推進するためセキスイタウンマネジメント(現・セキスイ合人社タウンマネジメント)を設立し、4月には環境ライフラインカンパニー管轄の生産子会社拠点を再編して西日本積水工業を設立した。同じ4月の本社機能再編では7部1室2センター体制とし、新設したESG経営推進部のもとで、温室効果ガス削減などの非財務指標を経営に組み込む取り組みを始めた。電力の買取・販売を組み合わせたサービス「スマートハイムでんき」の案内開始や社外取締役の女性比率拡大も、この時期の改革に含まれる。 [52][53][54][55]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [52]2019年1月 セキスイタウンマネジメント(現・セキスイ合人社タウンマネジメント)を設立
    • [53]2019年4月 生産子会社拠点を再編し西日本積水工業を設立
    • [54]2019年4月 本社機能を7部1室2センターに再編しESG経営推進部を新設
    • [55]2019年4月 電力買売サービス「スマートハイムでんき」の顧客向け案内を開始

2020年3月、加藤敬太氏が代表取締役社長に就任した。加藤社長は高機能プラスチック事業の経営戦略畑を歩んだ人物で、就任の翌年にはコロナ禍による住宅需要の落ち込みという難局に直面した。加藤社長の在任中、積水化学工業は2022年4月の東証プライム市場移行に合わせて長期ビジョン「Vision 2030」を策定し、医薬・モビリティ・ペロブスカイト太陽電池といった社会課題解決を掲げる事業の比率拡大を目標に掲げた。住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックの3カンパニーで稼ぎながら、次の収益柱を成長領域に求める方針を明文化したものといえる。 [56][57]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【役員の状況】
    • [56]2020年3月 加藤敬太が代表取締役社長に就任
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [57]2022年4月 東京証券取引所市場第一部からプライム市場に移行
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [52]2019年1月 セキスイタウンマネジメント(現・セキスイ合人社タウンマネジメント)を設立
    • [53]2019年4月 生産子会社拠点を再編し西日本積水工業を設立
    • [54]2019年4月 本社機能を7部1室2センターに再編しESG経営推進部を新設
    • [55]2019年4月 電力買売サービス「スマートハイムでんき」の顧客向け案内を開始
    • [57]2022年4月 東京証券取引所市場第一部からプライム市場に移行
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【役員の状況】
    • [56]2020年3月 加藤敬太が代表取締役社長に就任

2025年積水ソーラーフィルム設立と第4領域立ち上げの経営課題

2025年1月、積水化学工業はペロブスカイト太陽電池の設計・製造・販売を目的とする積水ソーラーフィルム株式会社を設立し、事業運営を開始した。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で曲げられるフィルム型として、ビル壁面や耐荷重の小さい屋根など従来のシリコン系では設置しにくかった場所への展開が見込まれる次世代の発電技術である。同社が長年蓄積してきた合わせガラス用中間膜などのフィルム加工技術を発電デバイスへ応用する事業であり、住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックの3カンパニーのいずれにも収まりきらない、新たな事業領域にあたる。 [58]

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [58]2025年1月 積水ソーラーフィルム株式会社を設立しペロブスカイト太陽電池事業の運営を開始

2025年3月期の売上高1兆2,300億円超、営業利益1,000億円規模という安定した収益は、住宅・環境ライフライン・高機能プラスチックの3カンパニー体制が積み上げてきた到達点にあたる。ただし国内の人口減少で住宅市場は長期的に縮小に向かい、最大の収益源である住宅事業の伸びしろは細った。第三期に連続して買収してきた医薬・モビリティの事業群と、2025年に立ち上げたペロブスカイト太陽電池が、いつ住宅に代わる収益柱へ育つか。既存の稼ぎ頭である住宅事業の構造改革と、第4の事業領域の収益化をどう両立させるかが、加藤社長の体制が引き受けた経営課題である。

  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
    • [58]2025年1月 積水ソーラーフィルム株式会社を設立しペロブスカイト太陽電池事業の運営を開始

積水化学工業の沿革1947〜2025年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
積水産業として発足★★
奈良工場を新設
プラスチック自動射出成型事業に参入★★
積水化学工業に商号変更
大阪証券取引所に上場
東京工場を新設、プラスチック成型品の製造を開始
東京証券取引所に上場
中央研究所を新設
滋賀栗東工場を新設、塩化ビニルパイプ、塩化ビニル建材製品の製造を開始
滋賀水口工場を新設、ポリビニルブチラール、同中間膜の製造を開始
北米進出「第三の紙」の栄光と挫折 ── 成長会社セキスイの転落(1962〜1965)日本企業に先駆けて北米で現地生産に挑んだ上野次郎男社長は、なぜ成長会社の座を明け渡したのか 詳細を読む★★★
1965年に赤字計上と社長更迭★★
徳山積水工業を設立、塩化ビニル樹脂の製造を開始
鉄骨系ユニット住宅「セキスイハイム」による住宅事業への参入設計図を引ける社員が一人もいない「素人集団」に、なぜ社運をかけたのか 詳細を読む★★★
住宅事業に参入★★
奈積工業を設立、ユニット住宅の製造を開始
サンエスハイム製作所を設立、ユニット住宅の製造を開始
事業本部制を導入
木質系ユニット住宅「ツーユーホーム」の販売を開始
群馬工場を新設、塩化ビニルパイプ、ユニット住宅外壁パネルの製造を開始
Sekisui America Corporationを設立
応用電子研究所を新設
住宅事業本部内に住宅綜合研究所を新設
京都技術センターを新設
小松化成を子会社化
大久保尚武7事業本部を3事業本部に再編
大久保尚武カンパニー制を導入
大久保尚武第一化学薬品を子会社化★★
根岸修史多賀工場を設立、IT分野向けのフィルム・テープ製品群の製造を開始
根岸修史Celanese Corporationの子会社からポリビニルアルコール樹脂事業を買収
根岸修史Genzyme Corporationから検査薬事業を買収
根岸修史三菱樹脂の管材事業を買収★★
髙下貞二エーザイからエーディアを買収
髙下貞二ポリマテック・ジャパングループの経営権を取得
加藤敬太AIM Aerospaceを買収★★
加藤敬太プライム市場に移行
清水郁輔積水ソーラーフィルムを設立
清水郁輔ペロブスカイト太陽電池事業の運営を開始★★
出典・参考
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【沿革】
  • 積水化学の歴史/上野次郎男
  • 企業の歴史 : 明治百年(経済春秋社, 1968)
  • 積水化学工業 有価証券報告書 第103期(2025年3月期)【役員の状況】

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