2001年〜 アイワイバンク銀行設立とATM受入手数料モデルの確立
セブン銀行の業績推移:単体
- 2001年 金利差ではなくATM受入手数料を収益の柱に据えた銀行の設計 預金を集めて貸す銀行か、現金の出し入れを担う銀行か——流通業が銀行免許を取る意味
- 2001年 営業開始・全国銀行協会入会
- 2001年 インターネットバンキングサービス開始
- 2005年 第2世代ATM導入開始
- 2007年 ATMの運営・管理一括受託開始
- 2008年 セブン銀行のジャスダック証券取引所上場 流通グループの子会社が銀行として市場に出るとき、何を売り、何を残したか
- 2010年 個人向けローンサービス開始
「素人が銀行を始めても失敗する」と言われた小売資本の銀行業参入
2001年4月、株式会社アイワイバンク銀行が資本金202億円で設立[1]された。発起人はイトーヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンを中心[2]とするアイワイグループ各社で、金融ビッグバン期に進んだ業態間規制緩和のもとで流通グループが銀行業へ参入する事例となった。同年5月に営業を開始し[3]、6月には全銀システムへの接続と振込サービスを始めた[4]。発案者であるセブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文氏は[5]、社内反対と金融業界からの強い否定論に直面した。ATM手数料だけで収益が成り立つはずがない、流通業の素人が銀行を始めても失敗するという声が業界内で広く共有されていた。それでも開業に踏み切った理由は、セブン-イレブンが1990年代から実施した1万人アンケートでATM設置要望が年々高まっていた事実があったためである。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [1]2001年4月 株式会社アイワイバンク銀行が資本金202億円で設立
- [2]発起人はイトーヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンを中心とするアイワイグループ各社
- [3]2001年5月 営業開始
- [4]2001年6月 全銀システム接続・振込サービス開始
- [5]発案者はセブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文氏
初代社長には元日銀理事で日本長期信用銀行頭取[6]を務めた安斎隆氏が就任した。日銀理事として長銀の破綻処理にも関わった金融行政のベテランを起用したことで、流通業の銀行参入に懐疑的だった金融庁・日銀との関係調整が進んだ。同社が採用した収益モデルは、預金・貸出の金利差ではなく、提携金融機関からのATM受入手数料を主収益源とする構造[7]だった。設立当初はメガバンクが加盟する「総合ATMネットワーク」への加入が認められず、提携先を1行ずつ自前で開拓するほかなかった。だが手数料額を提携先側が設定できる斬新な契約形態を提示し、地方銀行・信用金庫が利用者囲い込み策として相次いで提携に応じたため、開業から半年で提携金融機関数は170社を超えた[8]。
- セブン銀行 有価証券報告書【役員の状況】
- [6]初代社長は安斎隆氏(元日銀理事・元日本長期信用銀行頭取)
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [7]収益モデルは提携金融機関からのATM受入手数料を主収益源とする構造
- セブン銀行 有価証券報告書
- [8]開業から半年で提携金融機関数は170社を超えた
2001年12月にはインターネットバンキングサービス[9]を始め、振込・残高照会の窓口を24時間化した。2002年3月の第2回第三者割当増資で資本金は610億円へ拡大し[10]、銀行業に必要な自己資本基盤を整えた。設立当初の収益は赤字で推移したが、2003年度に単年度黒字を達成[11]、2005年には累積損失を一掃した[12]。2005年10月、流通グループの再編に合わせて社名を「株式会社セブン銀行」へ改称した[13]。アイワイバンクとして開業から4年半で持続的に利益を出す体制を作り上げ、預金獲得や住宅ローンで他行と競う伝統的銀行モデルから離れた共存共栄型インフラ事業者という独自の位置を業界内で確立した。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [9]2001年12月 インターネットバンキングサービス開始
- [10]2002年3月の第2回第三者割当増資で資本金は610億円へ拡大
- [13]2005年10月 社名を株式会社セブン銀行へ改称
- セブン銀行 有価証券報告書
- [11]2003年度に単年度黒字を達成
- [12]2005年に累積損失を一掃
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [1]2001年4月 株式会社アイワイバンク銀行が資本金202億円で設立
- [2]発起人はイトーヨーカ堂とセブン-イレブン・ジャパンを中心とするアイワイグループ各社
- [3]2001年5月 営業開始
- [4]2001年6月 全銀システム接続・振込サービス開始
- [7]収益モデルは提携金融機関からのATM受入手数料を主収益源とする構造
- [9]2001年12月 インターネットバンキングサービス開始
- [10]2002年3月の第2回第三者割当増資で資本金は610億円へ拡大
- [13]2005年10月 社名を株式会社セブン銀行へ改称
- [5]発案者はセブン&アイ・ホールディングス会長の鈴木敏文氏
- セブン銀行 有価証券報告書【役員の状況】
- [6]初代社長は安斎隆氏(元日銀理事・元日本長期信用銀行頭取)
- セブン銀行 有価証券報告書
- [8]開業から半年で提携金融機関数は170社を超えた
- [11]2003年度に単年度黒字を達成
- [12]2005年に累積損失を一掃
47都道府県ATM網と6年8ヶ月で全国展開完了
2005年7月には第2世代ATMの導入を始め[14]、現金処理機構の小型化と稼働率向上で1台当たりの収益力を底上げした。2006年1月には新勘定系システムが稼働し[15]、3月から定期預金と銀行代理業務を開始[16]、4月にはICキャッシュカード対応も始めた[17]。預金獲得を主目的としない銀行であってもキャッシュカード発行と振込受付は提携先金融機関にとって不可欠な機能で、勘定系の自前運営はATM事業の競争力を支える基盤となった。2007年6月にはATMの運営・管理[18]を提携金融機関から一括受託するサービスを開始し、銀行のATM保有負担を肩代わりする形で提携範囲を広げた。同年7月には海外発行カード対応[19]、9月には電子マネー「nanaco」のチャージ機能をATM[20]に搭載し、現金引き出し以外の機能を機械単位で増設する戦略を採った。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [14]2005年7月 第2世代ATM導入開始
- [15]2006年1月 新勘定系システム稼働
- [16]2006年3月 定期預金と銀行代理業務を開始
- [17]2006年4月 ATMでのICキャッシュカード対応開始
- [18]2007年6月 ATMの運営・管理一括受託サービス開始
- [19]2007年7月 ATMでの海外発行カード対応開始
- [20]2007年9月 ATMで電子マネー「nanaco」のチャージ開始
2007年12月、開業から6年8ヶ月で47都道府県[21]へのATM設置が完了した。2007年9月末時点でATM設置台数は12,852台[22]、提携金融機関数は554社に達し[23]、ATM総利用件数は年間4.7億件を超えた[24]。提携金融機関が個人顧客にATM利用手数料を請求し、その一部がセブン銀行への受入手数料となる構造のもと、設置台数が増えるほど利用件数が増え、利用件数が増えるほど受入手数料が積み上がる単純な拡大ループが回り始めた。FY06(2007年3月期)の経常収益754億円・経常利益250億円・親会社株主に帰属する当期純利益127億円という決算は、開業から6年で銀行業界の中堅クラスの利益水準に到達したことを示した。営業開始からほぼ全期間にわたり単月黒字を継続する財務体質は、当初の否定論を覆す結果となった。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [21]2007年12月 開業から6年8ヶ月で47都道府県へのATM設置完了
- セブン銀行 有価証券報告書
- [22]2007年9月末時点でATM設置台数12,852台
- [23]2007年9月末時点で提携金融機関数554社
- [24]ATM総利用件数は年間4.7億件超(2007年時点)
2008年2月、ジャスダック証券取引所への株式上場[25]を果たした。流通業発祥の銀行が上場までこぎ着けたのは異例で、ATM受入手数料モデルが上場審査を通過する事業形態として認知された画期となった。2010年1月には個人向けローンサービスを開始し[26]、ATM顧客接点を活かした個人ローン提供の枠組みを試行した。同年11月には第3世代ATMの導入を始め[27]、機能拡張と省エネ化を進めた。安斎隆氏は2010年6月に社長を退いて代表取締役会長[28]に就き、社長職を二子石謙輔氏に引き継いだ。安斎氏はATM事業の基本構想を「全国に23,000台を超えるATMサービスを実現し[29]、手数料収入を稼ぐビジネスモデルを確立する」(ニュースイッチ)と語っている。設立から9年で同社のATM網は全国規模に到達し、提携金融機関数550社超・利用件数年間6億件超の水準でATM受入手数料モデルは安定収益事業として確立された。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [25]2008年2月 ジャスダック証券取引所への株式上場
- [26]2010年1月 個人向けローンサービス開始
- [27]2010年11月 第3世代ATM導入開始
- セブン銀行 有価証券報告書【役員の状況】
- [28]安斎隆氏は2010年6月に社長を退いて代表取締役会長に就任し、社長職は二子石謙輔氏が引き継いだ
- [29]安斎隆氏はATM事業の基本構想を「全国に23,000台を超えるATMサービスを実現し、手数料収入を稼ぐビジネスモデルを確立する」と語った
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [14]2005年7月 第2世代ATM導入開始
- [15]2006年1月 新勘定系システム稼働
- [16]2006年3月 定期預金と銀行代理業務を開始
- [17]2006年4月 ATMでのICキャッシュカード対応開始
- [18]2007年6月 ATMの運営・管理一括受託サービス開始
- [19]2007年7月 ATMでの海外発行カード対応開始
- [20]2007年9月 ATMで電子マネー「nanaco」のチャージ開始
- [21]2007年12月 開業から6年8ヶ月で47都道府県へのATM設置完了
- [25]2008年2月 ジャスダック証券取引所への株式上場
- [26]2010年1月 個人向けローンサービス開始
- [27]2010年11月 第3世代ATM導入開始
- セブン銀行 有価証券報告書
- [22]2007年9月末時点でATM設置台数12,852台
- [23]2007年9月末時点で提携金融機関数554社
- [24]ATM総利用件数は年間4.7億件超(2007年時点)
- セブン銀行 有価証券報告書【役員の状況】
- [28]安斎隆氏は2010年6月に社長を退いて代表取締役会長に就任し、社長職は二子石謙輔氏が引き継いだ
- [29]安斎隆氏はATM事業の基本構想を「全国に23,000台を超えるATMサービスを実現し、手数料収入を稼ぐビジネスモデルを確立する」と語った
「共存共栄」── 一行ずつ提携先を開拓した9年
セブン銀行のATM受入手数料モデルが立ち上げ期から10年で軌道に乗った理由は、提携金融機関との交渉方針の固定化にある。二子石謙輔社長は就任後、「共存共栄がベースとなる考え方。提携先・業務委託先・地域社会、すべてお互いにメリットがないと長く続かない」(銀行員ドットコム)と述べ、自前の預金獲得や住宅ローン拡大による他行との競合を意図的に避ける方針を継続した。[30]利用者がATMで支払う手数料は提携金融機関の収入とし、提携先からセブン銀行が受け取るのは1件当たりの受入手数料という分配構造により、提携先銀行は自前ATM網の縮小と顧客サービス維持を両立できた。提携先にとってのコスト削減効果が高いほど提携契約の継続性が高まる関係が成立した。
- [30]二子石謙輔氏は第2代社長として就任後「共存共栄」方針を継続した
2011年3月には海外送金サービスを開始し[31]、日本に住む外国人労働者を主要顧客とする送金事業に進出した。同年9月期に提携金融機関数は600社を超え、ATM設置台数[32]は16,000台を突破した。同年12月、東京証券取引所市場第一部への上場を果たし[33]、ジャスダック上場から3年9ヶ月で東証一部へ昇格した。2010年3月期(FY09)の経常収益888億円・経常利益304億円・親会社株主に帰属する当期純利益180億円という業績は、設立から9年での到達点として銀行業界の中堅地方銀行と比肩する水準だった。預金獲得を主目的としない異色の銀行が、利益額で見て地銀上位行に並ぶ位置に立った事実は、流通業発祥の銀行業参入が金融業界に与えたインパクトの実体を示した。
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [31]2011年3月 海外送金サービス開始
- [33]2011年12月 東京証券取引所市場第一部への上場
- セブン銀行 有価証券報告書
- [32]2011年9月期に提携金融機関数600社超・ATM設置台数16,000台突破
東日本大震災発生後の2011年3月、ATM網は被災地での現金引き出し手段の役割を担った[34]。停電下でも一部ATMが稼働を続け、コンビニATMが災害時インフラとして社会的位置を獲得した出来事となった。同社の災害対応はATM自体の耐震・耐災害設計と、24時間体制のATMコールセンターによる遠隔監視の組み合わせで成り立ち、2005年4月に稼働開始した大阪のATMコールセンター[35]と2008年完成の本社の一体運用が機能した。設立から10年を経て、コンビニATMは現金決済社会日本のインフラの一部として制度的位置を固めた。この時期以降、同社は海外進出とサービス多角化を進めた。
- セブン銀行 有価証券報告書
- [34]2011年3月 東日本大震災発生後、ATM網が被災地で現金引き出し手段の役割を担った
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [35]2005年4月 大阪のATMコールセンターが稼働開始
- [30]二子石謙輔氏は第2代社長として就任後「共存共栄」方針を継続した
- セブン銀行 有価証券報告書【沿革】
- [31]2011年3月 海外送金サービス開始
- [33]2011年12月 東京証券取引所市場第一部への上場
- [35]2005年4月 大阪のATMコールセンターが稼働開始
- セブン銀行 有価証券報告書
- [32]2011年9月期に提携金融機関数600社超・ATM設置台数16,000台突破
- [34]2011年3月 東日本大震災発生後、ATM網が被災地で現金引き出し手段の役割を担った