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歴史概要 — 現在に至るあゆみ 主要な意思決定と帰結のまとめ

創業地福岡市
創業年1944
上場年1949
創業者※戦時電気工事業整備要綱で九州13社統合
現代表石橋和幸
従業員数10,828

専属下請け・発注元依存の出自国策・官製発足1944年12月、太平洋戦争末期の電気工事業整備要綱により九州の13社が統合し、福岡市で九州電気工事株式会社(現クラフティア)が生まれた。創業者の構想ではなく、戦時統制下の業界一元化策が母体をつくった会社である。1947年に九州配電(現九州電力)と配電工事委託契約を結ぶと、電力会社一社の設備投資計画に受注を連動させる収益基盤ができた。自社で営業して需要を取りにいくのではなく、発注元の計画量を需要リスクなしに引き受ける。電力を後ろ盾に、九州各県へ地域子会社網を広げていった。

販路・チャネルの差し替え九州電力一社への依存は長く続いたが、2013年4月就任の営業畑・西村松次社長が、主力を首都圏の中小ビル工事や空調更新へ移した。電力の大口工事に張り付く受注から、無数の建物の小口需要を集める受注への切り替えである。発注者の需要に乗って工事量を得る仕組みそのものは変えず、依存先を一社から多数へ広げた。折しも首都圏の電気設備工事需要が回復し、経常利益はFY13の89億円からFY18の399億円へ5期で4.5倍に伸びた。

業態転換九州電力の配電工事を80年の収益源としてきたクラフティアは、いま首都圏のデータセンターや半導体工場の建設で稼ぎ、単件数十億円規模の案件を積み上げている。経営体制の面でも、2023年には生え抜きの石橋和幸氏が社長に就任。そして創立80周年の翌2025年、社名を九電工からクラフティアへ変え、本社を福岡市那の川から天神へ移転した。こうして、九州電力の工事会社という出自を、顧客・本社立地・経営体制の両面から脱却した。

クラフティア:売上高の内訳と営業利益率(PL 分解 × 営業利益率)
営業利益(億円)販管費(億円)売上原価(億円)営業利益率(%)
歴代社長
FY01
FY03
FY05
FY07
FY09
FY11
FY13
FY15
FY17
FY19
FY21
FY23
FY25
FY27
FY29
河部浩幸
代表取締役社長
橋田紘一
代表取締役社長
歴代社長
FY01
FY02
FY03
FY04
FY05
FY06
FY07
FY08
FY09
FY10
FY11
FY12
FY13
FY14
FY15
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FY17
FY18
FY19
FY20
FY21
FY22
FY23
FY24
河部浩幸
代表取締役社長
橋田紘一
代表取締役社長
西村松次代表取締役社長佐藤尚文代表取締役社長佐藤尚文代表取締役社長執行役員石橋和幸代表取締役社長執行役員
クラフティア:投資CF(M&A・設備投資ほか/事業施策と紐付き)
投資CF(億円)
監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行2022
神奈川県のエルゴテック株式会社の株式の一部を取得2018
シンガポールASIA PROJECTS ENGINEERING PTE. LTD.の株式の一部を取得2013
東京本社設置2008

歴史詳細 - 3つの時代区分で読み解く

1944年〜1988年 戦時統制下の九州13社統合から東証一部上場まで──九州電力の工事専門会社として生まれた45年

売上高と利益率の推移
売上高(億円

戦時統制が生んだ「九州電気工事株式会社」──13社統合と九州配電契約

1944年12月、太平洋戦争末期の戦時統制経済下で施行された電気工事業整備要綱に基づき、株式会社営電社ほか九州の主要電気工事業者13社が統合し、資本金250万円で九州電気工事株式会社が設立された[1]。本社は福岡市に置かれ、九州各県に支店・営業所が配備された[2]。発足直後の1945年2月に株式会社九州電業社ほか3社を第2次統合[3]、同年3月に原田電気商会ほか3社を第3次統合し、設立3ヶ月で計19社の統合を完了した[4]。戦時下の業界一元化策によって誕生した同社の出発点は、創業者個人の事業構想ではなく国策による業界再編にあった。

1945年10月、終戦からわずか2ヶ月後に東京支社(現、東京本社)を設置した[5]。戦後復興の電力需要に応えるため首都圏拠点を早期に確保した動きで、その後60年以上にわたって本社九州・首都圏拠点の二極体制を維持する基盤を作った。1947年6月、設立から約2年半を経て、九州配電株式会社(現、九州電力株式会社)と配電工事委託契約を締結した[6]。1951年の電気事業再編成で九州配電が九州電力へ移行すると[7]、クラフティアは九州電力の配電工事専門会社という性格を強めた。発電・送電・配電網を保有する九州電力の設備投資計画に連動して工事を受注する事業構造が、この契約で形作られた。

1953年7月には建設工事部門(発電・変電・送電)を分離して九州電気建設工事株式会社(現、株式会社九建・持分法適用関連会社)を設立し、発送電工事と一般電気工事を分社化した[8]。1954年6月に資材調達子会社として株式会社昭電社(現、株式会社Q-mast)を設立[9]、1962年6月に社員研修所(現、九電工アカデミー)を整備した[10]。1963年7月の株式会社大分電設設立以降[11]、1965年5月の小倉電設、1967年10月の長営電設、1968年11月の南九州電設、1970年4月の有明電設、1971年4月の熊栄電設、1981年9月の福岡電設まで、九州各県に地域子会社網を順次設立した[12]。各県別の地場拠点とグループ会社による施工体制が、九州エリア独占に近い受注ポジションを支えた。

上場とトリプル昇格──全国区企業への足がかり

1964年7月、空気調和・冷暖房・管工事の営業を開始した[13]。電気工事専業から空調・管工事へ業域を拡張する動きで、ビル建設の屋内設備一式を引き受ける総合設備工事会社への転換が始まった。1965年2月には大阪支社(現、関西支店)を設置し[14]、九州・首都圏に続く第三の都市圏拠点を確保した。1968年11月、大阪証券取引所市場第二部および福岡証券取引所市場に上場し、資本金5億円となった[15]。1944年設立から24年を経て初の証券取引所上場を果たし、九州地場企業から資本市場参加企業への移行を実現した。

上場と同時期から業域拡張が加速した。1971年7月に水処理工事の営業を開始し[16]、電気・空調・管に続く第4の工事ドメインを開拓した。1971年11月には東京証券取引所市場第二部に上場(資本金8億2,500万円)[17]、翌1971年12月に株式会社明光社の株式を取得して首都圏子会社化を進めた[18]。1972年2月には九州電工ホーム株式会社(現、株式会社九電工ホーム)を設立し、住宅事業に進出した[19]。1972年9月、設立から28年・東証二部上場からわずか10ヶ月で、東京証券取引所および大阪証券取引所市場第一部へ指定替え上場を果たし、資本金11億円となった[20]。上場4年での一部昇格は、九州配電工事契約を背景とした安定収益と地場子会社網の拡充スピードの裏付けがあったことを示している。

1973年6月、建設業法改正に伴い建設大臣許可(特―48)第1659号を取得した[21]。1976年4月には本社を福岡市南区那の川一丁目23番35号へ新築移転し[22]、組織拡大に応じた本社機能を整備した。1981年8月、公共下水道工事の営業を開始し[23]、自治体向けインフラ工事への参入を進めた。1984年10月に九興総合設備株式会社を設立し[24]、グループ内の総合設備機能を集約した。1985年5月には台湾で合弁会社「九連環境開發股份有限公司」を設立し、初の海外進出として中華圏での環境事業を始めた[25]。1987年3月に第一回無担保転換社債100億円を発行し[26]、バブル期の資本市場から事業拡大資金を調達した。

1989年〜2012年 「九電工」ブランドの誕生と九州電力依存からの脱却模索──業績停滞期の25年

売上高と利益率の推移
売上高(億円

商号変更が示した業域拡大の自己定義──「電気工事」から「九電工」へ

1989年12月、株式会社九電工に商号変更した[27]。創業時の「九州電気工事」から「九電工」への変更は、創業以来45年で電気工事から空調・水処理・住宅・海外環境事業まで業域が拡張したことを社名で表現する目的があった[28]。同時に、商号略称が業界内で既に「九電工」として通用していた実態を社名に追認する意味も持っていた。九州電力傘下の工事会社という出自を示す「電気工事」を社名から外した形だが、九州電力との配電工事委託契約は引き続きクラフティアの収益基盤の中核に置かれ、配電線新設・更新工事と変電所工事を主力受注源として維持した。

1999年3月、技術研究所(現、技術開発部技術開発課)を設置した[29]。工事業として珍しい社内研究機能の整備で、施工技術の内製化と提案型営業の素地を作る試みだった。だが1990年代後半から2000年代前半は、国の公共事業費削減と九州電力の設備投資抑制が同社の受注環境を圧迫した期間でもあった。21_ceo.csv で確認できる FY01〜FY05(2002〜2006年3月期)には河部浩幸社長[30]、FY06〜FY11(2007〜2012年3月期)には橋田紘一社長が在任し[31]、九州電力向けが大きい構造の中で売上は2,200億〜2,500億円のレンジで横ばいに推移した。

連結売上高は FY01 の2,373億円から FY12 の2,392億円までほぼ横ばいで推移し、経常利益も FY01 の53億円、FY06 の33億円、FY10 の78億円と振幅を見せた。FY06(2007年3月期)には親会社株主に帰属する当期純利益が▲25.7億円の赤字を計上し、設立以来初めての連結赤字となった。九州電力の設備投資が原子力定期検査延長等で抑制された影響と、公共事業費削減の二重圧力が顕在化した期だった。河部浩幸・橋田紘一両社長の2代(合計約10年)は、九州電力依存の主力事業を守りながら子会社網と業域拡張を維持するという守りの局面が続いた。

営業統括出身の西村松次社長と業績反転──FY13からの売上拡大

2004年6月、大阪証券取引所市場第一部の上場が廃止された[32]。2008年7月、1945年に設置した東京支社を「東京本社」へ昇格させ[33]、首都圏営業の本格化を社内位置付けで明示した。2013年4月、西村松次氏が代表取締役社長に就任した[34]。西村社長はクラフティア(旧 九電工)に1971年4月入社、佐賀支店長・福岡支店長を経て営業本部長・東京本社統括本部長等を歴任した営業統括系統の生え抜きで[35]、地場支店営業から本社管理職へ進む典型的な内部昇格パターンの社長だった。

西村社長は就任後の日刊工業新聞インタビューで、電気工事業の課題を需要低迷と価格競争、電力会社の設備投資抑制と整理し、小口受注へ顧客に密着する戦略を経営の重点方針に掲げた[36]。九州電力からの数億円規模の大口工事に依存する構造から、首都圏・関西圏の中小ビル工事・空調更新案件等の小口受注へ主力を移す方針が示された。資機材の購入コスト改善と働き方改革を経営課題として位置付け、新会社Q-mastを設立して資材購入費を前年比1割減とする目標を掲げ[37]、資材調達と労働環境改革を並行して進めた。

西村社長就任前後から首都圏の電気設備工事需要が回復し、業績は反転した。連結売上高は FY13(2014年3月期)の2,793億円から FY18(2019年3月期)の4,081億円へ5期で46%増加した。経常利益は FY13 の89億円から FY18 の399億円へ4.5倍に拡大、純利益は FY13 の37億円から FY18 の267億円へ7.2倍に伸びた。2013年5月にはシンガポールの ASIA PROJECTS ENGINEERING PTE. LTD. の株式の一部を取得し、初の本格的な海外M&Aを実施した[38]。1985年の台湾合弁以来約28年ぶりの海外進出で[39]、東南アジア地域での電気設備工事市場参入の足がかりとなった。2015年3月には第2回無担保転換社債型新株予約権付社債100億円を発行し、海外M&A・国内設備投資の資金を確保した[40]

2013年〜2025年 創業80周年とブランド刷新──データセンター・蓄電池への少額出資受注モデルへ

売上高と利益率の推移
売上高(億円

首都圏M&Aと業績ピーク──「九電工」が九州電力色を脱ぐ過程

2018年3月、神奈川県のエルゴテック株式会社の株式の一部を取得し、首都圏の電気工事会社をグループ化した[41]。2020年6月、佐藤尚文氏が西村松次氏の後任として代表取締役社長に就任した[42]。佐藤社長は1971年4月に九州電力へ入社後、同社で代表取締役副社長まで歴任した外部登用人材で、2018年6月に九州電力副社長を退任して同年同月にクラフティア(旧 九電工)入社、取締役会長を経ての社長就任という、九州電力との人的繋がりを再確認するパターンの世代交代となった[43]

佐藤社長期(FY19〜FY21、2020〜2022年3月期)の業績は[44]、コロナ禍の影響と建設投資の停滞でやや停滞した。連結売上高は FY18 の4,081億円から FY20(2021年3月期)の3,919億円、FY21(2022年3月期)の3,766億円へ後退したが、経常利益は FY18 の399億円から FY21 の368億円まで維持された。営業利益率は FY18 の9.0%から FY21 の8.8%へ安定して高水準を保ち、首都圏電気工事の利益率改善が売上後退を補った。佐藤社長は2020年2月の日本経済新聞インタビュー(新社長就任時)と西日本新聞のインタビュー(「『若者に人気の場所に』本社を天神に移す狙い」)で、本社移転と若年層人材確保を経営課題として挙げた。九州電力依存比率の数字は公表されていないが、首都圏営業比率の上昇によって相対的に低下した期間だった。

2021年6月、セントラル総合開発株式会社と資本業務提携契約を締結し、不動産・開発分野との接点を確保した[45]。2021年9月には東京都の中央理化工業株式会社の株式を取得して連結子会社化し、首都圏建材工事の取り込みを進めた[46]。2022年4月、東京証券取引所の市場区分見直しにより、東京証券取引所市場第一部からプライム市場へ移行した[47]。2022年6月には監査役会設置会社から監査等委員会設置会社へ移行し、ガバナンス体制を変更した[48]。佐藤社長は2023年2月のプレスリリースで、コロナ禍の状況に明るい兆しが見え、事業環境が変化するなかで世代交代のタイミングは今が最良と判断し、就任2年9ヶ月という短期での後任指名を発表した[49]

創業80周年と社名変更が示した受注モデルの転換

2023年4月、石橋和幸氏が代表取締役社長執行役員に就任した[50]。石橋社長はクラフティア(旧 九電工)入社の生え抜きで、人事労務出身・営業統括担当を経た管理系統からの昇格だった[51]。日本経済新聞は石橋副社長の社長就任を「全速力でバトンを受けたい」との所信とともに伝え[52]、ふくおか経済の所信表明では、業容と業績の拡大を続けつつ建設業界が直面する2024年問題に取り組み、社員一人一人が希望を持てる魅力ある会社を目指す方針が示された[53]。建設業の働き方改革(時間外労働の上限規制適用)への対応を最重要課題に設定した。

石橋社長期の業績は、首都圏の電気設備工事需要の継続拡大と、データセンター・半導体工場等の単件数十億円規模の案件受注の積み上げで伸長した。連結売上高は FY22(2023年3月期)の3,957億円から FY24(2025年3月期)の4,739億円へ2期で20%増加し、経常利益は FY22 の354億円から FY24 の444億円へ25%伸びた。純利益は FY22 の263億円から FY24 の288億円へ拡大した。連結従業員数も FY22 の10,504名から FY24 の10,828名へ増加し、首都圏案件の施工人員確保が進んだ。営業利益率も FY22 の8.1%から FY24 の8.7%へ改善した。

2024年12月、創立80周年を迎えた[54]。電気新聞のトップインタビュー(2025年1月)では「2024年12月に創立80周年を迎え、2025年は中期経営計画発表や本社移転、社名変更など大きなイベントが予定されている」と、80周年を契機とした経営施策のパッケージ発表が告知された[55]。2025年中に中期経営計画発表、本社移転、そして社名を「九電工」から「クラフティア」へ変更する3点セットを実施し[56]、九州電力工事会社という出自を示す社名から離れる象徴的な動きとなった。社名変更は単なるブランド刷新ではなく、九州電力からの工事受注に依存する発注者従属型のビジネスモデルからの自己定義変更を伴った。石橋社長は2025年8月の日本経済新聞インタビューで、データセンターや蓄電池事業について開発案件への少額出資により工事を安定受注できる体制を構築する方針を示し、翌9月にもデータセンターなどを照準とする少額出資型の受注モデルが報じられた[57]。発注者の開発案件に少額出資することで工事受注の確実性を高める新たなビジネスモデルで、九州電力の設備投資計画に連動して工事を受注する旧来の依存構造とは異なる、自社で需要を作りに行く能動的な受注モデルへの転換が示された。1944年の戦時統制下に九州配電工事専門会社として生まれ、1989年に「九電工」へブランドを刷新し、2025年に「クラフティア」として九州電力色を社名から外すまで、80年かけて発注者従属型から需要創出型への自己定義の更新が進んだ[58]

出典

日刊工業新聞 2013年08月21日
日本経済新聞 日本経済新聞社 2023年02月20日
九電工公式IR 2023年02月24日
ふくおか経済 2023年03月07日
日本経済新聞 日本経済新聞社 2024年07月25日
電気新聞 2025年01月
日本経済新聞 日本経済新聞社 2025年08月29日
日本経済新聞 日本経済新聞社 2025年09月03日

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