1974年6月、創業者の多田勝美は名古屋市千種区で大東産業を資本金100万円で設立した。地主への訪問営業で賃貸アパート建設を請け負う小さな工務店から出発し、1978年に大東建設、1988年に大東建託へと商号を変えながら、賃貸住宅を建てた後の入居者募集・管理・家賃徴収まで代行する一括借上げを業界に先駆けて体系化した。請負の一回限りの収入を賃貸管理の継続収入に変えるこの仕組みが、地主の相続税対策需要と結びついて急成長を生む。1989年に名古屋証券取引所二部へ上場し、1992年には東証一部へ駆け上がった。FY82に22億円だった単体売上は、FY91に1,512億円へ約70倍に膨らんだ。
多田勝美からの承継は生え抜き社長のリレーで進んだ。2003年に麻田守孝へ最初の社長交代があったが多田は会長として実権を握り、2006年に社長へ再登板したのち、2007年から三鍋伊佐雄、2012年から熊切直美へと営業出身の内部昇格者が経営を引き継いだ。三鍋期はリーマンショックを挟んだが、相続税対策に支えられた一括借上げは需要減退をほぼ受けなかった。熊切期には2015年の相続税基礎控除40%引き下げが賃貸建設需要を押し上げ、FY15の連結売上高は1兆4116億円に達する。2011年にはハウスコムが上場して親子上場が始まり、2017年には賃貸建設・管理・仲介の主要3社体制を整え、信託・保険・電力・介護まで取り込んだ賃貸経営受託システムを完成させた。
2018年に昇格した小林克満は社長と建築事業本部長を兼ね、機能本部長を取締役執行役員に据える執行集約型のガバナンスへ移した。投資用マンションのインヴァランス取得で領域を広げる一方、賃貸建設需要の頭打ちで連結売上高は横ばいに転じた。2022年に就いた竹内啓は翌2023年にCEO職を新設し、監査等委員会設置会社への移行と女性社外取締役の登用を進めながらM&Aを加速した。アセット運用のライジング・フォースや米国不動産運用のSTASIA、再エネ・介護へ相次いで資本を投じ、2025年にハウスコムを完全子会社化して親子上場を解消した。FY24の売上高は1兆8423億円、純利益は938億円に達し、名古屋発の工務店は半世紀で売上1.8兆円の複合不動産事業体へ変わった。
決断の理由 — クリティカルな歴史の転換点を読み解く
- Q なぜ1974年に建設業の家系でない営業出身者が訪問営業で市場を開いたのか
- A 建設業の家系ではない多田勝美氏が中小工務店に勝つには、地主への接触量で量的優位を作るしかなかった。1974年6月、繊維工場勤務から営業に転じた多田勝美氏が名古屋市千種区で大東産業を資本金100万円で設立し、田畑を抱える地主に賃貸アパート建設を持ちかける訪問営業を主力の集客手段にした。相続税対策と土地活用の需要はあっても自力で事業化できない地主に、建設を請け負って成約させる。分散して受注されていた市場を、地主への直販の物量で開拓した。
- Q なぜ1988年に「建設」から「建託」へ改めて一括借上げに移したのか
- A 決定的だったのは、建てて終わる請負業から、建てた後の賃貸経営まで引き受ける受託業へ移ることだった。1988年4月に「建設+受託」を意味する「建託」へ改称し、建物を一括借上げして入居者募集・管理・家賃徴収まで代行した。請負の一回限りの収入が賃貸管理の継続収入に変わり、企業側に長期の収益安定性が生まれ、地主側にも経営の手間を肩代わりする付加価値を提供した。さらに融資・仲介・管理・ガスを順に内製化し、賃貸経営を地主に代わって回す仕組みを自社グループ内で完結させた。
- Q なぜ2022年以降、買収で一括借上げ以外の市場へ広げているのか
- A 一括借上げは需要が縮小すると空室期間も地主への家賃支払い義務が残り、企業側の損失要因に転化する。国内の賃貸住宅需要は2017年以降ピークアウトが意識され、この単一事業への依存を薄める必要があった。2022年の竹内啓氏の社長就任を機に、投資用不動産販売のインヴァランス、アセット運用のライジング・フォース、米国不動産運用のSTASIA CAPITAL MANAGEMENTを相次いで取得し、再エネと介護にも進出した。2023年にはCEO職を新設して竹内啓氏が資本配分を握り、別の収益柱を重層的に積み上げる経営に移した。
- 歴史詳細 3章・10,008字
メインコンテンツ。一次資料をベースに歴史を紐解く
- 沿革年表 60件
主要な出来事を重要度別に時系列で整理
- 長期業績 1982〜2025年(44カ年)
有価証券報告書などの公開データに基づく長期データ
- 直近の業績
業績推移と経営体制
- セグメント情報 2005〜2025年(21カ年)
各事業の売上・営業利益・利益率の推移
- 歴代社長 6名
代表取締役社長・CEO の在任期間・経歴・在任中の施策
- 取締役一覧 2018〜2025年(8カ年)
取締役の構成バランスと社外独立性
- 大株主・株主構成 1990〜2024年(35カ年)
上位10名の入れ替わりと所有者区分7区分の推移
- 組織と給料 2011〜2025年(15カ年)
連結/単体の年次変化と業界他社の平均給与比較