第一勧銀・富士・興銀の3行統合
2000年9月29日、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行は株式移転により、みずほホールディングスという持株会社を設けた。同年5月に示した計画は、3行と証券・信託の子会社2社から成る中核5社を、2002年春をめどに4社へ組み替える日程を先に置いていた。社長兼CEOには第一勧業銀行頭取の杉田力之氏、共同会長には富士銀行頭取の山本惠朗氏と日本興業銀行頭取の西村正雄氏が就任し、3人のCEOが机を並べた。副社長の酒井邦弥氏は、発足した日の実感を『今は持ち株会社ができただけで、本当の統合が始まるのはこれから。これは、壮大な実験ですよ』と語った。一度の合併で人事と店舗の調整を同時に抱えるより、傘を先に立てて段階的に組み替える段取りを選んだと考えられる。
持株会社の発足から2日後の2000年10月1日、3行はそれぞれの証券子会社を1社にまとめ、みずほ証券を発足させた。同月20日には3行とみずほ信託銀行が、朝日・第一・富国・安田の生命保険4社と、資産管理を専門とする信託銀行の共同設立で基本合意した。新会社の資産管理サービス信託銀行は資本金500億円で、みずほ信託銀行が54%、第一生命保険が23%を出資し、2001年1月の開業をめざした。時価会計の導入と2002年に控えた証券決済制度の改革で、受託側には高度な処理能力が求められていた。各社の資産管理業務を2002年4月までに新会社へ集め、規模の利益で競争力を得ることが設立の狙いだった。銀行本体より人員と顧客の少ない子会社から統合に着手し、効果を早く示す順番を取ったのだろう。
2001年10月11日、みずほホールディングスと3行は、2002年4月1日に3行を分割と合併によって顧客別の2行へ組み替えると発表した。みずほ銀行は個人と国内の一般事業法人・地方公共団体を、みずほコーポレート銀行は大企業・金融法人・海外企業を担当する。持株会社の下で顧客層と機能ごとに法人を分けて経営する枠組みへの移行が、再編の目的に掲げられた。みずほ証券とみずほ信託銀行も、3行の子会社から持株会社の直接子会社へ移す。発表に先立つ2001年9月には、2001年度の連結当期利益の予想を2,700億円から400億円へ下げていた。不良債権処理を前倒ししたうえで、国内店舗を2005年3月末に492か店とする計画も1年早めた。
2002年1月の株主向けメッセージは、まだ西村正雄氏・杉田力之氏・山本惠朗氏の3人のCEOの連名で出た。3人は経営基盤強化パッケージを掲げ、引当の強化と資本の増強で2行の発足に備えると述べた。発足時のみずほ証券では幹部の席が3行の出身者で3等分され、社内から三つ編みの人事と評されていた。2002年4月の再編では経営陣が入れ替わり、前田晃伸氏がみずほホールディングス社長兼CEOに就任した。持株会社と2行のCEOの責任範囲を分け、アドバイザリーボードの設置と役員数の削減も打ち出した。同年11月の変革・加速プログラムは、統治の強化策として1人CEO体制を掲げた。3行の均衡を保つ人事では決定が遅れるとの反省が、体制の切り替えを促したと推察される。
2002年4月1日に2行が営業を始めると、国内ではATMの障害と口座振替の事務処理遅延が相次いだ。前田晃伸社長は株主向けのあいさつで改めて謝罪し、原因の究明と再発防止策の策定を約束した。年報2002は原因を、各システムのテストとリハーサルの不足、統合プロジェクトの管理の不備の2点に求めた。経営陣のオペレーショナルリスクへの認識と統制が弱かったとも認め、7月から6か月間、持株会社と2行の役員報酬を最大50%減じた。再発防止では、グループ銀行のシステム開発の重要事項を持株会社の承認事項に加え、外部監査も入れるとした。みずほ銀行の勘定系を1つにする作業は、分割・合併の発表時に2004年4月をめどとしていた。実際に統合を終えたのは2004年12月だった。
2002年11月25日、グループは変革・加速プログラムを公表し、経費削減の計画を前へ詰めた。10月30日に政府が示した金融再生プログラムを踏まえ、収益基盤の強化を急ぐと位置づけた。みずほ銀行は『コスト、スピード、サービスにおいて競争優位な地位を確立すべく、コスト削減の徹底的な前倒しを実施する』とし、業務粗利益経費率40%台を目標に据えた。1年半で120か店を統合して2004年3月末に440か店とし、4,000名の人員削減も1年繰り上げる。みずほコーポレート銀行も企画管理部門などの1,100名を減らす。2002年度は下期の不良債権処理で損失を計上する見通しとなり、普通株式を無配とした。費用の構造を軽くすることが、障害で失った信頼を取り戻す前提だったと思われる。
2003年1月8日、前田晃伸氏を社長とする新しい金融持株会社みずほフィナンシャルグループが設立された。前年12月の事業再構築で決めた組織で、みずほホールディングスは2行と証券会社を統括する中間の持株会社に位置づけ直された。2003年3月期に2行とみずほ信託銀行は与信関係費用2兆952億円を計上し、保有株の簿価を約3兆円圧縮した。繰延税金資産にも9,667億円の評価性引当を積み、連結当期純損失は2兆3,771億円となった。目減りした資本を補うため、2003年3月に国内の取引先と機関投資家へ優先株を割り当て、1兆819億3,000万円を調達した。連結の自己資本比率は2003年3月末に9.53%を保った。
2003年9月、みずほフィナンシャルグループは公的資金を受けた銀行として新しい経営健全化計画を公表した。2003年3月期の収益が計画を大きく下回ったため、金融庁から早期健全化法と銀行法に基づく業務改善命令を受けていた。計画は赤字の理由を、金融再生プログラムの趣旨を踏まえ不良債権と保有株の損失を一度に処理したことに求めた。2003年3月期には年間2兆6,750億円の不良債権をオフバランス化したとも示した。同年5月には企業再生を専門とする子会社を銀行ごと・債権の属性ごとに4社設け、国内外約950社の債権約4.5兆円を切り離した。4社はいずれも貸金業を営む会社で、社名はみずほアセット、みずほグローバル、みずほコーポレート、みずほプロジェクトとした。
みずほフィナンシャルグループは2004年9月末、金融再生プログラムが課した不良債権比率の半減を達成した。比率は2005年3月末に2.1%まで下がり、前田晃伸社長は企業再生の進展を主な要因に挙げた。連結の自己資本比率は同じ時点で11.91%だった。公的資金は当初の2兆9,490億円のうち、劣後債の全額と優先株の一部で累計1兆4,826億円を返し、2005年3月末の残高を1兆4,664億円まで減らした。2005年7月20日には、再生専門の子会社4社を、それぞれの親にあたる銀行2行と信託銀行へ吸収させる合併を公表した。前田晃伸社長は残りの公的資金について『we aim to repay the remaining amount of public funds during fiscal 2006』と返済の時期を示した。
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| 2000〜2005年3行統合によるみずほの発足と2002年のシステム統合障害、FG発足と不良債権の処理 | 3行が一つの傘の下に入り、2000年に成立した金融グループ「みずほ」 1999年8月、第一勧業銀行・富士銀行・日本興業銀行の3行が全面統合を発表し、2000年9月に株式移転で持株会社みずほホールディングスを設立。国内初のメガバンクが誕生した案件。 詳細を読む | ★★★ | ||
| みずほ大規模システム統合障害 | ★★ | |||
| 前田晃伸 | みずほフィナンシャルグループ発足 | ★★ | ||
| 前田晃伸 | 前田晃伸が初代社長に就任 | ★ | ||
| 前田晃伸 | 再生専門子会社4社を親銀行と合併、みずほHDから銀行2行株式を取得しHDを商号変更 | ★ | ||
| 2006〜2012年公的資金の完済からサブプライム損失の赤字、震災後の2度目のシステム障害へ | 前田晃伸 | 第一勧業アセットマネジメントが富士投信投資顧問を吸収合併 | ★ | |
| 前田晃伸 | 純損失5,888億円を計上 | ★★ | ||
| 塚本隆史 | 塚本隆史氏が社長に就任 | ★ | ||
| 塚本隆史 | 新光証券がみずほ証券を吸収合併 | ★ | ||
| 塚本隆史 | 新光証券をみずほ証券に商号変更 | ★ | ||
| 塚本隆史 | オリエントコーポレーションを持分法適用関連会社化 | ★ | ||
| 塚本隆史 | みずほ第2次システム障害(東日本大震災義援金処理を契機) | ★★ | ||
| 佐藤康博 | 佐藤康博氏が社長に就任 | ★ | ||
| 2013〜2018年2行合併によるOne MIZUHOと指名委員会等設置会社への移行、1.9万人削減計画 | 佐藤康博 | コーポレート銀行との合併による2行分立体制の解消と一体運営への移行 2011年、東日本大震災の直後にみずほ銀行で大規模なシステム障害が起きた。これを受けてみずほフィナンシャルグループは、個人向けのみずほ銀行と大企業向けのみずほコーポレート銀行を合併させる判断を下し、2013年7月1日に1つの銀行へまとめた。銀行を2つに分けてきた発足以来の体制を畳み、旧3行分立の実質的な解消と勘定系システムの刷新へ進んだ経営判断。 詳細を読む | ★★★ | |
| 佐藤康博 | 監督と経営を分け、社外取締役を中心とする3委員会へ統治を組み替えた機関設計の転換 2014年6月24日の定時株主総会で定款の変更が決議され、みずほフィナンシャルグループは同日付で監査役会設置会社から委員会設置会社へ移行した。取締役会は13名のうち6名を社外取締役とし、議長には社外取締役の大田弘子氏が就任した。指名・報酬の両委員会は委員長を含む全員が社外取締役で、監査委員会は5名のうち3名が社外取締役となる。 移行に伴い監査役5名(うち社外3名)が同日付で退任し、法令上の専決事項以外の業務執行の決定は、グループCEOである執行役社長へ原則として委任された。 詳細を読む | |||
| 佐藤康博 | 指名委員会等設置会社へ移行 | ★ | ||
| 佐藤康博 | RBSから北米貸出債権・人員を受入 | ★ | ||
| 佐藤康博 | みずほ銀行が米国にMizuho Americas LLCを設立 | ★ | ||
| 佐藤康博 | 約8万人の人員と約500拠点から、1.9万人と100拠点を削る10年計画 2017年11月、10年後を見据えたグループの持続的成長と将来の競争優位性確保に向けて、抜本的構造改革の原案を公表した。2017年3月末に約8万人いた人員を2026年度までに約1.9万人、約500あった国内拠点を2024年度までに約100拠点減らす。2017年度に1.45兆円だったグループ合算の経費は、次期システム関連償却費を除いた削減額で2021年度までに1,000億円程度、2024年度までに1,000億円台半ばを目指す。 佐藤康博社長は『抜本的構造改革は、人員・店舗の削減等を通じた経費の削減自体を目的とするのではなく、基礎的収益力を強化するための取り組みでなければならない』と、削減それ自体を目的に置いていない。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 坂井辰史 | 坂井辰史氏が社長に就任 | ★ | ||
| 2019〜2026年MINORIの稼働と2021年の相次ぐ障害、経営陣の刷新から楽天証券への出資・Greenhill買収へ | 坂井辰史 | 純利益96,566百万円に急減(前年▲83%) | ★ | |
| 坂井辰史 | 3行の勘定系を一元化し、業務ごとに組み直した次期システムへの全面刷新 2011年3月のシステム障害の反省を踏まえ、同年6月に策定した業務改善計画に、みずほ銀行・みずほコーポレート銀行・みずほ信託銀行3行の勘定系システムを一元化し、新しい基盤のもとで構築することを据えた。2012年度末を目途に業務共通基盤を完成させ、以後2015年度末を目途に預金・為替・融資・外為・信託といったコンポーネントシステムを順次リリースする計画である。 旧3行の勘定系を残したまま相互に接続して延命する路線を捨て、機能単位に組み替えた基盤へ全面的に乗せ替える——統合から11年を経ての決断であった。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 坂井辰史 | 度重なるシステム障害と行政処分——経営責任とガバナンス改革への転換 2021年2月以降、次世代基幹システム「MINORI」を動かすみずほ銀行で複数のシステム障害が発生し、営業部店やATMでの取引、インターネットバンキング取引、内為・外為取引等が一部不能となった。金融庁は9月22日と11月26日の二度にわたり銀行法にもとづく業務改善命令を発し、11月26日には財務省が外為法にもとづく是正措置命令をみずほ銀行に出している。 みずほは障害を技術の不具合ではなく経営と企業風土の問題として引き取り、執行役の辞任・解任と、再発防止・ガバナンス改革に着手した。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 木原正裕 | 木原正裕氏が社長に就任 | ★ | ||
| 木原正裕 | みずほリースと資本業務提携 | ★ | ||
| 木原正裕 | 資本業務提携——対面のみずほ、ネットの楽天 2022年、みずほフィナンシャルグループは傘下のみずほ証券を通じて楽天証券へ約800億円を出資し、議決権の19.99%を握って持分法適用会社とした経営判断。対面営業に強いみずほと、口座数で国内最大手級のネット証券・楽天証券が組み、個人の資産運用で連携した。翌2023年には29.01%を買い増し、出資比率を49.00%へ高めた。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 木原正裕 | 買収による、M&A助言機能を自社内へ取り込む体制づくり 2023年5月22日、みずほフィナンシャルグループは子会社の米州みずほLLCを通じ、米独立系M&A助言会社グリーンヒル(Greenhill & Co., Inc.)の全株式を1株当たり15米ドルの全額現金で取得することに合意した。引き受ける負債を含む企業価値は約5億5,000万米ドルである。 関連当局の認可等を経て同年12月1日に買収を完了し、発行済株式の100%を取得して完全子会社とした。 詳細を読む | ★★★ | ||
| 木原正裕 | 楽天グループが保有する楽天カードの普通株式14.99%を取得 | ★ | ||
| 木原正裕 | 経常収益9兆303億円・純利益8,854億円で過去最高 | ★ |
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事実根拠:出所(みずほフィナンシャルグループ)