SOMPOホールディングス の歴史

更新:

創業

2009年

創業者

※損害保険ジャパン+日本興亜損害保険

創業地

東京都新宿区

直近売上高(2026/3)

56,015億円

長期業績と転換点(2010/3〜2026/3)
売上高(億円純利益率(%)
Q なぜ2010年に2位と4位の損保が組んだのに、損保事業会社の一本化は4年も遅れたのか
A 規模で勝るほど仕入れ条件にあたる再保険手配やシステムの単位コストが下がり、伸び悩む国内損保市場でも合併で規模とコスト競争力を確保できると見たためである。だが業界2位の損保ジャパンと4位の日本興亜という不揃いな組み合わせで、対等性への配慮が商品・システム・人事の意思決定を引き延ばした。2010年4月に持株会社NKSJを設立したものの、損保事業会社が「損害保険ジャパン日本興亜」として一本化されたのは2014年9月で、設立から4年4か月を要した。その間は旧2社別々の契約システムと代理店網が残り、発足初年度に純損失129億円、2012年3月期はタイ洪水と東日本大震災が重なって純損失922億円まで膨らんだ
Q なぜ櫻田謙悟氏は本丸の損保ジャパン本体に手をつけず、2010年代に介護と海外保険へ攻めたのか
A 国内自動車保険は市場が縮小し、対等合併の体面が重い損保ジャパン本体の代理店網と営業文化に踏み込むより、外で新しい収益源を取りに行くほうが速く利益を組み替えられたためである。2012年に第2代社長へ就いた櫻田謙悟氏は、2015年12月にワタミの介護、2016年3月に株式会社メッセージを相次いで取得し、損保グループとして異例の介護を独立セグメントに育てた。2017年3月にはバミューダの再保険会社Endurance Specialty Holdingsを約6,300億円で買収し、海外保険を国内損保に次ぐ第2の柱に据えた。本体には手をつけず、M&Aと海外でグループ全体の収益構造を組み替える選択だった
Q なぜ2024年に奥村幹夫氏は政策保有株の売却を加速し、過去最大の株主還元へ踏み込んだのか
A ビッグモーターの保険金不正請求で、取引先との関係維持を優先して相手の株を持ち続ける政策保有株の慣行が営業現場の判断を歪めた背景として問われ、金融庁が縮減と本業支援の見直しを求めたためである。2024年1月25日に損害保険ジャパンとSOMPOホールディングスへ業務改善命令が発出され、2022年に第3代社長へ就いた奥村幹夫氏は前体制が温存した本体へ資本の側から手を入れた。政策保有株は2030年度のゼロを目指して売却を加速し、得た資金を自己株式取得へ振り向けた。自己株取得2,600億円を含む2024年度の総還元額3,859億円は過去最大規模に達し、同年4月には株式を1対3に分割して個人株主を広げた

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2010年〜 NKSJという過渡期ブランドから再出発した損保ジャパン連合

SOMPOホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2010年 NKSJHD設立
  2. 2010年 佐藤正敏が初代社長に就任
  3. 2011年 設立初年度に当期純損失▲129億円
  4. 2012年 2期連続で当期純損失▲922億円
  5. 2012年 櫻田謙悟が第2代社長に就任

業界2位連合が初年度から赤字だった理由

2010年4月、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が共同株式移転により持株会社NKSJホールディングスを設立した。三井住友海上グループとあいおいニッセイ同和損保の合併でMS&ADが同じ2010年4月に発足し、損保業界は東京海上ホールディングスを含む3メガ体制に再編された。自動車保険を中心とする国内損保は市場規模が伸び悩み、各社は合併で規模とコスト競争力を確保する必要に迫られていた業界構造の転換点だった。NKSJは設立と同日に東京証券取引所と大阪証券取引所の一部に上場し、初代社長には旧損保ジャパン出身の佐藤正敏氏が就いた。発足時の連結保険料収入で見ると、業界2位の損保ジャパンと4位の日本興亜の組み合わせで、首位の東京海上を追う2位グループの一角を占める規模感だった。 [1][2][3]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [1]2010年4月 損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が共同株式移転でNKSJホールディングスを設立
    • [2]2010年4月 NKSJは設立と同日に東証・大証市場第一部に上場
    • [3]初代社長は旧損保ジャパン出身の佐藤正敏氏

しかし統合初年度の経常収益2兆6,216億円に対して当期純損失は129億円、翌2012年3月期はタイ洪水と東日本大震災に伴う自動車保険等の支払いが重なり、純損失922億円まで膨らんだ。両社のシステム・商品・代理店網は別々のまま運用されており、収益基盤が外的ショックに耐えきれなかった。同じ年に発足したMS&ADも初年度に赤字を計上したが、SOMPO側は2期連続の純損失となり、市場には統合の遅さに対する懸念が広がった。当時のNKSJは持株会社のスタッフ部門と両事業会社の本部機能が並存し、グループの意思決定スピードと現場の業務オペレーションの双方で重複コストが残ったままだった。 [4][5][6][7]

  • NKSJホールディングス 有価証券報告書(連結)
    • [4]統合初年度(2011年3月期)の経常収益2兆6,216億円
    • [5]2011年3月期 当期純損失129億円
    • [6]2012年3月期 純損失922億円
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [7]2012年3月期の純損失要因にタイ洪水・自然災害(東日本大震災等)
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [1]2010年4月 損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が共同株式移転でNKSJホールディングスを設立
    • [2]2010年4月 NKSJは設立と同日に東証・大証市場第一部に上場
    • [3]初代社長は旧損保ジャパン出身の佐藤正敏氏
    • [7]2012年3月期の純損失要因にタイ洪水・自然災害(東日本大震災等)
  • NKSJホールディングス 有価証券報告書(連結)
    • [4]統合初年度(2011年3月期)の経常収益2兆6,216億円
    • [5]2011年3月期 当期純損失129億円
    • [6]2012年3月期 純損失922億円

事業会社の合併に4年を要した「同等合併」の代償

NKSJは設立当初、損保ジャパンと日本興亜損保という二つの事業会社を別々に残したまま、持株会社のもとで両社を束ねる構図を選んだ。生命保険子会社の合併は2011年10月にNKSJひまわり生命として一体化されたが、本丸である損保事業会社が「損害保険ジャパン日本興亜」として一本化されたのは2014年9月で、持株会社の設立から4年4か月後の遅さだった。自動車保険の契約システムや損害調査の拠点網、商品設計の体系までが旧2社別々のまま維持されたため、合併直後の4年間は規模の効果を収益に落とし込めない構造が続き、代理店の現場も旧社ごとの運用を引きずった。生保会社の統合が先行して損保本体が遅れた順序には、グループ収益の柱である損保事業に対して「同等合併」の体面が重くのしかかった事実がそのまま表れている。 [8][9]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [8]2011年10月 生命保険子会社が合併しNKSJひまわり生命として一体化
    • [9]2014年9月 損保事業会社が「損害保険ジャパン日本興亜」として一本化(持株会社設立から4年4か月後)

同じ時期に発足したMS&ADが2010年の時点で三井住友海上とあいおい損保の枠組みを比較的早く整えたのと比べ、SOMPO側の事業会社統合は明らかに遅かった。「同等合併」を掲げた対等性への配慮が、商品統合・システム統合・人事制度統合に関する意思決定を引き延ばした事情がある。この4年間の停滞期に櫻田謙悟氏が2012年に第2代社長へ就任し、長期政権のもとで統合の主導権を握り直した。櫻田氏は経済同友会代表幹事も兼ねるなど財界活動に厚く、SOMPOの顔として10年間の経営を担う出発点となった。商品統合は2014年9月の事業会社合併と同じタイミングで進められ、自動車保険・火災保険・新種保険のラインアップが旧2社別々の体系から1本に統合された。設立から4年越しで、ようやく代理店現場の業務簡素化にも手が届いた。 [10][11]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [10]2012年 櫻田謙悟氏が第2代社長へ就任
    • [11]2014年9月 事業会社合併と同じタイミングで商品統合(自動車・火災・新種保険の体系一本化)
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [8]2011年10月 生命保険子会社が合併しNKSJひまわり生命として一体化
    • [9]2014年9月 損保事業会社が「損害保険ジャパン日本興亜」として一本化(持株会社設立から4年4か月後)
    • [10]2012年 櫻田謙悟氏が第2代社長へ就任
    • [11]2014年9月 事業会社合併と同じタイミングで商品統合(自動車・火災・新種保険の体系一本化)

商号3回目の正直 ── SOMPOへの収斂

2014年9月、持株会社の商号もNKSJから「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」へと変更された。事業会社と持株会社がともに「損保ジャパン日本興亜」という名前で揃った瞬間だが、この社名は和文で12文字、英文でも長く読みにくい表記となり、海外拠点を増やす過程での国際展開には不向きだった。わずか2年後の2016年10月にはふたたび商号を書き換え、持株会社は現在の「SOMPOホールディングス」へと改められた。持株会社の設立から数えると、わずか6年余りのあいだに主要ブランド名が2回も入れ替わった計算になる。合併相手との対等性を演出するための社名と、海外事業を広げるうえで必要な短く覚えやすい社名とは、同時に満たしにくかった。 [12][13]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [12]2014年9月 持株会社の商号をNKSJから「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」へ変更
    • [13]2016年10月 持株会社を「SOMPOホールディングス」へ商号変更

設立から6年間で商号を2回変えた経緯は、対等合併で体面を守る要請と、海外展開を進めるうえでの現実的要請との折り合いに苦しんだ過程そのものだった。「NKSJ」「損保ジャパン日本興亜」「SOMPO」と3つのブランドが入れ替わったため、国内顧客と海外パートナーの双方に対する企業認知の構築は遅れた。SOMPOの呼称は最終的にグループ全体の英文表記とも整合し、2016年以降はブラジルのYasuda Maritima Segurosの「Sompo Seguros」化、2017年の海外持株会社「Sompo International Holdings」設立と同じ命名体系の下に揃えられた。トルコのSompo Sigorta、シンガポールのTenet Insurance(後のSompo Singapore)など、買収済みの新興国子会社にも順次「Sompo」の冠が付けられ、2016年の商号変更は呼称変更にとどまらず、海外子会社まで含めたブランド体系の統一作業の出発点となった。 [14][15][16][17]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [14]「NKSJ」「損保ジャパン日本興亜」「SOMPO」の3ブランドが入れ替わった
    • [15]2016年以降 ブラジルYasuda Maritima Segurosの「Sompo Seguros」化
    • [16]2017年 海外持株会社「Sompo International Holdings」設立
    • [17]トルコのSompo Sigorta(旧Fiba Sigorta)に「Sompo」の冠
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [12]2014年9月 持株会社の商号をNKSJから「損保ジャパン日本興亜ホールディングス」へ変更
    • [13]2016年10月 持株会社を「SOMPOホールディングス」へ商号変更
    • [14]「NKSJ」「損保ジャパン日本興亜」「SOMPO」の3ブランドが入れ替わった
    • [15]2016年以降 ブラジルYasuda Maritima Segurosの「Sompo Seguros」化
    • [16]2017年 海外持株会社「Sompo International Holdings」設立
    • [17]トルコのSompo Sigorta(旧Fiba Sigorta)に「Sompo」の冠

2014年〜 海外保険事業と介護事業への二正面作戦の展開期

SOMPOホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2014年 損害保険ジャパンと日本興亜損保が合併
  2. 2014年 損保ジャパン日本興亜HDに商号変更
  3. 2015年 ワタミの介護を取得しSOMPOケアネクストに
  4. 2016年 SOMPOHDに商号変更
  5. 2017年 米エンデュランス・スペシャルティを約6,300億円で買収し、最大の米国市場に橋頭堡を築く 海外展開で出遅れたSOMPOは、どこに収益源の分散を求めたか——「英保険王」を迎える乾坤一擲の買収

ワタミの介護とメッセージ ── 損保以外の第二の柱を取りに行った半年

2015年12月、SOMPOはワタミの介護の全株式を取得してSOMPOケアネクストに改称し、わずか3か月後の2016年3月には介護業界大手の株式会社メッセージを買収した。両社をあわせると全国の有料老人ホーム運営が短期間でグループ傘下に収まり、SOMPOは介護事業者として一定の規模を獲得した。この二段階の買収を受けて、2016年4月には社内呼称として「介護・ヘルスケア事業」というセグメントが新設されている。当時の損保業界は、国内自動車保険市場の縮小と少子高齢化という構造的な逆風に直面し、損保以外の収益源を作る必要に迫られていた。櫻田社長体制は単発の周辺事業ではなく、セグメント単位で開示される規模の第二の柱を取りに行った。 [18][19][20]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [18]2015年12月 ワタミの介護の全株式を取得しSOMPOケアネクストに改称
    • [19]2016年3月 株式会社メッセージを買収
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [20]2016年4月 社内呼称として「介護・ヘルスケア事業」セグメントを新設

2016年度の介護・ヘルスケア事業は売上1,191億円・営業損失68億円と立ち上げ期は赤字だった。受け入れた事業会社の風土の違いや人件費上昇が利益を圧迫したためで、SOMPOは2018年7月にケア・ケアネクスト・ジャパンケアサービス・プランニングケアの介護4社をSOMPOケア株式会社に統合し、運営拠点と本部機能の集約に踏み切った。介護事業の黒字定着は2019年度以降にずれ込み、損保以外の柱を立てる工程は買収から4年を要した。それでも介護を「セグメント」として独立開示する損保グループはSOMPOが初めてで、競合のMS&ADや東京海上HDが選ばなかった事業領域に踏み込む判断は、櫻田社長体制の特徴を示している。 [21][22]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [21]2016年度(2017年3月期)介護・ヘルスケア事業 売上1,191億円・営業損失68億円
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [22]2018年7月 介護4社(ケア・ケアネクスト・ジャパンケアサービス・プランニングケア)をSOMPOケア株式会社に統合
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [18]2015年12月 ワタミの介護の全株式を取得しSOMPOケアネクストに改称
    • [19]2016年3月 株式会社メッセージを買収
    • [22]2018年7月 介護4社(ケア・ケアネクスト・ジャパンケアサービス・プランニングケア)をSOMPOケア株式会社に統合
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [20]2016年4月 社内呼称として「介護・ヘルスケア事業」セグメントを新設
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [21]2016年度(2017年3月期)介護・ヘルスケア事業 売上1,191億円・営業損失68億円

6,300億円のEndurance買収という海外シフト

2016年10月5日、SOMPOは傘下の損保ジャパン日本興亜を通じて、バミューダに本社を置く再保険・特殊保険会社Endurance Specialty Holdingsを買収すると発表し、2017年3月に買収を完了した。買収額は63億ドル(約6,300億円)で、日本の損害保険会社による海外M&Aとしては東京海上ホールディングスが2015年6月に公表した米HCC買収(約9,413億円)に次ぐ規模だった。SOMPOはすでに2014年に英ロイズ市場でトップ10に入るキャノピアスを約1,000億円で買収していたが、米国を軸に巨額買収を重ねる東京海上や、ロイズ市場2位のアムリンを2015年に買収したMS&ADインシュアランスグループホールディングスに水をあけられており、今回の買収でようやく最大の米国市場に基盤を得た形だった。 [23][24][25][26][27][28]

  • 週刊東洋経済「ニュース最前線03 SOMPOの乾坤一擲 買収で「英保険王」獲得」(2016年10月22日号)
    • [23]2016年10月5日 SOMPOが損保ジャパン日本興亜を通じてEndurance Specialty Holdings買収を発表
    • [26]東京海上が2015年6月に公表した米HCC買収(約9,413億円)に次ぐ規模の海外M&A
    • [27]SOMPOは2014年に英ロイズ市場トップ10のキャノピアスを約1,000億円で買収
    • [28]MS&ADインシュアランスグループHDは2015年にロイズ市場2位のアムリンを買収
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [24]2017年3月 Endurance Specialty Holdings買収を完了
    • [25]Endurance買収額は63億ドル(約6,300億円)

SOMPOはバミューダにSompo International Holdings(SI)を新設し、買収したEnduranceをその傘下に置いて、海外保険事業全体を束ねる最上位持株会社に据える組立を取った。買収完了後、Endurance Specialty Holdings本体は清算され、SIブランドのもとに再保険部門とコマーシャル部門が集約された。この買収でグループ全体に占める海外保険の利益割合は12%から27%へ引き上がり、東京海上(同時期の見通し43%)・MS&AD(同27%)を追う水準まで伸びた。SOMPOにとって単発の海外M&Aにとどまらず、海外保険の経営拠点をバミューダに据え直した点が、それまでの周辺的な海外展開との違いだった。 [29][30]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [29]バミューダにSompo International Holdings(SI)を新設しEnduranceを傘下に置いた/Endurance本体は清算
  • 週刊東洋経済「ニュース最前線03 SOMPOの乾坤一擲 買収で「英保険王」獲得」(2016年10月22日号)
    • [30]Endurance買収でグループの海外保険利益割合は12%から27%へ(東京海上43%見通し・MS&AD27%)

買収効果は数字に現れた。2014年度の海外保険事業売上は2,944億円だが、Enduranceが通年で寄与した2017年度には6,413億円と倍増し、国内損保事業に次ぐ第2の柱に育った。ただし2018年度には海外保険事業が60億円の営業損失に転落するなど、自然災害の発生損が直接ぶつかる脆さも同時に抱え込んだ。買収発表直後のインタビューで櫻田謙悟社長は、世界の損害保険市場が2025年に720兆円へ拡大する見通しでも先進国7割・米国4割の構図は変わらないとして、日本依存を分散する米国市場の橋頭堡が狙いだったと説明し、介護分野の「安心・安全・健康のテーマパーク」戦略を支える収益源として2018年度に400億円程度の利益貢献を見込むと語った。買収の条件として、獲得したジョン・シャーマンCEOを含む主要な役員には5年間の残留契約を課した。 [31][32][33][34][35][36]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [31]2014年度の海外保険事業売上は2,944億円
    • [32]2017年度の海外保険事業売上は6,413億円
    • [33]2018年度に海外保険事業が60億円の営業損失に転落
  • 週刊東洋経済「この人に聞く SOMPOホールディングス グループCEO 櫻田謙悟 6300億円超の買収で最大の米国市場に橋頭堡」(2016年12月10日号)
    • [34]櫻田謙悟社長は世界損保市場が2025年に720兆円に拡大しても先進国7割・米国4割の構図は変わらず、日本依存の分散のため米国市場に橋頭堡を築く狙いだったと説明
    • [35]「安心・安全・健康のテーマパーク」戦略の収益源として位置づけ、2018年度にEnduranceが400億円程度の利益貢献を見込むと説明
    • [36]買収条件としてジョン・シャーマンCEOを含む主要役員に5年間の残留契約
  • 週刊東洋経済「ニュース最前線03 SOMPOの乾坤一擲 買収で「英保険王」獲得」(2016年10月22日号)
    • [23]2016年10月5日 SOMPOが損保ジャパン日本興亜を通じてEndurance Specialty Holdings買収を発表
    • [26]東京海上が2015年6月に公表した米HCC買収(約9,413億円)に次ぐ規模の海外M&A
    • [27]SOMPOは2014年に英ロイズ市場トップ10のキャノピアスを約1,000億円で買収
    • [28]MS&ADインシュアランスグループHDは2015年にロイズ市場2位のアムリンを買収
    • [30]Endurance買収でグループの海外保険利益割合は12%から27%へ(東京海上43%見通し・MS&AD27%)
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [24]2017年3月 Endurance Specialty Holdings買収を完了
    • [25]Endurance買収額は63億ドル(約6,300億円)
    • [29]バミューダにSompo International Holdings(SI)を新設しEnduranceを傘下に置いた/Endurance本体は清算
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [31]2014年度の海外保険事業売上は2,944億円
    • [32]2017年度の海外保険事業売上は6,413億円
    • [33]2018年度に海外保険事業が60億円の営業損失に転落
  • 週刊東洋経済「この人に聞く SOMPOホールディングス グループCEO 櫻田謙悟 6300億円超の買収で最大の米国市場に橋頭堡」(2016年12月10日号)
    • [34]櫻田謙悟社長は世界損保市場が2025年に720兆円に拡大しても先進国7割・米国4割の構図は変わらず、日本依存の分散のため米国市場に橋頭堡を築く狙いだったと説明
    • [35]「安心・安全・健康のテーマパーク」戦略の収益源として位置づけ、2018年度にEnduranceが400億円程度の利益貢献を見込むと説明
    • [36]買収条件としてジョン・シャーマンCEOを含む主要役員に5年間の残留契約

介護と海外の2事業で稼ぐ利益構造の確立

2015年度から2019年度までの5年間、グループ修正連結利益は1,400億円台から2,250億円へと右肩上がりに伸びた。国内損保事業が生み出す安定した利益に、海外保険事業と介護事業からの上積みが噛み合い、3つの事業で利益を支える構図ができあがった時期である。櫻田社長体制10年の中盤以降は、保険会社から総合的な安心・安全・健康サービス企業への自己定義の書き換えも進み、対外的なメッセージも多角化企業として打ち出された。海外保険事業は2019年度に売上5,973億円・利益215億円、国内生命保険は売上3,483億円・利益159億円と、国内損保に並ぶ規模の柱に育ち、グループ利益の中で占める海外の比重は合併当初と比べて変わった。 [37][38]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [37]2019年度(2020年3月期)海外保険事業 売上5,973億円・利益215億円
    • [38]2019年度(2020年3月期)国内生命保険 売上3,483億円・利益159億円

ガバナンス面では2018年に指名委員会等設置会社へ移行し、グループCEO制度を明文化した。櫻田氏は経済同友会代表幹事も兼ね、財界活動でも存在感を示した。ところが旧損保ジャパン本体の代理店網・営業文化には踏み込まず、M&Aと海外で攻めながら本丸の事業会社は温存する経営が続いた。この温存は、損保ジャパン本体の組織体質に踏み込まないままグループ全体の収益構造を組み替えるというSOMPO流の選択を示している。SOMPOのコーポレートメッセージは2010年代後半から「Theme park for the security, health and wellbeing of customers」と書き換えられ、保険事業外の多角化と社会課題解決企業としての色合いが対外的にも強調された。 [39]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [39]2018年 指名委員会等設置会社へ移行しグループCEO制度を明文化
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
    • [37]2019年度(2020年3月期)海外保険事業 売上5,973億円・利益215億円
    • [38]2019年度(2020年3月期)国内生命保険 売上3,483億円・利益159億円
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [39]2018年 指名委員会等設置会社へ移行しグループCEO制度を明文化

2020年〜 海外で稼ぎ、国内でビッグモーター問題を謝る両極化期

SOMPOホールディングスの業績推移:連結

売上高(億円)純利益率(%)
  1. 2022年 奥村幹夫が第3代社長に就任
  2. 2023年 ビッグモーター不正請求問題が表面化
  3. 2023年 当期純利益が264億円に急減
  4. 2024年 ビッグモーター保険金不正を受けた経営陣の刷新とガバナンス再建 櫻田体制13年で崩れた内部統制を、金融庁の処分の下でどう作り直すか
  5. 2024年 金融庁から業務改善命令
  6. 2024年 当期純利益4,160億円で過去最高

ハリケーン・イアンが見せたポートフォリオ改革の効果

2022年9月、米ハリケーン・イアンがフロリダ半島に上陸し、SOMPOは557億円の損害を被った。海外保険事業のSIコマーシャル部門は自然災害予算を期初予想の5億2,200万ドルから6億1,100万ドルへと引き上げたが、それでもグループ損益は削られた。2022年度の親会社株主帰属当期純利益は264億円で、前年度の2,248億円から約88%の急減である。Endurance買収で海外保険の比重を増やした分、海外で発生した自然災害損が連結利益に直接伝わる構造に変わった点も、落ち込み幅を拡大させた要因のひとつだった。保険引受で損失が出ると単年度で利益の大半が消し去られる、損保特有の脆さが表に出た決算である。 [40][41]

  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY22-2Q
    • [40]2022年9月 ハリケーン・イアンでSOMPOは557億円の損害
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [41]2022年度の親会社株主帰属当期純利益は264億円(前年度2,248億円から約88%減)

奥村幹夫社長は2023年のインタビューで、7〜8年前の事業ポートフォリオのままなら損失額は1,000億円を優に超えていたとの認識を示し、2017年のEndurance統合以降に行った再保険ポートフォリオの整理と、種目構成の見直しによる被害縮減の効果を指摘した。ハリケーンが複数到来した2017年と同等規模の発生損でありながら、既経過保険料に占める割合は当時の約3分の1にまで縮んでいたという指摘である。SI傘下にコマーシャル・再保険の両部門を束ねたうえで、ポートフォリオ全体に占める北米プロパティの比重を抑え、再保険手配を厚めに敷き直した成果がここに出た。 [42]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [42]奥村幹夫氏は社長(第3代)

奥村社長は同じインタビューで、リスクを的確に把握・評価したうえで分散させるリスクマネジメントこそが損保会社の事業運営の基本にあるとの考えを示し、SI部門のレートアップと種目分散を保険業の基本動作として扱った。SOMPOは2023年以降、SIコマーシャル部門のプロパティ・カジュアルティ・スペシャルティを軸とした保険料レートアップで利益を立て直す路線に入り、2023年度実績で+5.4%の料率引き上げを達成している。買収後の6年間で積み上げた種目別の引受方針により、単年度の自然災害ショックを翌年度の料率で取り返せる建付けに変わった。 [43]

  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
    • [43]2023年度実績でSIコマーシャル部門の保険料レートアップ+5.4%を達成
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY22-2Q
    • [40]2022年9月 ハリケーン・イアンでSOMPOは557億円の損害
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [41]2022年度の親会社株主帰属当期純利益は264億円(前年度2,248億円から約88%減)
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
    • [42]奥村幹夫氏は社長(第3代)
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
    • [43]2023年度実績でSIコマーシャル部門の保険料レートアップ+5.4%を達成

ビッグモーター不正請求と金融庁業務改善命令

同じ2023年、損保ジャパンは中古車販売大手ビッグモーターの保険金不正請求問題をめぐる組織的な関与で社会的な批判を浴びた。修理単価を水増しした請求を黙認したうえで取引を続けた経緯が次々と明らかになり、SOMPO本社の役職員も処分の対象となった。2024年1月25日、金融庁は損保ジャパンとSOMPOホールディングスに対して保険業法に基づく業務改善命令を発出し、不正を生んだ温床として「政策株式保有慣行」を名指しで問題視した。取引先との関係維持を優先して同社株を持ち続ける慣行そのものが、営業現場の判断を歪めた背景として金融庁に指摘された点は、国内損保固有の統治問題として重く受け止められた。 [44]

SOMPOは対応として、政策株式を2030年度までに修正連結純資産の20%まで圧縮する方針について削減ペースの加速を検討するとともに、内部監査担当役員の新設、内部監査部長の取締役会への参加、3線管理体制の組み直しに踏み切った。2024年10月には社外取締役自身が登壇する株主向けミーティングを開催し、「内部統制の仕組みは法令上問題ない形態だが、実効的には機能していなかった」(決算説明会 FY24-2Q)と自己評価を公にした経営陣の姿も示した。第2期に温存された損保ジャパン本体の営業文化と代理店網の体質が、グループガバナンス改革の射程に入った瞬間であり、M&Aと海外で攻めながら本丸は温存するというSOMPO流の均衡を組み直す作業が始まった。 [45]

  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
    • [45]政策株式を2030年度までに修正連結純資産の20%まで圧縮する方針

海外運用益が国内の穴を埋めた決算

2023年度(2024年3月期)の親会社株主帰属当期純利益は4,160億円で、過去最高を更新する水準まで戻った。海外保険事業の修正利益は前年度から上振れし、同年度の海外保険事業セグメント利益は2,376億円となって、国内損保事業の1,097億円を上回った。SIコマーシャル部門の保険料レートアップは2023年度実績で+5.4%に達し、米国金利の上昇にともなう再投資利回りの改善も重なった結果である。SIの資産デュレーションは約4年弱と短く、上昇した市場金利が次々と簿価利回りに反映される構造で、金利上昇分を短期間でグループ損益に取り込める組立になっていた。自然災害損が再び出た場合に備えて再保険手配を厚くしつつ、保険料レートの引き上げで下支えするというSIの運営方針が、2023年度の好決算を押し上げた。 [46][47][48]

  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [46]2023年度(2024年3月期)の親会社株主帰属当期純利益は4,160億円で過去最高水準
    • [47]2023年度 海外保険事業セグメント利益2,376億円が国内損保事業の1,097億円を上回った
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
    • [48]SIコマーシャル部門の保険料レートアップは2023年度実績で+5.4%

国内損保がガバナンス危機にあるなか、グループ全体としては海外と運用が国内の穴を埋める構図になった。第2期に積み上げた海外シフトが、第3期の信頼危機で利益面の安全弁として働いた。同時に、2022年10月に実施したSIへの2,000億円の追加資本移転をハイ・イールド債等に振り向けた運用方針も、海外運用益の上振れを加速させる一因となった。グループ修正連結利益は2023年度の進捗でも、国内損保・海外保険・国内生保・介護の4セグメントのうち海外保険が全体の半分近くを占める形へと変質し、本社側の収益認識と国内現場で進む改革テンポとのずれが、構造的な課題として残った。 [49]

  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-2Q
    • [49]2022年10月にSIへ2,000億円の追加資本移転を実施
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
    • [46]2023年度(2024年3月期)の親会社株主帰属当期純利益は4,160億円で過去最高水準
    • [47]2023年度 海外保険事業セグメント利益2,376億円が国内損保事業の1,097億円を上回った
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
    • [48]SIコマーシャル部門の保険料レートアップは2023年度実績で+5.4%
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-2Q
    • [49]2022年10月にSIへ2,000億円の追加資本移転を実施

SOMPOホールディングスの沿革2009〜2025年における主な出来事を抜粋

年月社長・CEO出来事重要度
損保ジャパンと日本興亜損保の経営統合とNKSJホールディングス設立業界第2次再編の号砲のなか、3位転落を避ける「対等の統合」はどこまで実を結んだか 詳細を読む★★★
佐藤正敏NKSJHD設立
佐藤正敏佐藤正敏が初代社長に就任
佐藤正敏設立初年度に当期純損失▲129億円
櫻田謙悟2期連続で当期純損失▲922億円
櫻田謙悟櫻田謙悟が第2代社長に就任
櫻田謙悟損保ジャパン日本興亜HDに商号変更
櫻田謙悟損害保険ジャパンと日本興亜損保が合併★★
櫻田謙悟ワタミの介護を取得しSOMPOケアネクストに★★
櫻田謙悟SOMPOHDに商号変更
櫻田謙悟米エンデュランス・スペシャルティを約6,300億円で買収し、最大の米国市場に橋頭堡を築く海外展開で出遅れたSOMPOは、どこに収益源の分散を求めたか——「英保険王」を迎える乾坤一擲の買収 詳細を読む★★★
奥村幹夫奥村幹夫が第3代社長に就任
奥村幹夫ビッグモーター不正請求問題が表面化★★
奥村幹夫当期純利益が264億円に急減
奥村幹夫金融庁から業務改善命令
奥村幹夫ビッグモーター保険金不正を受けた経営陣の刷新とガバナンス再建櫻田体制13年で崩れた内部統制を、金融庁の処分の下でどう作り直すか 詳細を読む★★★
奥村幹夫当期純利益4,160億円で過去最高
奥村幹夫IFRS移行後の保険収益5兆655億円
出典・参考
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【沿革】
  • NKSJホールディングス 有価証券報告書(連結)
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【セグメント情報】
  • SOMPOホールディングス 有価証券報告書【主要指標】
  • 週刊東洋経済「ニュース最前線03 SOMPOの乾坤一擲 買収で「英保険王」獲得」(2016年10月22日号)
  • 週刊東洋経済「この人に聞く SOMPOホールディングス グループCEO 櫻田謙悟 6300億円超の買収で最大の米国市場に橋頭堡」(2016年12月10日号)
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY22-2Q
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-3Q
  • 金融庁「損害保険ジャパン及びSOMPOホールディングスに対する行政処分について」(2024年1月25日)
  • SOMPOホールディングス 決算説明会 FY23-2Q

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