【筆者所感】 韓国で生まれたオンラインゲーム会社が、日本に上場会社の本籍を置きながら、業績の8割以上を韓国・中国で稼ぐ。2002年に東京で設立された日本法人が、3年後に韓国の親会社からPCオンライン事業を会社分割で引き取り、グループの事業持株会社になった瞬間から、ネクソンの独特な構造は始まった。上場会社としての本籍は東京にありつつ、開発と収益の主戦場は一貫して韓国と中国に置かれている。オンラインゲーム産業は一本のヒットIPが10年単位で稼ぎ続ける一方、新作の当たり外れが業績の振れを直接規定する構造を持つ。同社の歴史はこの産業特性のなかで、少数IPへの集中と地理的なねじれをどう両立させてきたかの記録である。
『メイプルストーリー』と『アラド戦記』という2本のIPだけで20年以上にわたり売上を作り続け、2024年には売上4,462億円と過去最高を更新した。経営トップは韓国系創業者から米国人プロ経営者へ、そしてふたたび韓国開発出身者へと交代してきたが、その都度「IPに集中する」という同じ答えを別の言葉で語り直している。FY27には売上7,500億円・営業利益2,500億円という長期目標を掲げ、既存フランチャイズの深耕と新規IPの水平展開を同時に進める方針を示した。集中と分散、日本と韓国、既存IPと新作 ── 対になる軸を行き来しながら、看板の2本IPをどう延命させ、どこまで新作で横に広げるかという同じ問いを、体制と地域を変えながら繰り返し問い続けてきた会社である。
歴史概略
2002年〜2012年韓国IPの日本上陸と親子逆転と事業基盤の拡充
東京で生まれた会社が、なぜ韓国本社を買収したのか
2002年12月、韓国NEXON Corporation(現NXC Corporation)が東京都中央区に株式会社ネクソンジャパンを設立した。当初は単なる日本代理店として設計されたが、2003年1月に既存の日本法人ソリッドネットワークス(旧ネクソンジャパン)からオンラインゲーム事業を譲り受け、独立した運営主体として動き出した。韓国本社が開発したタイトルを日本市場で配信するという役割を担いつつ、運営実務は日本法人の裁量で回す形が整えられた。ローカライズ、課金運用、カスタマーサポートを日本で担い、タイトル供給を韓国に依存する関係は、以後20年以上にわたって地域をまたぐ分業の基本形として続いていく。開発は韓国、運営は日本という分業の原型がここで生まれ、後年のグループ構造の下地となる設計がこの段階で固まっている。
転機は2005年10月に訪れた。韓国の親会社がPCオンライン事業を会社分割で新NEXON Corporation(現NEXON Korea)に切り出し、その全株式を日本法人に譲渡した。子会社が親会社の事業中核を逆に飲み込む形となり、日本法人がグループの事業持株会社、韓国法人が開発拠点という現在まで続く構造が確立した。通常の日本企業の海外進出とは逆向きに、韓国発のビジネスを日本の法人格で束ねて国際展開するという設計が、この一手で定まった。以後の上場や買収はすべて、この東京持株・ソウル開発の二極体制の上で動いていく。創業家である金正宙の資産管理会社が日本法人の親会社として残り、事業の上位に投資持株、その下に日本の事業持株、さらに下に韓国の開発会社という三層構造が、この時点で組み上がった。
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『メイプルストーリー』と『アラド戦記』という2本の柱の獲得
事業持株会社化の直後、2005年12月にNEXON KoreaがWizet Corporationから『メイプルストーリー』を譲り受け、IPを自社グループに取り込んだ。さらに2006年8月にはMPlay Gamesから『カートライダー』『BnB』を譲受し、無料プレイ+アイテム課金という当時新しかったビジネスモデルを韓国市場で広く展開する基盤を整えた。パッケージ販売が主流だった時代に、月額課金でもなく無料で遊べて課金はアイテム単位という設計は、韓国のブロードバンド普及とネットカフェ文化を前提に成立したものだった。この料金モデルは後年のスマホゲームにも受け継がれる雛形となり、ネクソンは原型を持つ側として運営ノウハウを蓄積していく。買収した3タイトルはいずれもライブサービスとして継続運営可能な設計であり、長期運営前提のIPを外部からまとめて取り込む動きがこの時期に集中している。
決定的だったのは2008年8月のNEOPLE INC.買収だった。同社が開発する『アラド戦記』(中国名Dungeon&Fighter)は、後にテンセントが中国でパブリッシングし、ネクソン全体の収益を支える主力IPに育つ。2008年通期の売上402億円から2012年には1,084億円へと2.7倍に拡大し、日本法人ネクソンは東京都中央区にありながら、業績の大半を韓国・中国で稼ぐ会社となった。買収時点では韓国で一定のヒットを持つ一IPの取得だったが、テンセントとの中国パブリッシング契約を経て、グループ収益の重心そのものを中国市場へ引き寄せる結果となり、地理的なねじれは一段と深まる。開発は韓国のネオプル、パブリッシングは中国のテンセント、ロイヤリティの受け皿は日本の上場会社という三カ国構成が、単一IPの周囲に組み上がる構図となった。
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2011年12月、東証一部上場という選択
2009年4月、株式会社ネクソンジャパンは株式会社ネクソンに商号変更し、グループ事業持株会社としての位置づけを対外的に示した。2011年2月には新NEXON CorporationがNEXON Korea Corporationへ商号を改め、グループ内のブランド体系も整理した。ネクソンという同じ看板を東京の持株会社とソウルの開発会社が分けて掲げる体制へ整え、投資家や取引先から見た法人関係をわかりやすくする意図がうかがえる。商号と資本関係の整理が先行して進み、翌年末の上場に向けた地ならしとしての性格が強い局面だった。日本法人が事業会社としてのネクソンを担い、韓国法人が開発拠点としてのネクソン・コリアを担うという役割分担が、法人名のレベルで外部から読み取れるようになった。
そして2011年12月、ネクソンは東京証券取引所市場第一部に上場した。韓国発祥のオンラインゲーム事業主体が日本市場で上場するという異例の構造のなか、上場時点の経営トップは創業者の崔承祐(チェ・スンウ)が務めた。FY11の売上は876億円、営業利益382億円。地域別では韓国セグメントが631億円・利益337億円と圧倒的で、日本はわずか130億円・利益22億円にとどまった。上場会社の本籍と稼ぎ頭の地理的不一致は、以降のネクソンを最も特徴づける要素となり、投資家に対しては毎四半期、韓国と中国の数字を日本の開示フォーマットで説明する構図が定着していく。通貨・会計基準・言語のいずれも本籍地と主戦場でずれる前提のうえに、上場会社としての透明性を確保する経営姿勢が、この上場を起点に問われ続けることとなる。
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2013年〜2022年マホニー時代とIP集中路線と事業基盤の拡充
米国人プロ経営者が選んだゲームへの集中戦略
2013年、米国出身のオーウェン・マホニーが代表取締役社長に就任した。創業者からの世代交代であると同時に、外部プロ経営者へのバトンタッチでもあり、グループ全体の戦略言語が変わった。マホニーは後年のインタビューで「深い没入感を提供するゲーム、つまり習得は簡単だが極めることが難しいゲームのみに集中する」(東洋経済オンライン 2022)と語り、カジュアルやシングルプレイヤー・ストーリー主体のタイトルを選別対象から外す方針を示した。マホニー体制の下で、事業ポートフォリオは少数のライブサービスIPを長く運営する会社という輪郭に寄せられた。
この方針はIFRS適用後のFY13の業績にも表れ、売上1,553億円・営業利益507億円のうち、韓国セグメントが1,064億円・利益562億円とグループ収益の大半を占めた。一方で北米セグメントは赤字のままという構図が続き、地域別の収益格差はむしろ広がる方向にあった。IPの数を増やすのではなく、既存IPを深く運用する路線が業績と戦略の両面に定着し、新規タイトルのグリーンライト基準もライブサービスとしての継続可能性に寄った。少数IPで稼いだ利益を既存IPの延命と次世代パイプラインに振り向けるサイクルが、この段階で制度化されていった。運営期間10年以上を視野に入れた開発前提の下で、短期的なヒット狙いのタイトルよりも、長期アップデートを前提とした設計のタイトルを優先する判断が日常化していく。
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- 東洋経済オンライン 2022/3/26
2015年・2018年の業績ピークと2016年の踊り場
FY15に売上1,902億円・営業利益622億円・純利益551億円とそれまでの過去最高を更新したが、翌FY16は売上1,831億円・営業利益406億円・純利益201億円へ後退した。韓国セグメントは引き続き1,531億円・利益745億円と堅調だったものの、北米セグメントは48億円の赤字に拡大し、グローバル展開の難しさが業績面で表面化した。韓国・中国の主力IPが稼ぐ利益を北米・欧州のタイトル開発に投じても、同地域の市場で収益化まで結びつかないというパターンが、セグメント別の数字に浮かび上がる。地理的偏在は上場当初からの課題として残り続けた。業績のピークと踊り場が1年おきに入れ替わる振れ幅の大きさは、少数IPへの集中と表裏一体の現象として、この時期から繰り返し顔を出すようになる。
その後はNEOPLEを中核とする中国『アラド戦記』の成長を取り込み、FY18には売上2,537億円・営業利益983億円・純利益1,076億円と一段高い水準に到達した。FY19も売上2,485億円・営業利益945億円・純利益1,156億円と高水準を維持し、コロナ禍に入ったFY20には売上2,930億円・営業利益1,114億円で過去最高を更新した。マホニーは「全インタラクティブメディアに活用できる強力なグローバルIPを持つ企業がエンタテインメントにおける最大の勝者となる」(東洋経済オンライン 2022)と語り、「エンタテインメントはオフラインからオンラインメディアへ、そして映画や音楽のような一方向的なフォーマットから、ゲームやTikTokのような双方向メディアへとシフトしている」(同)と業界シフトを説明した。収益の柱は少数のフランチャイズに寄り、フランチャイズ外タイトルの比率は相対的に下がった。
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- 東洋経済オンライン 2022/3/26
Embark Studios買収とパイプラインの仕込み
2018年6月、NEXON KoreaがNAT GAMES(現NEXON Games)の株式を追加取得して子会社化し、開発スタジオ体制の内製化を進めた。2019年7月には、ストックホルムを拠点とするEmbark Studios ABの株式を追加取得して子会社化した。後に『THE FINALS』『ARC Raiders』を手掛けるEmbarkは、欧米市場向けシューターという、ネクソンが得意としてこなかった領域への人材取得という性格が強い買収だった。既存3大フランチャイズの運営で稼ぐ体制とは別に、欧米発の新規IPを仕込むための開発機能をグループ内に置く構図が、この一連の買収で形づくられていく。韓国とスウェーデンという地理的に離れた開発拠点を同時に抱える体制は、既存IPの深耕と新市場向けの仕込みを並行で回すための設計として機能し始めた。運営で稼いだ原資を欧米の開発機能に振り向けるという流れが、組織図の上にも明示されていく。
2022年2月には、3年間で総額1,000億円を上限とする自己株式取得方針を公表し、同年4月の東証プライム市場移行後はガバナンスと還元の枠組みが整った。FY22の売上は3,537億円・営業利益1,036億円・純利益1,003億円。3大フランチャイズへの集中で稼ぎ、その利益を新作開発と株主還元に振り向けるサイクルが形になった一方、収益の地理的偏在は変わらず、グループ全体としては中国・韓国に依存したまま規模を拡大していた。マホニー体制の10年は、IPの選別・既存IPの深耕・開発力の補強・還元強化という4つの軸を並行して回す期間であり、その骨格を引き継ぐ形で次の経営体制が発足した。
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- 東洋経済オンライン 2022/3/26
2023年〜2024年新経営体制とFY27経営目標と事業基盤の拡充
2024年、ふたたび韓国開発出身者がトップに座る
2023年、NEXON Korea出身のイ・ジョンホンが代表取締役社長に就任した。マホニーから10年ぶりのトップ交代であり、外部プロ経営者から開発現場と地続きの経営者への揺り戻しという意味を持つ人事だった。植村士朗がCFOとして並び、新体制は2024年5月の第1四半期決算から本格的に発信を始めた。経営言語は引き続き「IP集中」だが、韓国開発出身のCEOが語ることで、個別タイトルの運営判断に直接踏み込む経営スタイルへ傾斜していく。日本の上場会社としての開示規律は維持しつつ、事業の意思決定の重心をソウル側の開発現場にさらに寄せる体制が、ここで整った。創業者・外部プロ経営者・韓国開発出身者という3つのバックグラウンドを、同じ事業持株会社が経営層として回していく構図が、ここで揃った。
新体制が引き継いだ課題は明確だった。2023年第4四半期以降に発生した中国『アラド戦記』と韓国『メイプルストーリー』という2大主力タイトル両方の停滞である。FY24-1Q決算でCEOは5つのプライオリティを示し、その第1項目をFY23-4Q以降に発生した課題への早急な原因究明と対策として位置づけた(決算説明会 FY24-1Q)。新規IPの投入や長期目標の設計より先に、既存の稼ぎ頭が失速した理由を特定し、運営体制とコンテンツ供給の両面で立て直すことを最優先に据える姿勢が示された。2本柱の一方が揺らぐだけでグループ全体の業績が動く構造への対応が、新体制の最初の仕事となった。2本柱の稼ぎ頭に同時に綻びが見えた局面で、まず原因究明に戻るという順序を選んだこと自体が、開発出身の経営者による意思決定の性格を反映している。
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- 決算説明会 FY24-1Q
- 決算説明会 FY24-3Q
- 決算説明会 FY24
5月21日ローンチが変えた中国市場の景色
2024年5月21日、テンセントをパブリッシャーとする『アラド戦記モバイル』が中国で配信を開始した。FY24-3Qで『アラド戦記』フランチャイズの合計売上収益は前年同期比142%増となり、フランチャイズ全体で過去最高水準を記録した(決算説明会 FY24-3Q)。同四半期の連結売上は1,356億円・営業利益515億円とともに過去最高を更新し、3大フランチャイズの合計売上は前年同期比15%増を示した。地域別では中国が42%・韓国が35%・北米欧州が13%・日本がわずか4%という構成比となり、単一タイトルのローンチが四半期業績の地域構成を塗り替える依存度の高さが、ここで一段と鮮明になった。中国で稼いだロイヤリティを日本の決算に計上し、投資家には円建てで開示するという経路は、上場以来の構造そのままに、その規模と比率が一段引き上げられた形となる。
同時に7月2日に配信開始した新規IP『The First Descendant』は、グローバル売上の約75%を欧米市場が占め、ネクソンが長年苦戦してきた北米市場で新規IPの足場を初めて築いた。垂直方向の既存IP深耕と水平方向の新規IP投入という両輪の戦略が、同一四半期の数字で裏付けられたのはこれが初めてだった。既存フランチャイズで稼いだ利益を欧米向け新作に投じ、回収までに10年近くを要してきた構図に対し、単一の新規IPがひとまず収益化に達する事例がようやく現れた。FY27の長期目標を支える水平方向の裏付けとして、同社が対外的に示せる手応えとなる結果である。北米市場で単発のヒットを出した会社はこれまでもあったが、継続運営を前提とするライブサービスとして欧米ユーザーに受け入れられるタイトルが生まれたことの意味は小さくない。
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- 決算説明会 FY24-1Q
- 決算説明会 FY24-3Q
- 決算説明会 FY24
FY27経営目標 ── 売上7,500億円・営業利益2,500億円
2024年9月のキャピタル・マーケット・ブリーフィングで、ネクソンはFY23→FY27でCAGR15%の売上成長と7,500億円、CAGR17%の営業利益成長と2,500億円という長期経営目標を提示した。フランチャイズ別では『アラド戦記』をCAGR25%、『メイプルストーリー』をCAGR14%で成長させ、水平方向の新作IPで約1,000億円を上積みするという内訳まで示している(決算説明会 FY24-3Q)。既存2大IPでの深耕と新作での水平拡張を積み上げた合算として目標値を構成する組み立てで、どのIPがどれだけ伸びれば目標に届くかが外部からも点検できる形に置かれている。4年間で売上を7割強積み増し、営業利益を2倍以上に伸ばすという強気の数字に、既存IPと新作の責任配分が明示されたことで、目標の進捗管理は四半期ごとの開示の水準で追える構造となった。
同時にROE10%を最低基準・中長期15%目標とし、減損等を除く前年通期営業利益の33%以上を配当と自社株買いで還元するという、数値ルール化された株主還元方針を示した。FY24通期実績は売上4,462億円(過去最高、前期比5%増)、営業利益1,242億円(IP投資継続により前期比8%減)。社長は「高い目標ですが、当社はそれに怖気づくどころか、目標を達成するためのリーダーシップや戦略に間違いはないという自信を増している」(決算説明会 FY24-3Q)と述べ、長期投資による短期業績への影響を許容する姿勢を示した。利益目標・還元ルール・投資姿勢の3つを同時に数値で縛る開示スタイルは、外部プロ経営者時代からの延長線上にある。
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- 決算説明会 FY24-1Q
- 決算説明会 FY24-3Q
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直近の動向と展望
テンセントとの共同開発契約 ── 中国市場の運営構造を組み替える
2025年2月の通期決算説明会で、ネクソンは『アラド戦記』のPC・モバイル両方でテンセントと共同開発契約を締結したことを発表した。従来のパブリッシング委託にとどまらず、ネオプルとともにコンテンツ制作能力そのものを引き上げ、中国市場でハイパーローカライゼーションを進める枠組みである。PC版『アラド戦記』は2025年第1四半期の旧正月アップデート以降、デイリーアクティブユーザー数が前年水準に近づきつつあり、年内にコンテンツ供給を安定化させてさらなる回復を見込むとしている(決算説明会 FY24)。パブリッシャーへの委託で済ませてきた構造から、共同開発契約という形で運営面にも関与する枠組みへと、中国事業の位置づけを組み替える動きだった。
中国でのコンテンツ供給能力をテンセントと共同で強化するのは、ロイヤリティ依存の収益構造のままで、運営面の主導権をどう確保するかという経営課題への応答でもある。FY24-3Qで地域別売上の42%を中国が占める構造のなか、運営体制の組み替えはネクソンの収益基盤そのものに直接効く意思決定となっている。パブリッシング契約を結んだ20年前から、ネクソンと中国市場の関係は「テンセントに任せる」設計で成立してきた。そこから「共に作る」設計へ踏み込む選択は、主力IPの命綱をテンセント一社に委ね続けるリスクを、共同関与で薄めようとする判断でもある。
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY24-3Q
パイプライン7タイトルと2025年の集中投入
2025年は新作の集中投入期となる。3月27日に『マビノギモバイル』、3月28日に『The First Berserker: Khazan』をPCとコンソール向けにリリース予定である。後者を『アラド戦記』フランチャイズを世界中のユーザーへ紹介する戦略的な第一歩と同社は説明しており、続いて『Project OVERKILL』と『Dungeon&Fighter: Arad』が2027年までに配信開始予定とされている。年間売上100億円以上を生み出す可能性を持つ新作7タイトルを開発中とも開示しており、FY27目標の水平方向1,000億円の積み上げを支えるパイプラインとなっている(決算説明会 FY24)。既存フランチャイズの派生と新規IPを同じ時期に束で出す設計で、各タイトルの当たり外れを平均化する狙いがうかがえる。プラットフォームもモバイル・PC・コンソールと横断する構成となっており、単一市場への依存を薄める意図が品揃えに反映されている。
同時に、グローバル『メイプルストーリー』はハイパーローカライズ効果でFY24に売上24%成長し、フランチャイズ合計売上の35%を占めるまでになった。韓国『メイプルストーリー』も12月冬季アップデートでNPSが前四半期比6ポイント改善し、第1四半期は前年同期比30%以上の増収見込みと示された。20年運用のフランチャイズを再び成長軌道に戻すというテーマが、地域別に異なる打ち手で同時並行に進む局面にある。中国『アラド戦記』の運営組み替え、韓国・グローバル『メイプルストーリー』の再活性化、欧米向け新規IPの投入という3方向の施策が、同じFY27目標の下に並べられている。どの地域の施策が失速しても目標の線から外れるという緊張関係のもとで、各地域の打ち手は四半期単位で経営層が点検する運用となった。
- 決算説明会 FY24
- 決算説明会 FY24-3Q
1年で1,000億円の自社株買い ── 株主還元の異次元化
2025年2月、取締役会は2025年に1年間で総額1,000億円の自己株式取得を実施する方針を承認し、まず2月14日から6月30日までに500億円を即時実行することを決定した。年間配当も1株当たり30円を維持する予定で、2024年実績の配当増額(10円→22.5円)と514億円の自社株買いから、さらに還元規模を引き上げる内容となる(決算説明会 FY24)。2022年に公表した3年総額1,000億円の方針は、1年間で同額を実行する方針に置き換わり、還元を測る単位期間そのものが3分の1に縮んだ。手元資金をIP投資だけでなく株主への還流にも短い期間で回すという姿勢が、数字の形で示されている。還元強化はFY27目標の達成自信と裏腹の意思表示であり、長期投資を続けながら余剰資金を同時に戻すという二正面の運用を、次の経営期間にわたって続ける前提が置かれている。
2024年第4四半期には、開発中パブリッシングプロジェクト終了に伴う減損損失70億円を計上し、これを除いた営業利益は53億円と公表された。業績の短期的な振れを許容しながら、IP投資・新作パイプライン・株主還元の3つを同時に拡大するのが、新経営体制が選んだ経営フォーマットである。FY27経営目標の達成可能性は、テンセントとの共同開発で中国市場の運営力をどこまで取り戻せるか、欧米向け新作IPが『The First Descendant』以後も定着できるかという2点に集約される。日本と韓国の二極で運営してきた法人構造を、この2つの地域戦略が試す段階に入っている。中国での共同開発と欧米での新規IP定着の双方が実を結べば、日本上場・韓国開発という20年続いた構図に、中国共同運営と欧米直販という二つの柱が新たに加わる。
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- 決算説明会 FY24-3Q