2018 年1月

VTuberグループ「にじさんじ」の始動を発表し事業を転換

歴史的意義
創業8ヶ月での事業転換──個人勢時代に「事務所モデル」を持ち込んだ判断

VTuber業界の黎明期に「事務所モデル」を持ち込んだ判断が、その後8期にわたる売上26倍超の成長軌道を決定した。FY17売上16百万円→FY18 866百万円の52倍の急拡大は、事業転換が市場機会と合致した結果である。創業からわずか8ヶ月で主軸事業を入れ替えた経営判断は、初代事業(VR/MRアプリ)の見切りと第2の事業(VTuber事務所)への移行を半年で実行したスピード感に特徴がある。同社の歴史を通じて反復される「拡張→統合」のサイクルの最初の事例も、2018年5-6月のサブブランド多層化と同年12月の単一ブランドへの収斂で既に確立されている。

背景

VTuber黎明期と個人勢中心の業界構造

2016年12月の「キズナアイ」登場以降、VTuber市場は急速に立ち上がりつつあったが、2017年末時点では「個人勢(個人で配信するVTuber)」が中心で、事務所運営型のグループは限定的だった。配信機材・モーションキャプチャ・キャラクターデザイン・グッズ展開・海外進出など、VTuber活動を支える周辺機能を一体で提供する事業者は業界に存在していなかった。

一方、創業から半年強が経過した「いちから株式会社」は、当初事業のVR/MRアプリ開発から事業を入れ替える判断の時期に差しかかっていた。田角CEOはVR/MR領域より、VTuber市場の伸び筋(個人配信からグループ運営へのインフラ提供)に経営資源を集中することを選んだ。

決断

VR/MRからVTuber事務所運営へ事業転換

2018年1月、VTuberグループ「にじさんじ」の始動を発表してライバー(VTuber演者)の募集を開始、創業から8ヶ月で事業の中核をVR/MRアプリ開発からVTuber事務所運営へ切り替えた。同年2月、第1期8名のライバー(月ノ美兎・樋口楓・静凛・渋谷ハジメ・モイラ・勇気ちひろ・鈴谷アキ・家長むぎ)がデビューし、後の業界2強の一角を担う事業の母体が形を成した。

「事務所モデル」とは、ライバーのマネジメント・配信技術サポート・グッズ企画・ライブイベント運営・海外展開を一体で行う運営形態であり、当時の個人勢中心の業界構造に対して、ライバーが活動に専念できる経営基盤を提供する新しい業態であった。

結果

VTuber事務所モデルの先行確立

事業転換直前のFY17(2018年4月期)の単体売上高16百万円から、転換直後のFY18(2019年4月期)には866百万円へ約52倍に拡大、その後もFY19 3,479百万円・FY20 7,636百万円と毎期数倍規模の成長を継続した。第1期8名のライバーは後に「にじさんじ」の代表的人気ライバーへ成長し、業界内でのブランド地位を確立した。

2018年12月には「にじさんじ」「にじさんじゲーマーズ」「にじさんじSEEDs」の3グループを「にじさんじ」へ統合、業界形成初期に発生する「サブブランド乱立」リスクをいち早く整理した。VTuber事務所モデルは、後にカバー(ホロライブ運営)と並ぶ業界2強体制を形成する基盤となった。

田角陸 ANYCOLOR 代表取締役CEO
2022年ごろの当事者の証言
ライバーが安心して活動できる長期的な経営基盤を作る。
関連する動き
  1. 「にじさんじ」始動を発表しライバー募集を開始
  2. 第1期8名のライバーがデビュー
  3. 「にじさんじゲーマーズ」を開始
  4. 「にじさんじSEEDs」を開始
  5. 3グループを「にじさんじ」へ統合