重要な意思決定
200510月

マダガスカルのニッケルPJに参画決定

背景

リスク回避路線を転換し、世界最大規模のニッケル一貫PJに踏み込んだ判断

住友商事は2005年、マダガスカルにおける世界最大規模のニッケル採掘・精錬一貫プロジェクト「アンバトビー・ニッケルプロジェクト(Ambatovy)」への参画を決定した。シェリット・インターナショナル(カナダ)、韓国鉱物資源公社との3社共同事業であり、住友商事が47.7%を出資してプロジェクトをリードする形をとった。住友商事による投資額は非開示だが、推定2,600億円以上とみられる。 プロジェクト全体の投資額は当初37億ドル(借入金含む)を見込んでいたが、建設段階でコストが膨張し、最終的には72億ドルと当初見積もりの約2倍に達した。住友商事は創業以来、大型プロジェクトへの参画を見送るリスク回避路線を基本方針としてきた。アンバトビーへの参画は、その路線からの明確な転換を意味する投資判断であった。

決断

2012年の操業開始後、市況下落により770億円の減損計上に至った経緯

2012年にアンバトビーは操業を開始し、ニッケルの採掘と精錬が始まった。しかし、プラント設備の不具合が生じたことに加え、ニッケル市況が下落局面に入ったことで、プロジェクトの収益性は当初計画を大きく下回った。 2016年3月期に住友商事はアンバトビー関連で770億円の減損損失を計上した。投資額の大きさに対して収益が追いつかない構造が顕在化し、以後も住友商事はこのプロジェクトにおいて継続的に減損を計上することになる。

結果

リスク回避路線からの転換が、住友商事最大の損失案件を生んだ構造的帰結

アンバトビーは、住友商事が「堅実経営」の路線を転換して踏み切った大型資源投資の象徴的案件であった。しかし、建設コストの倍増、操業開始後の設備不具合、そしてニッケル市況の長期低迷が重なり、投資額に見合うリターンを生み出せない構造に陥った。 リスク回避を組織原理としてきた住友商事にとって、アンバトビーの帰結は皮肉なものであった。リスクを取らない経営で相対的な優位性を築いてきた商社が、路線転換によって最大規模の損失案件を抱えることになった。この構造は、2015年3月期の資源投資全般での巨額減損、さらにはアンバトビー単体での累計減損へと連鎖していく。