重要な意思決定
20191月

Shireを買収

背景

国内市場の縮小と自社創薬の時間軸が買収検討を加速

2010年代半ば以降、日本の医薬品市場は人口減少と薬価改定の影響で数量増による売上拡大が見込みにくい状況が続いていた。武田薬品は消化器、オンコロジー、ニューロサイエンスを重点領域として研究開発投資を継続していたが、国内売上比率が高いままでは成長と利益率の改善には限界があった。

米国市場は価格水準が高く希少疾患領域では競合が限られるため、売上と利益を同時に拡大しやすい市場として認識されていた。自社研究開発による拡大は売上貢献までの期間が長期化する可能性があり、既に売上を持つ事業を一括取得する選択肢が検討された。

決断

ウェバーCEOがShireを約6.2兆円で買収

2018年5月、武田薬品はアイルランドに本社を置くShireを約620億ドル、円換算で約6.2兆円で買収する方針を公表した。主導したのはクリストフ・ウェバーCEOであり、対価は現金と自社株の組み合わせとされた。希少疾患および血漿分画製剤の事業を一括取得し、米国売上比率を引き上げる狙いがあった。

買収金額は日本企業による海外M&Aとして過去最大級であり、有利子負債の大幅増加は不可避と見込まれた。投下資本の回収は統合後のキャッシュフローに委ねられる構造であり、買収プレミアムに見合う成長を実現できるかが経営上の最大の課題となった。

結果

事業構成は転換したが買収プレミアムの回収に時間を要す

2019年1月にShire買収を完了した武田薬品は、消費者ヘルスケア事業や欧州市販薬事業の売却を進め借入金の返済を行った。コスト削減と拠点統合により営業キャッシュフローは改善し、負債残高は段階的に圧縮された。

しかし買収時に支払ったプレミアムの回収は想定より時間を要した。売上成長率は買収前と比べて大きく加速せず、株価は同業他社や株価指数と比べて長期にわたり伸び悩んだ。事業構成の組み替えと財務の立て直しは進んだが、6.2兆円の投下資本に対する資本市場の評価は厳しい状態が続いた。