重要な意思決定
三洋電機の携帯電話事業を取得(通信機器)
背景
経営危機の三洋電機から携帯電話事業を約500億円で取得する再建案件
京セラは2008年4月、経営危機に陥った三洋電機から携帯電話事業(携帯電話端末・PHS端末・PHS基地局・WiMAX基地局)を取得した。三洋電機の携帯電話事業の売上高は2773億円(FY2006)であったが営業赤字が続いており、三洋電機の経営再建の一環として事業の切り離しが進められた。京セラの取得額は約500億円であり、三洋電機の住江工場の一部も同時に取得した。
三洋電機の携帯電話事業部門に在籍していた社員は京セラに転籍する形をとり、京セラが事業再建を担う体制が構築された。京セラとしては、自社の「アメーバ経営システム」を導入してコスト構造を可視化し、採算管理を徹底することで黒字化を目指す計画であった。赤字事業をアメーバ経営で立て直すという、京セラの経営手法の有効性が問われる案件であった。
決断
アメーバ経営による再建を図るも、スマートフォン普及で市場ごと消滅
京セラはアメーバ経営の導入によって携帯電話事業のコスト競争力を高める方針であったが、2010年代に入りスマートフォンが急速に普及したことで前提が大きく崩れた。従来型携帯電話(いわゆるガラケー)の端末需要が急減し、コスト削減で黒字化を図るという再建シナリオは、市場そのものの縮小によって意味を失った。
京セラの通信機器事業は三洋電機からの事業取得以降、継続的な減収に陥った。アメーバ経営は既存市場における採算改善には有効であったが、技術パラダイムの転換によって市場構造が根本から変化する局面では、コスト管理の精緻化だけでは対応できなかった。この案件は、事業再建の手法と市場環境の変化速度との間にある構造的なずれを示している。