京セラの直近の動向と展望

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京セラの直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

ROE0.7%の衝撃と抜本的な経営改革プロジェクトの始動

2025年3月期決算で京セラのROEは0.7%という事業会社としては極めて低い水準にまで沈み、経営陣は自らこの数字を極めて不本意な経営成績だと率直に認めざるを得ない状況となった。前期実績の低迷を直接の契機として、同社は2025年度から2027年度までの3年間を経営基盤の再構築期間と位置づけ、2028年3月期の目標ROEを5%以上、2031年3月期の目標を8%以上に設定し、将来的にはROE10%以上を目指すという段階目標を市場に初めて示した。谷本は「売上高3兆円の土台をつくる」(電波新聞デジタル 2023/01/11)と中長期の成長目標を示しつつ、事業ポートフォリオマネジメントと資本政策とコーポレートガバナンスの3つの変革を同時並行で進める経営改革プロジェクトを始動させた。創業以来の経営哲学に依存した運営から、資本市場と対話できる会社への転換が迫られる局面となった。

資本政策面では2025年6月にKDDI株式約1億800万株を約2500億円で売却し、政策保有株式の純資産比率は2026年3月期第3四半期末時点で47.9%の水準まで低下した。2027年3月期と2028年3月期の2年間で合計最大5000億円規模という同社として過去最大級の自社株買いが社内コンセンサスとして承認され、配当方針も現行の配当性向基準から2027年3月期以降はDOE基準へ変更されることで累進配当が方針として固まった。課題事業だった半導体部品有機材料事業とKAVXグループの両方が、一時損失を除くベースで構造改革により黒字化を達成し、2026年3月期第3四半期累計の営業利益は前年同期比で475%の増益となり、同社として初の本格的な資本効率改善の兆しが決算数字に表れた。

参考文献
  • 決算説明会 FY25-3Q
  • 電波新聞デジタル 2023/1/11

監査等委員会移行と作島新社長による部品事業集中の再始動

2025年度末には谷本秀夫社長からコアコンポーネント部門を長年牽引してきた作島史朗への社長交代人事が発表され、2026年4月1日付での交代と、同年6月の定時株主総会をもっての谷本の取締役退任および特別顧問への就任という段取りが示された。同時に会社機関設計についても、従来の監査役設置会社から監査等委員会設置会社への移行が同株主総会で付議される予定で、移行後の取締役会は社内取締役6名と社外取締役7名の合計13名で構成され、社外取締役が過半数を占めるモニタリングボード型へ変わる計画となった。投資ファンドのアスパラントグループ代表である中村彰利氏が新たに社外取締役候補として名を連ねた。稲盛哲学に依拠した経営から取締役会主導のモニタリング型へ、ガバナンス構造も同時に組み替えられる。

部品事業戦略面では先端半導体周辺領域とモビリティ領域への経営資源集中を骨格に据え、AI電源回路ソリューションを新たな成長牽引事業として打ち出す方向性が示された。AI半導体の最大の技術課題である電源回路の消費電力低減と発熱対策に対して、セラミックコアや基板内蔵部品、タンタルコンデンサといった強みを融合させた総合ソリューションを提供し、有機パッケージとKAVXを課題事業から成長牽引事業へ転換させていく戦略である。ソリューション事業ではMPSなどの売上比率を現状の6%から2031年3月期には30%以上へ引き上げる計画で、モノ×コト売りへの事業モデル転換を本格展開して部品事業と並ぶもう1つの収益柱として再構築を図る道筋が示された。1966年のIBM受注以来の技術蓄積を、AIサーバー向け電源・熱対策の新しい市場で引き出す設計となる。

参考文献
  • 決算説明会 FY25-3Q
  • 電波新聞デジタル 2023/1/11

参考文献・出所

有価証券報告書
決算説明会 FY25-3Q
東洋経済オンライン 2021/06/08
日経ビジネス電子版 2022/10/27
電波新聞デジタル 2023/01/11
電波新聞デジタル