米TMT合弁で新工場を稼働・CX-50を量産
フォード撤退後に残された北米の空白
2013年にマツダはフォードとの合弁による北米現地生産(ミシガン州・AAI社)から撤退し、2015年にはフォードがマツダ株式を完全売却したことで約36年にわたる資本提携が終了した。北米向けの車両はメキシコ工場および国内の防府工場からの輸出に切り替えたが、北米市場はマツダにとって最大の海外市場であり、為替変動リスクの低減と現地需要への機動的な対応のために、新たな枠組みによる現地生産の再開が経営課題として残されていた。 2017年8月、マツダはトヨタ自動車と業務資本提携を締結し、相互に500億円を出資した。提携の柱の一つが米国における合弁での現地生産であり、マツダは北米専用の新型SUV「CX-50」、トヨタは小型車カローラの生産を計画した。フォード時代のように筆頭株主として経営を支配される関係ではなく、折半出資による対等な協業モデルが志向された。
アラバマに年産30万台の合弁工場を新設
2018年3月、トヨタとマツダの折半出資(50%:50%)により合弁会社Mazda Toyota Manufacturing, U.S.A., Inc.(略称:TMT)を設立した。米アラバマ州ハンツビルに新工場を建設し、投資総額は16億ドルに達した。このうちマツダの負担分は推定8億ドルであり、約4000名の従業員を雇用して年産30万台(マツダ15万台・トヨタ15万台)の生産体制を構築した。 2022年1月に新工場が稼働を開始し、同年4月には北米専用車両としてSUV「CX-50」の販売を開始した。フォードとの提携解消から約9年を経て、マツダはトヨタとの対等な合弁という新たな枠組みのもとで、北米における現地生産への再参入を実現した。
ブランド価値の訴求で販売実績を更新
北米での販売戦略として、マツダはブランド価値の訴求を軸とした高付加価値路線を選択した。ディーラーへの販売奨励金を最小限に抑えて安売りを回避する一方、販売店スタッフへの教育投資や店舗の改装を推進することで、顧客体験の質を高めブランドイメージの向上を図った。 この戦略が奏功し、FY2024上半期の累計で北米販売台数は合計30.4万台を記録し、現地生産工場の稼働開始以降で最大の販売実績を達成した。フォード傘下で受動的に北米事業を展開していた時代とは対照的に、トヨタとの対等な合弁のもとで自社ブランドの価値を前面に打ち出し、自律的な成長戦略を構築しつつある。