重要な意思決定
20078月

ペンタックスを買収

背景

経営難のペンタックスが持つ内視鏡事業の取り込みを狙った買収構想

2007年8月にHOYAは経営難に陥っていたカメラメーカーのペンタックスを買収し、連結子会社とした。取得原価は947億円であった。HOYAの狙いはペンタックスの主力であるカメラ事業ではなく、収益源となっていた内視鏡を中心とするメディカル機器事業にあった。ライフケア領域の強化というHOYAの戦略に沿った買収判断であった。

買収後の経営を担当するため、元DELL日本法人社長の浜田宏がHOYAのCOOに就任し、事業ポートフォリオの入れ替えに着手した。しかしペンタックスは国内生産が中心で、カメラが売上の大部分を占める構造であったため、採算の改善は難航した。従業員数を5,585名から3,892名に削減し、益子工場や旧本社の板橋工場を閉鎖したが、カメラ需要の減少には追いつかなかった。

決断

内視鏡事業を手元に残し旧ペンタックスをリコーに売却する判断を下す

最終的にHOYAは、内視鏡などの高収益事業を自社に残した上で、収益性の低い旧ペンタックス事業をリコーに売却する判断を下した。2009年3月期にはペンタックス関連で274億円の減損損失を計上しており、買収から売却までの過程でHOYAは財務上の負担を被った。買収と売却を一連の設計として実行した点に、1994年以降のROE経営の姿勢が表れている。

売却の完了とともに、買収後の経営再建を担った浜田宏もCOOを退任した。HOYAが必要とした内視鏡事業を切り出して取り込み、不要なカメラ事業を売却するという操作は、事業の買収と処分を組み合わせたポートフォリオ管理の実践例であった。

結果

274億円の減損を伴いつつライフケア領域の事業基盤を取得

ペンタックスの買収と売却は、HOYAが不採算部門を切り離す経営姿勢を外部に対して明確にした事例であった。947億円の取得原価に対して274億円の減損損失を計上したことは、事業ポートフォリオの入れ替えには財務的な摩擦コストが伴うことを示している。しかしHOYAはこの損失を許容したうえで、ライフケア領域の強化という中長期の戦略を優先した。

内視鏡事業の取り込みは、以後のHOYAのメディカル事業の基盤となった。ペンタックスの買収がなければ、HOYAのライフケア事業は眼鏡レンズとコンタクトレンズに限定されていた。買収対象企業の全事業を引き受けるのではなく、自社の戦略に適合する部分だけを取り込み残りを売却する手法は、ROE経営のもとで事業ポートフォリオを管理する企業の典型的な行動様式であった。