重要な意思決定
20218月

早期退職優遇制度を実施

背景

国内生産拠点の再編に伴う余剰人員の発生と組織のスリム化の必要性

2010年代後半からホンダは国内の生産体制の再編を進めていた。2017年に狭山工場の閉鎖を発表し、2021年には英国スウィンドン工場を閉鎖するなど、国内外で生産拠点の集約が実行に移されていた。狭山工場の生産機能は寄居工場に移管されたが、年産約25万台の減産を伴う再編であり、生産現場を中心に余剰人員の発生が見込まれていた。加えてEVへの事業転換に向けた開発投資の拡大が求められるなかで、既存事業の人員構成を見直す必要性が高まっていた。

ホンダの国内従業員は製造部門に加えて本社管理部門や研究開発部門にも厚い人員配置がなされており、生産拠点の閉鎖だけでは全社的な人員構成の最適化は実現しなかった。55歳以上の正社員を中心にベテラン層の人件費負担が増大するなかで、組織全体の若返りと固定費の削減が経営課題として認識されていた。

決断

55歳以上を対象としたライフシフトプログラムの実施と想定を超える退職者

2021年7月にホンダは一時的な早期退職優遇措置として「ライフシフトプログラム」を制定し、55歳以上の正社員に対して退職時の割増退職金を提示した。55歳でプログラムを利用した場合は年収3年分が退職金に加算される手厚い条件であり、当初の募集予定は約1000名であった。しかし応募者数は想定を大幅に上回り、最終的に約2000名から3000名がプログラムに応じて退職したとされる。

早期退職優遇制度は約2年間にわたって実施され、2023年9月に廃止された。ホンダは単体決算において退職特別加算金として2022年3月期に360億円、2023年3月期に68億円を計上し、累計428億円の特別損失を計上した。募集人数の2倍を超える退職者が出たことは、制度の条件が魅力的であったと同時に、組織内に将来の事業方針に対する不透明感が存在していたことを示唆している。