狭山工場の閉鎖発表
国内四輪車販売の長期低迷と生産拠点の稼働率低下
2010年代後半の時点でホンダの国内四輪車販売台数は長期的な減少傾向にあった。日本国内の乗用車市場は少子高齢化と都市部における公共交通の充実を背景に縮小基調が続いており、ホンダの国内生産能力は販売実績に対して過剰な状態にあった。埼玉製作所の狭山工場と寄居工場の2拠点で年産約106万台の生産体制をとっていたが、国内販売の低迷により各工場の稼働率維持が課題となっていた。
狭山工場は1964年に四輪車の量産拠点として新設されたホンダ初の四輪車専用工場であった。操業開始から50年以上が経過し、設備の老朽化が進行していた。一方で2013年に新設された寄居工場は最新の生産設備を備えており、生産効率の面で狭山工場を上回っていた。国内に2つの完成車工場を維持する経済合理性が問われる局面にあった。
四輪車生産の寄居工場への集約と狭山工場の段階的閉鎖
2017年10月にホンダは狭山工場における四輪車の生産を2021年度内に中止し、寄居工場に集約する方針を発表した。国内の乗用車生産台数を年産約106万台から約81万台に下方修正し、約25万台の減産を伴う生産拠点の再編であった。狭山工場で生産していたオデッセイなどの車種は寄居工場に移管され、国内の完成車生産拠点は寄居工場の1拠点に集約されることとなった。
狭山工場の閉鎖は段階的に進められた。2021年度に完成車の生産を停止して寄居工場に移管したのち、エンジンやプレス部品などの部品生産は狭山工場で継続された。2023年度までにこれらの部品生産も寄居工場への移管が完了し、2024年6月に狭山工場は正式に閉鎖された。1964年の新設から約60年にわたるホンダ初の四輪車工場の歴史に終止符が打たれた。
国内生産体制のスリム化と余剰人員への対応
狭山工場の社員は寄居工場などへの配置転換が実施されたが、減産を伴う移管であったため余剰人員の発生は避けられなかった。2021年7月にはホンダ全社で55歳以上の正社員を対象とした早期退職優遇制度「ライフシフトプログラム」が開始され、当初の募集予定1000名を大幅に上回る約2000名が退職した。退職特別加算金として累計428億円が計上された。
狭山工場の閉鎖と寄居工場への集約により、ホンダの国内四輪車生産体制は効率化された。しかし国内販売の減少傾向そのものは継続しており、生産拠点の再編は縮小する市場への適応策としての性格を持っていた。ホンダの四輪車事業は北米と中国を主力市場とするグローバル構造のなかで、国内生産の位置づけを再定義する過程にあった。