吉川廣和氏が社長就任・環境リサイクル事業に集中投資
構造改革を主導した吉川廣和氏が社長に就任
2002年4月、1999年から構造改革プロジェクトを主導してきた吉川廣和氏が同和鉱業の社長に就任した。前任の金谷浩一郎社長は、社内の9割が改革に反対する状況下において、改革推進派の吉川氏をあえて後任に据える人事を決断した。1999年に10名のチームで開始した構造改革が、3年目の2002年頃から業績面で数値成果を示し始めたことが、この人事決定の背景にあったと推定される。
2002年前後の同和鉱業は、不採算事業の温存による収益力の低下と、事業に関連の薄い土地・有価証券・貴金属在庫の蓄積による資産効率の悪化という2つの構造的課題を抱えていた。1990年代を通じて有価証券や土地の売却によって利益を捻出する状態が続いており、事業そのものから創出される利益は限定的であった。吉川社長の就任は、事業面のPL改善と不要資産の圧縮によるBS改善を同時に推進する体制の構築を意味した。
18事業からの撤退と環境リサイクルへの集中投資
吉川社長は事業の存廃を3つの基準(市場の将来性があること、競争力があること、社員にやる気があること)で判断する方針に切り替え、全基準を満たさない18の事業を解散・閉鎖・売却した。整理対象の70%は黒字事業であったが撤退に踏み切った。従来は社内の政治力によって事業の存廃が決まっていたが、市場と競争力を基準とする判断に転換した点に特徴があった。残存事業はニッチ市場で高シェアを確保できる領域に集中させ、吉川社長はこの方針を「雑木林経営」と表現した。
注力分野の中核には環境リサイクル事業を据え、製錬技術を活用した都市鉱山事業を強化した。2004年に子会社・小坂製錬において管理型最終処分場を新設し、2006年には廃電子機器から貴金属(金・銀)を回収するリサイクル対応の新型炉(TSL炉)を約100億円で建設した。採掘を停止していた小坂鉱山の製錬設備と、長年の操業を通じて培った地元自治体との関係を活用することで、廃棄物の受け入れから希少金属の回収までを一貫して行う体制を構築した。
バランスシートの改善と過去最高益263億円の達成
財務面では、事業と関連の薄い土地・有価証券の一括売却、値上がりを期待して保持していた貴金属在庫の損切りによる圧縮、資金需要のない銀行借入の削減を実行した。従来の同和鉱業では資産保有や借入能力をステータスとする文化が根付いていたが、構造改革を通じてこれらの慣行を転換し、資産効率の改善を図った。不要資産の売却と有利子負債の削減によりバランスシートの健全化が進んだ。
選択と集中の結果、2007年3月期にDOWAホールディングス(2006年に同和鉱業から商号変更)は当期純利益263億円の過去最高益を達成した。トップシェア製品による売上高合計は約1200億円(全社売上高の25%)に達し、各事業セグメントで利益を計上する収益構造に転換した。2008年頃には世界トップシェア7事業、国内トップシェア8事業の計15事業がトップシェアを占め、鉱山会社から環境・リサイクル企業への転換が進んだ。