2002 年4月

5カ年の「経営基本計画」を策定

歴史的意義
「映像・医療の二軸投資」が浮き彫りにした事業選択の問い

映像と医療の両方に積極投資するという経営基本計画の設計は、デジタルカメラ市場の急速な環境変化によって早期に修正を迫られた。大手電機メーカーの参入による価格下落は、カメラ事業単体での収益確保を困難にし、映像事業のセグメント赤字が全社業績の足かせとなる構造を生んだ。二事業を等しく成長させる戦略と、限られた経営資源のもとでの事業選択のジレンマが浮き彫りになった事例である。

背景

映像と医療の二軸に積極投資を打ち出した五カ年計画

2002年4月にオリンパスは菊川剛社長のもと、FY2002からFY2006までの5ヵ年中期計画として「経営基本計画」を公表した。「企業価値最大化」を経営目標に掲げ、最終年度の数値目標として売上高8700億円、営業利益1200億円、ROE16%を設定した。事業別には、カメラを中心とする映像事業で3450億円、内視鏡を軸とする医療事業で4000億円の売上を見込み、医療とカメラの両方に積極投資を行う方針を明示した。

映像分野ではマーケティングを軸としたブランドの積極投資によるグローバル展開を志向した。20代から30代の若年層をターゲットにデジタルカメラの販売拡大を計画し、5年間で200億円規模のブランド投資を予定した。医療分野では内視鏡に依存する体質の変換を掲げ、新事業の創出を含めた事業展開を戦略目標に設定したが、具体的な領域は「バイオ」などの抽象的な言及にとどまった。

決断

デジタルカメラへの大規模投資と競争環境の変化

経営基本計画に基づき、オリンパスは映像事業の成長を全社戦略の柱の一つに位置づけた。デジタルカメラのグローバル市場でシェアを拡大するため、ブランド構築と製品開発に経営資源を投下する方針を採った。カメラ事業は1961年のペンEE以来の歴史を持つオリンパスの主要事業であり、デジタル化の波に乗じて事業規模の拡大を図る意図があった。

しかし、2000年代に入るとデジタルカメラを取り巻く競争環境が大きく変化した。ソニーやパナソニックなどの大手電機メーカーがコンパクトデジタルカメラ市場に相次いで参入し、製品の価格下落が急速に進行した。オリンパスはデジタルカメラで安定的に収益を確保することが困難となった。

結果

映像事業のセグメント赤字が全社業績を圧迫する構造

競争環境の変化を受けて、映像事業はセグメント赤字に転落した。経営基本計画では映像事業の売上高3450億円を目標に掲げていたが、大手電機メーカーとの価格競争のなかで目標の達成は困難となり、利益面では赤字が常態化する状況に陥った。映像事業の不振はオリンパスの全社利益を毀損する構造的な問題となった。

一方で、医療事業は内視鏡を中心に安定した収益基盤を維持していた。経営基本計画が掲げた「映像と医療の二軸投資」のうち、映像への積極投資が裏目に出る形となり、結果的にオリンパスの事業ポートフォリオは医療事業への依存度を高めていった。内視鏡事業の収益が映像事業の赤字を補填する構造は、のちのオリンパスの事業再編を方向づける要因となった。