中期経営戦略を策定・事業ポートフォリオを入れ替え
背景
品質不正を契機に事業の管理統制が経営課題として浮上
2017年に三菱マテリアルのグループ企業で品質不正が発覚し、経営陣がグループ約200社におよぶ事業を管理統制できていなかった点が問題となった。品質不正の背景には、合併や事業拡大を通じて肥大化した事業ポートフォリオがあり、経営の目が行き届かない領域で不正が発生する構造的な課題が浮き彫りとなった。この経験を踏まえ、事業の絞り込みが経営上の重要課題として認識された。
2020年3月に三菱マテリアル(小野直樹・社長)は3カ年の中期経営戦略(FY2020〜FY2022)を公表し、全社方針として「事業ポートフォリオの最適化」を掲げた。不採算事業からの撤退と注力事業への集中投資を両輪とする経営方針が打ち出され、肥大化した事業の絞り込みに踏み切った。
決断
不採算4事業の売却・集約と超硬工具への集中投資
縮小・撤退の対象とされたのは、収益性に問題を抱える焼結部品事業(ダイヤメット社)・銅管事業・セメント事業・アルミ事業であった。これらの事業は売却による撤退もしくは同業他社との折半出資会社の設立を通じた事業集約が志向された。2020年12月にダイヤメット社を売却し、事業再編損失として223億円を計上するなど、不採算事業からの撤退が順次実行された。
一方、注力事業としては加工事業への投資が掲げられた。2020年4月に三菱日立ツールを249億円で買収し、超硬工具の製造販売体制を強化した。事業ポートフォリオの入れ替えは、不採算事業からの資本回収と注力事業への再投資を組み合わせた施策であり、三菱マテリアルは総合素材メーカーから事業を絞り込んだ体制への転換を志向した。
三菱マテリアルの事業ポートフォリオ見直しは、2017年の品質不正が契機となった。グループ約200社に膨張した事業を経営陣が管理統制できなかったという反省から、不採算事業の売却と注力事業への集中投資が打ち出された。焼結部品・銅管・セメント・アルミの4事業が縮小対象とされ、超硬工具への投資が強化された。品質不正という危機が事業絞り込みを促した構造は、不祥事が経営改革の契機となる逆説的な構図を示す。