重要な意思決定
20135月

スパークプラグ10億本生産計画を公表

背景

半導体パッケージからの撤退を受けた自動車事業への集中投資

2009年のセラミックICパッケージの事業再編により、日本特殊陶業は自動車関連事業に経営資源を集中する方針を明確にしていた。かつての二本柱のうち半導体向けパッケージが縮小に向かう中で、残された自動車向け点火プラグを成長ドライバーとして位置づける必要があった。2013年に公表された第6次中期経営計画は、この方針を具体的な数値目標と設備投資計画に落とし込んだものであった。

計画の柱は、2020年度末までにスパークプラグの生産量を「10億本」に引き上げるという目標であった。FY2013の設備投資計画では約460億円を自動車関連事業に投じる方針を打ち出し、部品ごとに生産工場を1箇所に集約する効率化を推進した。従来は異なる工場で同一の部品を製造していたが、主要部品(絶縁体・主体金具・端子部品など)をそれぞれ1箇所の工場で集中生産する体制への移行を目指した。

決断

国内に二野工場を新設しセラミック焼成の技術集積を維持

増産計画の中核となったのが、絶縁体の生産拠点として新設された二野工場(岐阜県可児市)であった。第1期の投資額は280億円に及び、日本特殊陶業としては大規模な単体投資であった。主力の小牧工場が老朽化しつつある中で、二野工場は小牧工場のリプレイスという側面も持っていた。

海外ではなく国内に工場を新設した理由は、セラミック加工における生産技術の難易度の高さにあった。点火プラグの絶縁体はアルミナの焼成技術を基盤としており、国内に蓄積された技術と人材を活用するためには、生産拠点を国内に維持する合理性があった。人件費の安い新興国ではなく、技術の集積度を優先して国内投資を選択した判断であった。

結果

自動車専業への回帰と「選択と集中」の具体化

第6次中期経営計画と二野工場の新設は、日本特殊陶業の事業構造を自動車関連に一本化する転換点となった。1967年以来約45年にわたって維持してきた「自動車+半導体」の二本柱から、自動車事業への選択と集中を設備投資の形で具現化した。半導体パッケージへの投資を縮小し、その分を自動車関連に振り向けるという資源配分の転換であった。

二野工場に280億円、その他の拠点にも計画的な投資を積み上げることで、点火プラグの世界的な供給体制の強化を図った。セラミック焼成という技術基盤は、半導体パッケージでは市場そのものが縮小したが、点火プラグにおいては依然として参入障壁の源泉であり続けた。同じ技術が異なる市場で異なる運命をたどるという構造の中で、日本特殊陶業は技術が有効な市場に集中する選択を行った。