最終赤字に転落・セラミックICパッケージの再編
リーマンショックが露呈させた半導体パッケージ事業の過剰設備
2008年のリーマンショックにより半導体需要が急減し、ICパッケージの受注が大幅に縮小した。日本特殊陶業はセラミックICパッケージの製造設備について、国内5工場で減損損失として合計266億円を計上した。一部の製造拠点は工場稼働の目処が立たず、資産価値を大幅に切り下げる判断となった。素材転換によるセラミック需要の構造的な縮小に加え、景気後退による需要急減が重なり、設備の過剰感が一気に顕在化した。
この結果、FY2008に日本特殊陶業は716億円の最終赤字に転落した。1990年代後半からプラスチックへの素材転換が進行する中で維持してきたセラミック製造設備が、リーマンショックを契機に一括で損失処理される形となった。セラミック需要の縮小は構造的な変化であり、景気循環の問題ではなかったが、巨額の減損処理という形で一度に顕在化したのはリーマンショックという外的ショックの結果であった。
情報通信事業の担当副社長を退任させ自動車事業に回帰
2009年5月に日本特殊陶業は代表取締役の人事異動を発表した。情報通信事業(セラミックICパッケージ)を担当してきた加藤副社長が顧問に退き、代わって自動車事業出身の川原・川下両氏が代表取締役副社長に就任した。情報通信事業の責任者が経営中枢から退くことで、日本特殊陶業は自動車関連事業に注力する経営体制へと転換した。
同時に、セラミックICパッケージの事業再編にも着手した。財務体質が悪化した製造子会社を1社に集約するとともに、セラミックICパッケージの製造を段階的に縮小する方針を打ち出した。1967年に開始し約40年にわたって展開してきた半導体向けパッケージ事業は、素材転換とリーマンショックの二重の打撃を受けて縮小に向かうこととなった。
自動車関連事業への選択と集中による経営方針の明確化
担当役員の交代と事業再編は、日本特殊陶業の事業ポートフォリオにおける優先順位を明確にした。自動車向け点火プラグと半導体向けパッケージの二本柱で成長してきた構造から、自動車関連事業に資源を集中する方針へと転換した。以後の設備投資は自動車関連に傾斜配分されることとなり、2013年の第6次中期経営計画における自動車事業への集中投資へとつながっていった。
716億円の最終赤字と266億円の減損処理は、セラミックICパッケージの設備を維持し続けたことの代償であった。1996年のインテルによる素材転換の時点でセラミック需要の構造的縮小は見えていたが、既存設備の処理と事業縮小の判断には10年以上を要した。結果として、外的ショックが事業撤退の引き金を引く形となった。