重要な意思決定
20194月

非注力事業の売却・協和発酵バイオをキリンHDに譲渡

背景

キリンHD傘下での事業再編と医薬品集中の圧力

2008年のキリンHD傘下入り以降、協和キリンは医薬品事業への集中を経営方針として掲げ、酒類・化学品・食品の各事業を順次売却してきた。2019年時点で残された主要な非医薬品事業が、発酵技術を活用してアミノ酸や核酸関連物質を製造する子会社「協和発酵バイオ」であった。同社は2018年度に売上高782億円・コア営業利益81億円を計上しており、協和キリンにとっては安定した収益源であった。

一方、親会社のキリンHDはグループ全体の事業ポートフォリオ再編を推進しており、協和キリンには医薬品事業に経営資源を集中させる方針を求めていた。キリンHDは協和キリンの株式53.77%を保有する支配株主であり、グループ戦略の方向性に対して協和キリンの経営陣が異を唱えることは構造的に困難であった。発酵技術の知見が深いキリンHDのもとで協和発酵バイオを運営する方が適切であるとの判断が、売却の表向きの理由とされた。

決断

高収益子会社の親会社への譲渡という意思決定

2019年4月に協和キリンは子会社「協和発酵バイオ」の全株式をキリンHDに1107億円で譲渡し、売却益483億円を計上した。売上高782億円・コア営業利益81億円の事業を手放す決定は、協和キリン単体の収益基盤を縮小させるものであった。しかし53.77%の株式を保有する親会社キリンHDからの要請に対して、経営陣の判断の余地は構造的に限られており、少数株主の利益と親会社の戦略の間で難しい意思決定を迫られた形であった。

この売却により協和キリンは医薬品の単一事業会社としての性格を鮮明にした。かつて医薬品・酒類・化学品・食品の4事業を展開していた協和発酵は、キリンHDの傘下に入ってから約10年で医薬品以外のすべての事業を手放したことになる。親子上場の構造のもとで親会社主導の事業再編が進んだ結果、協和キリンはグローバル・スペシャリティファーマへの転換を加速する一方、事業ポートフォリオの多様性は失われた。