重要な意思決定
20084月

キリンHDが協和発酵をTOBにより買収

背景

キリンHDが医薬品事業の強化を目的に協和発酵へ接近

2000年代のキリンホールディングスは、ビール事業を中核としつつも成長領域として医薬品事業への注力を経営方針に掲げていた。すでに医薬品子会社「キリンファーマ」を擁していたが、単独での新薬開発には規模と技術の面で限界があった。キリンHDは協和発酵の株式27.95%をすでに保有しており、発酵技術を基盤とする両社の補完性に着目して、協和発酵の子会社化による医薬品事業の本格的な拡大を構想していた。

一方の協和発酵は、医薬品・酒類・化学品・食品の4事業を展開する多角的な発酵化学メーカーであったが、2000年代に入り非中核事業の整理を進めていた。2002年に酒類事業をアサヒビールに売却し、2004年には化学品事業、2005年には食品事業をそれぞれ分社化するなど、医薬品事業への集中を段階的に進めていた。キリンHDとの間では2002年頃から合併構想が存在しており、資本関係の深化に向けた素地が形成されつつあった。

決断

TOBの実施と協和発酵の子会社化による医薬品事業の統合

2007年10月にキリンHDは協和発酵に対するTOBを宣言し、既存の27.95%に加えて50.1%の取得を目指した。キリンHDの狙いは低収益な酒類事業ではなく、高い利益率を持つ医薬品事業への経営資源の集中にあった。あわせてキリンHDは自社の医薬品子会社「キリンファーマ」を協和発酵に統合する計画も発表し、買収後の協和発酵をキリングループにおける医薬品事業の統合プラットフォームとして位置づけた。

協和発酵はTOBに対して賛成の意向を表明した。発酵技術を基礎とする企業文化の類似性、抗体医薬の開発・販売における規模の確保、そして2002年から存在した合併構想が受け入れの背景にあった。当時の松田譲社長は「統合について社内調査したところ、強く賛同する社員が7〜8割もいた」と述べている。2007年12月にTOBが成立し、2008年4月にキリンHDは協和発酵の株式50.8%を取得して子会社化を完了した。

結果

キリンファーマとの統合と「協和キリン」への商号変更

子会社化の完了を受けて、協和発酵はキリンファーマを株式交換により完全子会社化した。取得対価は4778億円にのぼり、のれんとして1919億円を計上した。2008年10月には協和発酵がキリンファーマを吸収合併し、商号を「協和発酵キリン」に変更した。この統合により、キリングループの医薬品事業は協和発酵キリンに一本化され、抗体医薬を軸としたスペシャリティファーマとしての事業体制が構築された。

統合後の協和発酵キリンは、キリンHDの連結子会社として非中核事業の売却と医薬品への集中を一段と加速した。2011年にはキリン協和フーズをキリンHDに譲渡し、同年には化学品事業の協和発酵ケミカルも売却するなど、医薬品以外の事業を次々と切り離した。キリンHDの傘下に入ったことで経営の独立性には制約が生じたものの、グループの資本力を背景にグローバル展開と新薬パイプラインへの投資を拡大する経営基盤が整えられた。