重要な意思決定
2013

事業部制を廃止

背景

事業部別損益が原価改善を阻んでいた構造

2000年代のヤマハは多角事業の撤退を進めたが、本業の楽器・音響でも利益率が低位にとどまっていた。円高の進行で国内生産の採算が悪化しても、拠点再編や生産移管は部門ごとの利害に引き寄せられ、全社での最適化が進みにくかった。為替や市況に利益が振れやすく、原価構造を改善する意思決定と実行が分断されていた。

事業部別損益が強い組織では、工場稼働や在庫を全社で平準化するより、各事業部が自部門の数字を守る行動を取りやすい。工場間の連携や設備の共通化投資が進まず、固定費と間接費が積み上がる。価格の適正化以前に、原価を下げるための組織的な意思決定が構造的に阻まれていた。

決断

事業部制を廃止し機能別組織へ移行

2013年に社長に就任した中田卓也は、原価改善を進める前提として組織構造そのものを見直し、事業部制の廃止を決断した。事業別の縦割りを排し、生産・開発・営業など機能別の横串で意思決定と人員配置を行う体制へ切り替えた。全社視点で投資とリソース配分を決められるようにし、改善施策の実行速度を上げる狙いであった。

同時に、管理会計と責任設計も作り替えた。生産にはコストダウン、営業には売上と価格という形でKPIを単純化し、成果の帰属を明確にした。管楽器生産を豊岡工場に集約するなど、工場再編も全社判断で推進した。

結果

原価率改善により営業利益率が二桁に到達

事業部制の廃止により、工場間の連携と稼働の平準化が進み、在庫管理や生産計画が全社で最適化されやすくなった。国内拠点の縮小や海外生産移管といった原価改善策も、事業部の壁を越えて実行可能となり、固定費構造の見直しが加速した。

さらに、価格は「値上げ」ではなく「適正化」として扱い、製品価値を説明して価格に反映する姿勢を強めた。原価と価格の両輪が揃ったことで、2017年3月期には売上高営業利益率10.2%を達成した。組織の形式を変えたことが、原価改善を回す実務の前提条件となった事例である。