重要な意思決定
201012月

山本社長が就任。グローバル展開を本格化

背景

20年以上苦戦したグローバル展開とリーマンショックの転機

キーエンスの海外展開は1985年の米国現地法人設立に始まる。創業者の滝崎氏は海外売上比率30〜50%を目標に掲げたが、1990年代から2000年代を通じて売上構成の大半は国内に留まった。2000年代の中国をはじめとするアジアでは大量生産が重視される時代であり、高額なセンサーを導入して自動化を図るよりも、労働集約的に人員を投入するビジネスが主流であった。

この潮流が変化したのが2008年のリーマンショック以降であった。世界的な不況と為替変動を受けて、中国などの新興国でも生産合理化に対するニーズが高まった。人件費の上昇も加わり、従来は費用対効果が見合わなかった高額センサーの導入が正当化される環境が整い始めた。キーエンスが20年以上にわたって海外拠点を維持してきた蓄積が、ようやく活きる市場環境が到来した。

決断

山本新社長のもとで海外売上比率50%を目標設定

2010年12月にキーエンスの社長に山本晃則氏が就任し、グローバル展開を本格化する方針を打ち出した。経営目標として「海外売上高比率を早期に50%程度に引き上げる」ことを掲げた。ただし、キーエンスは投資額や経営計画の詳細を開示しない方針を採っており、競合に戦略を悟られない形で海外投資を進めたと推察される。

海外展開の具体策は、国内で確立した直販体制をそのまま海外に移植することであった。米国・中国・ドイツなど製造業が集積する地域に営業・技術サポート拠点を広範囲に設置し、受注から出荷までのリードタイムを短縮した。2011年以降はブラジル、インド、インドネシア、ベトナム、フィリピンと新興国への進出を加速させ、当日出荷という付加価値を海外でも提供する体制を整備した。

結果

海外売上比率50%突破とグローバル企業への変貌

FY2014にキーエンスは海外売上比率50%を突破し、山本社長が掲げた目標を達成した。売上面では1985年に進出した米国が安定的に貢献しつつ、中国での売上を著しく伸ばした。東南アジアなど「その他」地域の売上も拡大しており、新興国の生産合理化ニーズを幅広く取り込むことに成功したと推察される。

2010年代を通じてキーエンスは国内偏重の企業からグローバル企業に変貌した。高収益体質を維持しつつ海外売上を拡大し、売上成長と利益率の両立を実現した。国内で確立した直販・即納・高利益率というビジネスモデルを海外にそのまま展開できたことが、グローバル化を収益性の毀損なく進められた要因であったと考えられる。