キーエンスの沿革・歴史的証言

/

1972年〜2025

キーエンスの1972年〜2025年の主要な出来事・経営判断・組織変化を年月順に並べた沿革(社史年表)と、経営者・当事者の歴史的証言

年度売上高純利益年月区分出来事歴史的意義
1972
1-12月
会社設立
滝崎武光氏がリード電機を創業
営業利益率20%の祖業を捨てた利益率基準の経営
1974
1-12月
交流磁界センサに参入
原価ではなく導入効果で値付けする価格構造の原型
リード電機株式会社を設立
1980
1-12月
光学センサーの販売を開始
FY82
1982/3
売上高
9億円
センサに集中投資。切断機から事業撤退
1982年の時点でキーエンスの祖業であった「自動線材切断機」は営業利益率が20%(1989/5/22日経ビジネス)の高収益事業であったが。しかし、創業者の滝崎武光氏はセンサ事業(営業利益率40%)よりも収益性が低いことを理由に撤退を決断。また、顧客の一極集中によるリスクを防ぐために、当時、キーエンスの売上高の20%を占めていた某機械メーカーとの取引縮小を決断するなど、値下げ圧力を回避する方向にビジネスを変えた。
FY83
1983/3
電子部品業界向け光学センサの販売を開始
FY85
1985/3
売上高
42.25億円
当期純利益
7.57億円
本社を大阪府高槻市に移転
FY86
1986/3
売上高
60.88億円
当期純利益
10.73億円
クレポ株式会社を設立(製造子会社)
製造子会社としてクレボを設立し、全製品のうちノウハウが鍵を握る25%の製品を子会社で生産。残りの75%はファブレスとして協力会社に製造を委託した。キーエンスは製品開発・企画・販売に注力し、採算が悪化する受注生産はせずに、標準品を販売することで利益率の確保を目論んだ。なお、生産量の目安は月産50個〜1万個とレンジが広いが、他社比較で「より多く量産できる個数」を生産量として定義していた。
半導体レーザーによるセンサの販売を開始
商号をキーエンスに変更
FY87
1987/3
売上高
73.21億円
当期純利益
12.06億円
プログラマブルコントローラの販売を開始
FY88
1988/3
売上高
101.4億円
当期純利益
15.84億円
大阪証券取引所第2部に株式上場
601億円の調達と45%の持分維持を両立させた資本設計
FY89
1989/3
売上高
146.6億円
当期純利益
27.84億円
FY91
1991/3
売上高
262億円
営業利益を賞与で還元
営業利益率50%と平均年収2000万円の表裏一体
FY95
1995/3
売上高
387億円
当期純利益
77.9億円
大阪市に新本社・研究所を竣工
FY96
1996/3
売上高
490億円
当期純利益
112億円
FY97
1997/3
売上高
589億円
当期純利益
134億円
FY98
1998/3
売上高
709億円
当期純利益
164億円
FY99
1999/3
売上高
651億円
当期純利益
131億円
大幅な減収減益へ
不況により主要顧客である国内製造業の設備投資がストップ。キーエンスも販売不審へ
FY00
2000/3
売上高
788億円
当期純利益
193億円
FY01
2001/3
売上高
1,011億円
当期純利益
274億円
佐々木道夫氏が代表取締役社長に就任
創業者の滝崎武光氏は会長として経営に従事。以後、キーエンス出身者が社長を歴任する体制へ
FY03
2003/3
売上高
936億円
当期純利益
237億円
FY04
2004/3
売上高
1,172億円
当期純利益
352億円
FY05
2005/3
売上高
1,394億円
当期純利益
452億円
FY06
2006/3
売上高
1,582億円
当期純利益
504億円
FY07
2007/3
売上高
1,827億円
当期純利益
586億円
FY08
2008/3
売上高
2,006億円
当期純利益
632億円
FY09
2009/3
売上高
1,653億円
当期純利益
419億円
リーマンショックにより大幅減益へ
リーマンショックによる経済不況で、企業の設備投資がストップ。設備投資動向に業績が依存するキーエンスは減収減益に至った。
FY10
2010/3
売上高
1,361億円
当期純利益
376億円
ジャストシステムの株式取得
経営不振に陥っていたジャストシステムを救済するため、第三者割当増資により株式44%を45億円にて取得。異業種ながらも、キーエンスはジャストシステムの開発力を評価して出資を決めた。
FY11
2011/3
売上高
1,848億円
当期純利益
553億円
山本社長が就任。グローバル展開を本格化
20年の助走とリーマンショックが開いた海外市場
FY12
2012/3
売上高
1,993億円
当期純利益
581億円
FY13
2013/3
売上高
1,658億円
親会社株主に帰属する当期純利益
520億円
FY14
2014/3
売上高
2,650億円
親会社株主に帰属する当期純利益
859億円
FY15
2015/3
売上高
3,340億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,210億円
FY16
2016/3
売上高
963億円
親会社株主に帰属する当期純利益
324億円
IRの開示姿勢が投資家から不評
2015年ごろのキーエンスは株主との対話を避ける上場企業として投資家から問題視された。特に余剰となった現金の使い道に関する不透明さが不評を買った。
FY17
2017/3
売上高
3,163億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,206億円
FY18
2018/3
売上高
5,268億円
親会社株主に帰属する当期純利益
2,105億円
FY19
2019/3
売上高
5,870億円
親会社株主に帰属する当期純利益
2,261億円
FY20
2020/3
売上高
5,518億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,981億円
FY21
2021/3
売上高
5,381億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,972億円
FY22
2022/3
売上高
7,551億円
親会社株主に帰属する当期純利益
3,033億円
中田社長の再任賛成比率80%
高収益を確保する一方で、用途がない資金が株主に還元されないこと受けて、海外の機関投資家を中心にキーエンスの経営陣に対する不信感が増大。2022年6月の株主総会において、中田社長に対する取締役の再任賛成比率は80.88%、名誉会長(創業者)である滝崎武光氏の取締役の再任賛成比率は86.69%であり、投資家からの信頼を喪失しつつある。
FY23
2023/3
売上高
9,224億円
親会社株主に帰属する当期純利益
3,629億円
過去最高益を達成
海外展開の好調で過去最高益へ
FY24
2024/3
売上高
9,672億円
親会社株主に帰属する当期純利益
3,696億円
FY25
2025/3
売上高
10,591億円
親会社株主に帰属する当期純利益
3,986億円
  1. 会社設立
    滝崎武光氏がリード電機を創業
    営業利益率20%の祖業を捨てた利益率基準の経営
  2. 交流磁界センサに参入
    原価ではなく導入効果で値付けする価格構造の原型
  3. リード電機株式会社を設立
  4. 光学センサーの販売を開始
  5. センサに集中投資。切断機から事業撤退

    1982年の時点でキーエンスの祖業であった「自動線材切断機」は営業利益率が20%(1989/5/22日経ビジネス)の高収益事業であったが。しかし、創業者の滝崎武光氏はセンサ事業(営業利益率40%)よりも収益性が低いことを理由に撤退を決断。また、顧客の一極集中によるリスクを防ぐために、当時、キーエンスの売上高の20%を占めていた某機械メーカーとの取引縮小を決断するなど、値下げ圧力を回避する方向にビジネスを変えた。

  6. 電子部品業界向け光学センサの販売を開始
  7. 本社を大阪府高槻市に移転
  8. クレポ株式会社を設立(製造子会社)

    製造子会社としてクレボを設立し、全製品のうちノウハウが鍵を握る25%の製品を子会社で生産。残りの75%はファブレスとして協力会社に製造を委託した。キーエンスは製品開発・企画・販売に注力し、採算が悪化する受注生産はせずに、標準品を販売することで利益率の確保を目論んだ。なお、生産量の目安は月産50個〜1万個とレンジが広いが、他社比較で「より多く量産できる個数」を生産量として定義していた。

  9. 半導体レーザーによるセンサの販売を開始
  10. 商号をキーエンスに変更
  11. プログラマブルコントローラの販売を開始
  12. 大阪証券取引所第2部に株式上場
    601億円の調達と45%の持分維持を両立させた資本設計
  13. 営業利益を賞与で還元
    営業利益率50%と平均年収2000万円の表裏一体
  14. 大阪市に新本社・研究所を竣工
  15. 大幅な減収減益へ

    不況により主要顧客である国内製造業の設備投資がストップ。キーエンスも販売不審へ

  16. 佐々木道夫氏が代表取締役社長に就任

    創業者の滝崎武光氏は会長として経営に従事。以後、キーエンス出身者が社長を歴任する体制へ

  17. リーマンショックにより大幅減益へ

    リーマンショックによる経済不況で、企業の設備投資がストップ。設備投資動向に業績が依存するキーエンスは減収減益に至った。

  18. ジャストシステムの株式取得

    経営不振に陥っていたジャストシステムを救済するため、第三者割当増資により株式44%を45億円にて取得。異業種ながらも、キーエンスはジャストシステムの開発力を評価して出資を決めた。

  19. 山本社長が就任。グローバル展開を本格化
    20年の助走とリーマンショックが開いた海外市場
  20. IRの開示姿勢が投資家から不評

    2015年ごろのキーエンスは株主との対話を避ける上場企業として投資家から問題視された。特に余剰となった現金の使い道に関する不透明さが不評を買った。

  21. 中田社長の再任賛成比率80%

    高収益を確保する一方で、用途がない資金が株主に還元されないこと受けて、海外の機関投資家を中心にキーエンスの経営陣に対する不信感が増大。2022年6月の株主総会において、中田社長に対する取締役の再任賛成比率は80.88%、名誉会長(創業者)である滝崎武光氏の取締役の再任賛成比率は86.69%であり、投資家からの信頼を喪失しつつある。

  22. 過去最高益を達成

    海外展開の好調で過去最高益へ

歴史的証言

山崎弘郎(東京大学・工学部・教授)
「私が10年前に企業にいてセンサー開発を手がけていた時代とは様変わりだ。マイコンとセンサーの技術差は徐々に縮小してきたと思う」
滝崎武光(キーエンス・創業者)
「産業界の合理化、省力化に対する非常に大きな需要に応えるため、株式会社組織に改組」
滝崎武光
「他社にない製品なので、商社、代理店を通じてPRすると、当社製品の価値がうまく顧客に伝わらない」
滝崎武光
「イデオロギーでは世の中は変わらない」
滝崎武光
「我々は工業用のセンサー、中でもコンベアや自動化ラインで使うセンサーを生産しているんですが、たまたま工場の自動化という流れに乗ったのが大きいですね。半導体、自動車を始め、大量生産する工場なら大部分がうちのお得意先になる。工場と名のつくところでセンサーを使わないのは、家具工場くらいでしょう」「それに、うちは他社にない商品がほとんどなんです。同じセンサーを作るにしても、クリーンルームで使えるものとか、超小型のものとか、特徴のはっきりした製品ばかり手がけている。ですからオムロン、アンリツ、松下電工といったほかのセンサーメーカーと正面からぶつからないわけですね。」
滝崎武光
「付加価値を生み出すのは技術やサイエンス。過去ではありません。本社ビルに化石のオブジェを置いてあるのも、変化に対応していかなければ化石になる、というメッセージです。キーエンスに過去は不要です。ですから社史も作りません。私が年をとって懐古趣味になったら個人として作るかもしれませんが、会社として過去を振り返っては絶対にダメです」
滝崎武光
「カリスマというと、全て自分で決裁するイメージがありますよね。そうではなくて、権限を委譲して、考え方を伝えて現場と一緒に考えていかないと、いいアイデアは生まれない」
佐々木道夫(社長)
「大きな需要が見込める海外市場の開拓を急いでいる。世界に営業拠点を巡らせてアジア、米国、欧州の三極体制を作っていきたい。連結決算ベースで20%強の海外売上高比率を50%に高めたい。生産の委託もアジアを中心に増やす」
佐々木道夫(社長)
「2006年3月期中に中国での拠点を現在より4カ所増やして10カ所にするほか、北・中米と欧州でも計10カ所程度増やし、70カ所体制とする」

参考文献・出所

有価証券報告書
日経ビジネス 1991/6/24
日経ビジネス 2003/10/27
日経ビジネス 1989/5/22
証券アナリストジャーナル 1987/12
日経産業新聞 1983/12/1
日経産業新聞 1984/10/5
日経ビジネス 2022/02/18
日経ビジネス 2023/4
日本経済新聞 2004/9/9
日本経済新聞 2004/11/24
週刊東洋経済 2015/3/28
日本経済新聞 2017/4/28
日本経済新聞 2024/5/21
日本経済新聞 2025/10/29