沿革年表 1985〜2026年における重要度別の出来事(合計36件)
| 年月 | 区分 | 社長/CEO | 出来事 | 年度 | 売上高 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
重要事項会社設立 | 株式会社国際貿易商事を設立 歴史的意義yutaka sugiura 三木正浩氏が29歳で設立した国際貿易商事は卸売業として出発し、ホーキンス・コスビー・バンズなど欧米ブランドの国内独占販売権を蓄積した。この「販売権を自社で握る卸売業者」という立場は、1990年に小売業ABCマートを子会社として設立した際、他の小売店と競合しながらも商品供給を独占できる優位性を与えた。卸売業時代に築いたブランド資産と韓国での生産体制が、のちのSPA型小売チェーンへの転換を構造的に可能にした原点である。 | 1985 1-12月 | ||||
業務提携 | ホーキンスの国内独占販売権を取得 歴史的意義yutaka sugiura ホーキンスはロンドンの若者に流行していたが日本では完全に無名であり、だからこそ独占販売権が未取得の状態にあった。三木氏は現地店舗で商品を見て直接メーカーに交渉するという即断即決の手法で、競合が存在しない段階で日本市場の独占権を確保した。この「海外で流行中だが日本未上陸のブランドを先取りする」仕入れモデルは、コスビーやバンズにも適用され、ITCの商品力の源泉となった。 | 1986 1-12月 | ||||
商号を「インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)」へ変更・本社を荒川区へ移転 1987年7月、東京都荒川区三河島へ本社を移転し、株式会社国際貿易商事から「株式会社インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)」へ商号変更した。あわせて米国GERRY COSBY & CO.,INC.社と「COSBY」の国内商標使用権・独占販売権契約を締結(1999年8月に契約期間満了で終了)。 | FY88 1988/2 | 売上高 25億円 | 経常利益 0億円 | |||
FY89 1989/2 | 売上高 31億円 | 経常利益 5億円 | ||||
重要事項業態転換新規事業 | ABCマート1号店を開業・小売業に参入 歴史的意義yutaka sugiura ABCマート1号店は上野アメ横に開業し、アメ横4店舗で18億円・渋谷3店舗で14億円と、同一地区に複数店舗を出す異例のドミナント戦略を採用した。2000年時点で直営25店にとどまる慎重な出店ペースにもかかわらず営業利益率7.2%を確保できた背景には、独占販売権を持つブランドによる商品力と、都心部の若者集客地区への集中出店がある。このモデルが1999年以降のSC積極出店の基盤となった。 | FY90 1990/2 | 売上高 34億円 | 経常利益 1億円 | ||
靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始 歴史的意義yutaka sugiura ITCはホーキンスの生産をイタリアや韓国に委託するSPAを構築し、30%の値下げを実施しながら利益率24%を維持した。カジュアルシューズでグローバルにSPAを構築した最先発企業として、品質と価格を同時に満たせる国内唯一のポジションを確立。独占販売権と生産ライセンスの両方を握ることで、ブランド力・生産力・価格競争力の三要素を自社で統合する体制を完成させた。 | ||||||
会社設立 | 靴小売を担う子会社「有限会社エービーシー・マート」を設立 1990年8月、靴小売を目的に連結子会社「有限会社エービーシー・マート」を出資金10百万円で設立。1997年3月に株式会社へ改組(資本金100百万円)し、後にこの小売子会社が祖業のITCを吸収して中核会社となった。 | FY91 1991/2 | 売上高 47億円 | 経常利益 5億円 | ||
新規事業業務提携 | 米VANS社と「VANS」の国内独占販売権契約を締結 1991年1月、米VANS,INC.と「VANS」の国内独占販売権契約を締結。1994年6月には同社と国内商標使用権契約も結び、VANSはホーキンスと並ぶ中核の自社運営ブランドとなった。 無名の海外ブランドを独占的に押さえて育てる「ブランド源流確保」型の仕入れ戦略 | |||||
FY92 1992/2 | 売上高 75億円 | 経常利益 18億円 | ||||
FY93 1993/2 | 売上高 130億円 | 当期純利益 34億円 | ||||
業態転換 | 「G.T.HAWKINS」の商標権を買収し自社ブランド化 1986年に国内総代理店、1991年6月にライセンス生産権を得ていた英G.T.HAWKINS LIMITED社から、1995年3月に「G.T.HAWKINS」の商標権そのものを買収。代理店から商標保有へ進み、企画・生産・販売を自社で握るSPA型の主力ブランドとした。 代理店からブランド所有者へ移行し、自社ブランドSPAの中核を確立した転機 | FY96 1996/2 | ||||
重要事項 | ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用 歴史的意義yutaka sugiura 申告所得37億円の高収益を背景に木村拓哉を起用したTVCMに40億円を投下し、FY1996に売上高268億円を達成した。しかしテレビの大量露出はホーキンスの需要を短期間で消化し尽くし、ブーム一巡後の売上低迷を招いた。欧州への展開も失敗し清算に至ったこの経験は、単一ブランド依存の卸売業モデルの限界を顕在化させ、三木氏が小売業ABCマートへの業態転換を決断する伏線となった。 | |||||
FY97 1997/2 | 売上高 268億円 | 当期純利益 24億円 | ||||
FY98 1998/2 | 売上高 207億円 | 当期純利益 17億円 | ||||
本社を東京都渋谷区神南へ移転 1998年5月、本社を東京都渋谷区神南へ移転。あわせて「エア・ライト」「トラベラー」などの商品を展開した。 | FY99 1999/2 | 売上高 246億円 | 当期純利益 27億円 | |||
ABCマートの積極出店を開始・SCに照準 歴史的意義yutaka sugiura 大店法改正によるSC市場の拡大を、テナント出店による全国展開に転化したのが1999年の方針転換であった。25店舗の都心路面店から出発し、ららぽーと・南町田GMなど全国SCへの積極出店で店舗数を急増させた。路面店時代に培ったSPAの商品力と売場起点の商品企画、正社員中心の店舗運営が、SCテナントとしての差別化要因となり、のちの国内1000店舗体制の礎を築いた。 | FY00 2000/2 | 売上高 267億円 | ||||
組織再編 | 形式上の存続会社「五榮建設」と合併(単位株制度を導入) 2000年4月、端株制度を採っていた株式を1,000株1単位の単位株制度へ移行するため、形式上の存続会社である連結子会社「五榮建設株式会社」と合併。株式店頭登録に向けた資本制度の整備であった。 | FY01 2001/2 | 売上高 283億円 | 当期純利益 43億円 | ||
株式上場 | 株式を店頭公開 2000年にITCが株式を店頭公開した。2001年3月末の大株主は三木正浩氏37.96%、親族24.97%、有限会社イーエムプランニング12.99%で、三木家が過半を保持する資本政策を採った。高収益で大規模な資金需要が乏しく、上場の主目的は信用力向上と創業者持分の流動性確保と推定される。2002年11月に東証1部へ上場後も三木家の保有比率は高水準を維持し、2024年3月末でも合計68%を保有している。 創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」 | |||||
設備投資 | ABCマート銀座店を開業(土地取得あり) 2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。 | |||||
企業買収組織再編 | 地方展開の合弁会社を買収 ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。 | |||||
重要事項業態転換事業撤退組織再編 | ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退 1999年以降、小売店舗の積極出店でABCマートが成長する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉で売上が低迷した。卸売の営業利益率は25%前後と高水準だったが成長性に難があった。そこで2002年にITCがABCマートを吸収合併し、商号を「エービーシー・マート」へ変更して小売業に特化する方針を鮮明にした。つまり利益率25%の卸売よりも成長余地のある小売への集中を優先し、法人名と事業実態を一致させた。 利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断 | FY02 2002/2 | 売上高 326億円 | 当期純利益 57億円 | ||
合弁設立海外進出 | ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立 ABCマートは海外小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%で、現地企業とパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡し、ファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった。2004年から本格出店を開始し、以後韓国はABCマート海外事業で最大の売上を確保する地域となった。2024年までに店舗数は300を突破した。 経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理 | |||||
株式上場 | 金城正宏 | 東京証券取引所市場第一部に上場 2000年の店頭登録から2年で、2002年11月に東京証券取引所市場第一部へ直接上場した。高収益で資金需要が乏しいなか、信用力向上を主目的とする上場であり、創業家の高い保有比率は維持された。 資金調達よりも信用力を狙い、創業家支配を保ったまま一部上場を実現した資本政策 | FY03 2003/2 | 売上高 389億円 | 当期純利益 41億円 | |
社長交代 | 金城正宏 | 金城正宏氏が代表取締役社長に就任 2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。 | FY04 2004/2 | 売上高 463億円 | 当期純利益 38億円 | |
| 金城正宏 | FY05 2005/2 | 売上高 541億円 | 当期純利益 44億円 | |||
| 野口実 | FY06 2006/2 | 売上高 661億円 | 当期純利益 106億円 | |||
社長交代 | 野口実 | 野口実氏が代表取締役社長に就任 2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年入社の叩き上げで2024年時点も社長を務める。前社長の金城正弘氏は専務に降格した。同時に創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」で役職を退き、オーナー(筆頭株主)で関わる形となった。すなわち2007年は所有と経営の分離が進む転換点であった。野口氏は国内SC出店と大型店GRAND STAGE開発、海外は韓国・台湾を重視し漸進的改善で成長を志向した。 叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線 | FY07 2007/2 | 売上高 777億円 | 当期純利益 100億円 | |
| 野口実 | FY08 2008/2 | 売上高 886億円 | 当期純利益 105億円 | |||
業務提携 | 野口実 | 株式会社ユナイテッドアローズへ資本参加(2010年に売却) 2009年、セレクトショップ大手の株式会社ユナイテッドアローズへ資本参加したが、2010年には保有株式を売却した。靴専業の枠を超えた提携を模索しつつ、短期で資本関係を解消した。 | FY09 2009/2 | 売上高 973億円 | 当期純利益 110億円 | |
業態転換 | 野口実 | 旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始 ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。 | FY10 2010/2 | 売上高 1,135億円 | 当期純利益 144億円 | |
企業買収海外進出 | 台湾「JOINT POWER INTERNATIONAL」へ資本参加し子会社化 2010年2月、台湾で靴小売を展開するJOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.へ資本参加し出資比率55.0%で連結子会社化。同年8月の増資で70.0%へ引き上げ、社名を「ABC-MART TAIWAN,INC.」へ変更した。韓国に次ぐ第2の海外市場となった。 | |||||
海外進出 | 野口実 | 台湾への小売出店を開始 韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。 | FY11 2011/2 | 売上高 1,273億円 | 当期純利益 183億円 | |
組織再編 | 野口実 | 「ABC-MART KOREA,INC.」を完全子会社化 2002年に出資比率51.0%で設立した韓国法人を、2010年10月の増資(68.0%)を経て2011年3月に出資比率100.0%の完全子会社とした。最大の海外市場である韓国事業の支配を強めた。 | FY12 2012/2 | 売上高 1,407億円 | 当期純利益 156億円 | |
企業買収海外進出 | 野口実 | 米LaCrosseをTOBにて買収 2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBで買収した。LaCrosseは「ダナー」「ラクロス」等のアウトドア・ワークブーツを展開する。ABCマートにとってホーキンス取得以来の海外ブランド買収で、カジュアル中心の構成にアウトドア分野を加える狙いと推定される。買収価格は110億円、株式100%取得で「のれん」51億円を計上。創業家退任後の野口体制下で数少ない大型投資案件となった。 ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断 | FY13 2013/2 | 売上高 1,594億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 172億円 | |
転換社債型新株予約権付き社債を発行 2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州投資家中心に330億円を調達した。幹事引受はバークレー。用途はFY2013〜FY2015の3年で年100億円を国内および韓国・台湾の大型店舗新設に充当する計画。転換条件は2016年以降に株価が転換価格を30%上回った場合とし、2016年2月期に条件を満たし権利行使が発生、資本金・資本準備金が約330億円増加し社債は株式へ転換された。 転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計 | ||||||
設備投資業態転換 | 野口実 | 国内初の自社靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」を設立 2013年3月、石川県羽咋郡に国内初の靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」を設立。輸入・卸売から始まった同社が、企画・製造・小売を一貫して担う製造小売(SPA)の内製基盤を国内に持った。 海外生産委託に加え国内自社製造を持ち、SPAの川上を内製化した垂直統合の一歩 | FY14 2014/2 | 売上高 1,880億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 199億円 | |
| 野口実 | FY15 2015/2 | 売上高 2,135億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 243億円 | |||
| 野口実 | FY16 2016/2 | 売上高 2,381億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 261億円 | |||
| 野口実 | FY17 2017/2 | 売上高 2,389億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 283億円 | |||
| 野口実 | 韓国で店舗数200を達成 2017年4月、韓国のABC-MART店舗数が200に到達。2004年の本格出店開始以降、韓国は海外事業で最大の市場へ成長した。あわせてスポーツ強化業態「ABC-MART SPORTS」を展開した。 | FY18 2018/2 | 売上高 2,542億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 297億円 | ||
海外進出業態転換 | 野口実 | アジアで旗艦店を出店 アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。 | FY19 2019/2 | 売上高 2,667億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 302億円 | |
国内1000店舗体制へ ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。 | ||||||
| 野口実 | FY20 2020/2 | 売上高 2,723億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 297億円 | |||
| 野口実 | FY21 2021/2 | 売上高 2,202億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 192億円 | |||
| 野口実 | FY22 2022/2 | 売上高 2,439億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 173億円 | |||
企業買収 | 野口実 | 「株式会社オッシュマンズ・ジャパン」を完全子会社化 2022年3月、スポーツ用品店を運営する株式会社オッシュマンズ・ジャパンを出資比率100.0%で完全子会社化(2023年3月に連結子会社化)。靴専業からスポーツ・アウトドア物販へ業容を広げた。 | FY23 2023/2 | 売上高 2,900億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 302億円 | |
合弁設立海外進出 | ベトナムに合弁会社「ABC-MART VIETNAM」を設立 2022年3月、ベトナム社会主義共和国に合弁会社「ABC-MART VIETNAM Co.,Ltd.」を出資比率70.0%で設立し連結子会社化。韓国・台湾に続き、東南アジアへ初めて進出した。 | |||||
東京証券取引所プライム市場へ移行 2022年4月の市場区分再編に伴い、東京証券取引所の最上位区分であるプライム市場へ移行した。 | ||||||
| 野口実 | グループ出店で1,500店舗を達成 2024年、国内外のグループ店舗数が1,500に到達した。2025年2月末時点で国内約1,099店舗、海外約400店舗を展開する。 | FY24 2024/2 | 売上高 3,441億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 400億円 | ||
| 服部喜一郎 | GS旗艦店を銀座に新規出店(予定) | FY25 2025/2 | 売上高 3,722億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 453億円 | ||
FY26 2026/2 | 売上高 3,786億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 463億円 |
- 株式会社国際貿易商事を設立三木正浩氏が29歳で設立した国際貿易商事は卸売業として出発し、ホーキンス・コスビー・バンズなど欧米ブランドの国内独占販売権を蓄積した。この「販売権を自社で握る卸売業者」という立場は、1990年に小売業ABCマートを子会社として設立した際、他の小売店と競合しながらも商品供給を独占できる優位性を与えた。卸売業時代に築いたブランド資産と韓国での生産体制が、のちのSPA型小売チェーンへの転換を構造的に可能にした原点である。
- ホーキンスの国内独占販売権を取得ホーキンスはロンドンの若者に流行していたが日本では完全に無名であり、だからこそ独占販売権が未取得の状態にあった。三木氏は現地店舗で商品を見て直接メーカーに交渉するという即断即決の手法で、競合が存在しない段階で日本市場の独占権を確保した。この「海外で流行中だが日本未上陸のブランドを先取りする」仕入れモデルは、コスビーやバンズにも適用され、ITCの商品力の源泉となった。
- 商号を「インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)」へ変更・本社を荒川区へ移転
1987年7月、東京都荒川区三河島へ本社を移転し、株式会社国際貿易商事から「株式会社インターナショナル・トレーディング・コーポレーション(ITC)」へ商号変更した。あわせて米国GERRY COSBY & CO.,INC.社と「COSBY」の国内商標使用権・独占販売権契約を締結(1999年8月に契約期間満了で終了)。
- ABCマート1号店を開業・小売業に参入ABCマート1号店は上野アメ横に開業し、アメ横4店舗で18億円・渋谷3店舗で14億円と、同一地区に複数店舗を出す異例のドミナント戦略を採用した。2000年時点で直営25店にとどまる慎重な出店ペースにもかかわらず営業利益率7.2%を確保できた背景には、独占販売権を持つブランドによる商品力と、都心部の若者集客地区への集中出店がある。このモデルが1999年以降のSC積極出店の基盤となった。
- 靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始ITCはホーキンスの生産をイタリアや韓国に委託するSPAを構築し、30%の値下げを実施しながら利益率24%を維持した。カジュアルシューズでグローバルにSPAを構築した最先発企業として、品質と価格を同時に満たせる国内唯一のポジションを確立。独占販売権と生産ライセンスの両方を握ることで、ブランド力・生産力・価格競争力の三要素を自社で統合する体制を完成させた。
- 靴小売を担う子会社「有限会社エービーシー・マート」を設立
1990年8月、靴小売を目的に連結子会社「有限会社エービーシー・マート」を出資金10百万円で設立。1997年3月に株式会社へ改組(資本金100百万円)し、後にこの小売子会社が祖業のITCを吸収して中核会社となった。
- 米VANS社と「VANS」の国内独占販売権契約を締結
1991年1月、米VANS,INC.と「VANS」の国内独占販売権契約を締結。1994年6月には同社と国内商標使用権契約も結び、VANSはホーキンスと並ぶ中核の自社運営ブランドとなった。
無名の海外ブランドを独占的に押さえて育てる「ブランド源流確保」型の仕入れ戦略 - 「G.T.HAWKINS」の商標権を買収し自社ブランド化
1986年に国内総代理店、1991年6月にライセンス生産権を得ていた英G.T.HAWKINS LIMITED社から、1995年3月に「G.T.HAWKINS」の商標権そのものを買収。代理店から商標保有へ進み、企画・生産・販売を自社で握るSPA型の主力ブランドとした。
代理店からブランド所有者へ移行し、自社ブランドSPAの中核を確立した転機 - ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用申告所得37億円の高収益を背景に木村拓哉を起用したTVCMに40億円を投下し、FY1996に売上高268億円を達成した。しかしテレビの大量露出はホーキンスの需要を短期間で消化し尽くし、ブーム一巡後の売上低迷を招いた。欧州への展開も失敗し清算に至ったこの経験は、単一ブランド依存の卸売業モデルの限界を顕在化させ、三木氏が小売業ABCマートへの業態転換を決断する伏線となった。
- 本社を東京都渋谷区神南へ移転
1998年5月、本社を東京都渋谷区神南へ移転。あわせて「エア・ライト」「トラベラー」などの商品を展開した。
- ABCマートの積極出店を開始・SCに照準大店法改正によるSC市場の拡大を、テナント出店による全国展開に転化したのが1999年の方針転換であった。25店舗の都心路面店から出発し、ららぽーと・南町田GMなど全国SCへの積極出店で店舗数を急増させた。路面店時代に培ったSPAの商品力と売場起点の商品企画、正社員中心の店舗運営が、SCテナントとしての差別化要因となり、のちの国内1000店舗体制の礎を築いた。
- 形式上の存続会社「五榮建設」と合併(単位株制度を導入)
2000年4月、端株制度を採っていた株式を1,000株1単位の単位株制度へ移行するため、形式上の存続会社である連結子会社「五榮建設株式会社」と合併。株式店頭登録に向けた資本制度の整備であった。
- 株式を店頭公開
2000年にITCが株式を店頭公開した。2001年3月末の大株主は三木正浩氏37.96%、親族24.97%、有限会社イーエムプランニング12.99%で、三木家が過半を保持する資本政策を採った。高収益で大規模な資金需要が乏しく、上場の主目的は信用力向上と創業者持分の流動性確保と推定される。2002年11月に東証1部へ上場後も三木家の保有比率は高水準を維持し、2024年3月末でも合計68%を保有している。
創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」 - ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)
2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。
- 地方展開の合弁会社を買収
ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。
- ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退
1999年以降、小売店舗の積極出店でABCマートが成長する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉で売上が低迷した。卸売の営業利益率は25%前後と高水準だったが成長性に難があった。そこで2002年にITCがABCマートを吸収合併し、商号を「エービーシー・マート」へ変更して小売業に特化する方針を鮮明にした。つまり利益率25%の卸売よりも成長余地のある小売への集中を優先し、法人名と事業実態を一致させた。
利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断 - ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立
ABCマートは海外小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%で、現地企業とパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡し、ファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった。2004年から本格出店を開始し、以後韓国はABCマート海外事業で最大の売上を確保する地域となった。2024年までに店舗数は300を突破した。
経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理 - 東京証券取引所市場第一部に上場
2000年の店頭登録から2年で、2002年11月に東京証券取引所市場第一部へ直接上場した。高収益で資金需要が乏しいなか、信用力向上を主目的とする上場であり、創業家の高い保有比率は維持された。
資金調達よりも信用力を狙い、創業家支配を保ったまま一部上場を実現した資本政策 - 金城正宏氏が代表取締役社長に就任
2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。
- 野口実氏が代表取締役社長に就任
2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年入社の叩き上げで2024年時点も社長を務める。前社長の金城正弘氏は専務に降格した。同時に創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」で役職を退き、オーナー(筆頭株主)で関わる形となった。すなわち2007年は所有と経営の分離が進む転換点であった。野口氏は国内SC出店と大型店GRAND STAGE開発、海外は韓国・台湾を重視し漸進的改善で成長を志向した。
叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線 - 株式会社ユナイテッドアローズへ資本参加(2010年に売却)
2009年、セレクトショップ大手の株式会社ユナイテッドアローズへ資本参加したが、2010年には保有株式を売却した。靴専業の枠を超えた提携を模索しつつ、短期で資本関係を解消した。
- 旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始
ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。
- 台湾「JOINT POWER INTERNATIONAL」へ資本参加し子会社化
2010年2月、台湾で靴小売を展開するJOINT POWER INTERNATIONAL Ltd.へ資本参加し出資比率55.0%で連結子会社化。同年8月の増資で70.0%へ引き上げ、社名を「ABC-MART TAIWAN,INC.」へ変更した。韓国に次ぐ第2の海外市場となった。
- 台湾への小売出店を開始
韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。
- 「ABC-MART KOREA,INC.」を完全子会社化
2002年に出資比率51.0%で設立した韓国法人を、2010年10月の増資(68.0%)を経て2011年3月に出資比率100.0%の完全子会社とした。最大の海外市場である韓国事業の支配を強めた。
- 米LaCrosseをTOBにて買収
2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBで買収した。LaCrosseは「ダナー」「ラクロス」等のアウトドア・ワークブーツを展開する。ABCマートにとってホーキンス取得以来の海外ブランド買収で、カジュアル中心の構成にアウトドア分野を加える狙いと推定される。買収価格は110億円、株式100%取得で「のれん」51億円を計上。創業家退任後の野口体制下で数少ない大型投資案件となった。
ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断 - 転換社債型新株予約権付き社債を発行
2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州投資家中心に330億円を調達した。幹事引受はバークレー。用途はFY2013〜FY2015の3年で年100億円を国内および韓国・台湾の大型店舗新設に充当する計画。転換条件は2016年以降に株価が転換価格を30%上回った場合とし、2016年2月期に条件を満たし権利行使が発生、資本金・資本準備金が約330億円増加し社債は株式へ転換された。
転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計 - 国内初の自社靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」を設立
2013年3月、石川県羽咋郡に国内初の靴製造工場「ABC SHOE FACTORY」を設立。輸入・卸売から始まった同社が、企画・製造・小売を一貫して担う製造小売(SPA)の内製基盤を国内に持った。
海外生産委託に加え国内自社製造を持ち、SPAの川上を内製化した垂直統合の一歩 - 韓国で店舗数200を達成
2017年4月、韓国のABC-MART店舗数が200に到達。2004年の本格出店開始以降、韓国は海外事業で最大の市場へ成長した。あわせてスポーツ強化業態「ABC-MART SPORTS」を展開した。
- アジアで旗艦店を出店
アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。
- 国内1000店舗体制へ
ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。
- 「株式会社オッシュマンズ・ジャパン」を完全子会社化
2022年3月、スポーツ用品店を運営する株式会社オッシュマンズ・ジャパンを出資比率100.0%で完全子会社化(2023年3月に連結子会社化)。靴専業からスポーツ・アウトドア物販へ業容を広げた。
- ベトナムに合弁会社「ABC-MART VIETNAM」を設立
2022年3月、ベトナム社会主義共和国に合弁会社「ABC-MART VIETNAM Co.,Ltd.」を出資比率70.0%で設立し連結子会社化。韓国・台湾に続き、東南アジアへ初めて進出した。
- 東京証券取引所プライム市場へ移行
2022年4月の市場区分再編に伴い、東京証券取引所の最上位区分であるプライム市場へ移行した。
- グループ出店で1,500店舗を達成
2024年、国内外のグループ店舗数が1,500に到達した。2025年2月末時点で国内約1,099店舗、海外約400店舗を展開する。
- GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)