ABCマートの沿革(1985〜2025年)

ABCマートの創業から現在までの主要な出来事・経営判断・組織変化を年月順に一覧できる沿革(社史年表)ページです。 各年の売上高・純利益などの業績推移と、歴史的意義の解説をあわせて掲載しています。 社史・報道資料などの公開情報をもとに重要事項を判断の上、作成しています。

年度売上高純利益年月区分出来事歴史的意義
FY86
1986/2
株式会社国際貿易商事を設立
独占販売権の蓄積がSPA型小売への業態転換を準備した創業期
ホーキンスの国内独占販売権を取得
日本で無名のブランドを現地交渉で独占した先取り型の仕入れ戦略
FY88
1988/2
売上高
25億円
申告所得
0億円
FY89
1989/2
売上高
31億円
申告所得
5億円
FY90
1990/2
売上高
34億円
申告所得
1億円
靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始
韓国での生産委託が「高利益率×低価格」を両立させたSPA設計
ABCマート1号店を開業・小売業に参入
アメ横・渋谷への同一地区複数出店が生んだ都心ドミナント戦略
FY91
1991/2
売上高
47億円
申告所得
5億円
FY92
1992/2
売上高
75億円
申告所得
18億円
FY93
1993/2
売上高
130億円
当期純利益
34億円
FY96
1996/2
ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用
広告宣伝費40億円がブーム加速と需要枯渇を同時に招いた逆説
FY97
1997/2
売上高
268億円
当期純利益
24億円
FY98
1998/2
売上高
207億円
当期純利益
17億円
FY99
1999/2
売上高
246億円
当期純利益
27億円
FY00
2000/2
売上高
267億円
ABCマートの積極出店を開始・SCに照準
大店法改正をSCテナント出店に転化した全国チェーン化の起点
FY01
2001/2
売上高
283億円
当期純利益
43億円
株式を店頭公開
2000年にITCは株式の店頭公開を実施した。2001年3月末時点の大株主構成は三木正浩氏37.96%・三木氏の親族24.97%・有限会社イーエムプランニング12.99%であり、三木家が過半数の株式を保持する資本政策を採用した。ITCが高収益企業であり、増資を伴う大規模な資金調達の必要性が乏しかったことに由来する。 株式公開時に三木家の株式放出は最小限に抑えられ、上場は事業拡大のための資金調達というよりも、企業の信用力向上と創業者の持分の流動性確保が主な目的であったと推定される。 2002年11月には東京証券取引所第1部に株式上場を果たした。上場後も三木家の株式保有比率は高水準を維持し、2007年に三木正浩氏が社長を退任して経営から退いた後も、2024年3月末時点で三木家は合計68%の株式を保有している。 創業家が68%の株式を保有する構造は、同社の時価総額の増大とともに三木正浩氏の資産が拡大する一方、株式の流動性が低いという市場構造上の課題を内包している。上場企業でありながら創業家が過半数を大幅に超える持分を維持し続ける資本構成は、ABCマートの企業統治に独特の性格を与えている。
創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」
ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)
2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。 ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。
地方展開の合弁会社を買収
ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。
FY02
2002/2
売上高
326億円
当期純利益
57億円
ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退
1999年以降、小売店舗の積極出店によりABCマートが売上成長を記録する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉により売上が低迷していた。卸売業の売上高営業利益率は25%前後と高水準を維持していたが、成長性に難がある状態が続いた。 小売業と卸売業を別法人で運営する二社体制は、創業期には卸売先との関係を維持するために合理的な設計であったが、小売業が主力に成長した段階では組織の複雑さがデメリットとなりつつあった。 2002年に事業再編を実施し、まず連結子会社ABCマートを親会社ITCに吸収合併した。続いて吸収合併後のITCの商号を「エービーシー・マート」に変更し、小売業に特化する方針を鮮明にした。利益率25%の卸売業を存続させる選択肢もあったが、成長余地の大きい小売業への集中を優先した。 この事業再編により、法人名と事業実態が一致する形となった。「ABCマート」というブランドのもとで、卸売業時代のSPA基盤と小売業の店舗網を統合する体制が確立された。
利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断
ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立
ABCマートは海外における小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%であり、現地企業とのパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡しファッションに支出できる若者層が存在する市場であり、ABCマートの商品構成との親和性が高かった。 ABCマートが取り扱うシューズは、若者がファッションに投資できる経済水準が前提となるため、進出先は経済発展が進んだアジア地域に限定された。韓国はこの条件を最も早い段階で満たした市場であった。 韓国における店舗展開は日本国内と同様に、若者が集まる繁華街やSCを中心に出店し、SPAによるコストダウン商品を販売した。2004年から小売出店を本格化して以降、韓国は一貫してABCマートの海外事業で最大の売上を確保する地域となった。 2024年までにABCマートは韓国・台湾・アメリカ・ベトナムの4地域に進出したが、進出時期が早く経済水準が高い韓国での出店数が300店舗を突破し最大となった。日本の小売業として韓国で相応の規模を確保する企業は稀有であり、ABCマートの海外展開は韓国を軸に構築されている。
経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理
FY03
2003/2
売上高
389億円
当期純利益
41億円
FY04
2004/2
売上高
463億円
当期純利益
38億円
金城正宏氏が代表取締役社長に就任
2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。
FY05
2005/2
売上高
541億円
当期純利益
44億円
FY06
2006/2
売上高
661億円
当期純利益
106億円
FY07
2007/2
売上高
776億円
当期純利益
100億円
野口実氏が代表取締役社長に就任
2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年に入社した叩き上げであり、2024年の時点でも社長を歴任している。前社長の金城正弘氏は専務に降格となった。 同時に、創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」としてABCマートの役職から退き、オーナー(筆頭株主)として関わる形となった。ABCマートの歴史において、2007年は創業家が経営から退き所有と経営の分離が進行する転換点であった。 野口氏は国内においてSCへの積極出店を継続しつつ、大型店舗業態GRAND STAGEの開発により売上拡大を目論んだ。海外では韓国・台湾に注力し、店舗出店を積極化するなど国内に囚われない経営方針を遂行した。 経営手法としては大規模な買収や巨額投資を避け、ABCマートの業態を着実に展開する路線を採用した。野口氏自身が「大きいことをどーんとやるより、こつこつと小さな改善をたくさんやる人のほうが伸びる」と語った通り、漸進的な改善の積み重ねによる成長を志向した。
叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線
FY08
2008/2
売上高
886億円
当期純利益
105億円
FY09
2009/2
売上高
973億円
当期純利益
110億円
FY10
2010/2
売上高
1,135億円
当期純利益
144億円
旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始
ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。 GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。
FY11
2011/2
売上高
1,273億円
当期純利益
183億円
台湾への小売出店を開始
韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。
FY12
2012/2
売上高
1,407億円
当期純利益
156億円
FY13
2013/2
売上高
1,594億円
当期純利益
172億円
米LaCrosseをTOBにて買収
2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBにより買収した。LaCrosse社は「ダナー」「ラクロス」といったアウトドア・ワークブーツのブランドを展開するメーカーであった。ABCマートにとってホーキンスの取得以来の海外ブランド買収となった。 ABCマートの事業はカジュアルシューズを中心としていたが、ダナーのようなアウトドアブーツ分野を取り込むことで商品カテゴリの幅を広げる狙いがあったと推定される。 買収価格(取得原価)は110億円であり、ABCマートとしては大規模な買収であった。LaCrosse社の株式100%を取得して完全子会社化し、「のれん」として51億円を計上した。創業家が経営から退いた後の野口体制下で実行された数少ない大型投資案件であった。 ダナー・ラクロスといったブランドの取得は、ABCマートの店舗でこれらのブランドを独占的に扱える環境を整えるものであり、創業期にホーキンスの独占販売権で成長したモデルの延長線上にある意思決定であった。
ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断
転換社債型新株予約権付き社債を発行
2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州の投資家を中心に330億円を調達した。幹事引受会社としてバークレーを選定した。資金用途はFY2013〜FY2015の3カ年で年間100億円をABCマートの出店資金(設備投資)として活用する計画であり、日本国内および海外(韓国・台湾)における大型店舗の新設投資に充当する方針であった。 転換条件は2016年以降のABCマートの株価が転換価格を30%上回った場合に設定された。業績成長と株価上昇が続けば社債は株式に転換され、実質的に返済不要の資金調達となる設計であった。 実際に2016年時点で株価が転換条件を満たし、新株予約権の権利行使が発生した。2016年2月期に資本金・資本準備金が約330億円増加し、社債は株式に転換された。借入金の返済が不要となった代わりに株式の希薄化が生じたが、創業家が68%を保有する資本構成のもとでは希薄化の影響は相対的に限定的であった。
転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計
FY14
2014/2
売上高
1,880億円
当期純利益
199億円
FY15
2015/2
売上高
2,135億円
当期純利益
243億円
FY16
2016/2
売上高
2,381億円
当期純利益
261億円
FY17
2017/2
売上高
2,389億円
当期純利益
283億円
FY18
2018/2
売上高
2,542億円
当期純利益
297億円
FY19
2019/2
売上高
2,667億円
当期純利益
302億円
アジアで旗艦店を出店
アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。
国内1000店舗体制へ
ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。 これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。
FY20
2020/2
売上高
2,723億円
当期純利益
297億円
FY21
2021/2
売上高
2,202億円
当期純利益
192億円
FY22
2022/2
売上高
2,439億円
当期純利益
173億円
FY23
2023/2
売上高
2,900億円
当期純利益
302億円
FY24
2024/2
売上高
3,441億円
当期純利益
400億円
2025
1-12月
GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)
  1. 株式会社国際貿易商事を設立
    独占販売権の蓄積がSPA型小売への業態転換を準備した創業期
  2. ホーキンスの国内独占販売権を取得
    日本で無名のブランドを現地交渉で独占した先取り型の仕入れ戦略
  3. 靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始
    韓国での生産委託が「高利益率×低価格」を両立させたSPA設計
  4. ABCマート1号店を開業・小売業に参入
    アメ横・渋谷への同一地区複数出店が生んだ都心ドミナント戦略
  5. ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用
    広告宣伝費40億円がブーム加速と需要枯渇を同時に招いた逆説
  6. ABCマートの積極出店を開始・SCに照準
    大店法改正をSCテナント出店に転化した全国チェーン化の起点
  7. 株式を店頭公開

    2000年にITCは株式の店頭公開を実施した。2001年3月末時点の大株主構成は三木正浩氏37.96%・三木氏の親族24.97%・有限会社イーエムプランニング12.99%であり、三木家が過半数の株式を保持する資本政策を採用した。ITCが高収益企業であり、増資を伴う大規模な資金調達の必要性が乏しかったことに由来する。 株式公開時に三木家の株式放出は最小限に抑えられ、上場は事業拡大のための資金調達というよりも、企業の信用力向上と創業者の持分の流動性確保が主な目的であったと推定される。 2002年11月には東京証券取引所第1部に株式上場を果たした。上場後も三木家の株式保有比率は高水準を維持し、2007年に三木正浩氏が社長を退任して経営から退いた後も、2024年3月末時点で三木家は合計68%の株式を保有している。 創業家が68%の株式を保有する構造は、同社の時価総額の増大とともに三木正浩氏の資産が拡大する一方、株式の流動性が低いという市場構造上の課題を内包している。上場企業でありながら創業家が過半数を大幅に超える持分を維持し続ける資本構成は、ABCマートの企業統治に独特の性格を与えている。

    創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」
  8. ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)

    2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。 ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。

  9. 地方展開の合弁会社を買収

    ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。

  10. ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退

    1999年以降、小売店舗の積極出店によりABCマートが売上成長を記録する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉により売上が低迷していた。卸売業の売上高営業利益率は25%前後と高水準を維持していたが、成長性に難がある状態が続いた。 小売業と卸売業を別法人で運営する二社体制は、創業期には卸売先との関係を維持するために合理的な設計であったが、小売業が主力に成長した段階では組織の複雑さがデメリットとなりつつあった。 2002年に事業再編を実施し、まず連結子会社ABCマートを親会社ITCに吸収合併した。続いて吸収合併後のITCの商号を「エービーシー・マート」に変更し、小売業に特化する方針を鮮明にした。利益率25%の卸売業を存続させる選択肢もあったが、成長余地の大きい小売業への集中を優先した。 この事業再編により、法人名と事業実態が一致する形となった。「ABCマート」というブランドのもとで、卸売業時代のSPA基盤と小売業の店舗網を統合する体制が確立された。

    利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断
  11. ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立

    ABCマートは海外における小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%であり、現地企業とのパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡しファッションに支出できる若者層が存在する市場であり、ABCマートの商品構成との親和性が高かった。 ABCマートが取り扱うシューズは、若者がファッションに投資できる経済水準が前提となるため、進出先は経済発展が進んだアジア地域に限定された。韓国はこの条件を最も早い段階で満たした市場であった。 韓国における店舗展開は日本国内と同様に、若者が集まる繁華街やSCを中心に出店し、SPAによるコストダウン商品を販売した。2004年から小売出店を本格化して以降、韓国は一貫してABCマートの海外事業で最大の売上を確保する地域となった。 2024年までにABCマートは韓国・台湾・アメリカ・ベトナムの4地域に進出したが、進出時期が早く経済水準が高い韓国での出店数が300店舗を突破し最大となった。日本の小売業として韓国で相応の規模を確保する企業は稀有であり、ABCマートの海外展開は韓国を軸に構築されている。

    経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理
  12. 金城正宏氏が代表取締役社長に就任

    2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。

  13. 野口実氏が代表取締役社長に就任

    2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年に入社した叩き上げであり、2024年の時点でも社長を歴任している。前社長の金城正弘氏は専務に降格となった。 同時に、創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」としてABCマートの役職から退き、オーナー(筆頭株主)として関わる形となった。ABCマートの歴史において、2007年は創業家が経営から退き所有と経営の分離が進行する転換点であった。 野口氏は国内においてSCへの積極出店を継続しつつ、大型店舗業態GRAND STAGEの開発により売上拡大を目論んだ。海外では韓国・台湾に注力し、店舗出店を積極化するなど国内に囚われない経営方針を遂行した。 経営手法としては大規模な買収や巨額投資を避け、ABCマートの業態を着実に展開する路線を採用した。野口氏自身が「大きいことをどーんとやるより、こつこつと小さな改善をたくさんやる人のほうが伸びる」と語った通り、漸進的な改善の積み重ねによる成長を志向した。

    叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線
  14. 旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始

    ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。 GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。

  15. 台湾への小売出店を開始

    韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。

  16. 米LaCrosseをTOBにて買収

    2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBにより買収した。LaCrosse社は「ダナー」「ラクロス」といったアウトドア・ワークブーツのブランドを展開するメーカーであった。ABCマートにとってホーキンスの取得以来の海外ブランド買収となった。 ABCマートの事業はカジュアルシューズを中心としていたが、ダナーのようなアウトドアブーツ分野を取り込むことで商品カテゴリの幅を広げる狙いがあったと推定される。 買収価格(取得原価)は110億円であり、ABCマートとしては大規模な買収であった。LaCrosse社の株式100%を取得して完全子会社化し、「のれん」として51億円を計上した。創業家が経営から退いた後の野口体制下で実行された数少ない大型投資案件であった。 ダナー・ラクロスといったブランドの取得は、ABCマートの店舗でこれらのブランドを独占的に扱える環境を整えるものであり、創業期にホーキンスの独占販売権で成長したモデルの延長線上にある意思決定であった。

    ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断
  17. 転換社債型新株予約権付き社債を発行

    2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州の投資家を中心に330億円を調達した。幹事引受会社としてバークレーを選定した。資金用途はFY2013〜FY2015の3カ年で年間100億円をABCマートの出店資金(設備投資)として活用する計画であり、日本国内および海外(韓国・台湾)における大型店舗の新設投資に充当する方針であった。 転換条件は2016年以降のABCマートの株価が転換価格を30%上回った場合に設定された。業績成長と株価上昇が続けば社債は株式に転換され、実質的に返済不要の資金調達となる設計であった。 実際に2016年時点で株価が転換条件を満たし、新株予約権の権利行使が発生した。2016年2月期に資本金・資本準備金が約330億円増加し、社債は株式に転換された。借入金の返済が不要となった代わりに株式の希薄化が生じたが、創業家が68%を保有する資本構成のもとでは希薄化の影響は相対的に限定的であった。

    転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計
  18. アジアで旗艦店を出店

    アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。

  19. 国内1000店舗体制へ

    ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。 これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。

  20. GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)

参考文献・出所

有価証券報告書
戦略経営者 2000年7月号 2000/7
決算説明資料