ABCマートの沿革・歴史的証言

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1985年〜2025

ABCマートの1985年〜2025年の主要な出来事・経営判断・組織変化を年月順に並べた沿革(社史年表)と、経営者・当事者の歴史的証言

年度売上高純利益年月区分出来事歴史的意義
1985
1-12月
株式会社国際貿易商事を設立
独占販売権の蓄積がSPA型小売への業態転換を準備した創業期
1986
1-12月
ホーキンスの国内独占販売権を取得
日本で無名のブランドを現地交渉で独占した先取り型の仕入れ戦略
FY88
1988/2
売上高
25億円
経常利益
0億円
FY89
1989/2
売上高
31億円
経常利益
5億円
FY90
1990/2
売上高
34億円
経常利益
1億円
靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始
韓国での生産委託が「高利益率×低価格」を両立させたSPA設計
ABCマート1号店を開業・小売業に参入
アメ横・渋谷への同一地区複数出店が生んだ都心ドミナント戦略
FY91
1991/2
売上高
47億円
経常利益
5億円
FY92
1992/2
売上高
75億円
経常利益
18億円
FY93
1993/2
売上高
130億円
当期純利益
34億円
FY96
1996/2
ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用
広告宣伝費40億円がブーム加速と需要枯渇を同時に招いた逆説
FY97
1997/2
売上高
268億円
当期純利益
24億円
FY98
1998/2
売上高
207億円
当期純利益
17億円
FY99
1999/2
売上高
246億円
当期純利益
27億円
FY00
2000/2
売上高
267億円
ABCマートの積極出店を開始・SCに照準
大店法改正をSCテナント出店に転化した全国チェーン化の起点
FY01
2001/2
売上高
283億円
当期純利益
43億円
株式を店頭公開
2000年にITCが株式を店頭公開した。2001年3月末の大株主は三木正浩氏37.96%、親族24.97%、有限会社イーエムプランニング12.99%で、三木家が過半を保持する資本政策を採った。高収益で大規模な資金需要が乏しく、上場の主目的は信用力向上と創業者持分の流動性確保と推定される。2002年11月に東証1部へ上場後も三木家の保有比率は高水準を維持し、2024年3月末でも合計68%を保有している。
創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」
ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)
2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。
地方展開の合弁会社を買収
ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。
FY02
2002/2
売上高
326億円
当期純利益
57億円
ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退
1999年以降、小売店舗の積極出店でABCマートが成長する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉で売上が低迷した。卸売の営業利益率は25%前後と高水準だったが成長性に難があった。そこで2002年にITCがABCマートを吸収合併し、商号を「エービーシー・マート」へ変更して小売業に特化する方針を鮮明にした。つまり利益率25%の卸売よりも成長余地のある小売への集中を優先し、法人名と事業実態を一致させた。
利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断
ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立
ABCマートは海外小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%で、現地企業とパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡し、ファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった。2004年から本格出店を開始し、以後韓国はABCマート海外事業で最大の売上を確保する地域となった。2024年までに店舗数は300を突破した。
経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理
FY03
2003/2
売上高
389億円
当期純利益
41億円
FY04
2004/2
売上高
463億円
当期純利益
38億円
金城正宏氏が代表取締役社長に就任
2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。
FY05
2005/2
売上高
541億円
当期純利益
44億円
FY06
2006/2
売上高
661億円
当期純利益
106億円
FY07
2007/2
売上高
777億円
当期純利益
100億円
野口実氏が代表取締役社長に就任
2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年入社の叩き上げで2024年時点も社長を務める。前社長の金城正弘氏は専務に降格した。同時に創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」で役職を退き、オーナー(筆頭株主)で関わる形となった。すなわち2007年は所有と経営の分離が進む転換点であった。野口氏は国内SC出店と大型店GRAND STAGE開発、海外は韓国・台湾を重視し漸進的改善で成長を志向した。
叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線
FY08
2008/2
売上高
886億円
当期純利益
105億円
FY09
2009/2
売上高
973億円
当期純利益
110億円
FY10
2010/2
売上高
1,135億円
当期純利益
144億円
旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始
ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。
FY11
2011/2
売上高
1,273億円
当期純利益
183億円
台湾への小売出店を開始
韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。
FY12
2012/2
売上高
1,407億円
当期純利益
156億円
FY13
2013/2
売上高
1,594億円
親会社株主に帰属する当期純利益
172億円
米LaCrosseをTOBにて買収
2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBで買収した。LaCrosseは「ダナー」「ラクロス」等のアウトドア・ワークブーツを展開する。ABCマートにとってホーキンス取得以来の海外ブランド買収で、カジュアル中心の構成にアウトドア分野を加える狙いと推定される。買収価格は110億円、株式100%取得で「のれん」51億円を計上。創業家退任後の野口体制下で数少ない大型投資案件となった。
ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断
転換社債型新株予約権付き社債を発行
2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州投資家中心に330億円を調達した。幹事引受はバークレー。用途はFY2013〜FY2015の3年で年100億円を国内および韓国・台湾の大型店舗新設に充当する計画。転換条件は2016年以降に株価が転換価格を30%上回った場合とし、2016年2月期に条件を満たし権利行使が発生、資本金・資本準備金が約330億円増加し社債は株式へ転換された。
転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計
FY14
2014/2
売上高
1,880億円
親会社株主に帰属する当期純利益
199億円
FY15
2015/2
売上高
2,135億円
親会社株主に帰属する当期純利益
243億円
FY16
2016/2
売上高
2,381億円
親会社株主に帰属する当期純利益
261億円
FY17
2017/2
売上高
2,389億円
親会社株主に帰属する当期純利益
283億円
FY18
2018/2
売上高
2,542億円
親会社株主に帰属する当期純利益
297億円
FY19
2019/2
売上高
2,667億円
親会社株主に帰属する当期純利益
302億円
アジアで旗艦店を出店
アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。
国内1000店舗体制へ
ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。
FY20
2020/2
売上高
2,723億円
親会社株主に帰属する当期純利益
297億円
FY21
2021/2
売上高
2,202億円
親会社株主に帰属する当期純利益
192億円
FY22
2022/2
売上高
2,439億円
親会社株主に帰属する当期純利益
173億円
FY23
2023/2
売上高
2,900億円
親会社株主に帰属する当期純利益
302億円
FY24
2024/2
売上高
3,441億円
親会社株主に帰属する当期純利益
400億円
FY25
2025/2
売上高
3,722億円
親会社株主に帰属する当期純利益
453億円
GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)
  1. 株式会社国際貿易商事を設立
    独占販売権の蓄積がSPA型小売への業態転換を準備した創業期
  2. ホーキンスの国内独占販売権を取得
    日本で無名のブランドを現地交渉で独占した先取り型の仕入れ戦略
  3. 靴のグローバルSPAを志向・韓国での生産を開始
    韓国での生産委託が「高利益率×低価格」を両立させたSPA設計
  4. ABCマート1号店を開業・小売業に参入
    アメ横・渋谷への同一地区複数出店が生んだ都心ドミナント戦略
  5. ホーキンスのTVCMを放映・木村拓哉を起用
    広告宣伝費40億円がブーム加速と需要枯渇を同時に招いた逆説
  6. ABCマートの積極出店を開始・SCに照準
    大店法改正をSCテナント出店に転化した全国チェーン化の起点
  7. 株式を店頭公開

    2000年にITCが株式を店頭公開した。2001年3月末の大株主は三木正浩氏37.96%、親族24.97%、有限会社イーエムプランニング12.99%で、三木家が過半を保持する資本政策を採った。高収益で大規模な資金需要が乏しく、上場の主目的は信用力向上と創業者持分の流動性確保と推定される。2002年11月に東証1部へ上場後も三木家の保有比率は高水準を維持し、2024年3月末でも合計68%を保有している。

    創業家68%保有が可能にした「上場企業の非公開的経営」
  8. ABCマート銀座店を開業(土地取得あり)

    2000年10月にABCマートは銀座店を出店。営業面積は631㎡であり、自由が丘店に次ぐ2番目の店舗面積を確保した。なお、銀座出店にあたって土地の取得を実施しており、2000年3月期にABCマートは銀座店の土地取得で19億円を投資した。ABCマートでは、東京都心部の路面店への出店については、土地取得を伴うことも多かった。

  9. 地方展開の合弁会社を買収

    ABCマートでは全国展開(地方展開)において、地方展開では現地企業との合弁による展開を志向したが、2001年から集約を実施。合弁会社の株式を取得し、ABCマートに吸収合併する形をとった。

  10. ITCの商号をエービーシーマートに変更。祖業の卸売業から撤退

    1999年以降、小売店舗の積極出店でABCマートが成長する一方、祖業の卸売業(ITC)はアメカジブームの終焉で売上が低迷した。卸売の営業利益率は25%前後と高水準だったが成長性に難があった。そこで2002年にITCがABCマートを吸収合併し、商号を「エービーシー・マート」へ変更して小売業に特化する方針を鮮明にした。つまり利益率25%の卸売よりも成長余地のある小売への集中を優先し、法人名と事業実態を一致させた。

    利益率25%の卸売業を捨てて成長性のある小売業に一本化した決断
  11. ABC-MART KOREA, INC.を合弁設立

    ABCマートは海外小売事業を強化するため、2002年に韓国で合弁会社ABC-MART, KOREA INC.を設立した。出資比率はABCマート51%で、現地企業とパートナーシップを組んだ。韓国は経済発展が一巡し、ファッションに支出できる若者層が存在する点でABCマートの商品構成と親和性が高かった。2004年から本格出店を開始し、以後韓国はABCマート海外事業で最大の売上を確保する地域となった。2024年までに店舗数は300を突破した。

    経済発展が一巡したアジア市場に限定した海外出店の設計原理
  12. 金城正宏氏が代表取締役社長に就任

    2004年に金城正宏氏がABCマートの代表取締役に就任。創業者である三木氏は引き続き代表取締役(会長)として経営に従事した。金城氏は国内での積極出店を進めつつ、市場が拡大する韓国に着目。2004年から韓国におけるABCマートの出店を開始するなど、グローバル展開(韓国)への布石をうった。

  13. 野口実氏が代表取締役社長に就任

    2007年に野口実氏(当時41歳)がABCマートの代表取締役社長に就任した。野口氏は1991年入社の叩き上げで2024年時点も社長を務める。前社長の金城正弘氏は専務に降格した。同時に創業者の三木正浩氏は「一身上の都合」で役職を退き、オーナー(筆頭株主)で関わる形となった。すなわち2007年は所有と経営の分離が進む転換点であった。野口氏は国内SC出店と大型店GRAND STAGE開発、海外は韓国・台湾を重視し漸進的改善で成長を志向した。

    叩き上げ社長が選んだ「小さな改善の積み重ね」型の経営路線
  14. 旗艦店業態「GRANDSTAGE」の出店開始

    ABCマートは大規模な旗艦店業態として「GRANDSTAGE(GS)」の展開を開始。国内の都心部において品揃えを重視した店舗を新設し、細分化する顧客ニーズへの対応を目論んだ。GSの業績は好調に推移したといい(数値は非開示)、2024年時点で国内のGS業態は88店舗を展開(最大200店舗の展開を予定)した。

  15. 台湾への小売出店を開始

    韓国に続き台湾地区における小売店の出店を開始した。なお、ABCマートは中国本土への出店は見送っている。

  16. 米LaCrosseをTOBにて買収

    2012年8月にABCマートは米国のブーツメーカー「LaCrosse社(1932年創業)」をTOBで買収した。LaCrosseは「ダナー」「ラクロス」等のアウトドア・ワークブーツを展開する。ABCマートにとってホーキンス取得以来の海外ブランド買収で、カジュアル中心の構成にアウトドア分野を加える狙いと推定される。買収価格は110億円、株式100%取得で「のれん」51億円を計上。創業家退任後の野口体制下で数少ない大型投資案件となった。

    ホーキンス以来の「ブランド源流買収」をダナーで再現した投資判断
  17. 転換社債型新株予約権付き社債を発行

    2013年1月にABCマートは「2018年満期ユーロ円建転換社債型新株予約権付社債」の発行を決定し、欧州投資家中心に330億円を調達した。幹事引受はバークレー。用途はFY2013〜FY2015の3年で年100億円を国内および韓国・台湾の大型店舗新設に充当する計画。転換条件は2016年以降に株価が転換価格を30%上回った場合とし、2016年2月期に条件を満たし権利行使が発生、資本金・資本準備金が約330億円増加し社債は株式へ転換された。

    転換社債330億円が「返済不要」の出店原資となった資金設計
  18. アジアで旗艦店を出店

    アジアにおける店舗展開について、大型機関店を通じた出店を開始。2018年に韓国、2019年に台湾で、それぞれGS Gen2の出店を実施した。2022年にはベトナム進出を決定し、同国にGS Gen2を出店している。

  19. 国内1000店舗体制へ

    ABCマートにおける国内への出店について、1999年に表明したショップピングセンターへの積極出店から一貫して店舗数を増大。2019年には国内でABCマートの店舗数が1000店舗を突破した。2019年度の時点で、過半数以上の店舗がSC向けであった。これは、国内におけるショッピングセンターの新設が相次ぎ、結果としてSCの市場拡大とともに、ABCマートの出店数が増大したことによる。

  20. GS旗艦店を銀座に新規出店(予定)

参考文献・出所

有価証券報告書
戦略経営者 2000年7月号
決算説明資料
テレビ東京 カンブリア宮殿 2009/6/15
SHOES MASTER 2017/12
Tokyo Calendar 2016/9
日本経済新聞 2025/12/1