沿革年表 1941〜2026年における重要度別の出来事(合計37件)
| 年月 | 区分 | 社長/CEO | 出来事 | 年度 | 売上高 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|---|---|
重要事項 | ヲサメ合成化学工業株式会社を設立 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒の創業期を規定したのは、無水フタル酸の製造に伴う爆発リスクであった。1944年のプラント爆発事故で死者を出しながらも事業を継続した判断は、結果として競合他社の撤退を招き、1960年頃には国内シェア70%という独占的地位につながった。危険性が参入障壁として機能するという逆説的な構造は、化学工業における技術蓄積と事業継続の意思決定が競争優位を規定した事例である。 | 1941 1-12月 | ||||
空襲で本社焼失。吹田工場に移転 大阪市内の工場(田川通)を焼失。土地を稲畑産業に売却して、本社を吹田工場(1944年稼働)に移転 | 1945 1-12月 | |||||
商号を日本触媒化学工業に変更 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒の再出発において八谷泰造氏が定めた方針は、同族経営の回避と増資による持分希薄化という資本政策であった。創業者の納氏が経営を放棄した経験から、八谷氏は企業の公器性を重視し、自身の保有比率を意図的に下げる道を選んだ。富士製鐵による33%出資は、仕入先との取引関係を資本関係に転換した事例でもある。個人経営の失敗を起点に、開かれた企業統治を志向した資本設計の原型が形成された。 | 1950 1-12月 | |||||
FY51 1951/11 | 売上高 3.79億円 | 当期純利益 0.95億円 | ||||
大阪証券取引所第1部に株式上場 | FY52 1952/11 | 売上高 4.36億円 | 当期純利益 0.52億円 | |||
無水マイレン酸の製造開始 無水フタル酸の副産物として製造。主な用途はポリエステル樹脂の塗料・農薬・医薬の原料など | ||||||
重要事項 | 半期赤字に転落。富士製鐵が救済 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒の経営危機において、富士製鐵は仕入先と筆頭株主という二つの立場から救済に動いた。ナフタリンの現物出資という形式は、現金支出を伴わずに資本増強と原料確保を同時に実現する手法であった。取引関係を資本関係に転換した構造が、不況期の安全弁として機能した。売上の90%を無水フタル酸に依存する単一製品リスクが顕在化した局面で、サプライヤーとの資本的紐帯が企業存続を左右した事例である。 | |||||
組織再編 | 大光海運を設立(現・日触物流) 物流子会社として大光海運株式会社を設立した。現在の日触物流株式会社にあたり、化学品輸送の社内インフラ整備の起点となった。 | FY53 1953/11 | 売上高 5.24億円 | 当期純利益 0.34億円 | ||
FY54 1954/11 | 売上高 7.32億円 | 当期純利益 0.92億円 | ||||
組織再編 | 日宝化学に資本参加 日宝化学株式会社に資本参加した。すなわち化学品グループ会社網を拡張する一環で連結子会社化に至った。 | FY55 1955/11 | 売上高 10.2億円 | 当期純利益 1.8億円 | ||
株式上場 | 東京証券取引所に株式を上場 東京証券取引所に株式を上場した。1952年の大阪証券取引所上場に続き、東西両市場で資金調達基盤を整える動きとなった。 | FY56 1956/11 | 売上高 16.7億円 | 当期純利益 3億円 | ||
FY57 1957/11 | 売上高 21.4億円 | 当期純利益 3.2億円 | ||||
FY58 1958/11 | 売上高 22.3億円 | 当期純利益 2.5億円 | ||||
酸化エチレンの量産開始 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒の石油化学転換は、資本金4.8億円の企業が9.8億円の設備投資を決断するという規模の判断であった。海外技術導入が主流の時代に国産技術で酸化エチレンの工業化に成功し、独立系コンビナートへの参画で量産体制を構築した。川崎と姫路の2拠点体制は、原料から製品までの一貫生産を可能にし、後のアクリル酸・SAP事業の基盤ともなった。身の丈を超えた投資判断が企業の成長段階を引き上げた事例である。 | FY59 1959/11 | 売上高 35.8億円 | 当期純利益 3.9億円 | |||
姫路工場を新設 | FY60 1960/11 | 売上高 55.4億円 | 当期純利益 5.3億円 | |||
組織再編 | 本社を高麗橋に移転、吹田に研究所 本社を大阪市東区高麗橋(現大阪市中央区高麗橋)に移転した。同時に吹田工場内に研究所を新設し、研究開発体制を整備する転機となった。 | FY61 1961/11 | 売上高 69.7億円 | 当期純利益 4.4億円 | ||
FY62 1962/11 | 売上高 69億円 | 当期純利益 2.1億円 | ||||
FY63 1963/11 | 売上高 71.8億円 | 当期純利益 2.6億円 | ||||
FY64 1964/11 | 売上高 83.7億円 | 当期純利益 2.6億円 | ||||
FY65 1965/11 | 売上高 90.9億円 | 当期純利益 2.3億円 | ||||
FY66 1966/11 | 売上高 104億円 | 当期純利益 2.7億円 | ||||
川崎第二工場を新設 | FY67 1967/11 | 売上高 134億円 | 当期純利益 7.2億円 | |||
FY68 1968/11 | 売上高 155億円 | 当期純利益 8.5億円 | ||||
FY69 1969/11 | 売上高 167億円 | 当期純利益 9億円 | ||||
重要事項 | アクリル酸の製造を開始 気相酸化技術を応用してアクリル酸の製造を開始(国内初) 経営判断をよむ → | FY70 1970/11 | 売上高 202億円 | 当期純利益 10.3億円 | ||
追浜工場を新設(1978年休止) | ||||||
FY71 1971/11 | 売上高 225億円 | 当期純利益 9.2億円 | ||||
セカンダリーアルコールエトキシレートの製造を開始 川崎第二工場(現・川崎製造所浮島工場)でセカンダリーアルコールエトキシレートの製造を開始した。すなわち界面活性剤分野への展開となった。 | FY72 1972/11 | 売上高 244億円 | 当期純利益 9.8億円 | |||
FY73 1973/11 | 売上高 328億円 | 当期純利益 17.4億円 | ||||
FY74 1974/11 | 売上高 569億円 | 当期純利益 32.2億円 | ||||
FY75 1975/11 | 売上高 566.03億円 | 当期純利益 20.15億円 | ||||
FY76 1976/11 | 売上高 656.33億円 | 当期純利益 22.21億円 | ||||
FY77 1977/11 | 売上高 682.46億円 | 当期純利益 19.47億円 | ||||
FY78 1978/11 | 売上高 695.58億円 | 当期純利益 15.35億円 | ||||
FY79 1979/11 | 売上高 864.29億円 | 当期純利益 28.99億円 | ||||
FY80 1980/11 | 売上高 997.37億円 | 当期純利益 23.42億円 | ||||
姫路研究所・川崎研究所を設置 | FY81 1981/11 | 売上高 982.52億円 | 当期純利益 12.51億円 | |||
メタクリル酸・同エステルの製造を開始 姫路製造所でメタクリル酸およびメタクリル酸エステルの製造を開始した。アクリル酸事業に隣接するメタクリル系への参入であり、後の住友化学との事業交換の伏線となった。 | FY82 1982/11 | 売上高 956.42億円 | 当期純利益 14.49億円 | |||
姫路製造所で高吸水性樹脂(SAP)の製造を開始 姫路製造所で高吸水性樹脂の製造を開始した。すなわち1985年に量産化される主力製品SAPの工業化スタートに位置付けられ、後にP&G向け供給と欧州・アジア展開を支える基盤となった。 | FY83 1983/11 | 売上高 945.83億円 | 当期純利益 12.69億円 | |||
FY84 1984/11 | 売上高 1,011.59億円 | 当期純利益 33.51億円 | ||||
高級水性樹脂(SAP)の製造を開始 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒のSAP事業は、三洋化成とユニチャームが先行する市場に後発で参入しながら、短期間でシェア1位を獲得した。その要因は、アクリル酸からSAPまでの一貫生産体制にある。原料を内製できることで、外部調達に依存する競合に対してコスト競争力と供給安定性の双方で優位に立った。P&Gという世界最大の顧客を確保した上での参入も、量産規模の確保に寄与した。原料統合による構造的優位が後発逆転を可能にした事例である。 | FY85 1985/11 | 売上高 1,068億円 | 当期純利益 31.8億円 | |||
FY86 1986/11 | 売上高 1,026億円 | 当期純利益 36.5億円 | ||||
FY87 1987/11 | 売上高 1,050億円 | 当期純利益 56.2億円 | ||||
NA Industries Inc.を設立(米国法人) | FY88 1988/11 | 売上高 1,171億円 | 当期純利益 63.9億円 | |||
FY89 1989/11 | 売上高 1,323億円 | 当期純利益 99.7億円 | ||||
10ヵ年総合経営計画「テクノアメニティ」を策定 | FY90 1990/11 | |||||
社名を「株式会社日本触媒」に変更 社名を「日本触媒化学工業株式会社」から「株式会社日本触媒」に変更した。化学工業の枠を超えた事業領域拡大を打ち出すブランド変更となった。 | FY91 1991/11 | |||||
FY92 1992/11 | 売上高 1,526億円 | 当期純利益 39億円 | ||||
FY93 1993/11 | 売上高 1,406億円 | 当期純利益 27億円 | ||||
FY94 1994/11 | 売上高 1,365億円 | 当期純利益 37億円 | ||||
FY95 1995/11 | 売上高 1,527億円 | 当期純利益 56億円 | ||||
インドネシアに現地法人を設立 インドネシアに現地法人を設立し、現地生産を開始。日本触媒の東南アジアにおける主力生産拠点となった。 | FY96 1996/11 | 売上高 1,584億円 | 当期純利益 54億円 | |||
FY97 1997/11 | 売上高 562億円 | 当期純利益 15億円 | ||||
シンガポールに現地法人を設立 | FY98 1998/11 | 売上高 1,718億円 | 当期純利益 52億円 | |||
| 近藤忠夫 | 欧州に現地法人を設立(ベルギー) | FY99 1999/11 | 売上高 1,601億円 | 当期純利益 44億円 | ||
| 近藤忠夫 | FY00 2000/11 | 売上高 1,624億円 | 当期純利益 26億円 | |||
| 近藤忠夫 | 長期経営計画「テクノアメニティNV」を策定 日本触媒はFY2001〜FY2006の長期ビジョン「テクノアメニティNV」を策定し、グローバル展開と事業ポートフォリオ経営を打ち出した。アクリル酸と高吸水性樹脂をコア事業と定義しP&G向け供給責任のため積極投資を決定。一方で不飽和ポリエステル等の樹脂事業は再構築方針を掲げたが、撤退(合弁化)は2014年にずれ込んだ。管理指標はROAと営業CF・販売貢献利益を採用した。 海外成長で国内低迷を補う事業ポートフォリオ転換の功罪 | FY01 2001/11 | 売上高 1,605億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 12億円 | ||
| 近藤忠夫 | 住友化学と事業交換。アクリル酸を取得し、メチルメタクリレートを譲渡 | FY02 2002/11 | 売上高 1,597億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 15億円 | ||
| 近藤忠夫 | 中国に現地法人を設立 | FY03 2003/11 | 売上高 1,635億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 55億円 | ||
企業買収海外進出 | 近藤忠夫 | シンガポール・アクリリック等2社を取得 シンガポール・アクリリックPTE LTDおよびシンガポール・グレーシャル・アクリリックPTE.LTD.を取得し連結子会社化した。アクリル酸の海外生産能力をシンガポールで一気に拡張する買収となった。 | FY04 2004/11 | 売上高 1,697億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 88億円 | |
| 近藤忠夫 | FY05 2005/11 | 売上高 1,972億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 157億円 | |||
| 近藤忠夫 | FY06 2006/11 | 売上高 2,324億円 | 当期純利益 162億円 | |||
| 近藤忠夫 | FY07 2007/11 | 売上高 2,665億円 | 当期純利益 139億円 | |||
企業買収海外進出 | 近藤忠夫 | 日本乳化剤と中日合成化學(台湾)を取得 日本乳化剤株式会社と、中日合成化學股份有限公司(台湾)を取得した。すなわち国内の乳化剤メーカーと台湾の化学品メーカーを同時に連結子会社化し、エトキシレート系・界面活性剤系の事業基盤を強化した。 | FY08 2008/11 | 売上高 3,026億円 | 当期純利益 118億円 | |
| 近藤忠夫 | FY09 2009/11 | 売上高 2,891億円 | 当期純利益 -53億円 | |||
| 池田全德 | FY10 2010/11 | 売上高 2,443億円 | 当期純利益 108億円 | |||
| 池田全德 | FY11 2011/11 | 売上高 2,883億円 | 当期純利益 211億円 | |||
重要事項 | 池田全德 | 姫路製造所で爆発事故が発生 アクリル酸タンクの温度上昇による爆発事故が発生。消火活動にあたっていた消防士1名が死亡し、その他30名が重軽傷となった。 経営判断をよむ → | FY12 2012/11 | 売上高 3,207億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 212億円 | |
| 池田全德 | FY13 2013/11 | 売上高 2,695億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 84億円 | |||
| 池田全德 | FY14 2014/11 | 売上高 3,021億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 105億円 | |||
| 池田全德 | 吹田工場を閉鎖(研究拠点として継続活用) 1943年に開設した吹田工場(大阪府)について、製品生産の終了を決定。生産品目の不飽和ポリエステル樹脂について、三井化学との合弁会社に事業譲渡したことで、生産設備の維持が困難となった。工場閉鎖後は、引き続き日本触媒の研究開発拠点として継続活用へ | FY15 2015/11 | 売上高 3,748億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 190億円 | ||
欧州で高吸水性樹脂の増産を決定 欧州における高吸水性樹脂および、その原料であるアクリル酸の増産を決定。ベルギーの子会社NSEを通じて、新工場の新設を決定した。投資額は455億円を予定し、2017年10月からの稼働開始を目標に据えた。 | ||||||
| 五嶋祐治朗 | FY16 2016/11 | 売上高 3,231億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 260億円 | |||
| 五嶋祐治朗 | SAPの収益性が低下。サバイバルPJを開始 戦略パートナーP&Gの値下げ圧力で主力の高吸水性樹脂(SAP)収益性が低迷し、欧州子会社NSEは慢性赤字に転落していた。そこで日本触媒は「サバイバルPJ」を発足し経営改革を開始。2020年度までの4ヵ年で設備投資900億円・戦略投資600億円・研究開発費570億円を投じる方針を公表し、SAP事業の収益力回復と新規事業創出を掲げた。 最大顧客P&Gの値下げ圧力が突きつけた一貫生産の限界 | FY17 2017/11 | 売上高 2,939億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 193億円 | ||
| 五嶋祐治朗 | FY18 2018/11 | 売上高 3,228億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 242億円 | |||
重要事項 | 五嶋祐治朗 | 三洋化成との統合(撤回) 歴史的意義yutaka sugiura 日本触媒と三洋化成の経営統合は、SAP市場の成熟化に対する業界再編として構想された。しかし、統合準備期間中に日本触媒の欧州事業が急速に悪化し、ベルギー関連で119億円の減損を計上したことで、統合比率の前提が崩壊した。三洋化成の中国事業が安定していたことが業績格差を際立たせ、破談の直接的要因となった。統合判断時の業績と実行時の業績が乖離するリスクを示した事例である。 | FY19 2019/11 | 売上高 3,496億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 250億円 | |
| 五嶋祐治朗 | FY20 2020/11 | 売上高 3,021億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 110億円 | |||
| 野田和宏 | 最終赤字108億円に転落 日本触媒は2021年3月期に108億円の最終赤字に転落した。欧州子会社NSEは現地での高吸水性樹脂の競争激化により設備の減損119億円を計上。さらに2017年に買収した米SIRRUS Inc.(接着剤の開発ベンチャー)も事業が軌道に乗らず92億円の減損を計上した。よって新規事業として期待されたSIRRUSは買収数年で減損に至った。 欧州増産とベンチャー買収――二つの投資判断が同時に裏目に出た期 | FY21 2021/11 | 売上高 2,731億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 -108億円 | ||
| 野田和宏 | FY22 2022/11 | 売上高 3,692億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 237億円 | |||
| 野田和宏 | FY23 2023/11 | 売上高 4,195億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 193億円 | |||
| 野田和宏 | FY24 2024/11 | 売上高 3,920億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 110億円 | |||
| 野田和宏 | FY25 2025/11 | 売上高 4,093億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 173億円 | |||
FY26 2026/11 | 売上高 3,999億円 | 親会社株主に帰属する当期純利益 168億円 |
- 空襲で本社焼失。吹田工場に移転
大阪市内の工場(田川通)を焼失。土地を稲畑産業に売却して、本社を吹田工場(1944年稼働)に移転
- 商号を日本触媒化学工業に変更日本触媒の再出発において八谷泰造氏が定めた方針は、同族経営の回避と増資による持分希薄化という資本政策であった。創業者の納氏が経営を放棄した経験から、八谷氏は企業の公器性を重視し、自身の保有比率を意図的に下げる道を選んだ。富士製鐵による33%出資は、仕入先との取引関係を資本関係に転換した事例でもある。個人経営の失敗を起点に、開かれた企業統治を志向した資本設計の原型が形成された。
- 大阪証券取引所第1部に株式上場
- 無水マイレン酸の製造開始
無水フタル酸の副産物として製造。主な用途はポリエステル樹脂の塗料・農薬・医薬の原料など
- 半期赤字に転落。富士製鐵が救済日本触媒の経営危機において、富士製鐵は仕入先と筆頭株主という二つの立場から救済に動いた。ナフタリンの現物出資という形式は、現金支出を伴わずに資本増強と原料確保を同時に実現する手法であった。取引関係を資本関係に転換した構造が、不況期の安全弁として機能した。売上の90%を無水フタル酸に依存する単一製品リスクが顕在化した局面で、サプライヤーとの資本的紐帯が企業存続を左右した事例である。
- 大光海運を設立(現・日触物流)
物流子会社として大光海運株式会社を設立した。現在の日触物流株式会社にあたり、化学品輸送の社内インフラ整備の起点となった。
- 日宝化学に資本参加
日宝化学株式会社に資本参加した。すなわち化学品グループ会社網を拡張する一環で連結子会社化に至った。
- 東京証券取引所に株式を上場
東京証券取引所に株式を上場した。1952年の大阪証券取引所上場に続き、東西両市場で資金調達基盤を整える動きとなった。
- 酸化エチレンの量産開始日本触媒の石油化学転換は、資本金4.8億円の企業が9.8億円の設備投資を決断するという規模の判断であった。海外技術導入が主流の時代に国産技術で酸化エチレンの工業化に成功し、独立系コンビナートへの参画で量産体制を構築した。川崎と姫路の2拠点体制は、原料から製品までの一貫生産を可能にし、後のアクリル酸・SAP事業の基盤ともなった。身の丈を超えた投資判断が企業の成長段階を引き上げた事例である。
- 姫路工場を新設
- 本社を高麗橋に移転、吹田に研究所
本社を大阪市東区高麗橋(現大阪市中央区高麗橋)に移転した。同時に吹田工場内に研究所を新設し、研究開発体制を整備する転機となった。
- 川崎第二工場を新設
- 追浜工場を新設(1978年休止)
- セカンダリーアルコールエトキシレートの製造を開始
川崎第二工場(現・川崎製造所浮島工場)でセカンダリーアルコールエトキシレートの製造を開始した。すなわち界面活性剤分野への展開となった。
- 姫路研究所・川崎研究所を設置
- メタクリル酸・同エステルの製造を開始
姫路製造所でメタクリル酸およびメタクリル酸エステルの製造を開始した。アクリル酸事業に隣接するメタクリル系への参入であり、後の住友化学との事業交換の伏線となった。
- 姫路製造所で高吸水性樹脂(SAP)の製造を開始
姫路製造所で高吸水性樹脂の製造を開始した。すなわち1985年に量産化される主力製品SAPの工業化スタートに位置付けられ、後にP&G向け供給と欧州・アジア展開を支える基盤となった。
- 高級水性樹脂(SAP)の製造を開始日本触媒のSAP事業は、三洋化成とユニチャームが先行する市場に後発で参入しながら、短期間でシェア1位を獲得した。その要因は、アクリル酸からSAPまでの一貫生産体制にある。原料を内製できることで、外部調達に依存する競合に対してコスト競争力と供給安定性の双方で優位に立った。P&Gという世界最大の顧客を確保した上での参入も、量産規模の確保に寄与した。原料統合による構造的優位が後発逆転を可能にした事例である。
- NA Industries Inc.を設立(米国法人)
- 10ヵ年総合経営計画「テクノアメニティ」を策定
- 社名を「株式会社日本触媒」に変更
社名を「日本触媒化学工業株式会社」から「株式会社日本触媒」に変更した。化学工業の枠を超えた事業領域拡大を打ち出すブランド変更となった。
- インドネシアに現地法人を設立
インドネシアに現地法人を設立し、現地生産を開始。日本触媒の東南アジアにおける主力生産拠点となった。
- シンガポールに現地法人を設立
- 欧州に現地法人を設立(ベルギー)
- 長期経営計画「テクノアメニティNV」を策定
日本触媒はFY2001〜FY2006の長期ビジョン「テクノアメニティNV」を策定し、グローバル展開と事業ポートフォリオ経営を打ち出した。アクリル酸と高吸水性樹脂をコア事業と定義しP&G向け供給責任のため積極投資を決定。一方で不飽和ポリエステル等の樹脂事業は再構築方針を掲げたが、撤退(合弁化)は2014年にずれ込んだ。管理指標はROAと営業CF・販売貢献利益を採用した。
海外成長で国内低迷を補う事業ポートフォリオ転換の功罪 - 住友化学と事業交換。アクリル酸を取得し、メチルメタクリレートを譲渡
- 中国に現地法人を設立
- シンガポール・アクリリック等2社を取得
シンガポール・アクリリックPTE LTDおよびシンガポール・グレーシャル・アクリリックPTE.LTD.を取得し連結子会社化した。アクリル酸の海外生産能力をシンガポールで一気に拡張する買収となった。
- 日本乳化剤と中日合成化學(台湾)を取得
日本乳化剤株式会社と、中日合成化學股份有限公司(台湾)を取得した。すなわち国内の乳化剤メーカーと台湾の化学品メーカーを同時に連結子会社化し、エトキシレート系・界面活性剤系の事業基盤を強化した。
- 吹田工場を閉鎖(研究拠点として継続活用)
1943年に開設した吹田工場(大阪府)について、製品生産の終了を決定。生産品目の不飽和ポリエステル樹脂について、三井化学との合弁会社に事業譲渡したことで、生産設備の維持が困難となった。工場閉鎖後は、引き続き日本触媒の研究開発拠点として継続活用へ
- 欧州で高吸水性樹脂の増産を決定
欧州における高吸水性樹脂および、その原料であるアクリル酸の増産を決定。ベルギーの子会社NSEを通じて、新工場の新設を決定した。投資額は455億円を予定し、2017年10月からの稼働開始を目標に据えた。
- SAPの収益性が低下。サバイバルPJを開始
戦略パートナーP&Gの値下げ圧力で主力の高吸水性樹脂(SAP)収益性が低迷し、欧州子会社NSEは慢性赤字に転落していた。そこで日本触媒は「サバイバルPJ」を発足し経営改革を開始。2020年度までの4ヵ年で設備投資900億円・戦略投資600億円・研究開発費570億円を投じる方針を公表し、SAP事業の収益力回復と新規事業創出を掲げた。
最大顧客P&Gの値下げ圧力が突きつけた一貫生産の限界 - 最終赤字108億円に転落
日本触媒は2021年3月期に108億円の最終赤字に転落した。欧州子会社NSEは現地での高吸水性樹脂の競争激化により設備の減損119億円を計上。さらに2017年に買収した米SIRRUS Inc.(接着剤の開発ベンチャー)も事業が軌道に乗らず92億円の減損を計上した。よって新規事業として期待されたSIRRUSは買収数年で減損に至った。
欧州増産とベンチャー買収――二つの投資判断が同時に裏目に出た期