日本触媒の直近の動向と展望

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日本触媒の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。

セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。

直近の動向と展望

三洋化成との経営統合の白紙撤回と姫路製造所の爆発事故

2019年5月、日本触媒は三洋化成との経営統合を発表し、新会社「Synfomix」の設立を計画した。両社はいずれもSAPで世界有数の生産量を持ち、統合すればアクリル酸からSAPにかけての原料一貫化を業界全体で広げられるはずだった。しかし統合準備中にコロナ禍で欧州SAP事業が急速に悪化し、ベルギー関連で119億円の減損損失を計上した。三洋化成の中国事業が相対的に安定していたため両社のあいだで業績格差が広がり、2020年10月に統合は白紙撤回された。原料一貫化で築いた優位は、地域別の需要変動や減損リスクの前では万能ではない。SAP事業の地理的な偏りが、統合交渉という経営判断の場面で両社の温度差として現れた。

NSE業績推移
  • ベルギー子会社NSEはFY2019に税引前損失28.65億円、FY2020に135.83億円へと損失が拡大した。
  • 欧州SAP事業の悪化が連結全体の減損計上と統合白紙撤回の引き金となった局面が、子会社単体の数字に現れる。
unit売上高経常利益売上収益税引前損失総資産利益率
億円368.47.5314.22
億円
億円
億円
億円346.1-28.6551.2-8.3
億円389.7-135.8446.4-34.9
億円493.8-22.8483.8-4.6
億円666.6-0.9467.9-0.1
出所有価証券報告書 (FY2015)

日本触媒にとっては2012年の姫路製造所での爆発事故の記憶もある。アクリル酸タンクの異常反応で死傷者を出した事故で、同社は安全対策の強化と生産体制の見直しに取り組んだ。創業期の吹田工場での無水フタル酸プラント爆発から70年近くを経ても、化学品製造に伴う爆発リスクは構造的な課題として残った。中国メーカーの新規参入でSAP市場の成熟化と価格競争の激化が進むなかで、創業以来積み上げた触媒技術と、アクリル酸からSAPへの原料一貫生産という構造優位を、どう収益に結びつけ直すかが現在の経営の中心課題である。創業期の八谷泰造が無水フタル酸でたどった残存者利益の筋道を、世代を越えてSAPの世界でも描き続けられるかが問われている。

参考文献
  • 有価証券報告書
  • ヤノレポート

参考文献・出所

有価証券報告書
産業フロンティア物語
逆境を生きぬく(八谷泰造著)
証券調査
ヤノレポート
日経産業新聞 1995/10/31